彼の周りを高速で回る金たち。
まるで竜巻のようなそれはとても幻想的で。けれど、見れば見るだけ闘志が燃やされていく感覚がする。
私は誰にも気づかれないように、はあっ、と大きく息を吸った。
「……あなたの歪んだ感情が出過ぎているわ」
金属たちはどろどろに溶け、広がっていく。
「__っ」
瞬間、黄金の鏃が目の前を突き抜けた。
霊夢ほどではないが、それなりに勘のはたらく私はなんとか避けると態勢を整える。
「やるな」
歪んだ笑みを浮かべる彼に、軽く鋭い目線を送ると霊力でナイフを生み出した。
無論、銀のナイフより殺傷能力は低いというか、無に等しい。
けれど、彼はおそらく霊力を知らない。存在は知っているかもしれないが、私たちのように軽く扱う人間がいることを知らない。
銀は金属だ。つまり、錬金術の材料にされてしまう場合がある。それなら話は簡単だ、霊力で作ればいい。霊力は錬金の材料に使えないはずだ。
使えたとしても、すぐさま材料とみなすことはできないはず__
「幻象「ルナクロック」」
空間を、ナイフが飛び交う。
アウレオルスは危なげなく、それを避けていった。
「__ダメか」
これは、もっと本気でやった方がいいのだろうか。
本気は本気でも、これは【
また再び、アウレオルスの錬金術が飛ぶ。
「本気とはそんなものなのか?」
「……いえ、ちょっとあなたを甘く見ていたみたい。でも、そうよね。
弾幕を放ちまくる。予定変更だ。
隙間という隙間を埋め、アウレオルスを追い詰めてみる。
「__フッ。それで追い詰められるとでも思っているのか?」
突如、再び放たれた黄金の鏃。
視界を埋めるほどの弾幕で、私の場所を今ひとつつかめなかったのか__
それは、姫神秋沙に向かって進んでいった。
「__っ!」
高速の鏃を、止めることは出来ないのか。咄嗟に考えるが、答えは出てこない。
彼女は、きっと優しい。
お嬢様を殺すような能力を持っていても、きっと。
__時が、遅くなった気がした。
自分以外の時が、半分ぐらい遅くなった気がして__
黄金の鏃は、突如現れた先ほど助けた少女の手に、吸い込まれるように突き刺さった。
「なん……で」
私の放つ弾幕から二人を守っていた当麻が、何かを叫んでいる。
注いだ霊力は一体なんだったの?彼女は何を思って手を出したの?さっきの時点で致命傷には変わりなかった。これ以上傷がついたら、死ぬことなんてわかっていたはずなのに?
__疑問だ。
一瞬にして彼女は、黄金へと変わった。
「__ねぇ、私、何故かイラついているの。__ねぇ、殺して、いい?」
何にイラついているのかわからない。
それは、錬金術師アウレオルス=イザードへの怒りなのかもしれないし、助けたはずの少女が自分の命を守ろうとしなかったことに対してかもしれない。
私の取り出した、銀のナイフ。
たった、100本ほどのナイフ。
錬金術を使えば、すぐに溶かされてしまうような、それを。
四方八方に、投げた。
美しさなんて求めずに、ただ、がむしゃらに己の出せる精一杯のスピードで。
姫神秋沙には、当たらなかった。
アウレオルス=イザードは、太ももをかすっただけだった。
そして、上条当麻は__
「ガッ!?」
__右手で掴んだ。
「こっ、これ……は」
たらりとたれる血を見てアウレオルスが言う。
己を右手を左手で押さえながら、当麻が苦しそうに声をだした。
「銀?」
「知ってるでしょ?吸血鬼が苦手な銀よ。けど、これが私の武器」
殺すことは出来なかったか、と少々落ち込む。最近は戦いの中で人を殺していなかったからだろうか。
私が再びナイフを構えたとき、アウレオルスは鎖を出現させた。
ちょっと物語が進むの早いかもしれない。
規制しなければ。