「なー、咲夜」
魔術師たちの会話のきりのいいところで中へと戻った私に当麻はいきなり話しかけてきた。
「……火野神作って知ってるか?」
「……誰それ?」
当麻に軽く話を聞くと、彼は刑務所を脱獄した脱獄犯であるらしい。そしてまた二重人格の疑いがあるとかなんとか。
「さっきまでニュースで言ってたんだよ」
テレビに目をやると、そこにはダイエットパワーを紹介するバラエティ番組がやっている。一応懐中時計を取り出して時間を見ると、三九分……
当麻は苦笑いをした。
「あんま見てて気持ちがいい内容じゃなくてさ」
「……そ。二重人格、ねぇ……」
私は学園都市に転入した扱いだ。
そのため、一応一年から今までの授業範囲は丸暗記しているのだが、その中に、何個か多重人格の項があった気がする。
……経緯としては、初めて訪れた際に『では、この教科書の内容の暗唱をお願いします』などと言われ、慌てて時を止めて暗記し、暗唱を行った。一年の教科書丸暗記、と言われたのでとても時間を使った(止めてるけど)記憶がある。
「でも、あれって完全に分かれないこともあるんじゃないの?」
「いやまあ、そうなんだよな」
当麻もぽりぽりと頬をかく。
「ェンゼルさま、エンゼルさま」
ぼそり、と小さな声と、何かの視線を感じて私は時を止めた。
見つけたのは、床の板の隙間。そこから感じる、目線……
私は当麻の服の裾を掴み、外へと連れ出した。
「だけど……ってうわぁっ!?」
「シッ」
私が勢いよくナイフを取り出し、スレスレで構えると当麻はうっとおし黙る。
「……よくやりました、咲夜」
と、視界の端っこで逃げていく人影をちらりと見やってから、火織を目線を戻した。
「褒められてもあまり嬉しくないのだけど。そして、あそこの彼女は?」
「ああ、あれは敵ではなく、ロシア成教の『
ふぅん、と私は頷く。
ロシア成教は『幽霊狩り』に特化しており、
ちなみにイギリス清教は『魔女狩り』。パチュリー様も、それに関しての文書はいくらか持っているのだが、あの頃のイギリスの魔女は自分も守れない愚か者ばかりだったのだとか。ちなみにだからと言って、パチュリー様はイギリス清教を嫌っているということはない。
私がそちらを見ていると、高速で____
「問一。『
ノコギリを当麻に、よくわからない刃物を私に向けて彼女はそう言い放つ。
「どちらでもないわ。そもそも私たちは能力者だもの」
当麻は動揺しているようだったが、私はそれ以上動くことなく言葉を返した。
「では、問二。起こしていないという証拠はあるか」
「ないわよそんなもの。そうねぇ、せめていえば、魔術の痕跡がないんじゃないかしら?」
火織は軽く溜息を吐いて、必要悪の教会の公式見解を述べ始めた。
「幻想殺し……」
ぼそり、その見解を聞いたミーシャ=クロイツェフが口を開き、次の瞬間水の魔術を展開した。そのうちの一つが当麻に襲いかかる。
当麻は瞬時に右手でカバーし、その魔術は消えていくいった。
そして今度は、私に向かってナイフを投げてきた。私はだいたいの流れを察し、避けることなくそのナイフを身体にあてた。
当然、ナイフは私の能力により、跳ね返って落ちた。
「正当。イギリス清教の見解と今の実験結果には符号するものがある。この解を容疑撤回の証明手段として認める。誤った解のために刃を向けた事をここに謝罪する。__我が名はミーシャ=クロイツェフだ」
「私は十六夜咲夜よ」
どうやら認めてくれたらしい。
先ほどの説明において、パチュリー様のことは言っていなかったため、これで済んだのだろうか。
「問三。では、誰が『御天落し』を実行したのか。誰か心当たりはあるか?」
……と、いうと……
私は先ほど、床から聞こえた声を真っ先に思い出した。
『エンゼルさま』と言っていたことから、なんとなく天使と関係のある気も……
「な、なあこれって特撮ヒーローの撮影かなにかか?」
私たちが一斉に声のした方をみると、声の主はびくりと体を震わせた。
ミサカか、と私は若干安堵の息を漏らす。
「『人払い』は二階に仕掛けていたのですが……」
申し訳なさそうに小さく火織はそういったが、ミサカには聞こえていないようである。
「それに、さっき逃げるように逆に方向へと走っていたのだって、刑務所脱走した火野だろ?」
火野……火野神作か、と私は後ろ姿した見ていない姿を思い浮かべた。
顔はわからないが、どんな顔をしているのだろうか。人殺しをし過ぎておかしくなった人種はみていて面白いのだ。
「お前、あいつが火野神作に見えたのか?」
「それ以外誰に見えるよ?」
ふむ、どうやらミサカは逃げていった人物の顔まで見ているらしい。
ここで、私はん?と疑問を持った。
「ってことは、入れ替わってない?」
当麻から見ても、ミサカから見ても、火野神作だと言うのなら……
それは、火野神作が上条刀夜と同じで入れ替わっていないということ。
ただ、上条刀夜は入れ替わってはいないものの、入れ替わりを把握していない。そのため、全く同じとはまだ言えなかったりする。そもそも火野神作が入れ替わりを把握してるのかも、まだ少し危うい。
当麻もハッとして魔術師たちに説明すると彼らの顔がみるみる強張っていく。
「問四。……先ほどの、逃走した方か」
ミーシャ=クロイツェフは火野神作の走り去った方を睨みつけた。走り出そうとする彼女を火織は手を引いて止めた。
「待ちなさい。同じ獲物を狙うのならば、一緒に行動を共にしませんか?」
「問五。それに対する私のメリットはあるか」
「……逆に聞くけど、あなた素人でしょ?そんなんじゃ人はうまく殺せない。所詮、幽霊狩りってこと。それなら、ナイフの扱いに慣れた私や、魔女狩りのイギリス清教をガイドにつけてもいいと思うのだけど」
私はそう述べてミーシャ=クロイツェフの耳スレスレにナイフを投げ、髪を一本だけ切断した。
「……、賢答。その問いかけに感謝する」
ミーシャは最初に提案した火織に手を差し出して握手をすると、今度は私に手を差し出してきて、一応握り返した。
「で、なんだ。これから追いかけっこでもするのか?」
「いえ、向こうは天使を手中に収めているかもしれませんのでそれは得策ではないと言えるでしょう」
「あと、当麻がまた狙われる可能性も捨てきれないわ。あなたは幻想殺し以外は普通の人間なんだから、警護した方がいいかも」
「はっ!?警護」
当麻は嫌そうな顔をするが、事実幻想殺しがなければ、彼が一番弱いのだ。
もしかしたら、相手は幻想殺しを知って魔術を利用しないということも十分に考えられるのだから。
それを踏まえて火織がテキパキと簡単なスケジュールを立てる。
ミーシャ=クロイツェフと協議後、当麻の警護という単純なものではあるが。
「では、協議の結果はあとでまた説明致します。あなたたちは部屋へ____」
時を止め、当麻を廊下へと落とす。
「____戻るわけないじゃない。こんなに楽しそうなことから逃げるような人間じゃないわよ。上条当麻は返したわ」
元春と火織は、どこか諦めたような、納得したかのような顔を少なからずしていたが、ミーシャ=クロイツェフは私に問を向けた。
「問六。ずっと気になってはいたが、十六夜咲夜は____」
「____魔術師ではないけど、裏の人間かしらね。なんせ、能力者ですから」
私は自分でも胡散臭いんだろうなぁ、なんて思いながらゆっくり微笑んだ。
は、初3000越えかもしれません!
ここの刀夜さんは……多分やってません。
やってたとしても、今から当麻さんが止めにいきます。
なので当麻さんは……寝れるのでしょうか、寝れないのでしょうか。
咲夜さんはきっと、時を止めて寝ちゃうんでしょうけどね!
咲夜さんの学校での立ち位置
「御坂さんとよく一緒にいる」
「一人でいるときもある」
「分け隔てなく人と接する銀髪美女」
「メイドって噂を聞いた。どこ!?」
「時間操作っていう珍しい能力持ってるらしい」
「紅茶淹れるの上手」
「姿勢がキレイ。私もバレエやってるのに!」
「成績もいいし、頭もいいし、性格もいい」
咲夜さんは外面いいイメージです。
人里とかで、「すみません、お豆腐お願いできますか?(ニッコリ」とかしてそう。
(ただし異変では人が変わるっと)
丸い咲夜さん書きたいなぁ。うちの咲夜さんはツンツンしてる。
追記・ミーシャが名乗ってなかった。