ハンターは衰退しました   作:皇我リキ

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めちゃくちゃやってる番外編です。


お正月あけまして特番『番外編』

 突然ですが、ハンターは衰退しました。

 

 

 それはそれは昔、荒々しくも輝———以下省略で。

 せっかくの番外編です。気楽に行きましょう。気楽に!

 

 

 あ、先にも言っておきますね。

 

 皆様、あけましておめでとうございます。

 

 

 本日も、絶賛人類は衰退中!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『N居さん、アウトニャー!』

『ニャーーー!』

 電子モニターから放たれるそんな音。

 

 

 電子モニターとは?

 衰退した人類が編み出したのか、はたまたアイルーさん達の発明か。

 

 電気信号による電波を受信し、その電波による情報を映像と音声として出力する機会の事です。

 一般的にはテレビと言われていますね。家のテレビは40インチ! 中々の大迫力。

 

 

 

 そんなテレビが出力するのは、年末特番のバラエティ番組でした。

 

 なんとも、次々に突然におもしろおかしい出来事がおこる中笑ってしまうと今の映像のように『アウトー!』と言われお尻を叩かれてしまうのです。

 

 

 勿論の事、絶対数の少ない私達人間がこの番組に出る事は殆どありません。

 というか、人間がテレビに映る事自体少ないのです。

 

 人間が映るのは珍獣が映るのと同じ感覚と感じて頂いて相違ありません。

 

 

 時は大晦日の晩。

 あと数時間で今年も終わるというこの大変賑やかな時刻にわたしは、そんなバラエティ番組に微笑みつつ優雅なティータイムと洒落込んで居ました。

 

 

「年末だからといって孫がダラけているのをどう捉えたものか」

 そう語るは我が祖父、おじいさん。

 

「大丈夫ですよおじいさん、このお話は番外編なので時系列的には最終章より後のお話です。よって、もろもろの諸事情も解決してあるクリーンな世界なのです」

「ばんがいへん? じけいれつ? さいしゅうしょう???」

 しまった、メタ発言は禁止でした。

 

 

「お、お正月くらいのんびりしましょう。なんて神様からの粋な計らいですよ」

「そんな話に需要があるとは思えんがな」

 おじいさん、メタ発言アウトなのかセーフなのかどっちなんですか。どっちつかずが一番めんどうなんですよ? 知ってます?

 

 

「世界はゆるりとしたコメディーを求めておいでです」

「……そうか」

 そうです。

 

 

 さてさて、お茶の間を濁してしまいましたが優雅なティータイムの続きと行きましょう。

 このティータイムのメインといえば、目の前でテレビに釘付けになっているご主人でしょうか。

 

 銀色の毛並みのご主人。

 バラエティ的に面白いその番組を見ながら、ご主人も何故か笑いを堪えていたのでした。

 

 笑ったらお尻を叩かれるとでも思っているのでしょうか?

 

 

「…………ぷっ」

 しかし、ご主人堪えきれずに遂に息を漏らしました。

 私はその笑いを見逃しません。

 

 判定ガバガバなバラエティとは違うのです。

 

 

「ご主人、アウトー!」

「に゛ぁ?!」

 と、声を上げながら飛び上がるご主人。

 可愛い。なんなんでしょうかこの生き物は。

 

 

「ほほほー、冗談ですよ冗談」

 あー、面白い。バラエティより面白いかも。

 

「むにぁ……オトモさんも、アウトにぁ」

「あら、そういえば」

「ハリセンならあるぞ」

「なんでそんな物が家にあるのですかおじいさん?!」

「武器を研磨してたら出て来た」

 それは武器じゃ無いしなぜハリセンが錆びる?!

 

 

「ほれ、これだ」

 おじいさんが取り出したのは、鉄で出来たハリセンでした。

 

「死ぬわ!!」

 ご先祖様は何を考えていたのでしょう……。

 

 

 

 

「ところでご先祖様は毎年この番組を見てるのですか?」

 テレビ番組は、同時間に違う電波数を使う事により複数の種類があるのです。

 

 アイルーさん達が赤と白に分かれて今年流行った歌を歌ったり、年越しクイズ番組だとか色々あるのです。

 

 

 その中からご主人が選んだのはお笑いの番組でした。

 ご主人ってこう、落ち着いたイメージがあったので意外。

 

 

「師匠がいつもこれしか見てなかったから……毎年のクセみたいな、物、にぁ」

 あのお師匠さんなら確かに……。

 

 

「遊びに来たニャーン!」

 噂をすればと言う言葉はただの神様の遊びだと思うこの頃。

 

 元気な掛け声と共に窓を開けたのは金色の毛並み。ご主人のお師匠さんでした。

 その背後にはオトモのKの姿やピンクちゃんに後輩ちゃんの姿まで。

 

 

「こんなに人が集まるとはな……」

「普段からこんな物でしょう? 諸事情で来てらっしゃらないキャラも居ますけど」

 登場して無いんです。

 

 

 

 さてさて、人が集まると騒ぎは大きくなる物。

 わたしの家はそんなに広く無いのですが、まぁこの人数ならボードゲームに興じられる空間くらいあるのです。

 

 

 そんな訳で始まりました、ネコ生ゲーム。

 

 ネコの一生は山あり谷あり楽じゃ無い、就職してから生涯を終えるまでをリアルにスゴロク風にしたゲームです。

 私達人間も、今日だけネコになってはじめてみましょう! ネコ生!

 

 

 人類は滅亡しました。

 

 

 

「最初は私ですね!」

 と、声を張る後輩ちゃん。元気よくゼロから九までのルーレットを回し、出た数字は『三』。

 

 あなたの職業は?

 

 

「ニャンターになりました!」

 おー、幸先が良いですね。しかしニャンターは大変なお仕事です、後輩ちゃんに務まりますかねぇ?

 

「次はウチの番ミャー!」

 さてさてピンクちゃんのルーレットは『二』そこに書かれた争いの無い運命は、マフィアのボスでした。

 

 ソンナノアリカ。

 

 

「この世界はウチの物ミャ……」

 とても可愛いマフィアのボスが誕生しました。

 

 

「次は俺か」

 それで次はKの番。ルーレットは『三』でした。

 つまり、後輩ちゃんと同じニャンターです。

 

「お、俺が……ネコ?! いや、しかし、俺はマスターのオトモであって俺のマスターで俺のオトモで?!」

 落ち着いて下さい。ネコ生ゲームです。

 このゲームでニャンターは可も不可も無い安定した職業。二人共運が良いですね。

 

 

 しかし、私が狙うは最高に格好良い職業。その名もギルドニャイトマスター!

 

 

「私は六ニャン」

「お、マスターはギルドニャイトマスターですか。流石です!」

 おっと、お師匠さんが一番星!?

 

 いえ、まぁ、被りはアリですしね。

 

 

「次、ご主人ですよ」

「……にぁ、七?」

 ラッキーセブン。

 

「億万長者の息子、にぁ?」

 勝ち組でした。

 この職業になると開幕一億個のマタタビを手にしながらゲームを進められ、毎月のお小遣いも八百個のマタタビが約束されます。

 

 

 そんなにマタタビ手に入れたらアイルーさん達狂ってしまうのでは無いでしょうか……。

 

 

「さてさて、わたしの番ですね!」

 狙うは億万長者かギルドニャイトマスター!

 

 

 来れ、運命の歯車よ。

 

 

 結果は『五』でした。

 この世界でこの数字は嫌な予感しかしません。

 

 

「…………アルバイター」

 最低でした。

 

 アルバイターは毎月のお給料がルーレットで決まります。

 ゼロから九までのルーレットを回して、奇数なら掛ける百のマタタビが。偶数なら掛ける十のマタタビが貰えるのです。

 いや偶数引くだけで人生どん底なんですが。

 

 

 ちなみに、ギルドニャイトマスターと億万長者の息子が毎年八百のマタタビ。ニャンターは六百のマタタビ。マフィアのボスは七百のマタタビが毎月支払われます。

 

 すなわち、私は九以外を出すだけで大きく皆様に差を付けられるというありえない状況なのです。

 

 

 人生山あり谷ありと言いますが開幕フラヒヤ山脈を目の前にしているような極寒の人生が今始まりました。

 

 

 

 

 じゃ、始めますか。ネコ生。

 

 

 ディレクターカットバージョン(意味は分かっていません)でお楽しみ下さい。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 むかーしむかしあるところに、二人のニャンターが居たそうな。

 

 

「KさんKさん、今日も狩りに出掛けましょー!」

「おい後輩、語尾にニャを忘れてるニャ。遊びでやるにしてもアイルーさんの真似をするなら魂を掛けるニャ」

 とても元気の良い後輩ネコちゃんと、ちょっとキモい先輩ネコです。

 

「誰がキモいだニャ!」

「その喋り方以外に何があるんですか?!」

 そんな二人の所に現れた、一人の可憐な少女わたし。

 

「自分で可憐とか言っちゃってますよ……」

「そもそも少女って歳じゃねーだろニャ」

「うっさい」

 少女は貧乏人で、明日のご飯も無い状態なのです。

 

 

「今日のティータイム分のマタタビしかありません」

 アルバイターは最初に貰えるマタタビが少ないのです。

 

「なのでお恵みを」

「嫌だニャ」

「嫌です」

 断られました。

 

 

 なんとまぁ! なんて酷い人達でしょう!

 

「でもお恵みを頂かないと、私は喰い逃げになってしまうのです。どうかお金を貸して下さいまし」

『午後のティータイム。マタタビ五百個を支払う』

 

 このゲームのルールではお金が足りないと近くのマスの人達からお金を借りる事になります。

 利子はルーレット一周五割。闇金なんてレベルじゃ無い!

 

 

 

「ふへへへへへ、ウチはマフィアのボス。お前の身柄を買ったミャー!」

『ネコ身売買で一番マタタビ所持数の少ないプレイヤーのコマを買い取る(同時行動)』

 次のターンでピンクちゃんに買われました。人身売買です。この世も末なのでしょう。

 

「そこまでニャン! 悪いマフィアめ!」

 そこへ、さっそうと現れるギルドニャイトマスター!

 

 

「なんミャなんミャ。この娘はもうウチが買ったミャー!」

 可憐な少女をマタタビで弄びながら、ギルドニャイトマスターを威嚇するマフィアのボス。

 可愛過ぎて威厳がありませんね。

 

「ギルドニャイトの裏の仕事の出番だニャン。悪者の抹殺ニャン! 二刀流ハンマーで相手ニャン!」

 これまたタイムリーなネタを提供するお師匠さん。

 もしこの作品があの方に読まれているとしたら、神様は都心まで出向いで土下座をしに行く事でしょう。アーメン。

 

 

 番外編だからってやり過ぎぃ!

 

 

「穢らわしいニャン」

『(ギルドニャイト専用)マフィアのボス、密猟者、闇ギルドetcのプレイヤーと同じマスに止まった場合抹殺する』

 

 

「ゲームオーバーミャー」

 まさかのゲームオーバーありました。ネコ生山あり谷あり死亡あり。まさかの脱落者です。

 

 

 

「辛辣過ぎにぁ……」

 

 

 さてさて時は進みます。

 

 

 

「ニャンタークエストですよ先輩!」

「一人で行ってらっしゃい。私はアルバイターなので、ニャンタークエストには着いていけないのです」

「では行ってきます!」

 行ってらっしゃい。

 

 

『ニャンタークエストに失敗して死亡する。ゲームオーバー』

 脱落しました。

 

 この世界は危険なのです。いつ死ぬかわからぬネコ生。リアル過ぎでは。

 

 

 

 

「古龍出現だと?! ニャ?!」

 Kが踏んだマスは古龍出現マスでした。

 

 フィールドに古龍が現れて毎ターンランダムで移動し通りかかったプレイヤーを屠ります。

 

「あ、やられたニャン」

 古龍は最強でした。ギルドニャイトマスターでも勝てずにお亡くなりに。

 

 

「マスターーー!」

「抱き着くニャン鬱陶しい!」

「アヴェンジョッ!!」

 アヴェンジャーみたいに言わんでも。

 

 

 

 さて、ネコ生は甘く無いようです。

 

 生き残ったのは適当に生きて来たニャンターと、金の力で蹂躙してきた億万長者の息子、そしてアルバイター。

 

 

 良い仕事に就けば人生上手く行くという訳では無いようです。

 きっとこのゲームはその理を私達に———

 

 

「んにぁ、変なマス発見にぁ」

『錬金術で死人を蘇らせて自分の配下にする。一人につきマタタビ一万個』

 世の中金でした。

 

 

 そう、結局世の中金なのです。

 きっとこのゲームはその理を私達に教える為のゲームだったのでしょう。

 

 綺麗にまとめたつもり。

 自由過ぎ? 番外編だから良いんですよ!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『今年も後僅かデスニャー! 今年最後を飾る曲はこの曲ですニャー!』

 

 

「もう今年も終わりますねぇ。後何分くらいですか?」

 テレビから流れるペンとパイナップルとリンゴとペンを合体させる曲を聴きながら私は誰にとは言わずに聞きました。

 

「二分くらいニャン」

 答えてくれたのはお師匠さん。

 

 

 なるほど、後二分。

 

 

 

 

 いや、今年は色々ありましたね。

 なんたってこの物語どころか四作品、てか五作品書いてる神様が作品を書き始めたのが今年ですから。

 

 おっと、これ以上のメタ発言は危ない。

 

 

 思えば長かったような、短かったような。

 色々な人に支えられて今年も乗り切る事が出来ました。何がとは言いませんがね?

 

 さてさて、もう今年も終わりです。

 投稿時間は元旦なのでもう終わってるんですけどね!

 

 

 

「ご主人」

「にぁ?」

「皆さん」

 皆さんとは誰か。誰かとは言いませんけどね。

 

 

「今年はありがとうございます」

 

 

 年が明けます。

 

 

「来年もよろしくお願いしますね!」

 どうか神様が失踪とかしないように……と。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 番外編その2。

 

 

 月に兎が居るとは誰が言ったのか。

 見える場所で見える人にはそう見えるのだそうです。

 

 しかし、この世界の月にはネコが居ます。

 

 ネコが餅をついているのです。

 

 

「うニャーン!」

「にぁー」

 餅をつく二匹のネコさん。

 

 あ、お月様では無いです。地上でのお話。

 

 

 

 師弟で仲良く餅つきとは見ていて癒されますねぇ。

 

 時は元旦お正月。

 

 

 皆さん、初詣ですよ!

 

 

 

 

「似合いますかね?」

「似合っとるぞ、半世紀前の嫁に良く似とる」

 このやりとりどこかで。

 

 今では珍しい人間用の着物を身に纏いながら、私は鏡の前で一回転。

 和が色深いユクモ村という村に伝わる古着だそうです。人間用の物は貴重なんですよ?

 

 

 人類、衰退してますから。

 

 

「すっごいですねこれ! 可愛いです!」

 黒髪を下ろした後輩ちゃんはこの着物がとても似合っていました。

 

 しかし、おかしい。

 着物って体のラインが隠れるはず。なぜ隠しきれていないのでしょうか。

 

 

 後輩ちゃんのボインは化け物か!

 

 

「それでは行きましょうか」

「了解でありまーす!」

 わたし、いきまーす。

 

 

 

 

 人類が手放したドンドルマの街。この街の創造主である大きな人の像がある集会所の付近はアイルーさん達がお祭り騒ぎを起こしていました。

 やれビールだ、やれ串焼きだ、大量のマタタビが飛び交いアイルーさん達は飲まずして酔っ払います。

 

 この祭り危険。

 

 

「色々なお店がありますね!」

「どれも崩壊してますけどね」

 マタタビに酔ったアイルーさん達は商売なんぞ知った事かと踊るのです。

 

 マタタビはちゃんと瓶に入れて蓋をしないとネコ生を狂わせます。

 

 

「これ一本貰えます?」

「持ってけニャー! ふにゃにゃー!」

 世界崩壊の危機な気がしてきました。

 

 しかし、毎年こんな感じらしいので上手くやっているのがアイルーさん達みたい。

 人間とは大違いですね。

 

 

 

「あ、居ました居ました!」

 突然私の肩を叩いではしゃぐ後輩ちゃん。

 これ、淑女がそう騒ぐ者ではありませんよ。

 

「おや……まぁ」

 そんな後輩ちゃんが指差す先には、後輩ちゃんのご主人であるピンクちゃんの姿がありました。

 どうやら、おみくじをやっているようですね。一回マタタビ二個と良心的なマタタビ。

 

 

「やってるかい!」

 それは居酒屋に行く時の発言です後輩ちゃん。

 

「やってるミャ!」

 やってるんですねぇ……。

 

 

「お酒も出るミャ」

「お仕事は絞った方が良いですよ?」

「そうでもしなきゃ稼げないミャ」

 世の中世知辛いのですね。いや、あなたニャンターだからそこまでして稼がなくても。

 

 

「一本引いて良いですか?」

「マタタビ二個になるますミャー!」

 お支払い。

 ちなまに、この世界ではマタタビ以外の通貨と呼べる物がないのでお釣りの概念はありません。

 

 

 おみくじというのは、いわば占いのよくな物です。

 年初めに何通かに分けられたクジを引いて、良い結果が出れば今年も良い結果になりますよとそんな感じの。

 

 

「さて今年の運命やいかに」

 お気に入り増えますように。評価も高くもらえますように。感想下さい。

 

 

 

 確か、大吉が一番良いんでしたっけ?

 あ、でもこれは人間知識での事でアイルーさん達のおみくじはどんな物なんでしょう……?

 

 

「…………マタタビ爆弾」

 いきなり何を呟いたかと思うかもしれませんがおみくじに書かれていたのが、そのマタタビ爆弾という文字でした。

 

 ワカラネーヨ。

 

 

 ちなみに後輩ちゃんはコタツだったみたいで。もうこれわかんねーなおい。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 番外編その3

 

 

 羽根つきという遊戯を耳にした事はあるでしゃうか?

 

 最近の若者はしないみたいです。

 それはもう、私の小さな頃なんて。やる相手が居ませんでした。

 

 

 人類自体、居ませんでした。

 

 

 

「羽根つき大会とな?」

「うニャン。二ペアで参加して優勝者にはかちくわが貰えるニャン」

「なんでちくわ」

「私達はお魚大好きニャン」

 へぇ……。

 

「オトモさんもどうニャン?」

「いや、わたしは別にちくわは……」

「……にぁ」

 あら、ご主人?

 

「…………欲しいにぁ」

「分かりました」

 そんな訳で、参加します。

 

 

 

 というか、人間も出場して良いんですかね? 体格上強いですよ私達。

 

 そんな心配は現実の物となりました。

 現人類といえど、やはり人間とアイルーの間には壁があるのです。身長差という壁が。

 

 

 要約すると、わたし物凄く強かったです。

 

 これなら世界も夢じゃない。

 しかし、そんな世界はもうこの世界にありません。

 

 

 

 

 準決勝。

 

「まさか姉御がここまで登ってくるとは。流石です!」

「でも俺達も負けないニー!」

 その相手はモヒカンさんと黄色君でした。

 

 今回出ないと思ってたらこんな所で出番を貰っていたとは。

 

 

 

「いざ勝負っす!」

「ごめんなさい貴方達には興味ありません」

「「えぇぇぇええ?!」」

 必殺、主人公パワーで格下を粉☆砕。

 

 出番終了。

 

 

 

「遂にここまで来たかニャンバカ弟子!」

「勝ちましょう、マスター」

 必然的に決勝戦はお師匠さんとKでした。

 

 ふ、勝てる気がしない。

 しかし、やってみなければ分かりません。

 

 

 いざとなったらアレを使いましょう。

 

 

 

「全国生放送で始まる今年の羽根つき大会の決勝戦、スタートニャー!」

 司会さんのそんな言葉から、羽根つき大会はスタートしました。

 

 先にボールを打つのはお師匠さん。嫌な予感しかしませんね。

 

 

「喰らえニャン!!」

 振り被る羽子板に叩かれた羽根。

 

 それは光を描いて私の頬を掠めていきました。

 

 

 

「先行チーム一点選手ニャー!」

 ちなみに、羽根つきは本来落とした人に墨を塗るのですが。

 アイルー時代なのでそんな事はしません。

 

 

 いや、そんな事はどうでも良くて。おかしいですよ。

 なぜ羽根つきが羽根をついてるかといえば、羽根の空気抵抗で玉に速度が出ないようにして子供でも簡単に遊べるようにという配慮であってそれがこんな音速で飛んで来るなんて普通はあってはならない事でそもそもどうしたらそんな速度で羽根を撃てるのだとか色々ツッコミが追いつかないのですが!!

 

 

「……にぁ。師匠強過ぎ」

「あ、諦めてはいけませんよご主人。世の中どうしようもない事の方が少ないのです」

「先行チーム二点目会得ニャー!」

 そう言っている間に、さらに一点取られました。

 

「…………にぁ」

 あぁ、負けを確信した人の顔をしてらっしゃいます。

 

 

 

 しょうがない、裏ワザを使いましょう。

 

「次のサーブはわたしが頂きます」

 サーブも交代なのでわたしの番。わたしはアレを羽根に擦り付けてから、出来るだけ緩くボールを打ちました。

 

 本来はひねつきってこうやってゆっくり遊ぶものなんですけどね……。

 

 

 

「ニャニャーン! そんなゆるゆるボールまたスマッシュで返してやるニャーン!」

 テニスじゃ無いんだから……。

 

 ふ、しかしそれは不可能ですよ。

 

 

 羽根がお師匠さんの頭上に着てから落ちるその瞬間。

 

「くらえニャ———」

 お師匠さんの手が止まり、羽根はそのまま地面にストンと落ちました。

 

「え?」と、頭に疑問符を付けるK。

 

 

「後攻チームも一点ダッシュに成功ニャー!」

 司会さんの声が響き、会場は大いに盛り上がりました。

 

 あの金狼と名高いお師匠さんから店をもぎ取ったのですから、騒がれるのも当然かもしれせん。

 

 

「お、オトモさん……? 何をした、にぁ?」

「ちょっとしたチート、ですよ」

 若干犯罪ですか。

 

 

「ま、マスター?!」

「にゃ、にゃーん……」

 明らかに身体をフラつかせお師匠さん。

 

 ふ、いくら化け物じみたお師匠さんでもアイルーはアイルーという事ですよ。

 

 

「ま、まさか……」

 Kは気が付いたようですね。

 

 

「まさかお前!!」

「そう、そのまさかですよ。粉末状にしたマタタビを羽根に付けてみました」

 人間社会がまだあった頃の話に例えるのなら、近くに寄っただけで酔っ払うお酒を掛けたのも同じ。

 そんなお酒はありませんがね。

 

 

 要するに、お師匠さんを酔っ払わせた訳です。

 

 アイルーにとってマタタビは人間にとっての通貨よりよっぽど価値があります。そりゃ、持っているだけで幸せという位には。

 そんなマタタビを粉末状にさて、こんな使い方をするなんてアイルーさん達には考えも付かないでしゃうね。

 

 

 ネコに小判、人にマタタビです。

 

 

 

「また一点取ったニャー! どうした事でしょうニャー!」

 

「き、気を確かにマスター!」

「またたびが世界に橋をかけてるにゃーん」

 勝ちは見えましたね。

 

 

「ふははははは! ちくわは貰いましたぁ!!」

「なんか完全悪役にぁ……っ!」

 完全勝利したわたし!

 

 

「ふざけるなよテメェ!」

 あー、あなたがまだ残ってましたね。

 

「マスターがこんな状態になろうが、俺一人でお前らを倒せばマスターにちくわをプレゼント出来る……っ!」

 ちくわの為に何やってるんでしょうね……大の大人が。

 

 しかし、私もご主人にちくわをプレゼントしたいのですよ。

 

 

 

「良いんですかねぇ?」

「……は?」

 

「マタタビとはいえ、そんな無防備なお師匠さんはそうそう見られるものじゃありません。今の内にモフモフしておいた方が……幸せだと思いませんか?」

「………………はっ?!?!」

 悶絶し、動きを止めるK。

 

 

 

「はーはっはっは!! さぁ、どうするんですか? えぇ?!」

「悪にぁ……もう完全に悪者にぁ……っ!」

「ふ、俺の負けだ―――マスタぁぁ! もふぅぅぅ!!」

 

 

「試合続行不可能につき後攻チームの勝利ですニャー!」

 不正とかありませんよ。

 

 

 ちくわはパフェとなって美味しくご主人のお腹に収められました。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 おまけ。

 

 

「年賀状なんて誰に送るんだ」

 書斎で久し振りに文字を書き連ねるわたしに、おじいさんはそう問いてきました。

 

 

「皆に、ですかね?」

「お前に友達が出来るとはな……」

 失礼過ぎやしませんか?

 

 

 

 謹賀新年

 

 昨年は大変お世話になりました

 

 今の私が在るのは皆様のお陰です

 

 本年度も精進いたしますので

 

 どうか温かい目で見守って下さい

 

 皆様のご活躍も期待しております

 

 

 

 そんな訳で本年度も———

 

 

 

「———宜しくお願いします、と」




あけましておめでとうございます!!


物凄くハッチャケましたが、番外編だしね?!←

今年は色々な人にお世話になりました。
来年も宜しくお願いしますという思いも込めて、最後の年賀状をやる為だけに書きました。お気に入り減りそう()

来月からはちゃんと更新します(`・ω・´)

それでは

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