やんでれ×ユウナっ!   作:れろれーろ

11 / 17
第十一話

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事なんだよ!?アーロン!!」ガタンッ

 

 

 

薄暗い照明。並んだ酒瓶がカウンターでぼんやりと光っている。

 

ダンッと机に叩き付けた拳。衝撃で飛び上がるのは、安っぽい味のするモヒートを注いだジョッキ。

 

モンスターの襲撃を切り抜けて、街まで帰って来た俺達は、そのまま場末のバーに身を隠していた。

 

 

 

「どういう事だも何もぉ…さっきからぁ…何度も言ってるだろぉ…シンは、ジェクトでぇ…」

 

 

 

状況は見れば分かるだろう?

 

 

 

最悪だ。

 

 

 

何が悲しくて、俺は呂律の回り出さなくなった、ベロンベロンに酔っ払った舌っ足らずな口調のきもいオッサンの胸ぐらを掴む事になっているんだろう。

 

くそっ!酒くせぇ!しかも、ヒゲの感触が癪に触る!俺だって掴みたくなんか無いが、このオッサンはこうでもしないと今にも寝てしまいそうなのだ!

 

俺は酒に溺れる情けない中年親父の頭を掴んで叩いてジャンケン•グーする寸前で思いとどまり、もう一度だけ最後にこのオッサンに問いかける。

 

 

「そっちの話じゃねぇよ!聞けよ!」

 

 

「ザナルカンドに帰れないのは悔しいが、理解した!」

 

 

「クソ親父が、シンって言う人殺しの化け物になったっつー与太話もどうでもいい!!本当だろうが嘘だろうが俺には関係ねぇよ!」

 

 

 

 

そう。アーロンの口から語られた話は俄にに信じがたい物だった。

 

が、実際にタイムスリップを体験してる俺には、そのイカレタ話を信じるだけの心の土壌があった。

 

だから、どんな与太話でも一応はこのオッサンの話を信じてやる事にした。オッサンの本当の出身地はここで、俺よりこの世界に詳しいのは事実みたいだしな。

 

 

だが、これだけは信じられない。いや!だからこそ可笑しいんだ!

 

 

どう考えても無理がある設定の話がそこにはあった…これを解決しない限り俺の物語は先に進まない_____!!

 

 

 

 

 

 

 

「なんで!伝説のガードとか言われてるあんたが!金も!権力も!どっちも持ってないんだよ!?この甲斐性無し野郎ぉおお!!」バキッ!「ごふぅっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やんでれ×ユウナッ!

 

そのXI。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…しまった…」

 

「……。」

 

 

 

寂れた酒場のカウンター席に沈んだ男が死人となっている…勢い余った鉄拳が、一人の中年親父を敗者のリングへと沈めてしまったのだ。

 

 

あぁもう。何でだ。何でいつもこうなるんだ。

 

 

だってどう考えてもオカしいじゃないか。不条理だ。世界の脅威であるシンを一度でも倒したなんて言う、このオッサンにしては上出来な成果を上げたと言うのに。

 

それなのに!なんで!?

 

なんでこいつはその世界でホームレスになってんだよ!?くそぉ!この世界の戦争軍人に対する保証体制はどうなってやがる!!ボランティアでやってたとでも言うのかよ!?

 

 

こんな状況で俺の戸籍とか保険とかどうするんだよぉぉお!!??

 

 

「起きやがれ!この野郎!」ゲシッ「おふぅ!!」

 

 

赤い外套を蹴り飛ばし、俺はアーロンの顔を引っ掴んで、畳み掛けるように振り回す。「何か突破口はねぇのかよ!?戸籍を用意できる政界議員との裏のコネとかヤクザとかよぉ!」

 

ガクガク。とシェイクされるオッサンの頭部。俺は、今後の先行きの不安さに煽られて少々凶暴になっていたようだ。オッサンの頬はぼこりと腫れていた。

 

 

「だ…だから、とりあえずユウナのガードをやる事で路銀と社会的地位を獲得してだな…」「そんなもんお断りだぁああ!殺す気か、この野郎ぉぉお!!」バキッ!

 

 

再び無惨にも特に理由のない理不尽な暴力がアーロンを襲った気がするが、関係ない。

 

シラフの状態のオッサンならともかく千鳥足のこの親父に俺が負ける筈が無い。八つ当たりの対象として売ってつけだ。いつもの鬱憤を晴らすチャンスとも言える。

 

 

「いきなりこんな世界に連れて来ては、住む家も金も何もかも用意してないなんて、一体全体何考えてるつもりなんだよ…ったく」

 

 

まぁ。俺もさ。

 

 

ここまで言ったり殴ったりしといて何だけど、このオッサンにも言い分があったのは認めているのだ。

 

ザナルカンドはシンに襲われて無惨な姿になってしまったのは俺も見ている。あの調子では俺がザナルカンドに帰った所で、ブリッツボールなんて場合じゃないのは目に見えている。

 

だから、アーロンにこの世界に連れて来てもらったのは、むしろ好都合とも取れる訳で。俺は少し前からここで生きていく為の算段を立てていたはずだった。

 

今となっては今日の大会であんな派手に活躍したのもその術策の一つに変わる。どこのチームもきっと俺を欲しがっている所だろうさ。

 

シンが変わらずいるとしても、とりあえずこの世界にはブリッツボールがあって、選手となって金を稼げるシステムがあるのだ。ザナルカンドに躍起になって戻る方法を探す必要はない。

 

 

 

そう考えていたはずだった。それは間違いない。

 

 

 

アーロンの支援も少しは期待してはいたが、どうせ役に立たないこのオッサンの事だ。

 

最初から俺の役に立つ功績を計算していた訳じゃなかったので、この事態はある意味で計算通りとも言える。

 

それなのに、ここまでオッサンをぼこぼこにしてしまったのは…まぁ何だかな。俺も心の何処かでクソ親父がシンになったなんて言う馬鹿な話に動揺した影響も少しはあるのだろう。

 

だから、何となく…こうぶっちゃけ俺はノリで、思うがままにこのオッサンを殴り飛ばす事でストレスを発散していた。うむ。だからまぁ、こんなもんで良いだろう。

 

 

「アーロン。あんたがユウナ様のガードになるっていう話は分かった。けど、俺はそれに付いていかない」

 

 

俺は気を取り直して、倒れたオッサンの体を起こしてやりながら、そう告げた。バトルをするのは慣れては来た物の、あんな強行軍のような危険な旅には着いていく気はない。

 

 

「まぁ…俺もお前はそう言うだろうな、と薄々分かってはいた。ジェクトとの約束もあるが…まぁお前ならしばらく放っておいても大丈夫だろう…」

 

 

スチャ、と床に落ちたグラサンを拾い上げて、そう言うアーロン。このオッサン…やっぱりタフだな…。

 

 

「だが、ユウナはそういう訳にはいかん。あの娘はお前と違って繊細に育ったようだ…ブラスカとの約束との為にも俺はユウナを守らねばならない」

 

オッサンの目には強い意思の炎が灯っていた。酒で真っ赤に紅潮した顔でなければもっと説得力もあっただろうに。

 

「かと言ってもお前はどうする気だ?さっきも言ったが、俺はユウナの旅に同行する以上、お前の支援はできんぞ」

 

オッサンの顔は少々センチメンタルな影があった気がする。まぁ…多少は俺の事を心配する気持ちもあるのだろう。

 

いつもなら殴り合いに発展していくタイミングなのに、黙って殴られていたのはこういう部分もあったと見える。……だからと言って俺は謝る気はないけどな!

 

 

「まぁ…とりあえずは何かしろで金を稼いで家を借りたりとかの生活の基盤を整えてからだろうな…。今の何も分からない状態でいきなり選手契約とかはリスキーすぎる」

 

 

恐らくは街にふらふら出て行ったら、マスコミか新聞雑誌の人間が俺を見つけて捕まえてくるだろう。

 

俺はその時にシンの毒気にやられた記憶喪失のイケメンを演じれば、戸籍とかその辺の問題は解決できるかもしれないとは思っていた。俺はシンに襲われて家族も友人を失ったとか解釈されるだろう。

 

そこまで来たら、俺を欲しがるチームのお偉いさんが、何とかしてくれるに違いない。と、希望の混じった楽観視をしていた。

 

だが。それは先にも言ったようにリスキーだ。

 

そこまで相手に頼り切った所から始まる関係では、契約金や待遇そこらは足下見られるに決まっている。

 

なにせ対等な関係じゃないのだ。こっちは住む家も無いような、素性の知らない分からない流れ者を囲ってやるんだ。多少の事は目を瞑ってもらわないと、と言ってくるに決まっている。

 

あまり派手な事はやってくるとは思えないが、こちらの弱味に付け込んで無茶な要求ばかりしてくるに違いない。俺はそう考えていた。

 

だから、せめて最低限の家や連絡先が整わない限りは、俺はブリッツボール界に舞い戻る気は無かった。

 

目立ちすぎも考えものだ。

 

さっきからバーのTVで流れてるのは俺の話題ばかりだった。世間は俺を躍起になって捕まえようとするだろうから、今の俺は行動が制限されてしまっているに等しい。

 

 

この状態で、何かできるとしたら、それは一つしか考えれなかった。

 

とりあえず、最低限の体勢を整えれるまで身を隠すかつ仕事のできる状況_____それは_____

 

 

バタンッ!!!

 

 

___!!____勢いよく開けられる扉____しまった___まさかマスコミ関係者____尾けられていたのか_____!?!?

 

 

 

 

 

 

 

「テ•ィ•ー•ダ〜〜っ!!!!」

 

 

 

 

 

開け放たれた扉。

 

 

そこには見覚えのある全身ボディスーツの金髪の女。しかもゴーグルあり拳銃ありのフル装備というアルベドスタイル。物騒極まりない格好だった。

 

 

 

 

 

 

 

カツカツカツ……ダンッ!!

 

 

 

「はぁ…はぁ…やっと見つけたよ!!この馬鹿ティーダ!!」

 

「リュ…リュック…よくここが分かったな…?」

 

 

 

そう。俺達はバーに身を隠していたが、スタジアムを出た際にその場でリュックとはぐれてしまったのだ。

 

いや、正確には、はぐれたと言うよりも置いていったに近い。シーモアとかいう触覚頭が、まじ逝き寸前のヘブン状態の顔して魔物を掃除してくれたお陰で、脅威は去ったスタジアム前。

 

もう大丈夫だろうと思って、回りを見たら俺の顔見て騒ぎだす群衆という構図があった。もみくちゃにされる前に俺は、一目散にその場に逃げ出したのだった。

 

そして、その際の俺の速度に着いていけたのはアーロンしかいなかったという話になる。

 

 

「もー!キミのせいでもうコッチはすっごい!大変だったんだからね!聞いてるのかー!こんにゃろうめーっ!?」

 

リュックは息も絶え絶え、髪の毛はぼさぼさのままブーブーと文句を垂らしていた。「ごめんって、悪かったよ」

 

「ところで、凄い荷物だな…リュック…どしたん?」

 

「だーかーらー!キミのせいでこうなったんだよー!!責任ッ!絶ぇぇっ対っ!取ってもらうんだからねっ!!」ドシッ!

 

リュックは背中に背負った大きな大きなリュックサックをどしっと下ろすと、スチャッとゴーグルを外しながら俺の隣に座った。

 

「な…なんだよリュック…俺何か悪い事したっけ…?」

 

「したっ!!思いっきり!したー!!ゔぅぅぅぅゔゔう!!!」

 

バタンっと更に音を立てながら、机に頭から突っ伏せるリュック。ボサッとなった髪が机の上に広がるように投げ出される。

 

 

「ティーダ達がアルベド族の船を壊しちゃったせいで私、しばらくホームに帰れなくなっちったんだよぉ…」

 

 

「え?」

 

 

朝の一件。アルベド族に攫われたユウナ様。救出に向かった俺。

 

召還獣で船から脱出した際に、確かに船を壊した気もするが…リュックはその件は無関係のはずだ。なんでそんな事に…。

 

「ユウナ…召還士の近くにいたのに、お前は何もしなかったのかー!船を壊されたのもオメーがそもそもちゃんと仕事しなかったせいだー!とかオヤジも怒っちゃって…それでこれだよぉ…。完全にとばっちりだよー!!もーやだー!!」

 

 

なん…だと。

 

どうやらシドさんの虫の居所が悪かった為に、リュックはなにやら正しく俺達のトバッチリで罰を受けたらしかった。ぶんぶんイヤイヤと頭を振っているリュック。

 

「ティーダは絶対っ!逃がさないからねっ!キミが無茶な事しなければ船も壊れなかったし、私だってこんな仕事やらされなかったんだからー!!」

 

「ちょ!ちょっと!待て!リュック!俺はただ試合しないといけないって事で…」

 

「うるさいうるさいうるさーい!黙って言う事聞く!私だってトバッチリなんだから原因のティーダにだって手伝ってもらうよ!!」

 

「なんだよそれ!?無茶苦茶だ!」「いーいーかーらー聞くのっ!!」

 

ダンッ!とリュックはごそごそと鞄の中を漁った手から、机に叩き付けられたのは何かの機械。電子端末のような形をしていた。

 

 

 

 

 

「…え、何これ?」

 

「魔物ん図鑑だよ?」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

リュックはさも当たり前のような顔して、俺を見ていた。

 

 

目尻にはまだ涙の浮かんだ後があるが表情そのものはケロッとしていた。…切り替えの早い奴だな。

 

 

「これが私に発令された任務その1。魔物ん図鑑の100種コンプリート…魔物っていうのは、ダメージを与えて倒しちゃうとそのまま幻光虫になって消えちゃうのは知ってるよね?」

 

 

「あ…あぁ。そうだな」

 

 

「でも、ある方法を使えばその限りではないんだ…魔物っていうのはその体自体が良質な素材の宝庫!魔物がまだ生きてる状態の時に魔物の体に生成されている素材をハギ取れば、その魔物の素材…つまり、スピラの鉱物よりも堅い牙とか爪とかの素材を回収できちゃうっていう寸法なんだよ!…ちなみに、この発見はアルベド族が最初にしたんだよ!」

 

へっへーん、と言った調子で、リュックは冗長に説明をしだした。

 

何でか知らんが、あまり深く事情を聞いては捕まって後戻りできないような気もする。が、急に生き生きとしだしたリュックの顔を見てたらそんな事を言えるはずもなく。

 

 

「へ…へぇ…それが、その端末とどう関係があるんだよ?」

 

「よくぞ聞いてくれましたっ!」

 

そう言って、更にガチャガチャと大きな鞄を漁りだすリュック。出されたのは…スプレー缶?

 

「幻光スプレー(仮)だよ。これには幻光虫が濃縮された液体が入ってて、はぎ取った素材に振りかける事で魔物の分光現象を止めて、保存する事ができるんだ。フィキサチーフみたいなものかな?」

 

「へー、なるほどな」

 

「でね!その保存した素材を解析して、データ化。共有する為の端末がこの魔物ん図鑑って訳!」

 

リュックの目は先程のような怨念の影は浮かんでいなかった。

 

新しい玩具を自慢するような子供のような調子で機材を振り回すリュックの姿は見てて微笑ましいものだった…俺と関係ない遠くでやってくれてさえいればの話だが。

 

 

 

「そ、それを百種コンプリートってのは…」

 

「…」

 

「リュック…?」

 

「手伝ってもらうよ…」ガシッ!

 

「リュ…リュックさーん?」

 

 

 

ぐぐっ…っと。リュックは俺の肩を掴んだ手の力を強めてくる。まずい、嫌な予感がビンビンするぜ、これは!

 

 

「これの業務の大変な部分って分かる…?」ググッ…

 

 

「な…なにかなー…それよりもリュックさん…痛いっす…力緩めてくれると嬉しいなーなんて…」

 

「素材を傷つける訳にはいかないから、爆弾や火炎放射はなるべく使っちゃ駄目…つまり魔物とガチンコ勝負、素材の回収と保存を戦闘中にしないといけないっていう事なんだよね…」

 

「そ…そいつは大変そうだなー…」

 

「それをこんなかよわい少女が一人でできると思う?サポートが無いと絶対無理なこの仕事…私これやらないと帰れないんだけど…」ググッ…

 

リュックの前髪が顔に垂れて表情は見えない。だが見たいとも思えない。

 

 

「手伝うよね?ティーダ…?私知ってるんだよ、君がバトルできるっていう事…」

 

 

「いやいや、そんな、ねぇ?俺ブリッツの選手であって戦士でないっつーか、そもそもそんな危ない事なら尚更…痛い!痛いっす!リュックさん!」

 

 

「私がこの仕事でもし怪我しちゃったらどうするのかなー…ブリッツをやるどころか見る事すらできないような体になっても責任取ってくれるのかなー…」

 

 

「いたい…いたいっすよぉ…リュックさーん!!ちょっ…分かったから、俺の話を聞い…」

 

 

「なんなの!ティーダ!!私がどうなっても良い訳!?さっきは私の為に勝ったとかなんとか言ってさ!本当に私嬉しかったのに!ここでバイバイとか!そんなの言うつもりなの!?」

 

 

「分かったから…痛いってばぁ!」

 

 

「責任取れ!責任取れ!責任取ってよぉ…!オヤジだって君は俺に借りがあるから一緒に行ってくれるはずだとか言って!それならって事で私も了承してるんだよぉ!今更そんな事言わないでよぉ!ばかー!!」

 

 

「爪が痛い痛い遺体…!…って、え?え?本当か!?リュック!!??」

 

 

ガシッと、俺は逆にリュックを掴み返す。

 

それが本当だったら話が早い!!

 

 

 

「ふぇ?」

 

 

 

「俺らが一緒にその…魔物ん図鑑を作っていくっていう業務は、リュックの親父さん!シドさんの了承の元で行われてるってこと!?」

 

「え?え?う、うん。そうだけど…」

 

「つまり、正式な仕事って訳だよな!?これに携わったら俺もアルベド族とのコネクションが作れるって事だよな!?」

 

 

「そうだけど…って、うわぁっ!!?」ダキッ

 

 

「うぉおっしゃ!!やりぃ!!俺もその関係でリュックに泣きつこうとしてた所だったんだよ!話が早いっすよ!!やっぱりリュックは女神様っすよぉ!!」

 

 

俺はあまりのトントン拍子で話が進んでいく感動に思わずリュックを抱き寄せた。やっぱり俺は神に愛されてるんだな!うん、そうに違いない!

 

 

「あわわわっわわっわわっわっわわ…!ちょ、ちょっと!ティーダ!離してよぉ!!お願いだからぁ!」

 

 

 

 

事のいきさつはこうだ。

 

俺は目立てない。かつ仕事がしたい。それはさっき言った通りだ。

 

その二つを両立させる方案として、しばらくアルベド族にご厄介になるなりして、世間の目から離れて体制を整えれないかと考えていたのだ。

 

アルベド族はスピラの嫌われ者との事らしいが、俺は偏見が無いどころが、むしろリュックとシドさんの影響で非常に仲良くなりたい存在だと思っていたのである。

 

アルベド族とコネクションも作りながら、正式に仕事を貰えるというこの状況。しかも族長であるシドさん直々に下した任務だ。

 

バトルの危なさというという懸念事項以外は、ほぼ理想的!シドさんなら戸籍の件とかその辺は何とかしてくれるに違いない!この仕事の功績が認められたら、きっと俺にとって理想の状況が整うだろう!

 

 

「あははっ!リュックは本当に頼りになるなぁ!!俺もうリュックに対しては足向けて眠れないっすよぉ!!」

 

 

「むー!むー!…ぷはぁっ!…え!?え?なんで?急にどうしてやる気になったの!?…って!その前にお願いだから離してよ!皆見てるよぉ!」

 

リュックは真っ赤になって俺の頭をパカパカと叩いた。俺もさすがにこれ以上のセクハラはまずいと思って、リュックを離した。

 

女神認定したリュックは、俺にとってもう尊重しなければならない存在だ。

 

とりあえず、リュックの意思をまず大事にしよう。

 

 

「…う…うぅぅ…なんなんだよぉ…もぉ…急にそんな事言わないでよぉ…こ、心の準備ってものがあるじゃんかぁ…バカ…」

 

 

「いやさー!俺って今求職中の身分だったんだよね!ワッカとの選手契約も切れた所だったし、こんな家も身分も何もない状態でブリッツボールの選手やる訳にもいかなくて途方にくれてた訳!」

 

 

「え…?ブリッツの選手やる訳…じゃなかったの?本当に?」

 

 

「あぁ!ここまで一回目立っておけばいつでもカムバックできるしな!むしろ今は世間の目から逃れたいから、リュック達アルベド族のご厄介になろうと思ってた所さ!それがこんなスムーズに行くとは…リュック!本当にありがとうな!」

 

手を取って、ぶんぶんと振り回す。やっほーと言いながら、俺は笑いながらリュックの回りをくるくると。小躍りしたい気分とは正にこの事だ!

 

 

「え…本当?ほんとに本当?アルベド族だよ?今回は海で拾われた居候とかそんなんじゃないんだよ?アルベド族と本当に手を組むって事だけど、ティーダはそれでいいの?私も自分で言っておいてなんだけど…そのオヤジの言う君の借りって奴も…そんな君を縛る強制力があるとかでは無いんでしょ…それなのに…」

 

「リュックはもう細かい事気にするんだなー!俺はシドさんへの借りがあるとか云々より、アルベド族と協力して仕事できるって事が嬉しいんすよ!」

 

ぐちぐちと何か水臭い事を言っているような気がするリュックの手を離して、俺は力強くドンっと自分の心臓を叩くジェスチャーをする。

 

「嬉しい…?私達と…私とこれから旅する事になるんだけど…それが…本当に?」

 

ぽかんとした表情を浮かべたリュックの顔。目尻に浮かんでいたはずの涙はもう乾いていた。

 

「そうっすよ!そもそもリュックをそんな危険な事一人でさせるってのも後味悪いっすしね!俺のトバッチリのせいってのは本当だから責任取るっすよ!」

 

そしてグッとサムズアップ。リュックの目の前に俺は握手を差し出した。これは契約で、約束だ。今度はリュックから握ってもらおう。

 

 

「よろしくな。リュック。お前は本当に良い奴っすね」

 

「よ…よろしく…お願いします…」

 

 

リュックはまだ、状況に着いて来れないような、ぽけっとした顔だったけど、おずおずと俺の手を握ってくれた。

 

 

「リュック」

 

「な、なに?」

 

 

「試合の時、声援ありがとうな。あれが無ければ勝てなかった。リュックの事、本当に天使に見えたっすよ」

 

 

にこりと俺はできるだけの感謝を込めて笑いかける。バッ!と伏せられたリュックの顔はやはり見えなかったけど、耳まで真っ赤だった。

 

 

 

 

 

 

何故か沈黙が続いた。でも、繋いだ手だけは、少しだけ力を強めて。

 

 

 

 

 

「ず…ずるいよぉ…キミは…ほんとう…」

 

 

 

 

 

そんな事を、リュックは最後まで言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____

 

______

 

____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふっ。話は決まったようだな。…だったら俺はもう行くぞ」

 

 

キィィィン…高い音を響かせて大剣を背負い直すアーロン。あ、いたな。そういえばこんなオッサン。

 

「これは、俺の連絡先だ。そっちの娘がアルベド族なら機械でコールはできるだろう。何かあったら、呼べ。ユウナ達の状況次第では助けてやらん事もない」

 

そう言って一枚の紙を渡してくるアーロン。TEL番号を記載された無骨な文字が載った紙。このオッサン…携帯なんてもの持ってやがったのか…。

 

「あ、アーロンさん!いたんだ!…は、はい!私は通話機器を持っていますので!」

 

俺からバッと体ごと離れて、あたふたとアーロンに返答するリュック…リュックはリュックでこのオッサンが座っていた事に気づいてなかったのか…。

 

「…アーロン!」

 

それだけ言って、さっさとバーの出口の方に向かっていく背中を俺は呼び止めた。

 

 

 

「…なんだ?」

 

 

 

なんだ?じゃねぇよ!くそっ。こんな時まですかしやがって…!

 

 

「…。」

 

「…。」

 

「…か。」

 

「…。」

 

 

「風邪引くんじゃねぇぞ…もう歳なんだからよ…ユウナ様達にも迷惑だろうしな…」

 

 

なんで、俺はこんな事言っちまうんだよ…。このオッサンは甘やかすとつけあがるタイプのオッサンだって…分かってるだろ俺…。

 

 

「ふっ…」

 

 

オッサンは、そうやって鼻で笑うだけ。出口の方へとまた歩いていく。暖簾をくぐり、バーの一歩外へとオッサンは出た。

 

 

 

 

「お前もな。」

 

 

 

 

ほら、つけあがるタイプだろ…?

 

…こうやって格好付けるんだよ…このオッサンはいつも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____

 

__________________________

 

____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局…ティーダの野郎は見つからずじまいかぁ…」

 

 

はぁ…。とガックリと肩を落とすワッカさん。

 

 

「あの子…本当にどこ行っちゃったんだか…」

 

 

ふぅ…。と息を大きく吐き出すルールー。

 

それにキマリも。どこかも憂鬱そうな顔を浮かべてるのが、傾いたおひげの角度で私には分かった。

 

私に至っては…現実感が無かった。

 

なにかポッカリと心に穴が空いたような感覚だけがあって。それがどうやっても埋まらない事だけが何故か分かってて。

 

ただただ黙って、俯いて歩く事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

「あいつ…まだ…選手契約の金だって払えてねぇのによ…いや、今すぐに出せるような額じゃないけどよ…」

 

 

ワッカさんの言葉が、痛い。

 

過去になっていく。彼が一緒にいた事が急速に過去の出来事になっていくような言い方をするワッカさんの言葉が、私は痛いと感じる。

 

 

「そうね…お金の事だけじゃないわ…私なんてまだ…お礼も…謝ることも…なに一つできなかったわよ…」

 

 

ルールーの言葉が、苦い。

 

私にもそれは言える事だった。私は、まだ、彼から貰ったものに対して何も。何ひとつだって返せていなかった事が、私は苦いと感じる。

 

 

 

 

 

 

ミヘン街道。

 

 

私たちは昨日一日、街に残って夜通しで彼の姿を探し続けた私達は、彼の足取り一つ掴むこともできないまま、ルカの街を出て、次のジョゼ寺院に行く為の道に立っていた。

 

たくさんいたのはマスコミの関係者の人達。どこから聞きつけたのかは分からないけど、私達の旅に同行していた彼の事を聞きにくる取材の人達ばかりだった。皆が…彼の事を探していた。

 

 

 

彼は、ずるい。

 

彼は、まるで真夏の蜃気楼みたいに突然現れて消えてしまう。目が涙で滲むくらい。激しくて眩しい幻影を見せて、最高の結果だけを残して、ふっと立ち消えてしまう。

 

こっちの反応を待たないで先に。前に向かってまっすぐに駆け抜けて行ってしまう、後に残された人達の気持ちも知らないで。

 

 

 

私は、ずるい。

 

本当ならこんな状態で、旅になんて出るべきじゃない。

 

俯いてばかりで、吹き出しそうな涙を堪えて、旅の無事を祈ってくれた街の人達の事も無視して、ただぽけっとしながらここまで歩いて来てしまった。

 

皆の足が進んでいるから、それに着いていくだけで何も考えていない。彼のように意思を持って、笑って、歩いて来た訳じゃない道を、これからも歩こうとしている。

 

 

召還士の道。それは私が歩くと決めた道。

 

 

でも、その道は、何があっても笑顔を振りまきながら歩くって決めていたはずだった。

 

召還士が辛そうな顔をしていたら、一体スピラの人達は何を思って、毎日を過ごせばいいんだろう。それを考えて考えて、自分で出した私の答えだった。

 

そのはずだったのに、私は早速それを破ってしまっている。自分の誓いに嘘をついている。ごくごく私的な気持ちを優先して、私は前を向いていない。

 

どうしてだろう。なんでだろう。

 

辛い事は、いっぱい。いっぱい想像してたはずなのにな。何が起きても耐えれるように、たくさん残酷な想像をしてきたのにな。

 

痛い事。嫌な事。惨めな気持ちになる事。ビサイド村に帰りたいって思ってしまう事。

 

いろいろ。いろいろ想像して、辛い気持ちになるのは慣れてきたと思ってたのにな。

 

でも…でも…違うよ…こんなの…こんな事…こんな気持ちになるなんて事…

 

 

 

 

 

 

「…想像してなかったよ…ティーダ君…」

 

 

 

 

 

 

ぐすっ…。すんっ…ぐすっ…。

 

 

 

 

「ユウナ…もう泣かないの…あいつの事だから、絶対にどこかで元気でやって行くわよ」

 

 

ルールーの包容が優しい。

 

 

でも、私にはその包容が優しすぎて辛い。痛いんだ。私は皆に頼らないとしゃんと前も向けない格好悪い人間だって分かってしまって苦いんだ。

 

「ユウナ…あいつの事は俺が絶対に探し出す。この旅が終わる前に、必ずだ。こうなったら人探し板でも新聞広告でも懸賞金掛けるでも、なんでも使ってでもあいつを取っ捕まえてやる。それで…皆であいつに言ってやるんだ。「ありがとよ!」ってな。そうしないと…俺の気が収まらねぇよ!」

 

 

ワッカさんはそう言って自分の手の平をじっと見つめた。すりむけた右手。ブリッツボールの試合でずるずるに皮の剥けた手をワッカさんはぎゅっと握り込んで、笑った。

 

ワッカさんは私とはまた別の気持ちを彼に対して思っているみたいだった。

 

私は私自身の気持ちもまだよく分かっていないのに、ワッカさんはもう前を向きだしている。感謝の気持ちっていう思いは同じはずなのに、何でワッカさんみたいに笑えないのだろう。

 

 

私はやっぱり弱いみたいだ。

 

感謝の気持ちで泣いてしまう人がいていいのだろうか。

 

 

思いが大きすぎて、私はきっと今馬鹿な子になっちゃってるんだ。これって感謝なのかな?なんなのかな?本当に感謝の気持ちだけなのかな?

 

 

そんな事ばかり。考えてしまうのだ。

 

 

 

「え…あれ…まさか!ユウナ!見て!!」

 

 

 

 

ルールーが突然大きな声をあげる。私はびっくりして、顔を上げた。もしかしたら、期待したのかもしれない。ルールーの驚きがあまりに大きかったみたいだから。

 

金色の幻想を私は見れると、一瞬だけ。

 

 

 

「アーロンさん…」

 

 

 

 

見たのは赤。赤い外套。その姿は、お父さんのガードをやっていた頃より幾分歳を重ねた、大人の風格を持ったアーロンさんだった。

 

 

 

 

「ユウナだな」

 

アーロンさんは私達の目の前で止まった。

 

赤い外套を風にたなびかせて。お酒のとっくりを一度からんと鳴らして。

 

 

 

「ユウナのガードになりたい。旅に俺も同行させてほしい」

 

 

 

アーロンさんは端的に。率直に。間違いようの無い言葉で、私にそう言った。

 

「アーロンさん!?それ本当ですか!?…だったら大歓迎です!もちろんです!伝説のガードが俺達に同行してくれるなんて…断る理由がありません!」

 

「私も!同じです!アーロンさんがいてくれれば前衛は盤石。私は魔法に集中できます。こちらこそ宜しくお願いします!」

 

 

ワッカさんもルールーも。二人は一様に目を輝かせて。アーロンさんの前に出ていた。

 

 

「そうか、感謝する。…ユウナはどうだ?」

 

 

問いかけるアーロンさん。そうだ。私も答えないと。私に質問がされているんだった。

 

ちゃんと、声が出てくれるかな。

 

 

 

______君も、ガードになってくれないかな?________

 

 

 

 

口を開きかけたその時。

 

彼に。言えなかったあの言葉が、私の脳裏によぎった。

 

 

 

「…ユウナ?」

 

 

 

心配そうなルールーの声。ごめん、ルールー。

 

私、やっぱり駄目な子みたいなんだ。

 

 

「か…」

 

 

「…。」

 

 

「彼は一緒じゃないんですか…アーロンさん…?」

 

そんな見れば分かる事を、私は再び問いかけてしまっていた。

 

 

 

 

「ユウナ…」

 

「ゆ、ユウナ…」

 

 

 

動揺した様子のルールーと、ワッカさん。ごめんなさい。ごめんなさい。

 

なんで私はこうなんだろうね。アーロンさんがせっかく私なんかのガードになってくれるって言ってくれているのに。

 

まるで、アーロンさんだけじゃ『足りない』。そんな風に聞こえるような失礼な言葉を言っちゃって。私は本当になにをしているんだろう。

 

「…なるほどな。あいつは、またやったのか…」

 

アーロンさんは、そんな独り言を呟いていた。私の顔を見て、何かを察したように、少し笑っていた。

 

「あいつは…ティーダはもう別の道を歩き出した。自分の物語をな。ユウナ。お前はどうだ?」

 

歩けるのか?そうアーロンさんは訪ねるような言葉を私にかけた。

 

強い言葉。

 

意思を持った瞳で私をじっと見つめている。試すように。叱るように。

 

ちゃんと答えないといけない。アーロンさんに呆れられないように、ちゃんと召還士らしくしないといけない。

 

 

なのに。

 

 

「…わ、わかりません…私には、分からないんです…」

 

 

言葉はあやふや。条件反射のように、今の心情を表した言葉が。言葉が。何故か自然と懺悔するように出てしまった。

 

情けない。泣き言ばかり。私は泣き言ばかりだ。本当に、いやになる。

 

こんな時にも強くなれないなんて。こんな時にも、笑えなくて。

 

 

「そうか。」

 

 

 

それなのにアーロンさんは、私は頭にポンと手を載せて。

 

 

 

 

「それでいい。」

 

 

 

 

そんな言葉を。

 

優しい口調で、かけてくれるんだ。

 

 

 

「悩め。お前はまだ子供だ。下手に取り繕うな。自分の心に素直になれ」

 

____召還獣は、狭い心を嫌うぞ。アーロンさんの言葉が、私の心に響いて反響して、奥深くの所に吸い込まれていった。

 

 

「はい…はい…すんっ…分かりました…ぐすっ…頑張ります…ぐすっ…お願いします…アーロンさん…ぐすっ」

 

私は涙が抑えれないままだけど、精一杯の感謝を込めてそう返した。

 

私には分からない。アーロンさんが、悩め。と言った本当の意味も分からないままだけど。これだけは分かった。

 

私は自分の気持ちに向き合うべきなんだ。

 

きっと。アーロンさんはそう言っているんだ。そう言ってくれてるんだ。

 

だから、今は。今だけはその言葉に甘えさせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

ザッ…。ザッ…ザッ…。

 

 

 

 

「ユウナ?行くのか?」

 

 

「ユウナ?」

 

 

「ふっ…」

 

 

 

 

 

歩くんだ。

 

 

まだ笑えないかもしれない。召還士らしくできないかもしれない。

 

 

それでも、歩こう。

 

 

泣いた顔で情けないかもしれないけど、それでも、前を向こう。

 

 

この道を。ただただ歩いていこう。この先に待っているのは、きっと楽しい事ばかりじゃない。

 

 

昨日までの、心強い、すごく安心するような羽のように軽い気持ちでも、甘いけど胸を締め付けられるような気持ちでも無くて、笑っていけないかもしれないけど、それでも、歩こう。

 

 

 

 

 

 

 

きっと、それが「皆が笑える明日」につながっていく事に繋がっていく道なのだから。だから_______。

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッ…。ザッ…ザッ…。

 

 

 

 

 

__________でもさ。______________

 

 

 

 

 

 

ザッ…。ザッ…ザッ…「あー!こら!そっち!ちゃんと魔物押さえててってばぁ!!」

 

 

 

__________でもさ。______________

 

 

 

 

ザッ…。ザッ…ザッ…。「いやいやいや!無理っすよ!こいつ超絶動き早いっすよ!?」

 

 

 

 

__________でもさ。その『皆に』______________

 

 

 

 

ザッ…。ザッ…ザッ…。「あーー!!倒しちゃった!!まだ素材回収しきれてないのに!」

 

 

 

 

「お、おい…おいおいおいおい…まさかあれ?あれってまさかじゃないのか!?」

 

 

 

 

ザッ…。ザッ…ザッ…。「今のは切らないと俺がやばかったっつーの!!」

 

 

 

 

「え、えぇ…なんかアルベド族っぽい格好してるけど…あれって…そうよね?」

 

 

 

 

ザッ…。ザッ…ザッ…。「だいたいリュックが、回収するのが遅いんすよ!さっきだって失敗したじゃないっすか!」

 

 

 

「ふっ…見てられんな…」

 

 

 

ザッ…。ザッ…ザッ…。ザッザッザッ…!「ムッキー!そういうティーダだって!私がポーション投げるタイミング遅かったら、どうなってたか分かんなかったくせにぃ!!」

 

 

 

「アーロンさん!?って、おいユウナもだ!走るなよ!俺だって!!おぉぉぉぉぉおい!!お前らぁあ!!俺もまぜろぉおおお!!!」

 

 

「まったく…全員で嬉しそうな顔して…バカね…キマリ!走るわよ!!」

 

 

 

 

ザッザッザッザッザッザッ…。

 

 

 

 

 

 

__________その『皆に』ユウナ様は入っているの?______________

 

 

 

 

 

走る。

 

 

前に向かって走る。熱くなった目頭もそのままに走り出した私の頭に。

 

 

 

 

そんな声が、響いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。