あれ、髪留めってピンクだって水色だっけとか思って確認するためにわざわざ部屋まで行ったのは内緒。
凄まじい爆発音が地下街に響く。
時を止めて空を飛ぶと、爆発した先を見やった。
そこには巨大な石像があった。弾幕ごっこには相応しくない、無理矢理な石像である。地下街のタイルや、その辺の支柱のコンクリートなどを石像になるように組み立てているだけのようであった。
「……アイツね」
そこには先ほどのゴスロリ女がいた。
優雅に立っているが、ボロボロ過ぎて美しさに欠けている。
そんな女の前に連なった
「とはいえ、時を止めてるとわからないわね。魔力の流れもここまで大規模だと、軽くは読めると思うんだけど……」
私が魔法に少しでも詳しければ、これくらい原理を理解できていたのだろうか。
私は女の前まで降りると、その頭をポンと叩いた。
「誰だ?お前は。何だ?これは」
「私は十六夜咲夜と申しますわ。貴女のお名前は?」
「________チッ。シェリー=クロムウェルと名乗っているが、魔法名を聞きたいのか?」
舌打ちの理由はわからないが、特に抵抗をすることもなく、彼女はそう名乗った。
「いえ。魔法名に興味はありませんもの。それでは今後はシェリーとお呼びさせていただきます。では、御機嫌よう」
一瞬時を動かし、また時を止めればシェリーも再びセピア色に染まる。
なんとなく名前と性格を知りたかっただけだ。相手との交流っていうはとても愉快なものであると、彼女たちが教えてくれたのである。
さて、これからどうしようか。
いつものように当麻がやればいい話だが、私がチャチャッと片付けるのも楽しそうだ。
最近思うのが、ここの当麻は幻想郷でいう霊夢なのではないかということ。霊夢は博麗の巫女だから当たり前だけどたくさんの異変を解決していることが一つと、ありとあらゆる人を集める人望の持ち主であることも一つ。魔理沙も私もお嬢様も妹様もみ〜んな霊夢に惹かれてしまうのだ。そうでなければ、博麗神社の宴会があんなに大規模になる理由がない。
当麻もそうだ。いろんなことを拳一つで解決してきたし、周りからも好かれている。
あの分け隔てない性格が二人のもつ武器で、多くの人を引き寄せる秘密なのだろう。
________けど、霊夢だって全て自分一人で異変を解決したわけじゃない。
魔理沙だって、私だって、異変に干渉はする。
当麻と一緒に乗り込んだこともあったけど、私が解決してみるっていうのもいいんじゃない……?
そう考えれたけれど、私はふと。なぜか風斬氷華を思い出す。
誰かもさえ知らない少女だけのはずなのに私はなぜか気になった。なぜインデックスと当麻と共にいたのか。
その時私は思い出したのだ。彼女のオーラを。彼女はまるで何かの集合体のようだった気がした。気にも留めなかった自分に疑問を抱くぐらいには彼女はおかしかった。
ふと私は考えて________彼女の元へと飛んだ。
彼女は先ほど皆でいた場所にいた。
あれからなにがどうなったのかは知らないが、当麻は瞬間移動ができないから恐らくあの爆音を聞いて行ったのだろう。
あとで探しておくかと、私は風斬氷華に触れた。
「はぇ……?さくや……さんです、か?」
おどおどした彼女は、そう言ってからびっくりしたように、慌てて辺りを見渡している。
「あ、あの、こ、これは?まるで、写真の世界に入り込んだかのような……」
「ああ、これは能力よ。時間を操るのが私の能力なの。
いつもと変わらないセピア色の世界だが、他の人から見れば珍しいのだという。
……が、たかが色のないセピア色の世界。まあ私ならこの世界でも細かい色まで理解できるが。
「な、なんですかそんなにジロジロみて……」
「あら、気に食わなかった?ちょっと疑問に思っただけよ、インデックスや当麻と一緒にいたから。それも、インデックスとは随分と親しそうだし」
「そ、それは……。あ、あの、その制服常盤台中学ですよね?」
……話題をすり替えられた。
そんなに触れられたくない話題なのかは知らないが、大方当麻がやらかしたのだ。勘でしかないが。
「そうだけど……って、この姿で防犯カメラはちょっと不味いか」
もうかなり遅いかもしれないが、メイド服に着替えるに越したことはない。
もう一度彼女の時を止めて、地下街を飛び回り、やっと見つけた手芸店で布やら糸を
寸法はもう頭に入っているし、もう何度も作っているので簡単に作成出来るのである。
そして、彼女の元へと帰った。
「ねぇ、氷華って呼んでいい?」
「ふえっ!?も、もちろんです!」
いつまでもフルネーム呼びをするのも、彼女とつけるのも、面倒になったという話である。
……ってやっていたら、本題をすっかり忘れていた。
というのも、こうして氷華を頭のてっぺんからつま先まで見ても、これといった違和感を今ひとつ感じ取れないのである。
集合体であることはわかる。そんなことを言って仕舞えばなんでもも集合体じゃないかという話になってしまうのだが、彼女の集合体はそういう意味ではない。
何か……何かが違うのだ。
「ねぇ、氷華」
「は、はい」
「あなたはどこから来たの?」
「えっ……と……」
氷華は少しきょとんとしてから、下を向いてしまった。
「わかり……ません」
彼女の長い茶色い髪と、水色の髪飾りがよく見えた。
「……じゃあ、あなたの家族は?」
「わ……わかり、ません」
学園都市にはどうしてきたのか。
今まで当麻たち以外でどんな人と知り合ったのか。
今日以外のあなたの思い出はなにか。
大切な人はだれか。
得意な教科はなにか。
好きなスポーツはなにか。
なんの本が好きか。
氷華にまつわる思い出の何を聞いても、彼女は『わからない』としか言わない。
逆に言えば、常盤台中学のことも、学校には給食があることも、地球は回っていることも、氷華の思い出じゃないことは、全て知っていた。
私は風斬氷華が、一瞬。
思い出を失った上条当麻と、重なって見えた。
しかし重なって見えただけで、細部は異なっていた。
氷華が思い出がないと気づかなかったに対し、当麻は思い出がなにかで消えたことを知っている。
全ては記憶にあり、感覚ではない氷華に対し、感覚を掴んで美琴の超電撃砲すら受け止められる当麻。
そう。違うのだ。
過去があるのと、過去がないのは大きな違いだった。
きっと当麻なら、さっきの魔術師が放った魔術に過去の自分に引っ張られるように。インデックスを助けたように、立ち向かっていくだろう。彼はいつだってそうだ。
氷華がそんな場面に出くわしたら?逃げることすらしないかもしれない。何も知らない彼女は、危険が知識でしかない彼女は、感覚がないままふらふらと……そのまま、殺されることだってあるかもしれない。
私が思考を巡らせている間、氷華も同じように自分について考えていたのかもしれない。
「わ、わ、わ、わた……し……は……」
顔が青ざめている。
「わた、しは……いったい……いったい、」
私だってわからないと、彼女を見ることしかできなかった。
3000弱です。私にしては多い。
かなり期間があいてしまいました。
今回はテスト期間だということと、戦闘シーンと風斬氷華の伏線作りをあれこれ考えてたっていうのも理由ですかね……
できることなら毎日更新したい!!この文字数だからきっとやればできる!!
しかし、口で言うのは簡単なのです……毎日書いたらすごい勢いでやる気が削がれる気がします……
のんびり更新ですが、今後ともよろしくお願いします!