とあるメイドの学園都市   作:春月 望

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当麻さんサイドもあります。


時を止め続ける話

とりあえず私は止まっているミーシャ=クロイツェフを動かすことにした。

 

直に触らないように分厚い皮手袋をして、ちょっと奇抜な彼女のマントを掴むとそのまま浮く。

 

「……咲夜ってすごい力もちなんだにゃー……」

「私がメイドをさせていただいてるお屋敷じゃ、男性は一人もいないからね」

「この前咲夜って、インデックスを抱えて飛べないみたいなこと言ってなかったっけ?」

「それはそれ、これはこれ。それにそんなこと一言も言ってないわよ」」

 

あれはどちらかといえば、ただ面倒くさかっただけである。

 

「どうする?こうやって一人一人送るか、それとも全員で歩いていくか」

「歩いて行った方が楽だろうし、歩きでいい……っていうか、タクシーで全然構わないんだが」

「そ。なら、歩いていきましょうか」

「……咲夜」

「なに?」

「ミーシャ=クロイツェフは動かさないのですか?」

 

ちらり、と火織がミーシャをみて、私へと視線を戻す。

 

「動かした方がいい?……面倒だし、空を飛べるって教えてないから動かしてないんだけど」

「咲夜がいいのなら構いませんが、その場合ミーシャ=クロイツェフとの連携がうまくとれなくなるのでは」

「……それもそうね。ほぼ単独で乗り込んでいた私には考えられない選択だわ」

 

勢いよく降下しミーシャをさっきと同じように立たせると、手袋をとって、彼女に触れた。

ぱっと彼女は色を取り戻してセピア色の世界に驚いている。

 

「…………!?問一。ここはどこか」

「私が時を止めた世界よ。このまま歩いて当麻の家へ向かおうと思うんだけど、異論はない?」

「回答一。ない……が」

「なに?」

「問二。この仕組みがわからない」

「仕組みもなにもないわ。一応これは能力、だし……私もいまいち仕組みとかわからないもの」

 

それから今後のために簡単に私が空を飛べることを教えながら当麻の家前まで歩いた。

地図がないと不安とのことで、その辺のコンビニからお借りしたりしながら包囲網の寸前まで辿りつくと、そのまま一時間分くらい休憩。

当麻には何度か体力を心配されたが、これぐらいお茶の子さいさいである。

 

「……咲夜、本当にこれ大丈夫なのか?」

「だって疲れてるでしょう?私は疲れてるなんて常識、信じてないけどね」

 

こちらの常識は私たちの非常識。これは学園都市とその外でも通じることだったりする。

 

例えば、学園都市では出たゴミを道路に捨てるなんて普通のことで、わざわざゴミ箱を探す人なんていない。理由は簡単で、学園都市には掃除ロボットがいるから。ゴミを捨てればロボットがやってきて回収してくれるのである。

しかし外では違うらしい。ゴミはゴミ箱、学園都市と違って至る所にゴミ箱が設置してある。ちなみに学園都市には、外にゴミ箱の概念はない。道路に捨てるなんてマナーのなっていないことで、非難されることなんだとか。

それが幻想郷になると、またまた違う。ゴミが出たらそれは霊弾などによって一瞬で塵にしてしまうのが私たちの常識である。霊夢ならまとめて札で消滅、魔理沙なら八卦炉で焼き尽くし、竹林の妹紅ならそのまま炎で炙るのだろう。

 

「いや……けど疲れるんじゃあ……」

「これっぽっちで疲れるわけないでしょう。当麻の中の私はどれだけ貧弱なのよ……」

 

そんな会話を確か五回くらいしただろうか。

元春たちは能力を行使する私に対し、なにも言わなかったがどちらかといえばそちらの方が嬉しい。

そもそも自らの時を止めたままここまで生活しているのだ、その質問は野暮である。

 

「……どうします?このまま行きますか?」

 

頃合いを見計らったのか、火織が不意に口を開く。

私たちはこくりと頷いて、上条宅へと足を進めた。

 

「ケイサツ?が多いわね」

「警察、な」

「あまりに多すぎる。咲夜は時を止めずにどれくらい戦えるかにゃー?」

「そうね、だいたいは大丈夫よ。というか火野を捕まえてくればいいんでしょう?それくらい出来るわよ、別に」

 

私は空へと飛び上がりベランダの窓を蹴破ると、一人一人そこまで運んだ。

バリーンという音がし、私の触れた窓が砕け散った。

 

「入りましょう。手分けして探した方が早いわ。ちなみに当麻は見つけても右手で絶対に触らないこと」

 

当麻は頷き、一番に家へと入っていった。

全員が入ったのを確認すると、私も突入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

__火野は随分あっさりと見つかった。

 

手錠をし、足も結びつけた状態で私が触れれば、火野はもちろん動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 当麻

 

 

 

咲夜の時を止めた世界での休憩中、少しだけ土御門と話したことがある。

 

『魔術師は戦闘に関してはド素人なんだぜよ』

 

彼はそう言った。

魔術師は訓練を積み重ねた特殊部隊じゃない、自分の私情で動いてるんだと。

 

「ウソだろ?」

 

じゃあ、あのアウレオルスやステイルはなんなのか。

土御門はそれは核ミサイルの発射ボタンを子供に握らせているようなものだと平然と答えた。

 

「だからこそ、十六夜咲夜は異常なんだぜい。あんなの普通おかしい。戦闘慣れしてるなんて、魔術師じゃ普通はありえない」

「咲夜は魔術師じゃないだろ」

「超能力者なら理屈ってモンがある。空間移動だったら十一次元があるようにな。けど、咲夜は超能力じゃなくて能力って言ってるだろ?」

 

確かにそうだ、咲夜は自分の能力を超能力とはほとんど言わない。それに自分の能力の仕組みもよくわからないと__

 

「だから、異常なんだぜい。能力は存在するのに、理屈がない。カミやん、十六夜咲夜は……なんなんだ?」

 

土御門は咲夜をフルネームで呼びながら聞いてくる。

 

「まあ、咲夜はちょっとおかしいと思う。常識が抜けてるし、こんな俺なんかと友人やってくれてる。けど、あいつは……咲夜は、土御門(おまえ)が思ってるようなやつじゃない」

「……けど、十六夜咲夜には気をつけるに限るぜ、カミやん。きっと彼女には巨大なバックがついてる」

 

土御門はそういって、神裂火織の方へと歩いていった。

 

 




週末とか言ったやつは誰だ。私だ。
ってことで、最新話です。

咲夜さんハイスペック。

土御門は洞察力が優れているイメージ。
ただ、バックがお嬢様なのかそれ以外の誰かなのかはわかっていない様子。

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