もうすぐ6巻が終わります。長かった……
あれ、と私は思わず声を漏らした。
目の前には止めたままの石像、周りからは建物が壊れているような音はしない。
「咲夜っ!」
「インデックス!」
インデックスと氷華がこちらへ駆けてきて、私も当麻も顔を見合わせた。
シェリーは石像を作り直すと言っていたはず。しかし、この場には止めたままの石像しかない。
「なんだか気落ちしたわ。まだ続くと思ってたのに」
「こんなもん……なのかなぁ」
「じゃあ私は一応、黒子と美琴のところに戻るわね。その能力、当麻なら解けるでしょうし」
私はひらひらと手を振って、すぐそこにいた美琴と合流した。
「あっ、咲夜、さっきはよくも……」
「そんなに怒らないの。それより黒子は?」
「も〜」
知らないわよ、と美琴が続けたとき、とてつもない轟音が響き渡った。
「何!?」
「石像の方よね……行ってくる」
「ちょっと!今度は勝手に行かないでよね!」
手首を掴まれてしまっては、能力を使ったところで美琴の時も動いてしまう。
まあレベル5だし、レベルだけなら私や当麻より上なのだからと一緒に石像へと向かった。
「________!?」
そこには、私が止めた石像よりもずっと大きくなった石像と、その前に立ちはだかる氷華がいて。
私たちが角を曲がったとき、ちょうど石像の拳が氷華に突き刺さった。
当麻は何をやっているんだと当麻を見ると、彼は彼で続けて打ち出されたもう一発の拳を受け止めたところだったらしい。
「氷華っ!?」
当麻が受け止めたことにより力を失った石像は、塵と化した。
塵が辺りを埋め尽くす。その、一瞬に。信じられないものをみたが、慌てて再び目を開けたときには、彼女はもうそこにはいなかった。
すぐに黒子がやってきてこのままじゃ面倒なことになると、嫌がるインデックスを美琴と共に連れて去って行った。
「当麻、これは一体……」
「俺だってわかんねーよ。止まった石像に触れたら、突如動き出して……それで……氷華は……」
けど、私は塵に覆われる少し前に、幻想かと思うくらい一瞬だけ、あるものを見てしまった。
『私は死なない』と言った通りに、彼女がまるで、粘土やプラスチックのように元に戻る様子を。
「いやでもそんなはずは……」
ありえるか、とも思う。
風紀委員や警備員が来る気配がするが、その前に確かめなければならないことがある。
「あの廃ビルへ向かった誰かがもし風斬氷華なら、あいつは何者だと思う?」
「怪物は人間じゃないといいたいの?」
「……」
「……そういうわけでもなさそうね」
私と当麻が登った廃ビルの上で、彼女は私を待っていた。
「あ……咲夜……さん……やっぱり、わた、しは怪物でしたね」
彼女は私たちの目の前で笑っていた。確信がなく、疑問でしなかなかったはずなのにいつの間に彼女は確信を覚えていたのか。
「ええ、そうかもしれないわね。当麻も少なからず驚いているもの」
「私……謝らないと。あなたの出番を、私みたいのが……横取りしてしまって、すみません」
氷華は当麻に頭を下げ、当麻は理解が出来ないと私と氷華を交互に見た。
「それでもあなたを友達だと言ってくれる人がいるんだから、いいじゃない」
「なにを……あの子も、目の前で私のあんなところ見たら……」
インデックスは魔神と呼ばれているらしい。人間の領域を超えてしまった存在。
そんな彼女が、ただの怪物を嫌いになるわけがないじゃないか、と思った。
「それに、謝らなきゃならないのは私……割と考察には自信があったのに、あなたたちを置いていったこと、すごく後悔してる」
「そんな……私たちを守ってくれてたのは咲夜さんですよ?それと、後悔してくれてるなんて、やっぱり咲夜さんは優しいじゃないですか」
そういって氷華は笑った。
「俺……よくわかんないけど、風斬は人間だよ。インデックスを守っといて、怪物はないだろ」
「……ありがう、ございます」
それから。
少しして、インデックスがその場に現れた。
インデックスは私と氷華が会話していることに、少し嫉妬して……そして、氷華の胸へと飛び込んだ。
氷華は普通ではないかもしれない。
どちらかといえば、妖怪に近いのかもしれない。
けど、人間と怪物が友だちになれないなんてことはないし、これだけインデックスに好かれているのだ。
羨ましいとさえ思ってしまう。
きっと彼女の物語は、まだ終わっていない。
『かざきり』と打ったはずなのに『カマキリ』と出てきて笑いました。
サブタイつけるときの話です。
カタカナはなんだか意味深ですね。