「当麻、あなたは今すぐ刀夜さんをつれてここから去りなさい。彼を死なせてもいいというのなら別だけど。私、容赦はしないつもりなのよ」
当麻は最初は躊躇ったものの、決心したのかその場を去った。
私は火織と目を見合わせる。
「私がミーシャの気を引く」
「そこを私が、
ミーシャは水翼を広げた。
火織が長い長い刀に手をかけ、私はナイフを構える。
本来は十字教徒である火織はその上位である天使に勝つことなど不可能だ。
「メイド秘技「殺人ドール」」
しかし、火織はただの十字教徒ではない。
多角宗教融合型十字教術式・天草式十字凄教。
弾圧が厳しかった時代に、吉利支丹たちが日本の文化と融合させながら作った、一種の宗教と化しているそれは、ただの十字教ではない。
神道も仏教も混合させた、そんな宗教。
チャキリ。
と、ミーシャがこちらを向いた瞬間に火織が軽く刀を抜く。
特に神道は、世の宗教で唯一と言っていいほど神が多い。
守谷には二人の神がいるし、秋の神や厄紙、死神もいる。人里の貸本屋には、神霊が漂っているとも霊夢に聞いたし、この目で見た。
バサリ、と火織がミーシャの水翼を切り落とす。
信じられていなくとも、誰もこの目で確認しなくとも、きちんと札やお守りといったものたちは後世まで受け継がれているのだ。
特に札なんて、妖怪や神を封じるアイテムである。
「……ブレイク、ね。空虚「インフレーションスクウェア」」
再び襲いかかるナイフに、ミーシャが再びこちらを見た。
今度こそ、といわんばかりに火織がもう一度____
「七閃!」
今度は、水翼が全て切り落とされた。
汗がダラダラと吹き出している。
火織は弾幕ごっこ向きではない一発勝負タイプ。本来、持久戦は向いていなかったりする。
ちなみに先ほどから何度か向こうの反撃があったりしたが、火織は切り落とし、私も私で避けたりしていた。
「は、アアっ!」
けど、火織は一向に『唯閃』を使おうとしない。
そう、私は本気の二枚目のスペルが今切れ、続いてラストスペルに移ろうとしているのに。
「火織?」
彼女はダラダラと汗を垂らし、服や髪をビショビショに濡らしながらも決めようとしない。
「あなた、まさか。
この天使を救おうっていうの?」
私はこの天使に興味はない。
十字教でもなければ、同じ人間でもない、友達でもない。
この、神裂火織も
向こうが殺す気でも、絶対にこちらは殺さないと言っているようだった。
「さ、くや。私____は。ずっ、と、疑問……ハァっ!……でした。な、ぜ、あなた……は、フッ!そこ、まで冷めているの、かと!なぜ、そこまで……人に、関心がないの、かとっ!」
火織は続ける。
私は思わず、弾幕を放つのをやめて火織の前へと回った。
ナイフで応戦すると、火織が動きを止めた。
「こうして、私と仲良くなってくれたというのに、あなたはいつもどこか遠い。上条当麻や
「……あなたには関係ないでしょう。私にとって、火織も当麻もインデックスも、そして学園都市の知り合いたちももちろんいい仲間よ。けど、命を削ってまで守る対象ではない」
火織はもう何も言わなかった。
ただ、彼女は飛びあがって……新たに生えた水翼を再び切り始めた。
……あれ?元春は?
「ありがとうございました」
「もうこんな無理はしないように。それから、彼のことだけど__」
「大丈夫です、だって彼ですから」
大丈夫だと言ったのに巻かれた包帯の腕をチラリと見て、私はため息を吐いた。
今回は当麻とどこかにいっていた元春と刀夜で何かあったようだけど、残念ながらそこには立ち会えなかった。
結構火織と共闘したvsミーシャは大変で一応三針の怪我までしてしまったし(三針というのは目安で学園都市では縫うことはあまりない)、体力というより霊力もほとんど尽きてしまうほどだった。
こういう時、規格外の大技を繰り出す霊夢やあんなぶっといレーザー何発も打てる魔理沙が羨ましい。
私はとある病室へと入った。
「ゼッタイ、許さない!とうまの頭骨をカミクダク!」
そこでは、インデックスがとうまの頭に噛み付いていた。
私はそれでなぜか安心し、あの日からかけっぱなしだったもう効力がほとんどなくなった意味のないあの能力をそっと解いた。
「インデックス、クッキー食べる?」
終わりっぽいですが、あとまだ1話作る予定でございます!
地味に長引いたな、これ。最初か書かないかも〜とか言ってたのにな。
咲夜さんの怪我ですが、これは能力が効かなくなっていることを表しています。
能力が使えなくなったのではなく、かけ直した能力がボロボロになるまで戦って、もうほとんど効き目なんてないのにずっとかけたままだったんですね。
なので、怪我も三針と天使と戦った割には少ないんじゃないでしょうか。
では4巻ももうじきラストです!ごゆるりとお楽しみくださいませ。