一角獣を駆る少年の物語   作:諸葛ナイト

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三人目の少年?(上)

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「え?そう?ハヅキってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

「私は性能的にミューレイかなぁ。特にスムーズモデル」

 

「あー、あれかー。確かにモノはいいけど、すっごい高いじゃん」

 

 月曜日の朝。翼と一夏が教室に入ると中ではクラスの女子たちが賑やかに談笑していた。

 全員が何かのカタログを手に意見交換をしている。

 

 一夏と翼がそれぞれ自分の席に座ったところで女子が話しかけた。

 

「そういえば織斑君と岸原君のISスーツってどこの?見たことないけど」

 

 翼より先に授業の準備を終えた一夏が先に答える。

 

「えっと、確か特注品なんだよな。どっかのラボが作ったらしいんだよ。もとはイングリッド社のストレートモデルって聞いてる」

 

 翼も準備を終えそれに続くように質問に答える。

 

「俺のは完全新規だな。ユニコーン用のISスーツだ」

 

 ちなみにISスーツは元々女性専用、なので見た目はワンピース水着やレオタードに近い。

 だが、翼と一夏のISスーツはスキューバダイビング用の全身水着のようになっている。理由はデータ収集や考慮のためだ。

 

 また、専用機持ちはパーソナライズを行うとIS展開と同時にスーツも展開される。

 だが、これはエネルギーを消費するため、緊急時以外は使用せず事前にスーツを着てISを展開するのが常である。

 

「でもさ、ISってスーツが無くても動かせるんだろ?なんでわざわざ着る必要があるんだ?」

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。でも、衝撃は消えませんのであしからず」

 

 一夏の疑問にしっかりと答えながら真耶が教室に入ってきた。

 

「山ちゃん詳しい!」

 

「一応先生ですから。って、や、山ちゃん?」

 

「山ぴー見直した!」

 

「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです。えへん。………って、や、山ぴー?」

 

 入学から約二ヶ月立っている現在では真耶には翼が知る限り八つほど愛称がついていた。

 それは慕われているとういう証拠でもあるのだろうと翼が考えている間にも女子と真耶の雑談は続く。

 

「あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと……」

 

「えー、いいじゃんいいじゃん」

 

「まーやんは真面目っ子だなぁ」

 

「ま、まーやんって……」

 

「あれ?マヤマヤの方が良かった?マヤマヤ」

 

「そ、それもちょっと……」

 

「もー、じゃあ前のヤマヤに戻す?」

 

「あ、あれはやめてください!」

 

 そこまで嫌なのか珍しく語尾を強くし真耶は拒絶の意思を示した。

 ゴホンッと咳払いをすることで真耶は続きそうだった雑談を切る。

 

「と、とにかくですね。ちゃんと先生とつけてください。わかりましたか?わかりましたね?」

 

 「はーい」とクラス中から返事が来るが、言っているだけなのは間違いない。これからも真耶のあだ名は増えていくことだろう。

 

「諸君、おはよう」

 

「お、おはようございます!」

 

 ざわざわしていた教室が一瞬で静かになった。

 教室に入ってきたのはこの一組担任の織斑千冬だ。

 とある弟曰く立てば軍人、座れば侍、歩く姿は装甲戦車。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機だがISを使用しての授業になる。各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでの間は学校指定のものを使用するので忘れないようにな。忘れた場合は水着、それもないものは、まぁ、下着で問題ないだろう」

 

(((いや、問題しかないよ!)))

 

 と一夏や翼はもちろん他の女子たちも心の中で突っ込む。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

 そんなことは知る由もなく千冬は真耶に言う。真耶はメガネを拭いていたらしく、少し慌てながら眼鏡をかけ直し千冬と入れ替わりで教壇に立つ。

 

「ええっとですね。今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!」

 

「え…………」

 

 その言葉に女子が固まる。しかし、それも一瞬のこと。

 

「「えええええっ!?」」

 

 真耶のいきなりの転校生紹介でクラス中が一気にざわつく。それもそうだろう。噂好きである彼女たちのその情報網をかいくぐっていきなり転校生が現れたのだから驚きもする。

 

(って、なんでこのクラス?普通は分散させるものじゃないのか?いや、違うな………俺たちがいるからか?)

 

 翼は仮説を立てながら転校生が入ってくるであろう入り口に視線を向ける。

 

「失礼します」

 

「…………」

 

 クラスに入ってきた二人の転校生を見て、ざわめきが冷水をかけたかのようにピタリと止まった。

 

(な、なに……?)

 

 それもそうだろう。なぜならそのうちの一人が男子だったのだから。


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