らくだい魔女と最初のラブレター   作:空実

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大人になります。


四章

× 1 ×

▼△ フウカ ▼△

 

 

 

……大人になるのは。

高校を、卒業するのは。

全然、先の話だと思ってた。

まだ、大丈夫だ。

まだ、あたしは子供だ。

まだ、ママがいるから。

あたしはまだ、女王になんてならない。

そう、思っていた。

でも、現実を目の前に突きつけられたとき、あたしはどうすればいいのだろう。

 

 

「女王様、赤の国のサヤ様に第一子が誕生されました。お祝いは、何をお送りしたしましょう?」

「女王様、お届けものです。水の国からでございます」

「女王様、来週の会議についてご意見をお伺いしたいのですが」

 

……騒がしい。

ママはこんなに忙しい思いをしていたのかと、今更ながら思う。

空は綺麗に晴れているのに、外に出るような時間などない。

友達に会うなんて、以ての外なのだろう。

 

「ひめっ……じゃなくて、女王様〜!!カリン様から、お手紙です」

 

相変わらずのセシルには苦笑する。

変わらないチョコレート色の髪と瞳は、あたしが小さい頃から変わらないのだ。

【お世話係】と言うのは姫につくものらしいが、あたしはセシルにそのままの距離でいて欲しいと頼んだ。

ママも好きだけど、セシルも大好きだから。

普通の侍女になってしまうのが、嫌だった。

 

「カリンから?」

「はいっ」

 

カリン。

あたしの親友。

……だったりするんだけど。

カリンも緑の城の女王になっちゃったから、中々会えなかったりする。

そういえば、この前会ったのって、三ヵ国会議でだった。

 

「ありがと、セシルッ」

 

『フウカちゃんへ

最近、どう?

わたしとカイ君は一応元気に過ごしてるわ。

今度、久しぶりに4人で会いたいです。

今度、会いませんか?

いつなら都合が合うでしょうか。

お返事待ってます。

カリン』

 

……あたしなら絶対手紙なんて思いつかない。

これならあえなくてもやり取り出来るのだけど、この単細胞にそんなことが考えられるわけがない。

流石カリンだなぁ……

無性にカリンに会いたくなった。

 

 

 

 

 

× 2 ×

▼△ カリン ▼△

 

 

 

 

女王。

そう聞くだけで、どれだけの人々がわたしにひざまずくのだろう。

わたしは、そんなことなんて望んでいないのに。

……そう、母も思ったと言う。

だけど変わらない友達に、心を癒されたと。

そう聞いて、フウカちゃんに会いたくなった。

ホウキで旅立とうとしたら、ツルさんに引き止められた。

〈仕事が終わってないでしょ〉。

たったそれだけの言葉だけど、わたしには未来が重くなる言葉だった。

そのとき、カイ君が現れて言ったのだ。

 

「カリン、出かけられないなら手紙を書けばいいじゃないか」

 

わたしはそれを聞いた途端に筆を走らせた。

そして、カイ君に届けてもらったのだ。

 

 

 

 

▼△ カイ ▼△

 

 

 

おいらは、なんでもないのに緑の城に住んでいる。

高校時代から、だ。

確か、ちーくんが帰ってきた頃だったと思う。

そう。あれは嵐の日で……

あの時、再度自覚した。

 

 

おいらは、カリンが好きなのだと。

 

 

だけど、居候の身でカリンに告白なんて。

いや、それ以前に王族に告白なんて。

そんなことが出来るほどおいらは偉くないし、勇気も持ち合わせていない。

 

くしゃくしゃっと髪をかいた時、カリンからあることを聞いた。

 

「あ、そうだわぁ〜!赤の城のサヤ様たちの元に、王女様が生まれたのよぉ〜」

 

そのとき、おいらはとある言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

× 3 ×

▼△ カイ ▼△

 

 

 

『ねぇ……?レオ。本当の気持ちって、なんなんだろうね。レオの本当の気持ちって何?』

 

幼き日の記憶。

……とは言っても、幼き日が長かったおいらにはどの幼き日なのかわからないのだが。

赤い髪の初恋の少女が、おいらに向かって、いきなり問いかけたのだ。

でも、その時おいらはなんと答えることも出来なかった。

『本当の気持ち』。

そう、一言で言われてもなんの本当の気持ちなのかわからなかった。

 

「なぁ……おいらはどうすればいいんだ……」

 

いつの間にか曇った空は、明るい太陽を隠している。

さっきまで、気持ち良いほど晴れていたのに。

 

「なぁ〜お」

 

気づけば肩にマリがいて。

そっと撫でてやると、満足したようにおいらの前から姿を消した。

 

「マリ……」

 

 

 

赤の国は、お祭りムードだった。

婚約パレードを遥かに超える、騒がしさ。賑やかさ。そして人々の笑い声。

赤の城には旗が掲げられ、先ほどからずっと花火があがっている。

 

「カイくん、じゃあわたしはサヤ様たちに挨拶してくるわねぇ〜」

 

カリンを見送って、国を歩き回る。

久しぶりの赤の国はあまり変わらなかった。

良いとは言えない治安なのに、何処か親近感の湧くアットホームな国はおそらく此処だけだろう。

 

じいさんの店に顔を出すことも考えた。だけど、行ったら何か言われそうで。

特に、プシーに。

行くのはやめにした。

それと、カリンにさっき聞かれたのだ。

『サヤ様たちへの挨拶、カイくんも行くかしらぁ〜?ほら、前の婚約パレードの時会いたがってたでしょ〜?』

でも、断っておいた。

会いたくないわけではない。

だけど、会いたくもない。

複雑な感情の整理はあの頃から出来ていない。

姉さんも初恋の彼女も忘れて【カイ】として生きていこうと決めたはずなのに。

 

 

 

 

 

× 4 ×

▼△ カイ ▼△

 

 

 

「……レオ?」

 

はっとして振り返っても、あの少女は居なかった。

その代わりにきょとんとしたカリンの姿が見えただけ。

 

「カイくん、どうしたのぉ〜?そんなに驚いてぇ〜」

「カリン……いや、なんでもないさ。どうだった?サヤ様のご様子は」

 

カリンはいつものカイくんに戻ったと嬉しそうに笑いながら、おいらにサヤ様との会話を聞かせてくれた。

 

「そうねぇ〜。この前と同じだったわよぉ〜。ハナ王女はね、すごく可愛くって」

 

どんな会話をしたのか、カリンは事細かに教えてくれた。

何処に今日は泊まるのか。

今日、一緒に来たおいらのこと。

朝に食べた食べ物まで話したらしい。

でも、申し訳ないがおいらは全てよく覚えていない。

多分……今のサヤを想像していたからだと思う。

婚約パレードの時より、遥かに大きくなったのだろう。

おいらなんて、とっくに抜かしているのだろう。

……ぶっきらぼうに話してしまったあの時。

……指輪を届けた、あの時。

全てきっとサヤは忘れてしまっているのだろうと。

 

「……ねぇ?カイくんの話したらねぇ、サヤ様が是非会ってお話してみたいって仰ったの。一緒に来てくれないかしらぁ〜?」

 

……本当に、いきなりだったのだ。

ちょうど昔のことを思い出して。

あの笑顔を思い出して。

なんて言ったんだっけ……

と、考えてるときだったのだ。

 

「いいよ」

 

そう、なんも考えずに言ってしまった。

 

 

 

 

 

× 5 ×

▼△ カリン ▼△

 

 

 

「へぇ〜、会ってみたいわ、その【カイ】って方に」

「サヤ、正気かい?」

「ちょっと気になるのよ。カリン様、呼んできてくださる?是非お茶をしたいわ。5人で楽しみましょう?」

 

サヤ様は、そんなことを仰った。

もちろん断ることは出来たのだろう。

だけど、何かある気がする。

そう、疑問を抱いていたわたしが答えを出すのはとても簡単なことだった。

 

「ええ、ちょっと誘ってみますね」

 

これが、とある秘密を開けるきっかけとなってしまうなんて知らないで。

 

 

誘えばカイくんは直ぐに「いいよ」と返事を返してくれた。

その時に、すこし考え事をしていたことには気がついたけれど気がつかないふり。

 

 

**

 

 

ハナ王女と、サヤ様と、ユリシス様と、わたしと、カイくん。

この5人でお茶をしたのは、ほんの短い時間だった。

ハナ王女は途中で泣き出して部屋から退室。

ユリシス様も、要件があってすこししたら部屋から出て行った。

 

それから、空気がガラリと変わってしまったのだった。

 

 

「カリン様とカイさんは前に私の婚約指輪を探してくださったのですよね?」

 

穏やかな口調。

これがわたしとの年の差か。

 

「え、ええ。まぁ……」

 

ちょっとわたしたちを見つめるサヤ様の瞳は怖くて。

思わず目をそらしてしまう。

 

「あの時は本当にありがとうございました。カリン様だけではなく、カイさんも」

 

でも、そんな顔が嘘のようにサヤ様はにっこり微笑んだ。

 

「えっ?……あ、いいえ……」

 

でも、いきなり。

そう、いきなりだった。

何かを決心したように、カイくんを見つめて。

こんな話を始めたのだ。

 

「私(わたくし)には、幼馴染がひとり居ました」

 

わたしはいきなりの話についていけなかった。

 

「あまりにも素直とは言えない幼馴染で、そこのカイさんとは正反対だったのですよ」

 

カイくんは、サヤ様を見据えていた。

少し、居心地が悪そうに。

苦しそうに。

 

「でも、私は彼が大好きでした」

 

サヤ様は気がつかないのはそのまま続けた。

 

「彼は、私にたくさんのことを教えてくれました。私は、この世界のことを何も知らないのだと思ったくらいです」

 

サヤ様は懐かしむように窓の外を眺めた。

変わらず花火は鳴り響き、騒がしかった。

 

「私の知っている赤の国や緑の国なんかとは違う、幻想的な世界があることを。そこだけにしか咲かない花があることを。あの世界だけが知る、秘密の歴史があることを。……彼が全て教えてくれたのです」

 

おもむろにカイくんの口が開いた。

 

「……そんなんじゃない」

 

わたしの知っている、カイくんじゃなかった。

いつもヘラヘラしてて、でも、いざという時には頼りがいがあって、わたしの大好きな。

 

「カ、カイくん?」

「……おいらは。おいらは……。……ごめん、カリン」

 

カイくんは席をたった。

 

「カイくん?どうしたの?ねぇ、カイくん!」

 

ぺこん。とひとつお辞儀をすると、兵を抜けて部屋の扉に手をかけると、

 

がちゃん。

 

という音と共に部屋から出て行った。

 

「カリン様。カイさんのこと、貴女はどれくらい知っているのですか?」

 

唖然とするわたしに向かって、サヤ様が問いかけた。

 

「……え?」

 

……わたしはカイくんについて何も知らないかもしれない。

今、そう初めて思った。

 

 

 

 

 

× 6 ×

▼△ ___ ▼△

 

 

 

 

僕は自分が嫌いだった。

サヤに、本当のことを何も言えなかったし、みせられなかった。

サヤは本当の笑顔をたくさん見せてくれたのに。

 

「レオ〜!遊ぼ〜!」

「レオ、サヤが来ましたよ。いってらっしゃい」

「姉上様、いってまいります」

 

そんな日々が続いていた。

ううん。ずっと続くと思っていた。

 

「ねぇ、レオ。この花きれいだね〜」

「……ああ」

 

「彼処に見える、野原にいこうよ!」

「……ああ」

 

「綺麗な月だね〜。お星様も、負けじと輝いてるよ!」

「……ああ」

 

僕は、殆どの会話を「……ああ」で済ませていた。

別に、サヤが嫌いなわけでは無かったのだ。

むしろ、彼女のことが好きだったと思うくらい。

だけど、僕はいつだって無関心を装っていた。

何を守るためでも無かった。

サヤを傷つけると言う事ぐらい、幼心にわかっていた。

明日、自分が先にサヤへと「おはよう」と声をかけて驚かせてみよう。そう、何度誓ったかわからない。

でも、自分は変わらなかった。

 

『じゃあ、またね!』

『……ああ』

 

この、最後の挨拶でさえも。

 

 

**

 

 

「レグルス様、君は今日から【カイ】だ。言いかい?」

 

じいさんの口調は穏やかで静かだった。

でも、その周りをちょこまかと動き回るプシーとやらの妖精がうざったい。

振り払いたいのだけれど、少し前に振り払ったら一時間喋れなくなった。

多分魔法だろう。

 

「それからや。カイ」

 

もう、早速カイって呼んでやがる。

 

「赤の国にいたらあかんで。サヤ王女に見つかったらあかんからな」

「悪いが、カイには銀の国のとある学園に通ってもらうことになったんだ。……これは、カイのお姉様から直々に頼まれたことなんじゃよ」

 

別に、そんなの望んでいなかった。

カンドラが消えるなんてどうでも良かった。

ただ。ただ、レグルスとしてサヤの隣にいたかっただけなのに。

姉上と、一緒に暮らしたかっただけなのに。

 

……でも、運命は残酷だ。

カイになって初めての、そんな思いは儚く散っていった。

 

 

 

 

 

× 7 ×

▼△ カイ ▼△

 

 

 

おいらは城の中庭をとぼとぼと歩いていた。

花火の音なんて、うざったい。

先ほどからは紙吹雪も舞っている。

騒がしい音の中で、聞こえるはずのないカリンの足音が聞こえた。

 

「カイくんっ!」

「カリン……」

 

すぐに分かった。

おいらを心配しているのだと。

勝手に出て行った、おいらを。

合わせる顔が無くて、その場から立ち去ろうとした。

カリンに会うのは、もうやめよう。

あんなおいらをカリンに見せてしまった。

でも、カリンは許さないといったようにかけてきて。

 

ギュッ……

 

「カイくん、カイくん……」

 

いきなり抱きつかれた驚きと、名前を呼ばれたということでカリンに目線を向けた。

 

「……わたしね、サヤ様に気付かされたの。わたしは、カイくんのことを何も知らないって……」

 

カリンの瞳には、大粒の涙が浮かんでいる。

その顔のまま、カリンはおいらを見上げた。

 

「ねぇ?カイくん。わたしにできることならなんでもするから……だから……」

 

カリンは更においらを強く抱きしめて。

 

「カイくんのこと、教えてくれる?」

 

いつものおっとり口調のカリンは何処かに消えていた。

いつから消えていたのだろう。

それにも気がつかないくらい、おいらは気をとられていたのだろうか。

 

「……ああ」

 

あの時と同じおいらのセリフはカリンを安心させたようで、少し後から「ふふっ」という嬉しそうな笑い声が聞こえてきた。

 

 

 

* *

 

 

「カリン……おいらは、カンドラの住人なんだ」

 

 

 

 

 

× 8 ×

▼△ カリン ▼△

 

 

 

 

カイくんは全てを話してくれた。

話にくそうなことも、全て話してくれた。

 

「……サヤはおいらの初恋なんだ」

 

きっと、忘れられない恋。

わたしはそんなのしたことないけど、どんな気持ちなのかはわかる気がする。

お別れのひとつも出来ないで消えてしまった恋を、わたしは見たことがあるから。

 

「……きっと、サヤは気付いてるんだと思う。おいらもサヤに話すつもりはない。忘れる道を、おいらもサヤも選んだんだ」

「いいの?それで」

「いいんだよ。おいらの最後のサヤへの頼みは幸せになってもらうこと。もう、それが叶っているのならそれが続いて欲しい」

 

静かな、静かな声だった。

 

……わたしも、カイくんに頼みがあるよ。

わたしのずっとそばに居て。

わたしがカイくんの特別な人になってみせるから。

 

 

「ご、ごめん。今日は」

「ううん、いいの。わたしこそごめんね」

 

今日も爽やかな風が頬を撫ぜてゆく。

まるで、わたしたちを囲むように。

 

 

 

**

 

 

 

カンドラの王様と

赤の城の王女の恋

 

いきなり消えたそれは

ふたりにとってあまりにも

強烈な別れだったのだとわたしは思う

また

恋をつくるのは

けして簡単なことではないのけれど

新たな一歩を踏み出して

別れの道を選んだんだよね

 

でも

わたしは知っています

別れても

お互いをずっと

覚えてるということを

絶対

忘れられないということを

だったら

わたしも負けないように

貴方の大切な人になろう

貴方の隣に居よう

貴方の二人目でいいから

大切な人になれるようにと

祈りながら

 

 

 

 

 

× 9 ×

▼△ サヤ ▼△

 

 

 

不思議な男の子に会った。

顔を隠した、男の子に。

とある日のこと。

退屈な城を抜け出して街に出て。

追いかけてくる門番をかわしながら、小道に入った。

そしたら、

 

どんっ

 

「あ、ごめんなさいっ」

「い、いや……」

 

その、男の子がいた。

男の子はさっさと立ち上がると路地の向こうまでかけていってしまったのだが。

それも、私の前に、金色の輝くコンパスを落としたまま。

きっと男の子のものだろうと思ったが、あまりの綺麗さに我慢出来ずに拾い上げてしまった。

その、金色のコンパスは周りに丸い輪っかが嵌められて、ものすごい輝きに満ちていた。

 

「綺麗……」

 

ひっくり返したり色々としていると、どう考えても「回して!」と言わんばかりのネジがひとつ。

クルッと回してしまった。

 

「あっ……それはっ!」

 

ふと振り向けば、さっきの男の子がいた。

「あ、これ?ごめんね」と謝って返そうとしたが、無理だった。

突如眩い光が私と男の子を包み込んでしまったのだから。

驚きに私は声も出ず、男の子も慌ててコンパスを私の手から分捕った。

……が、時すでに遅し。

 

「うわぁーーー!!」

 

目を開けたとき、そこは赤の国ではなかった。

 

「何処……?此処……」

「……遅かったか」

 

男の子はコツコツと音を立てて、私に近づいてきた。

 

「此処は古代都市カンドラ。僕が治める国だ」

 

空では悠々と鳥が飛び回り、人々は皆若く老人などいない。

一言で言えば、そう、「砂漠の国」。

 

「カンドラ?でも、カンドラってもう……」

 

私は教科書に書いてあることを思い出した。

教科書には、「滅亡した都市」と書かれていたはず。

それにお母様もこの前古代都市の研究に行っていて、「何も無いからねぇ。いっても無駄だよ」とため息をついていたのだ。

 

「それは、カンドラが別次元にあるから。あのコンパスを回すとカンドラに行けるし、逆に此処でコンパスを回せば赤の国に行けるのさ」

 

よく、私はわからなかったけど、男の子がカンドラの説明をしていることにはよくわかった。

 

「君、早く帰りな」

 

そう、冷たく言われた。

だけど私はとてもとても聞きたいことがあって。

 

「名前は?私はサヤって言うの」

「……サヤか。僕はレグルス。あの、宮殿に住んでるんだ」

「じゃあ、レオね」

 

レオは笑った。

表現のしようがないほど素直な笑みだった。

しかしレオは急に顔を顰めて、私の手の中のコンパスを見つめた。

 

「……そうか僕と此処に来てしまったから、そのコンパスが無いと帰れないのか……これから僕は用事があるし……」

 

レオに私がコンパスを差し出すと、レオは私にコンパスを押し返して、

 

「いいよ。これはサヤにあげる」

「え、でも……」

「その代わりいつでもおいでよ、カンドラに。それを回せば来れる筈だから」

 

レオはコンパスをひとつしか持っていなかった。

多分、そのひとつを私にくれたのだと思う。

 

 

その後私は数え切れないほどカンドラに出かけた。

城でお母様に叱られて家出したときも向かったのはカンドラのレオの元だった。

新しい友達に出会った時も、何となく城に帰りたくなくなってしまった時も、いつもカンドラに行っていた。

嬉しい報告も、悲しい報告も、怒りの声も、楽しみの声も、すべてレオに教えていたのだ。

対するレオも、色々と教えてくれた。

花の名前にレオの家族のこと。

王宮で起こった可笑しな話や、ここに住む人々のこと。

すべて、教えてくれたのだ。

 

 

 

 

 

× 10 ×

▲▽ サヤ ▲▽

 

 

 

「じゃあ、またね」

「……ああ」

 

いつものようにレオに別れを告げてコンパスを回すと赤の国に帰った。

 

「姫様!?何処へ行かれていたのですかっ」

 

私は耳を疑った。

今まで、カンドラに行ってる間にこっちの時間が進んでたなんてことなかったのに。

この時に、一瞬おかしい。と思った。

いや、これは当たり前の反応なのだろうが。

これからまたカンドラに向かおうなんて私は考えることが出来なかった。

時計を見れば、3時間ほど時が進んでいる。

 

「ごめんなさい、ちょっと城の外へ……」

「今度からはきちんとお知らせしてくださいね。女王様も心配していらっしゃいましたよ」

「はい、以後、気をつけます」

 

 

**

 

 

また、今日もカンドラに出かけた。

 

くるっ。

 

コンパスをまた回す。

たどり着くのはいつもは宮殿の前だったのに、今日は巨大な廃墟だった。

 

「えっ_____……」

 

よく見て私は目を疑った。

これは、どう考えてもカンドラの宮殿の瓦礫なのだ。

色あせた壁は毎日見ているから知っている。

中には入ったことがないけど、外観なら見飽きるほど見てきた。

見間違えるはずなんてない。

 

「な……んで……」

 

はっ。

 

「レオ!?レオ!?レオーーーーー_____……!!!」

 

ハァッ、ハァッ……

 

何処にも姿が見えなかった。

カンドラの若き人々も、飛び回っていた小鳥でさえも。

 

……もちろん、レオも。

 

「何処?ねぇ、何処に行っちゃったの?」

 

はらり。

 

なにかの封筒が、はらりと落ちてきた。

広いあげて見てみれば、【サヤへ】と書いてある。

 

我慢できずに私は開いた。

 

『ごめん。』

 

彼のぶっきらぼうな字で、たったそれだけが書いてあった。

 

 

 

 

 

× 11 ×

▲▽ サヤ ▲▽

 

 

 

 

キィィ……

引き出しを開ければ、あの《ラブレター(手紙)》が顔を出す。

 

「ねぇ……レオ。私は、今、幸せだよ」

 

それが、婚約パーティーから一週間後の出来事だった。

 

「今日はですね、わたしと一緒に住んでるカイくんと来たのですよ。カイくんは赤の国出身で……ああ、そうです!サヤさまの婚約指輪を一緒に探してくれた子なのですよ」

 

嬉しそうに話す、カリン様。

顔は嬉しそうに輝いていて、きっとそのカイさんが思い人なのだろう。

そう、直感した。

 

 

『あー!レオ、また誤魔化してるでしょー』

 

耳に手をやるというレオの癖。

あの時のカイという少年も同じことをしていた。

 

 

「あの、カリン様。カイさんをここに呼んで来てくださる?」

 

私は確かめたくて。

ちょっとでも姿を見たくて。

カリン様にお願いしたのです。

……結果は……

まぁ、みなさんご存知の通りです。

 

 

 

**

 

 

私の初恋も

貴方の初恋も

どちらも

同じものだとしたとしても

それが100%叶うとは

誰も断言はできない

神のみぞ知るとは言うが

必ずそうとは限らない

それに

恋が叶うことが

幸せとも断言できないのだから

私は今

 

幸せです

 

あの日々よりも

 

幸せです

 

だからどうか

貴方も彼女と

幸せになってください

 

でも

約束があります

私を忘れないでください

私も忘れませんから

貴方も忘れないでください

忘れないでいてくれたら

私はそれだけで

満足です

 

 

 

 

 

× 12 ×

▲▽ フウカ ▲▽

 

 

 

 

お茶会。

手紙でカリンに誘われた、あたしとチトセだけどチトセは急用でこれず。

カイもなんやかんやで忘れていたらしく、仕事を入れてしまったなどとほざいていた。

そういえば、今日は怪盗Xが青の城に予告状を出したんだっけか。

それでチトセは駆り出され……

何故カイも休むことになったのかはあたしには全くわからないが。

 

「んで?カリンは結局カイに告白したわけ?」

「そっ……そそそ、そんなことするわけないじゃなぁい。向こうに気があるとは到底思えないし……」

 

あたしは忙しすぎて全く顔を出せなかった、赤の城の王女お披露目パーティー。

カリンはカイとともに、そこへ向かったらしい。

そのときのカリンの惚気話をあたしはちゃんと聞いてあげているということだ。

 

「そう?……そう言ってるうちは、一生付き合えないわねー……ま、あいつが直ぐ告白しないなんて想定外だけど」

「もぉ、フウカちゃ〜ん?」

 

あたしはごめんごめんと平謝りをしてティーカップを手に取った。

 

第三者から見れば、どう考えても両思いなのだ、カイとカリンは。

あたしなんて既に、脳内に【カイカリ】というタグを作ってしまっているくらい。

だけど、問題が。

素直なのか素直じゃないのか、わからない。

特に、カイが当てはまると思う。

昔の記憶では、すぐにカリンにでろーっとしてた気がするのに。

高校のハリーシエルで出会った時には、何処か内気なカイがいた。

あまり気には止めていなかったのだが、こう話を聞くとやはり違う気がする。

 

「そんなこと言ってぇ〜。そういうフウカちゃんはチトセくんと会えているのぉ〜?」

「あんまり会えてないかなぁ。たまーに仕事の後行くぐらい」

 

……実はあたし、最近チトセと会えてない。

忙しすぎる。

チトセもあたしも、仕事が嫌になるほどあるのだ。

 

「たまーにすらも会えてないんじゃぁないのぉ〜?」

「カリンっ!鋭いなぁ……全く……。しょうがないじゃん、仕事が多いんだし」

 

今年、銀の城で創立何年かのパーティが開かれる。

そのために仕事は何十倍にも膨れ上がり、ママにも「すべて任せてしまったな」と謝られたぐらい。

 

「……まぁ、今年はものすごく忙しそうだものねぇ〜」

「そうなんだよ!」

 

カリンに認めてもらえたようで、あたしも嬉しくなった。

にへっ!と笑うとカリンはクスクスっと微笑んだ。

 

「もぉ、フウカちゃんったらずっとわからないわねぇ〜」

 

こうして、カリンと話してるのがとても楽しい。

このまま、時が止まってしまえばいいのに。

そうすれば、あの大量の書類と格闘せずに済むのに……

一瞬でも考えてしまうあたしにゾッとする。

 

……なんでだろう。

どうしてこうしてる合間にも仕事をしなくちゃ。と思ってしまうのだろう。

仕事が好きなわけでもない。

現に今日は、止めるセシルにたくさんお願いしてお茶会に参加したのだ。

それなのに_____……

 

「どうしたの?」

「……ごめん、カリン。まだ仕事が残ってた」

「あら、そうなのぉ〜?また、お茶会しましょ〜」

 

カリンはわかってたと言うようにウインクをすると、パチンっと指をならした。

たちまちお茶の入っていたコップたちは消え去り、何も乗っていないトレーだけがテーブルにある。

 

「あたし……なんでこんなに変わっちゃったんだろう」

 

 

 

 

 

× 13 ×

▲▽ カリン ▲▽

 

 

 

「あたし……なんでこんなに変わっちゃったんだろう」

 

フウカちゃんの不思議そうな呟き。

確かに変わってしまっていた。

わたしも、フウカちゃんも、チトセくんも。

……この前、薬草店のユイちゃんがお城に薬草を届けてくれたときも、ユイちゃんはものすごく大人っぽくなっていた。

 

「なんで、でしょうねぇ」

 

わたしだって聞きたい。

これからの運命を。

これからの全てを。

 

「あーあ……じゃあね、カリン」

「ええ、また会いましょ〜」

 

フウカちゃんがひらひらと手を振って城へと帰ってゆく。

わたしも微笑んで手を振ると、緑の城の執事さんを呼んでお茶会の道具を片付けてもらった。

 

「ああ、そういえばカイくんは何処にいるかわかります?」

 

そう聞けば、執事さんはピシッと背筋を伸ばして、

 

「わたくし共にはわかりませんが……門番のツタたちに聞いてみてはどうでしょうか」

 

執事さんも変わった。

昔はものすごく優しかったのに。

今は、もう違う。

ちょっと厳しくて、仕事を効率よく進められるようなことばかりしてくれて。

わたしが楽しむためのことは、もうしてくれない。

 

「ツタさん……」

 

サワサワ……

 

『どうしたのですか』

 

……植物のみんなも、もう友達として接してくれない。

わたしの友達は、本格的にフウカちゃんたちだけになってしまっている。

フウカちゃんも、そうやって嘆いていたっけ。

 

「カイくん、知らないかしら?」

『いえ、存じ上げません』

「そう……」

 

もう、いいや。

さっさと仕事場に戻って、仕事を終わらせよう。

今日の分が終わったら、部屋でアルバムでもめくってみよう。

そうしたら、何か……

何かが、わかる気がするから。

 

 

 

 

 

× 14 ×

▲▽ _____ ▲▽

 

 

 

【世紀の大怪盗】

 

そう、呼ばれた。

 

「マリアンヌ、じゃあ行こうか」

「グルルルル……」

 

今の仕事は【怪盗】なのだ。

【怪盗X】という人物になりきって、お宝を盗む。

ただ、それだけの話だった。

カンドラの伝説の年を動かす魔法を使って自分を老かせ、大人に成りすまして盗みを働いた昔。

でも今は、自分の本当の年齢のまま盗みを働く。

そう、いいものでもないが。悪いものでもない。

 

「皆様、お待たせ致しました。怪盗Xでございます。本日は青の城の秘宝をいただきに参りましたが……。おっと、王様。これはとんだご無礼を」

 

ちーくんに会釈をし、ニヤリと笑って見せる。

 

「くっ……。時のくさりっ!」

 

長い付き合いのためか、いくらでも交わせた。

ちーくんも、何か異変に気付いたのか魔法を止める。

 

「お前……オレと会ったことがあるのか」

「そんなこと、ないですよ。きっと気の所為です」

 

そう言いながらもおいらはちーくんだけに見えるよう、すこし帽子を外した。

 

「おっ、お前……」

「実は今回の目的は、その秘宝ではないのです。少しの間、国王をお借り致します。問題はございません。わたくし共は知り合い以上の仲ですので」

 

国王軍に槍を向けられるが、おいらは軽くかわすとちーくんの手を取って夜空に駆け出す。

 

「ちーくん、ちょっとお話」

「なんなんだ、お前……」

 

次は軍に弓を構えられるが、国王であるちーくんが隣にいるので撃てずに構えたまま止まっていた。

 

「……お前たち、もういい」

 

ちーくんの暗い声が響く。

 

「ですが、国王様っ!」

「本物の、知り合いだ。朝までには帰る」

 

国王軍が城へと帰っていき、おいらも安心して変装をといた。

先ほどから声を唸らせていたマリアンヌにも元にもどってもらいひと撫でする。

 

「なんの用なんだ。単なる用ならわざわざそんなことしなくても……」

「だっておいら、何故か青の城に入れてもらえないんだもーん」

「は?なんでだ?」

「おいらはカリンやフウカと違ってあまり青の城に行ったことがないからねー。おまけに最近行ってないし、門番も変わってるでしょ?」

 

おいらはのんびりとそう言って、手を頭の後ろで組んだ。

 

「……だったら連絡してくれれば……」

「国王への手紙は厳重だから急用の場合はなかなか届かないのさ」

 

ちーくんは「まぁ、そうだけど」と嫌々納得する。

そして今度こそおいらを見据えた。

 

「要件をさっさと言え」

 

 

 

 

 

× 15 ×

▲▽ カイ ▲▽

 

 

 

 

「要件をさっさと言え。さもないと、国王権限でお前を牢屋に打ち込むからな」

「まぁまぁ、ちーくん落ち着いて」

 

優しくちーくんを宥めると、きつい表情で睨み返される。

気にならないふりをしてそっぽを向いた。

 

「……フウカ」

「は?フウカぁ?」

 

いきなり恋人の名前を呼ばれ、驚いているようだ。

まぁ、無理も無いことだが。

 

「……フウカに、会いに行ってこい」

「なんでお前に指図されなければならないんだ」

「……カリンが望んでいるから。ちーくんとフウカが、前のように冒険に出かけて行くことを」

 

それは、半分嘘で半分本当だった。

カリンがそう祈っていることは自分にはわかりきっていることだ。

でも、それだけではない。

自分だって祈っている。

友人の幸せは、誰にも負けないぐらいに祈ってきたのだ。

 

あと、あと一歩なのだから。

もうちょっと、頑張って欲しい。

そう思うのは当たり前だと思うんだ。

 

「そうかよ」

 

ちーくんのポーカーフェース。

もう、何度も見てきた。

それを見るたびにちーくんをからかって、カリンと共にフウカの鈍感さに笑って。

……そう、してきたのだから。

 

「おいらからはそんだけさ。多分、フウカは今でも待ってるんじゃないかな。銀の城で」

「……ああ」

 

おいらと一緒だ。

未熟だった、おいらと。

 

なんなんだ。ちーくんは。

帰ってきたと思ったら、急に何故か素直になっていて。

……でも、それ以上に行かない。

何故、なんだ。

あと、一歩なのに。

 

 

 

 

 

× 16 × 〜 パターン1 〜

▲▽ チトセ ▲▽

 

 

 

『チートセくんっ!』

『チトセ〜!』

『チトセっ』

 

オレは、いつだってフウカと一緒だった。

一緒じゃなくても、心はひとつ。

そのつもりだった。

 

 

**

 

 

フウカは、眠っていた。

今日はもう、遅いのだから仕方がない。

 

「フウカ」

 

コンコンっと窓を叩くも、フウカは唸ることすらしないほど、深い眠りについているようだった。

申し訳なく思いながらもそっと窓に手をかける。

昔から、フウカは窓を開けっ放しにして眠る癖があったのを、オレは鮮明におぼえていた。

 

「……おじゃましまーす……」

 

つぶやくように城へ進入し、フウカの布団に手をかける。

 

「フウカ」

「んん〜ん……」

 

フウカは半目を開くと、そのまま時を止めたかのようにしばらく停止。

 

「おーい。寝ぼけてんのか〜?」

「え……やっぱりチトセなの?」

「それ以外誰だよ」

「……さぁ」

「わからないのかよ」

 

そんな茶番をして、ふたりでクスクス笑う。

フウカの笑顔にまた、ほおが熱い。

 

「なんで、城に不法進入?」

「……なんとなく」

 

「ハァ?」と呆れるフウカも、前と変わらない。

 

「なぁ、フウカ。今日は久しぶりにどっか行こうぜ……デート、だな」

 

真っ赤になるフウカ。

それにたいし、可愛いとしか言えなくなったオレに苦笑する。

軽く変装をして、街へ出かけた。

 

 

**

 

 

「……懐かしいね」

「おう」

 

学校。

パティ先生に、たくさん怒られたフウカ。

それ巻き込まれた、オレやカリン。

この頃だ。たくさんの冒険へ繰り出されていたのは。

 

たくさんの思い出の場所を巡って、結局辿り着いたのは、公園のベンチ。

 

「……最近、どれくらい忙しいんだ?」

「すごく、だよ。猫の手も借りたいぐらい」

「ほう。じゃ、オレが手伝ってやろうか」

「何言ってるのよ……そんなの、銀の城の者じゃないと出来るわけないでしょ?」

「じゃあ、成ればいい」

 

 

 

 

 

× 16 × 〜 パターン2 〜

▲▽ カイ ▲▽

 

 

 

 

キィ……_____

 

「あら?カイくんっ。おかえりなさぁ〜い」

 

なんとなく入ったのは、カリンの部屋。

女の子の部屋に入るなんて非常識かもしれないが、カリンがいつも夜にいる部屋は、机と本棚とたくさんの植物がある結構シンプルな部屋。

ここには普通に執事やちーくんなんかも入っていたから問題ないのだと思う。

 

「……カリン。ただいま」

「元気ないわねぇ〜?どうしたのぉ〜?」

 

鋭いカリンは、意外と容赦ない。

心にぐいっと入り込んでくる。

 

 

……だから、惚れた。

 

「なんでもないよ、カリン。ねぇ、ちょっと外に出ようか」

「外?いいわよ〜。今日のお仕事もさっき終わったばかりなのぉ〜」

 

「それはよかった」と微笑んで、カリンの手を引く。

カリンの背中のあたりまで長くなったライトグリーンの髪がふわふわ揺れた。

最近はよく結わくようになっていたのだけど、今は下ろしていた。

 

 

**

 

 

「……なぁ、カリン。おいらはこれからどうすればいいのかな」

「どぉしたの?いきなり……」

 

今宵の夜は暗く優しい風が頬を掠める。満天の星空の下、おいらとカリンはテラスのイスに向かい合って座っていた。

 

「だって……さ」

「……ねぇ、カイ君。わたしはカイ君だから、信頼してるの。フウカちゃんもチトセ君も大切な友達だけど、カイ君は違う」

 

そういうと、カリンは優しく微笑んだ。

 

その姿に思わずドキッとしたが……

 

その後の言動によって、ドキドキは更に上のものへとなってしまったよである。

 

 

 

 

 

× 16.5 ×

 

 

 

 

▲▽ CHITOSE×FU-KA ▲▽

 

「だから、家族になればいいんだよ」

 

 

▲▽ KAI×KARIN ▲▽

 

「……ねぇ、わたしと、結婚してくれない?」

 

 

 

 

 

最終話。。。× 17 ×

 

 

 

▲▽ 銀の城 side ▲▽

 

 

『ああっ、こらっ。何してるの、ふたりともっ。ごめんなさい、ヒナリ。この部屋を片付けておいてくれるかしら?……ふたりにはお仕置きでもしましょうか』

 

『うう〜っ、ごっ、ごめんなさぁ〜い!』

 

『ぼくももうしないからぁ〜っ!』

 

『その言葉を聞くのは何回目?』

 

『……何やってるんだ』

 

『パパッ!』

 

『おかえり〜っ!』

 

『……はぁ……怒る気なくしちゃった』

 

『何やったんだ?』

 

『ほら今。ヒナリがかたしてるでしょ?』

 

『わっ。パパは見ないで!』

 

『父さんは見ちゃダメ!』

 

『……ああ、わかった、わかった。そうだ。黄の国のお土産があるんだ。みんなで食べるか?』

 

『なんのお土産?』

 

『まぁ、見ればわかるさ』

 

『食べよ、食べよっ!』

 

 

 

 

 

▲▽ 緑の城 side ▲▽

 

 

 

『おはよう、ふたりとも』

 

『ママ、つかれてるんだったらまだねてていいんだよ?きょうはおしごとおやすみなんでしょ?』

 

『だからこそ、早起きするのよぉ。今日はピクニックにいきましょぉ?もちろん、パパも誘って……ね?』

 

『ピクニック!?』

 

『えぇ。お庭の桜がとても綺麗に咲いていたのよぉ』

 

『ほんと?……じゃあ、パパをよんでくるねっ!』

 

『さぁて。カイ君は起きてくれるかしら?娘には甘いものね……きっと、起きてきてくれるでしょうけど……』

 

『まだ眠いんだけど……』

 

『ピクニックいくの!ね?いいでしょ?』

 

『ピクニック?……お前がそういうんだったらな』

 

『クスッ。もう、サンドイッチは用意してあるのよ。じゃあ、行きましょうか』

 

『うん!』

 

『ああ』

 




カイカリ編の裏に隠されたレオサヤの世界です。私はサヤ様大好きなんで、どうしても登場させたかった記憶があります。カイカリ派のレオサヤ派。新蘭派のコ哀派みたいなものですよ。
カイって不老なのかなぁ、初恋の君でもそんなに語られなかったカイの秘密は謎ですね。サヤ様と同い年くらいだったみたいだからそうなんだろうけど。
出会いの物語でも怪盗Xの謎が解けただけでしたし……

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