「ほら見てくださいよ。今回俺って入院とかしてないじゃないですか。うわすげーな俺、これって一つの成長……いや、もう進化ですよね?そうですよね?」
待合室でそうはしゃいだ当麻に、月詠小萌先生と姫神秋沙から
ヒリヒリとしているであろう赤い頰を抑えながら(インデックスの方は諦めているらしい)、
「咲夜さぁん……」
かるーく涙目の当麻が私を見上げるが、何をしろというのだ。
私もこの学園都市における生徒の一人だ。好き好んで怒られたくなどない。
「まあ、女の子に心配をかけた当麻が悪いんじゃない?」
「咲夜が冷たい!」
うがーっ!と頭を抱えて喚く当麻には苦笑するしかない。
なぜ彼は私よりも年上なのに反応がいささか幼いのか。これは性別的な差なのかもしれない。
病院には連れていかれたものの、誰もそこまでの怪我をしていなかったので待合室での会話である。
ただ、あのカエル顔の医者には『拳は複雑な動きを可能にする分関節も多く脆いから、次からは気をつけるんだよ?』とのご忠告を当麻は受けていたし、先ほどから待合室を占拠している私たちにすれ違う看護師や患者はあまりいい顔をしない。
「そういえば十六夜さんはメイド服なんですねー。常盤台中学は制服でいることが校則だと聞きましたが、大丈夫なんですか?」
「……そういえば、着替えるのを忘れてましたわ」
私が時を止めて着替えて見せると、小萌先生はにっこり笑って『さすが常盤台中学の生徒さんですね』と多分能力を褒めてくれた。褒められ慣れていないのでなんだか不思議な気分である。
紫が言っていた戦争についても気になるが、気にしたところで彼女はあまり私の前に現れない。嘘か真かなんて今のうちは判断がつかないし、こればかりは世界とともに生きない限りわからないことだった。
ふと、インデックスを慌ててとめる氷華が目に入った。
彼女はなぜ生み出されたのか、目的はなんなのか、もうわからないことだらけである。氷華は【虚数学区の鍵を握る】と言われていると小萌先生は言っていた。だが、虚数学区がそもそも何をしているのかすら私たちにはわからないのだった。
ただ、これだけは言えた。
風斬氷華は怪物で化物だけど心をきちんと持っていて、笑ったり泣いたりできるそんな存在だと________……私は心から思えた。
とあるヨーロッパの国で、とある少女は生まれたらしい。
らしいというのは、その少女も知らないからだ。
ただ、物心ついたころにはその場所にいて、吸血鬼を殺して回っていたのだから十中八九間違っていないだろうと彼女は思っていた。
また彼女は自分の家族のことをあまり覚えていない。
わかっているのは自分の暮らしたはずの家にはもう誰もいないことと、この髪と瞳は父と母それぞれから受け継いだものであるということだけだ。
今の自分がいるのはお嬢様のおかげ。
それは洗脳でも魅了でもなんでもなく、少女のただの確信であった。
________そんな彼女はまた変わり始めている。
家族にすら無関心だった自分から、何かを大切にする自分へ。そして、人間らしい暖かな心を持った自分へと。
1200代です。短い。
題名は私の心の内です。いろんなサイトを見てもいまいちわからんので誤った情報を載せないようにしてます。文字数は最後の語り的なあれがないと大変なことになる。これでも頑張って伸ばしました……
最後の語りが誰かわかりやすすぎるって?誤魔化すと後々大変だと思ったのでお嬢様登場しました。洗脳とか魅了とかそれっぽくないですか?
これにて六巻終了です!長かった。
次回からはオルソラさんのお話ですね!舞夏さんが出る巻はネタたっぷりでウキウキワクワクです。
※小萌先生呼びについて※
咲夜さんはきちんと小萌先生に敬意を払いそうですが、月詠先生より小萌先生の方が親しみやすいのでこちらにしました。だって常盤台の先生じゃないんだもの。少しぐらい崩したって……ねぇ?