一角獣を駆る少年の物語   作:諸葛ナイト

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少女と少年の過去(上)

「お前がセシリアや鈴に勝てないのは、射撃武器の特性把握しきれてないからだな。多分」

 

「そ、そうなのか?一応分かってるつもりだったんだが……」

 

 もう一人の男であるシャルルが転校してきて五日が経った。

 今日は土曜日。IS学園では土曜日の午前が理論学習、午後は完全に自由時間となっている。

 だが、土曜日はアリーナが全開解放さるためほとんどの生徒は実習に勤しむ。そして、それは翼たちも同じだった。

 

 現在は一夏の模擬戦の結果から戦闘に関する軽いレクチャーをしていた。

 

「うーん、知識として知っているだけって感じかな。結局、僕と戦ったときもほとんど間合いを詰められなかったよね?」

 

「うっ、確かに。瞬時加速(イグニッション・ブースト)も読まれてたしな……」

 

「一夏のISは格闘戦オンリーだから、より深く射撃武器の特性を把握しないと対戦じゃ勝てないよ。特に一夏の瞬間加速って直線的だから反応できなくても軌道予測で攻撃できちゃうからね」

 

「直線的か……あっ、じゃあ––––」

 

 一夏の言うことを予測した翼が割り込み注意をする。

 

「だからって瞬間加速中は曲がること考えるなよ。空気抵抗や圧力で機体に負荷がかかりすぎると最悪の場合骨折するぞ」

 

 一夏は青ざめた顔でこくこくと頷いた。

 

「んじゃ、俺は自分の訓練に戻るから。シャルル、後はいつも通り頼むな」

 

「うん。翼も頑張って」

 

 翼はそれに少し手を振って答え、上空に浮いているセシリアの方に向かう。

 

「悪い。待たせたな」

 

「いえ、構いませんわよ。それではいつも通りに?」

 

「ああ、頼む」

 

 翼は言い雷撃、電撃をそれぞれ展開。戦闘態勢に入る。セシリアもスターライトmkⅢを展開し同じく戦闘態勢に入る。

 

 翼の最近の訓練は一夏の訓練はシャルルに頼み自分は鈴音かセシリアと模擬戦闘をするようになっていた。それは単純に動きに慣れるためである。それは功をそうし、動きには少しずつだが慣れてきた。

 だが、未だに解決していない問題がある。

 

(千冬さんの言葉の意味。それが分からない。昔のIS、撃震や陽炎を調べてもほとんどわからなかった。ただ、唯一分かったことは今のユニコーンと同じく扱いにくそうな機体になったのは陽炎から、ということぐらい……)

 

 翼がシステムチェックをしながら考えているとセシリアから通信が入ってきた。

 

「準備はよろしいですか?」

 

「あ、ああ。大丈夫だ」

 

「それでは始めますわよ」

 

「ああ。そうだな」

 

 翼とセシリアは少し間隔を開けるとどちらが言うまでもなく模擬戦を開始した。

 

◇◇◇

 

「はぁ……はぁ……はぁ。はぁ~」

 

 翼は模擬戦終了後ゆっくりと地面に降りた。

 

「動きにはずいぶん慣れたのではないですか?」

 

 先ほどの模擬戦は翼がなんとか勝利していた。ただ、余裕といった感じではなく半分運で勝てたようなものだった。

 

「どうだろうな。まだ射撃主体だからな。多分、いや確実に鈴が相手だと負けてたな。にしてもセシリアもビットの使い方だいぶ変わったよな。動きがかなり読みにくくなってるぞ」

 

 翼の言う通りセシリアのビットの扱い方はかなり変わっておりビットの動きにランダム性が出てきていた。

 後ろに来たかと思えば前から別のビットから放たれたレーザーが飛んでき、それを回避すると後ろにいたビットがレーザーを放つ。如何に攻撃を与えるかを焦点に置かれた攻撃方法に変化していた。

 

「翼さんにあそこまで完全に動きを読まれて落とされるのは代表候補生としては悔しいですから」

 

「まぁ、それもそうか」

 

「ごめん。遅れた」

 

 セシリアと翼が話しているときにその二人に向かってきたのは鈴音だった。もうすでにISを展開している。

 

「いや、別にいいが。また頼めるか?」

 

「いいわよ。セシリアとはやったの?」

 

「ええ。私が負けましたけど……」

 

 セシリアは少し悔しいといった表情をしている。

 

「んじゃ私が仇を取ってあげる。翼、早速始めるんでしょ?」

 

「ああ、と思ったんだがな」

 

 翼の意識は二人の後ろに向けられている。その方向は少しざわつき始めていた。

 

「ねぇ、ちょっとアレ……」

 

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

 

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど」

 

 そのざわつきの中心にいたのはもう一人の転校生であるラウラ・ボーデヴィッヒ。

 転校以来クラスの誰とも話そうとせず、つるもうともしていない。翼たちも初日からあれだったために話そうとはしていない。

 

「おい」

 

 ISの開放回線(オープンチャンネル)で一夏に向けて声が飛ぶ。一夏はそれに渋々といった態度で答える。

 

「………なんだよ」

 

 その返事を聞くとラウラは言葉を続けながらふわりと飛翔した。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

「イヤだ。理由がねぇよ」

 

「貴様にはなくても私にはある」

 

(まぁ、そりゃそうだよな)

 

 ドイツと千冬、この二つで真っ先に思いつくのは第二回世界大会モンド・グロッソ決勝のことだ。端的に言うと織斑一夏はその日、誘拐された。

 分かったことは組織の犯行ということのみ。そして、その一夏を文字通り飛んで助けたのはISを装備した千冬だった。

 

 もちろん決勝は千冬の不戦敗となり大会二連覇は果たせなかった。

 一夏の誘拐事件は世界には一切公表されることはなかったが独自の情報網から一夏の監禁場所に関する情報を入手していたドイツ軍関係者は大体の内容を把握している。

 

 そして、千冬はそのドイツ軍からの情報によって一夏を助けたという借りがあったため、大会終了後一年間ドイツ軍のIS部隊で教官を務めていた。

 

「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を、貴様の存在を認めない」

 

 ラウラのその声は千冬の教え子ということ以上の感情が込められていることが分かる。その気持ちでさらに千冬の経歴に傷を付けた一夏が憎いのだろう。

 

「また今度な」

 

 去ろうとする一夏にラウラはニヤリと口を吊りあげる。

 

「ふん。ならば、戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

 言うと同時にラウラは漆黒のISを戦闘状態にシフト。左のアンロックユニットに装備されている大型実弾砲、レールガンが火を噴いた。

 

「!!」

 

 一夏は急な攻撃で動けずにいた。だが、一夏の体は衝撃で飛ばされることはなかった。代わりにゴガギンッ!という何かがぶつかり合う音が響いた。

 

「……こんな密集区画で何戦闘始めようとしてんだ。ドイツ人はビールだけじゃなくて頭もホットなのかよ?冷めてるのは料理だけか?」

 

 横合いから割り込んだのは翼だった。翼は大型の楕円形の実体シールドで攻撃を防ぎ右手に雷撃を展開していた。

 

「ふん、そんな急場凌ぎの機体で私の前に立ちふさがるとはな」

 

「未だに量産化の目処が立ってないドイツの第三世代型なんかよりはまともに動けると思うが?」

 

 翼の表情は見えないがおそらくはラウラと同じく涼しい顔をしながら睨んでいることだろう。

 一つのきっかけで戦闘が始まりそうなほどの緊張感。だが、それはアリーナに響いた教師の声で消えた。

 

『そこの生徒!何をやっている!学年とクラス、出席番号を言え!』

 

 おそらくはこの騒ぎを聞きつけ大急ぎで来たのだろう。言う教師の呼吸は少し乱れている。

 

「……ふん。今日は引こう」

 

 さすがに二度も横やりを入れられて興が削がれたらしくラウラはあっさりと戦闘態勢を解除しアリーナゲートに去っていく。

 翼はそれを見て肩の力を抜くように息を一つ吐き言う。

 

「大丈夫か?一夏」

 

「悪い。助かった」

 

 つい数秒前までラウラと対峙していた時の鋭い感じが消えている翼はいつものような声色で続ける。

 

「今日はもうあがるか。気分悪いし、それに四時過ぎてどのみちアリーナの閉館時間だしな。悪いな鈴。模擬戦はまた今度頼めるか?」

 

 翼が鈴音と会話している間に一夏はシャルルに向き訓練で借りていた銃を渡す。

 

「銃サンキュ。色々と参考になった」

 

「それなら良かった」

 

 にっこり微笑みシャルルは銃を受け取る。

 

「えっと……それじゃあ先に着替えて戻ってて」

 

「ん?今日もか」

 

 翼が今日も、と言うようにシャルルはIS実習後の着替えを翼たちと一緒にはしたがらない。というより、一度も一緒に着替えていない。授業の時にも前もって着替えていたりしている。

 

 さらに翼にはわからないことが一つあった。

 

(なんで部屋に戻った途端にぎこちなくなるんだ?実習や授業じゃ普通なんだが……)

 

 例えば少し前、翼がシャワーから上がった時の事だ。

 

「あー、すっきりした。あ、シャワー空いたぞ~」

 

「つ、翼っ。なんで服着てないの!?」

 

「はぁ?着てるだろ。ズボンだけだが……」

 

「う、上も着てよ!そ、それと髪もちゃんと乾かさないとダメだってば!」

 

「まぁまぁ、そう言うなって」

 

「い、言うよ!翼はもうちょっとちゃんとしないとダメだよ!」

 

「別に男同士なんだからいいじゃねぇか。シャルルも気を遣う必要はないぞ」

 

「つ、翼はもっと気を遣わないとダメなんだよ!ああもう、知らないっ!」

 

 ––––というようなことがあった。

 

(まさかシャルルが実は女子だったりとか……。するわけ––––)

 

「ん?いや、まてよ……」

 

(それなら母さんや父さんが気がつかなかったのも頷ける)

 

「まっさか〜」

 

 結局ユニコーンのゴタゴタでシャルルに関しては詳しい調査は行えていない。今日こそはきちんと調べておこうと翼は心に決める。

 

「どうしたのよ。急に」

 

「いや、なんでもない。一夏行くぞ。んじゃ、シャルル先に行ってるな」

 

「う、うん。じゃ、じゃあね」

 

 シャルルは手を振りながらゲートに向かう左を見送った。

 

◇◇◇

 

「しかしまぁ、贅沢だよなぁ」

 

 がらーんとした更衣室で一夏は呟く。ロッカーの数は五十個ほどあり、室内もそれに合わせかなり広めに造られている。

 

「まぁ、これをたった三人で使ってるからなぁ」

 

 更衣室内にあるベンチに座り今日の模擬戦の戦闘データを見ながら翼は言った。

 

「にしても、シャルルってなんで一緒に着替えないんだろうな。部屋でもなんか変なんだろ?」

 

 一夏はふと気付き呟くように聞いた。その隣で翼はISスーツを脱ぎ着替え始めている。

 

「そうなんだよなぁ…………あ。なぁ、一夏」

 

「ん?」

 

「シャルルって本当に男だと思うか?」

 

「はぁ?男だろ。絶対」

 

「でも、ニュースとかじゃあ何も言ってないだろ?まぁそれはまだ調べが付いていないとか圧力がかかってるとか理由はいくつか予想出来るが。俺の母さんや父さんが全く気付かないなんてことはちょっとおかしくないか?」

 

 翼の両親はISの発明者のうちの2人だ。当然、ISに関する最新情報を取り逃がすとは考えにくい。

 

「それは、確かにそうだな……」

 

「今日ぐらいに調べてみるかなって思うんだが」

 

「そんな余裕あんのかよ」

 

「……まぁ、ないな」

 

 と翼と一夏が着替え終わったところでドア越しに声がかけられた。

 

「あのー、岸原君と織斑君、デュノア君はいますかー?」

 

 その声は真耶のものだった。ドア越しのせいか少し語尾が伸びている。

 

「岸原と織斑だけいます」

 

「入っても大丈夫ですかー?まだ着替え中だったりしますかー?」

 

「大丈夫ですよ。二人とも着替えは済んでます」

 

「そうですかー。それじゃあ失礼しますねー」

 

 空気が抜ける音とともに真耶が入ってくる。

 

「デュノア君はどうしたんですか?一緒に実習しているって聞いてましたけど」

 

「まだ、アリーナですよ。多分ピットまで戻ってきてるかもしれませんけど、何か大事な話ならすぐ呼んできますよ」

 

「ああ、いえ、そこまで大事な話でもないですから、二人から伝えておいてください。ええっとですね、今月下旬から大浴場が使えるようになります。時間帯別にすると問題が起きそうなので、男子は週二回の使用日を設けることにしました」

 

「本当ですか!やったな翼!風呂に入れるぞ!」

 

「ああ、そうだな。ありがとうございます」

 

 翼は無意識に真耶の手を握り言う。

 

「そ、そこまで感謝されると少し照れますね。あはは……」

 

「翼?何してるの?」

 

 声が聞こえた方を見るとそこにはシャルルがいた。

 

「シャルルか」

 

「まだ更衣室にいたんだ。それで。なんで先生の手を握ってるの?」

 

「ん?なんでもないが」

 

 翼はシャルルに言われて手を離す。真耶もシャルルに言われて急に恥ずかしくなったのか、手を離されると同時にくるんと翼に背中を向けた。

 

「翼、先に戻ってって言ったよね」

 

「ああ、そうだな。すまん」

 

「喜べシャルル。今月下旬から大浴場が使えるようになるらしいぞ!」

 

 やや興奮気味の一夏を横目にシャルルはタオルで顔を拭き始める。

 

「なんか、不機嫌だな。一夏、なんかしたか?」

 

 翼はシャルルに聞こえないように小声で一夏に聞く。

 

「さぁ、何もしてないはずだが」

 

 一夏は首を少しかしげ答える。

 

「ああ、そういえば織斑君にはもう一件用事があるんです。岸原君は織斑先生が呼んでいたのでちょっと職員室に来てもらえますか?」

 

「わかりました」

 

「んじゃシャルル、ちょっと長引きそうだから先にシャワー使っていいぞ」

 

「うん。わかった」

 

 すぐに返事は返ってきたがシャルルはどこか不機嫌なように翼は感じられた。

 翼はそれを疲れがそう見えているのだろうと結論付け深く追求することはなく一夏、真耶と共に更衣室を出た。

 

◇◇◇

 

「……………。はぁっ……」

 

 ドアを閉め、寮の自室に自分1人だけになったところでシャルルは吐き出すようにため息を漏らした。

 それまで我慢していたせいか無意識に出たそれは思ったよりも深く、シャルル本人が驚くくらいだった。

 

(何をイライラしているんだが……)

 

 さっきの更衣室での自分の態度が今になって恥ずかしい。きっと翼や一夏も面食らっていたに違いないと思うと、ますます落ち込みに拍車がかかる。

 

(……シャワーでもして気分を変えよう)

 

 シャルルはクローゼットから着替えを取り出してシャワールームに向かった。

 

◇◇◇

 

「……」

 

 翼は考え事をしながら廊下を歩いていた。

 千冬に呼ばれた理由はユニコーンの装備が届いたので受け取ってほしいというものだった。どうやら千冬は源治と楓に無理矢理頼まれたらしくかなり面倒くさそうにしていたのが印象的だった。

 

(装備の追加……か。しかも全て遠距離、中距離用の武装。多分俺が今のユニコーンを扱いきていないからか)

 

 おそらく今の翼ではユニコーンの高速近接戦闘は無理だと判断した結果、急遽遠距離武装を送ってきた。と予想することができる。

 だが、翼が考えているのはそこだけではない。

 

(今のユニコーンと激震、陽炎との同じ点が分ったなら違う点を見つけてみろか……)

 

 それは武装と一緒に送られてきたメッセージだ。

 

「違う点ねぇ。今度はOS関係も探ってみるか」

 

 翼は言いながら部屋の扉を開け中に入る。そして気付いた。

 

「シャルルいないのか?」

 

 ルームメイトがいないことに。だが、すぐ横のシャワールームから水音が小さく聞こえる。

 

(シャワー中か。そういやボディーソープ切れてるって言ってたっけ)

 

 翼はシャルルに言われたことを思い出し補充用のボディーソープを棚から取り出す。

 

(困ってるだろうし届けてやるか)

 

 シャワールームは洗面所兼脱衣所とドアで区切られている。ひとまず脱衣所まで持って行ってそこで声をかけよう。翼はそう思いながら脱衣所に入る。

 ちょうどそのタイミングでガチャというドアが開く音がした。おそらくボディーソープがないことに気付き替えを取りに来たのだろう。

 

「ちょうど良かった。これ、替えの––––」

 

「つ、つ、つば……さ………?」

 

「ん……?」

 

 翼はシャルルがシャワーを使いシャルルがボディーソープを取りに来たと思っていた。だが、彼の目の前に現れたのは見知らぬ『女子』だった。

 金髪に紫眼という外見から日本人ではないことは分かる。そのせいか、バストが大きさに関係なく際だって見える。

 

「え、えっとだな、うん……」

 

「きゃあっ!?」

 

 ハッと我に返った女子は胸を隠してシャワールームに慌てながら逃げ込む。

 ドアが閉じられる音で翼もようやく我に返る。

 だが、どちらも絶句し言葉が出てこない。翼はなんとか声を出す。

 

「ぼ、ボディーソープ、ここ置いとくぞ」

 

「う、うん」

 

 会話と言えるのか分からないやりとりをし翼はシャワールームの前に替えのボディーソープを置き洗面所から出た。

 翼はそのまま部屋から出ると一夏の部屋にノックをせずに入る。

 

「ん?翼、どうしたんだよ。ノックもしないで––––」

 

「ダアァァァァァァアアッッ!!」

 

「うおっ!?なんだよ急に叫んで」

 

 翼は一夏の両肩に両手を乗せて焦り気味に言う。

 

「い、一夏。お、お、俺の部屋に知らない金髪女子がいた。し、しかもなんかシャワー使ってすごいくつろいでた」

 

「金髪女子?」

 

「ああ、ちょうどシャルルが髪を解いた感じ……の………」

 

 翼はそこまで言って一つの仮説に行き着いた。

 一夏もそれを察し翼に確認するように聞く。

 

「なぁ、それってまさか………」

 

「ああ、たぶん………」

 

 二人はお互いで確認するためか同時に言う。

 

「あの女子シャルルだな」

 

「その女子シャルルなんじゃ」

 

 しばしの沈黙、互いが互いの言葉の意味を理解するのに数秒かかったためだ。

 

「「………いや、意味わかんねぇよ」」

 

 二人同時に目の前にいる相手に突っ込むが翼は考え込むように黙り込むと言った。

 

「シャルルが女子だったか……。なるほどな、それなら確かにつじつまは合うか」

 

「どういうことだ?」

 

 翼は少し表情をきつくさせ一夏に言う。その表情はさっきまで焦っていた人間には見えない。

 

「それは本人に聞かせてもらうさ」


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