らくだい魔女と最初のラブレター 作:空実
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金色のドーナツ型のテーブル。黄金に輝くアンティーク椅子に紅のクッション。そして、肌色の壁に描かれた魔獣はとても勇ましく、威厳に満ちていた。
「これから第××回、王族会議を始める」
そう話す赤の女王と隣のサヤさまは清楚な身なりで見た目からすごく華やかだった。
あたしは今、ママの隣でドキドキしている表情を隠すのに必死である。カリンを見ると、落ち着いた表情で赤の女王さまへと視線を向けていて、さすがカリンだなぁとしみじみと思ってしまった。
身につけているのは銀色のドレスである。ママと一部の布をお揃いにして城専属の仕立て屋さんが仕立ててくれた。昔から使えてくれているその仕立て屋さんは、あたしの制服やら部屋着やらももろもろ仕立ててくれる腕の確かな人だ。
この金色の髪には到底似合わないが、似合わないからこそ、きちんとした態度で臨まなければならないのである。
右隣のカリンは黄緑色のワンピースを華やかにきこなしていて、いかにも緑の城という草木をイメージしたデザインになっているようだった。
ライトグリーンの髪と瞳によく似合っていて、なんだか落ち込む。
……逆側には青の王さまとその向こうにレイ王子がいて、またその奥は、なぜか空席だった。
「ではまず、この春に高校へと進学した王女がふたりいる。銀の城の王女、フウカ姫と緑の城の王女、カリン姫だ」
あたしとカリンは立ち上がって一礼する。すると他の王族が拍手をしてくれた。
「ご存知のように、フウカ姫は銀の城。カリン姫は緑の城の王位継承者であり、学業の方もよく、フウカ姫に関しては運動神経が抜群であります」
その言葉を聞きながらまた席につく。
「そしてこのふたりは高校卒業後に王位即位を予定している」
ママはまだまだ現役でいられるぐらい元気で、言われたときはびっくりした。それでも、カリンのママである緑の女王と相談して退位を決めたらしいしママが今まで頑張っていたことも知っていたから黙ってそれを承諾した。
高校生ならなる前の春休みに聞かされたばかりで、まだあたしも実感は沸いてないけど。
ここ3年くらいはお見合いを数え切れないほどしている。
チトセを忘れられないあたしを見て、ママが考えてくれたことだとは思ってるけど、どうしても見つけられず、それは小学生のころからお見合い写真の山に囲まれていたカリンでさえも同じらしい。
普通だったら高校生で独身はあたりまえかもしれないが、サヤさまなどの王族に比べたら、「まだ」、となる。
ママも遅かったから気にしなくていいとは言われたし、カリンはもちろん、レイ王子もまだ結婚はしてないからあまり気に留めてはいないんだけど。
「そしてもう一つ。重大発表がある」
女王さまは深刻な顔をして、そう言った。
周りの王族たちは眉間にしわをよせ、心なしか、隣のレイ王子の顔が固まっている。
「みなさんもご存知のことだろう。青の城の王子のことだ」
あたしは思わずハッとして、青の城の方をみた。カリンもピクリと反応する。
(ま、まさか……だよね?)
壁中にいた召使いたちは窓を閉め、サッとカーテンで覆うとドアから出て行った。
それを確認するかのように部屋中を見渡すと、重々しく口を開いた。
さっきまで吹いていた風も小鳥のさえずりも日の光も一切入らない部屋の中。
その中で、カチコチと大きな振り子時計が時を刻む音が部屋にこだましていた。
「青の城の王子は今、12人だ。末の第13王子は既に亡くなっている。……このことについて、レイ王子からあるそうだ」
レイ王子の首筋からは一筋の汗が流れている。
他の王族の目線も、あたしの目線も、みんなレイ王子に注がれた。
「青の城の第13王子は……
生きています」
「では、何処にいるのだ。」
黄の城の王様が質問する。
「……ここです」
チトセの声がした。いつの間にか、あの空席の前にチトセはいた。
さっきのは見間違いじゃ無かったようで、チトセはまっすぐと前を見て、その席の後ろに立っていた。
「______________……」
ママも知らなかったのか、目を丸くしてあたしを見た。
そんなママに、あたしは______________少しだけ、笑ってみせた。
これで二章の終了です。四章まで終わったら、時の壁が使えることが世間に知られてしまったチトセの話を書こうと思っています。最近のラブレターの時間軸で書く予定ですので、つまりこれは予告です。
チトセが死んだことにされちゃうまでのお話ってことですね!まだまだ先の話ですが!