一角獣を駆る少年の物語   作:諸葛ナイト

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今回は短め。19時くらいにも投稿しますので許してください


決戦前日

「お前のせいだ!」

 

「あなたのせいですわ!」

 

 昼休みに入ってすぐの開口一番、箒は一夏にセシリアは翼に詰め寄り同時に言った。

 

「「なんでだよ……」」

 

 翼と一夏はそれに対し同時に首をかしげる。

 ちなみに箒とセシリアは午前中だけで真耶に注意5回、千冬に3回ほど叩かれている。

 理由はあの転校生と翼や一夏との関係をずっと考えていたためだ。

 

 だが、超が付くほどの唐変木の2人がそれに気がつくわけもない。

 

「まぁ、落ち着けって」

 

「そうそう、話ならメシ食いながら聞くからさ」

 

 揃ってなんとか彼女たちの怒りを鎮めようと言葉をかける。

 こんなことに怒っていた自分がどこか馬鹿らしくなり箒とセシリアは顔を見合わせため息をついた。

 

「ま、まあ翼がそう言うのなら、いいだろう」

 

「そ、そうですわね。行って差し上げないこともなくってよ」

 

◇◇◇

 

「待ってたわよ、翼!」

 

 食堂に入ってすぐにどーん、という文字を後ろに従えるように翼達の前に立ちふさがっていたのは件の転入生、凰鈴音だった。

 

「そこ邪魔になるぞ」

 

「う、うるさいわね。分かってるわよ」

 

 ちなみにその手にはお盆がありラーメンが置いてあった。一夏はそれを指差し指摘する。

 

「麺、のびるぞ」

 

「わ、分かってるわよ」

 

 翼達はそれぞれ料理を取ると適当な席にそれぞれ座った。

 それと同時に一夏が切り出した。

 

「それにしても久しぶりだな。ちょうど丸一年ぶりか? 元気にしてたか?」

 

「んー、まぁ、元気してたわよ。アンタこそ、たまには怪我病気しなさいよ」

 

「どういう希望だよ……。

 それに、鈴、日本にいつ帰ってきたんだ? おばさんは元気にしてるか? いつ代表候補生になったんだ?」

 

 さらに続きそうになった質問攻めに鈴音も流石に答えきれずに声を上げた。

 

「質問ばっかりしないでよ。アンタこそなにIS使ってんのよ。テレビで見たときびっくりしたじゃない」

 

 このまま放っておけば一夏と鈴音の2人で会話がさらに続くだろう。

 当然、一夏に想いを寄せる箒がそれを許すわけがない。咳払いを1つして彼らの間に割って入るように切り出した。

 

「あー、一夏。そろそろどういう関係か聞きたいんだが……」

 

 箒のその視線は鈴音を警戒するように向けられている。

 鈴音もそのことに気がついたらしく苦笑いを浮かべ答えた。

 

「あー、こいつとはただの幼馴染よ」

 

 その言葉を聞き箒の警戒はさらに強くなる。

 幼馴染みが自分以外にいることが予想外だったようで怪訝な表情を浮かべて一夏へと視線を向けた。

 

「えーと、箒が引っ越したのが小四の終わりだろ?

 鈴が来たのが小五の頭で、中二の終わりに国に帰ったから、会うのはちょうど1年ぶりだな」

 

 そこから3人で会話が始まっていたが翼とセシリアは彼らとは幼馴染ではなく、クラスメイトであり友人。

 昔話になどに入れるわけもない。

 

「うーん。なんか蚊帳の外感あるな……」

 

「翼さんともどこか親しそうでしたけど、その、何かありましたの?」

 

「ああ、昨日たまたま会って道案内をしたんだよ」

 

「なるほど。ではなにか特別な関係ではないのですね」

 

 安堵の息を漏らすセシリア。

 翼はその理由を察することもできずに疑問符を浮かべながら箸をすすめていく。

 

 そうして彼らよりも先に昼食を食べ終えた翼は両手を合わせた。

 

「ごちそうさまでした」

 

「速いですわね」

 

「父さん達に呼ばれてるからな。んじゃ」

 

「はい、頑張ってくださいね」

 

 セシリアの言葉を受け取った翼はお盆を持って席から立ちあがる。

 一夏達はまだ思い出話が盛り上がっているらしくまだ話し合っていた。彼はそんな様子を見て食器を片付けて食堂から出た。

 

◇◇◇

 

 昼食を食べた後、翼は自分の両親と共にISの整備室にいた。

 機材の前に立つ源治はすぐさま指示を出す。

 

「よし、翼、ユニコーンを出してくれ」

 

「分かった」

 

 翼は答えると素早くユニコーンを展開させる。

 

「じゃあ早くインストールさせましょうか」

 

 楓は言うとホロキーボードを空中に展開、素早く操作する。数十秒後に全装備のインストール完了させた。

 翼はインストールされた装備を確認していく。

 

「ん? 装備1個増えてる……」

 

 そう呟くと翼はメールになかったその装備を展開。

 

 デザインはかなりシンプルだがどこか機械的な刀だった。柄にはナックルガードのようなものがついている。

 黒い刃は照明の光を鈍く反射していた。

 

「それは【不知火】。私達からのプレゼントよ。大切にしてね」

 

「不知火……」

 

 翼はそれを数回振るい手応えを感じながら2人に問いかける。

 

「ねえ、父さん、母さんこの装備って……」

 

「そうだ。【スタイン】の装備の一つだったものだ」

 

「なんでこれを?」

 

「ユニコーンには近接武装が少ないからな。どうせ武御雷じゃ使えないから持ってきたんだ。

 能力については、知っているな?」

 

「もちろん」

 

 頷く翼に楓は満足そうに再びいつもの笑みを浮かべた。

 

「じゃあ説明はいらないわね。他の装備は放課後に試すんでしょ?」

 

「うん、そうするつもり」

 

 翼はユニコーンの展開を解除させる。

 そして、何かを思い出したように機材を片付け始めている両親に聞く。

 

「あっ、父さん、母さん。少し質問があるんだけど……」

 

「ん? なにかミスがあったかしら?」

 

「あ、いやそれは今のところないけど。

 なんかユニコーンに乗るたびに何ていうか、変な感覚っていうか……。それが強くなってきているような気がするんだよ」

 

 その言葉を聞いた途端、2人の雰囲気が変わった。ような気がしたがすぐにそれは戻った。

 楓は出来る限りいつも通りの笑みを浮かべたまま聞く。

 

「……変な、感覚って?」

 

 翼は言葉を探すように整備室の天井を見上げ、右手首の白いブレスレットに視線を落とす。

 

「えっと……何て言えばいいのかな。何か、別の何かを感じるっていうか。そのせいで動きが微妙にずれてるような気がするんだよ」

 

 源治と楓はISのことに関しては開発者らしく真剣に翼の話を聞いている。少なくとも翼にはその2人はいつも通りに見えていた。

 

「んー、それは多分翼の反応速度にユニコーンがついてこれてないだろう……。

 翼、ユニコーンを貸してくれ少し調整する」

 

「分かった。よろしく」

 

 翼は待機状態でブレスレットになっているユニコーンを源治に渡す。

 そこでちょうど昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

「あー、もう行かなきゃ」

 

「おう、頑張れよ」

 

「寝ちゃだめよ~」

 

「寝たいんだけど、4時間目って千冬先生の授業だからね。まぁ、頑張るよ」

 

 翼は手を振り整備室から出た。

 楓はそれをニコニコしながら見送った後、真剣な表情をして言う。その目には不安の色が感じられた。

 

「……源治さん」

 

「ああ、分かっている。楓手伝ってくれ、ユニコーンにリミッターをかけ直す」

 

 2人の脳裏には最悪な実験の失敗、そして、その結末が浮かんでいた。

 

「ねぇ、源治さん、あの時のようなことは……」

 

「ああ、もう繰り返したくないな」

 

 源治は持っているユニコーンを見ながら呟く。

 

「司さん、皐月さん……」

 

 その目はどこか懐かしみのようなものが感じられた。

 

 そして翌日、生徒玄関廊下に大きく張り出された紙があった。表題はクラス対抗戦日程表。

 翼達一組の初戦の対戦相手は二組であった。

 


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