とあるメイドの学園都市   作:春月 望

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1 インデックスの救助
追われたシスター


七月二十日。

学園都市中が夏休みという名の長期休暇が始まったこの日。

私・十六夜咲夜はうだーっと一人しかいない二人部屋(二〇六号室)で伸びていた。

暑いわけではない。この、学園都市のれーぼーはすごく高性能なんだと美琴が言っていたのを覚えている。

幻想郷で嫌になるくらいに感じた暑さは、全くもって感じない。

 

「お嬢様に、会いたい……」

 

昨日の晩、突如現れた八雲紫に『この夏休みはこちらでいなさい』と言われてしまった。

ショックである。長期休暇と聞いて、お嬢様に会えると思っていたのに。

 

「……もういやだ、どっかいこう」

 

いつかはこの生活に慣れるだろう。紅魔館にお仕えし始めたときもそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらでの生活にも随分慣れた。

時間操作(タイムオペレーション)と名付けられたこの能力は、この学園都市には一人しかいないらしい。ってことで、ちょっとした優越感を味わったり。

毎週あるという小テストでカンニングをしたけどバレなかったり。

学年は二学年。そしてクラスも美琴と一緒ということでなぜか黒子に嫉妬されたり。

二人の友人だという、初春(ういはる)飾利(かざり)佐天(さてん)涙子(るいこ)のお話について聞いたり。

私のお嬢様について、そして紅魔館について、吸血鬼や魔法使いといった単語を用いらずに教えたり。

よくわからない科学について二人に教わったり。

書ききれないぐらい、この一週間で色々な経験をした。

私に時間という概念はないので、二人が嘆く厳しい時間設定も難なくこなしている。

そのことを、お嬢様にお教えしたかったのに。

 

沈んだ気分のまま、外へ出て歩き始める。

 

「はあ……」

 

 

その時、どこかで殺気を感じた。

 

 

「!?」

 

私は慌ててあたりを見渡す。

……いや、殺気ではないかもしれない。これは、恐らく……

 

「誰かと誰かが……追いかけっこ?」

 

この表現はちょっとおかしいかもしれないけど誰かが追い回されている。

どちらにしろ、自分には関係のないことだ。

 

「……」

 

でも、一つだけ気になることがある。

恐らくこれは、異能の力、それも科学ではない。どちらかといえば、パチュリー様と同じような、

 

「魔力?」

 

ちょっと気になるかもしれない。

暇つぶしぐらいになるだろう、そう思って魔力を追った。

追われている方はなんだかよくわからない結界を身につけているようで、更に面白そうだったからそっちを。

 

「あ、いた。ふうん、イギリス清教のシスターか」

 

お嬢様の敵、十字教。

まあそんなの気にしないが。

今私はお嬢様の元についていないし、その前に暇つぶしが目当てだ。殺してしまうのもつまらない。

 

「後ろに追ってるのも同じみたい」

 

その時、シスターがビルとビルの間を飛ぼうと空を舞った。

そして、落ちた。

私が追っ手の方をみると、誰かが銃を構えて立っていた。

 

「……あいつか」

 

それより、シスターを追った方が楽しそうだ。

私は時を止め、シスターの引っ掛かったどこかのベランダへと足を踏み入れた。

 

「ん……」

 

私はシスターを起こすことをせず、人の気配……というか、とても聞いたことのある声が叫んだ方へ目を向けていた。

 

やがてその相手は、布団を干すためかベランダへとやってきて__

 

「はあ!?」

 

ばさり。

 

私と隣のシスターをみて、困惑していた。

謎だ。意味不明だ。と、その目は言っていた。

 

「なんで咲夜!?それに隣のシスターさんは誰!?」

 

私が答える前に、シスターが起きた。

 

 

 

「おなかへった」

 

 

 

「「…………………………………………………………………………………………」」

 

ええっと、と私は思わずフリーズした頭を働かせる。

 

「……なんで?」

「おなかいっぱいご飯と食べさせてくれると嬉しいな」

 

いやいや、答えになってないから。と、突っ込みを入れる気力もでず、当麻に部屋へ入ることへの許可をもらって中に入った。

 

「当麻、台所借りていいかしら」

「え、お前料理できんの……っていうか何もないぞ」

 

私は冷蔵庫を開けてみる。

……本当だ、見事に何もない。

 

「……買ってきます」

 

盗んでもバレないが、ちゃんとお金を払って(移動時間や商品を選ぶときは時を止めたけど)部屋に戻った。

 

「早いね」

「まあ、能力だし」

「……何系?」

時間操作(タイムオペレーター)

 

何その羨ましい能力!という当麻は置いて、私はまた時を止めると料理を作って小さなちゃぶ台に載せた。

 

「うわぁっ!」

「すっげぇ。どっかのコース料理みたいだ」

 

そして最後に、二人にコトンと紅茶を淹れて置いた。

洒落たティーカップなんてここにはないが、常盤台から無断で持ち込んできたのだ。

 

「ではどうぞ」

 

シスターは、ガツガツとご飯をかきこみ始めた。

 

「もうないのー?」

「よく食べますねぇ……ホールケーキはどうでしょうか?」

 

すぐに時間をとめ、作るためのオーブンがなさそうだったので適当に買って持ってきた。

このシスターは、結構食べるようだ。

 

「ぷはーっ、ご馳走様っ!……えっと……」

「咲夜です。十六夜咲夜」

「ありがとう!咲夜っ!」

 

こんなにっこり笑顔で言われたら、誰でも嬉しくなるだろう。

妹様に、初めてこんな顔をされたときのように嬉しくなる。

 

「ほら、当麻」

「あっ、えっと上条当麻です」

「当麻もありがとう!」

 

ゔっ、と当麻も言葉に詰まっている。

男性というのはチョロいものだ。

 

「私はね、インデックスっていうんだよ」




……長い。
これからも安定しないかもしれません。

もうちょっと原作部分削ればいいのか?まあここはまだあまりかぶってないですけど。

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