とあるメイドの学園都市   作:春月 望

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咲夜さんは普通にお金持ちです。
レベルは今の所表示していませんが、まあそれなりですので。
そもそも常盤台ですし、レミリアお嬢様のメイドですからね。
レミリアも、自分のメイドが貧乏生活をして己の名が汚れるのは嫌なのですとかいう独自設定いれてます。

また、エピソードローグ的な何かだと思っていただければ……
魔術成分は含まれておりません。まるで超電撃砲です。これをみて禁書目録だと思う人はいないような内容。


2 姫神秋沙の吸血殺し
ある日の夜


「十六夜、夕食だ」

 

夏休みの宿題である、レポートを焦ることなく暇つぶしにぼちぼち進めていたところ、寮監にいつものように呼び出された。

 

「わかりました」

 

私はキィ……と扉を開け、食堂へと向かう。

 

「あ、咲夜」

「一緒に行きましょう?」

「ええ」

 

美琴と黒子に会うのも、いつものことだ。特に待ち合わせをしているわけではないけど部屋が近いためかよく会う。

そして一緒に食事をとるのがいつもの流れだ。

 

「いただきます」

 

三人で、適当に食事を取って、一緒に食べる。

紅魔館では立場上、時を止めたり他の妖精メイドとともに食べることが多かったが、最近は違う。

紅魔館のメイド長として食事云々を用意するのもいいが、こうして誰かとともに食事をとるのも楽しいものだ。

 

「……どうしたの?」

「なんでもないわ。ちょっとお屋敷のことを思い出しててね」

「ああ、例の咲夜がメイドをやってたっていう?」

「そうよ」

 

二人とも一般よりは裕福な家庭出身のため、食事のマナーは良い方である。

まあ、お嬢様や妹様の洋食に関するマナーには敵わないのだが、かなうとも思っていない。

 

「……ってことは、咲夜って一般家庭?メイドしてる家がいい家柄ってだけで」

「まあそうかしら。一般家庭よりは少し悪い家柄だったかもね」

「え?」

「殺し屋よ」

 

吸血鬼専門の、とは言わないでおいた。

そう、私は本来、吸血鬼を殺す一家だったのだ。

殺しにいった先で、メイドとして拾われた……ただ、それだけの話である。

 

「……嘘ですわよね?」

「嘘じゃないわよ。もう家出しちゃってるし、この名前もお嬢様に頂いたものだから縁切り同然だし」

 

昔の名前は忘れた。

覚える必要もない。

 

「……まあ、いいですわ。今はしてないのなら」

 

黒子はこう言ったが、私は普通に人殺しをしている。今でも。

こっちに来てからはしていないものの、お嬢様と妹様、小悪魔に美鈴は時々人を食らうこともある……って、お嬢様と妹様はしょっちゅうだが。

それにより、私は人殺しは日常的なことへとなっていったのだ。

そもそも、一族がそういう仕事で生活していたのだから抵抗はない。

幻想郷では禁止されているが、幻想郷に来る前だったり人里より出た人なら時々殺して連れて帰るのだ。

 

「……いつものことながら、咲夜食べるの早くない?」

「あら、メイドは早食いが命よ?」

「早食いって……」

 

時を止めれば関係ないが、遅く摂れば摂るだけ自分の睡眠時間が減ったり、仕事が終わらなかったりする。

すると体調を崩したりしてしまうので、私は早食いをして少しでもたくさんお嬢様に奉仕できるよう、努めてきた。

 

「……そうなのかー?」

「ん、土御門」

 

某闇妖怪のような口調の彼女は繚乱家政女学校というメイドを育成する学校の生徒でここ、常盤台中学で研修中らしい。

余談だが繚乱家政女学校はお嬢様が私を入れようか迷った学校であったりする。

 

「そうよ。少しでもご主人様に奉仕しないとね」

「ふうん……でも、私は咲夜ほど有能じゃないからなー。そんなことしたら死んじゃうのだー」

「あら、現在進行形でメイド仕事をする貴女には言われたくないわよ?」

「……私は咲夜が時々こっそり掃除してるのしってるぞー」

 

え?と美琴と黒子が驚いたように私を見た。

 

「なんかね、落ちつかないのよ。ちょっとでも埃が落ちてると。私個人ならなんら問題はないんだけど、一応お嬢様の命で来てるわけだし」

 

私は埃だらけの部屋にお嬢様に押し込まれても、余裕で生活してみせる。

でも、見抜かれてるとは思わなかったわと笑っておいた。

……本心である。さすがに時を止めてやっていたことを見抜かれるとは思わなかった。

 

「じゃあ、私は仕事に戻るからなー」

「ええ、頑張って」

 

私は舞夏に軽く手を振って見送る。

そこで、二人が食べ終わったそうなので消灯まで二人の部屋に遊びに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の部屋は、見る限り特に何もない。

まあ、常盤台(ここ)は校則が厳しいので当たり前と言えば当たり前なのだが。

けど、二人は実は結構校則を破っている。

 

「お姉様、手鏡すぐ出ます?」

「ああ、はい」

「……ほんっと、校則厳しすぎますわよねぇ」

 

今二人がしていること、それはお肌のケアだ。

校則でメイクはもちろん保湿クリームやパック、リップクリームまで禁止されているため、こっそりと持ち込んでこっそりと使っているらしい。

 

「咲夜はいいの?」

「……そういうので悩んだことは特に……」

 

ないけど、と言おうとしたけど言えなかった。

すっごい勢いで黒子に睨まれた。

あ、美琴もちょっと動きが止まった。

そういえば、守谷の巫女がそんなこと言っていた気がする。あの巫女は気にしすぎなのだ。ほら、同じ巫女でも霊夢なんてそんなことしないじゃないか。

 

「ううっ、羨ましいですわ……」

「……ケアをしないと肌が荒れるなんて常識を信じるからよ。信じなければいいの」

「そんなんでどうにかなるならとっくにやってますわ!」

 

私は苦笑して、消灯10分前を迎えたのを機に部屋に戻った。

それから途中のレポートの前に座って__

 

 

「あ。明日本買いに行かないとね」

 

 

足りない本を思い出し、図書館に行くと一週間しか借りれないからと明日の予定は本屋に決めた。




美琴、黒子、当麻、舞夏。
みなさん下の名前で呼んでいるのは、幻想郷で上の名前で呼ぶ人なんてあまりいないのではないかと思ったからです。
なので、あれです。
舞夏のお兄さんのこともおそらく「元春」と呼ぶでしょう。

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