「えっやだ!私も一緒に行く!」
「無理」
「行くったら行くもん!」
「だから無理だって」
闇咲がどうしても救いたかったという女性の呪いを解くなら、当麻は外に出る必要がある。
ってことで、この学園都市を抜け出すことになったのだが、それにインデックスもついて行くと言って聞かないかった。
一応言っておくが学園都市はそう簡単に抜け出せないような場所である。この前海へ行けたのが本当に異例だったのだ。
当麻に助けを求めるような目で見られ、私は一つため息を吐いた。
時を止めて、当麻と闇咲を掴む。そのまま空を飛んで、学園都市の外で降ろすとまたインデックスの前まで戻って時を動かした。するとあら不思議。インデックスからすれば目の前から当麻と闇咲だけが消え去り、私には当麻からの感謝のメールが届くのであった。
もちろんインデックスは叫ぶ。
「あーーっ!」
「私は何もしてないわよ?」
「こんなの咲夜にしか出来ないもん」
ぶー、と口を尖らすインデックスに、私は遅い夕飯を作る。
「お腹、空いたでしょ?」
「でもとうま……」
「大丈夫、当麻にはおむすびを持たせておいたわ」
「おむすびって、最近はあまり言わないんじゃ?」
「いいのよ。おむすびで」
当麻におむすびをもたせたということは嘘だが、なんとなく納得してくれたのでよしとする。
でもまあ、キッチンにあるこのカップラーメンを見る限り、軽く食事は採ったようだった。
「じゃあ、インデックスは何食べたいかしら。鮭のおむすび?それとも、梅干しかしら?」
「なんでもいいよ、咲夜の好きなもの」
ふむ、と私は考えて、タラコにすることにした。24時間営業のスーパーで、最後の一個ではあったけど。
他にもたくさん食べるインデックスのためにミートボールやサラダ、スパゲティなどの材料も買ってきた。
「タラコ?」
「ええ。前住んでいたところは山奥だったから、海産物は貴重だったのよ」
「ふぅん……」
「けど、これっぽっちじゃつまらないでしょう?鮭フレークっていうのも買ってきたわ」
時を止めて時間短縮はしているとはいえ、私が買い物をしている間方向音痴なインデックスが家から出ないか心配ではあった。けど、彼女も彼女で当麻を追いかけるのは無謀だと感じているらしく、そんなことはなかったのでとりあえず安心である。
「明日は始業式だし、当麻もそれまでには帰ってくるわよ。これから、どうする?」
「……ねぇ、咲夜」
「なに?」
「やっぱり、私も行きたいんだよ」
「……好きにしなさい。……って言いたいところだけど、今は我慢しておくことね。私だって当麻がどこに行ったのか知っているわけじゃないし、インデックスにはなおさら行かせられないわ」
「……」
すると彼女は突然箸を置いた。
「じゃあ、いらない。咲夜が作ってくれたのは嬉しいけど、とうまが帰ってくるまで待つ」
思わず私は驚いたが、おむすびをとろうと皿に手を伸ばして触れた。
たったそれだけの動作で、料理がセピア色に変わる。
「!」
「!」
インデックスがツンツンとつつくが、おむすびに指が沈むことはなかった。
そう。それはつまり、食べ物の時が止まったことを意味をしていて。
私は他の食器にも触れる。さっきと同じように、セピア色に染まった。
「……これって」
完全に食品の時間が止まった。
これでなにか入れ物に入れておけば、ホコリを被る心配はないだろうし、暖かいまま保存できるのだろう。
「す、すごいよ咲夜っ」
「魔術にこういうのはないの?」
「似たようなのはあるけど、条件が割りに合わないんだよ。ましては食品になんて、考える魔術師はいないもん」
私は試しに世界の時も止めて、また戻してみた。
セピア色はセピア色のままだった。
そう。周辺の【時】を止めたり動かしたりしても、食品の【時】はそれに影響されなかったのだ。
「……これで、当麻に残しておいてあげられるわね」
「うんっ」
彼が帰ってきたのは、早朝のこと。
これ以上だと許可を取った分を軽く超えると思った私は再び寮監に延長してもらいに行ったので、私はそのままインデックスとともに眠ることになった。
当麻が心配で眠れないというようなことを言っていたインデックスだが、まあそれなりには寝たようだった。
人が気持ちよく寝ているところをフラフラと帰ってきて、
「なんだこのメシ!?」
「わっ、とうま、帰ってきてまずそれ!?」
セピア色の食事を見て驚いていた当麻が印象的だった。
そのあと、普通に寝ていた私にも驚かれた。
ちなみにこの能力はもちろん当麻の幻想殺しか私が触れることで解除されるというなんというか、結構の普通能力であることが発覚したのだった。
ちょっと短い……けどこれ以上長くなんて出来ない……