らくだい魔女と最初のラブレター   作:空実

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ちーくんの出番です。
ちーくんって呼び方は、なんかカイが言ってるからふざけて合わせてたら馴染んじゃいました。今更「チトセ」には戻れぬ。


・9・

レイ兄さんがオレをドアの向こうから呼んだ。

 

「チトセ」

 

たったその一言だったが、レイ兄さんが『出てこい』と言っているようだった。

オレは黙ってドアの前に立つと慎重にドアを開ける。

バッ…

と、また漆黒のシーツで姿を隠された。

 

 

オレはレイ兄さんに連れられ、大広間に着いた。

 

「レイ兄さん、父さんは?」

「ああ、別の仕事があるらしい」

 

ふぅん、と何も考えずに頷いて、視界の遮られた漆黒のシートを見つめた。

しばらく行くとレイ兄さんの「とまれ」という声がわきから聞こえ、シートから上を見上げると、重厚な大きな扉がみえた。

すると、

 

『女王さま。青の城のレイ王子らでございます』

 

という老人の声が聞こえて女王さまの『入れて良い』という声がこちらからも聞こえた。

バサリ、とシーツが取り除かれると目の前にはやはり大きな扉。振り返ると青の城の従者の服を身につけた人たちが花道を作っていたことがわかった。

 

『どうぞ』

 

先ほどの老人の声はこの執事だったらしい。開かれた扉の向こうは広間だった。

そこには当たり前のように女王がいて、驚いたようにオレとレイ兄さんを交互に見た。

オレがいない間に、他の兄弟は皆各国の王族に挨拶を済ませているらしい。レイ兄さんという素晴らしい人材がいるのに皇太子を決めない青の城は色んな意味で有名だったらしく、赤の女王でさえも覚えていたようだ。

十二番目の兄が挨拶を済ませたのはついこの間のことで、もちろんオレは兄弟の中で一番最後。小学生のとき使えるようになった時の壁のおかげで紹介してもらえるようなものだ

「赤の女王さま。弟のチトセです」

「チトセ……?ああ、時の壁の使い手か。前に死んだと聞いて葬儀に参列した覚えがあるけど」

「いえ。チトセは死んでなどおりません。あれは間違いだったんです」

レイ兄さんの声に更に空気がピン。と張り詰めた。

 

「……間違い?」

 

記憶の中の女王よりも、ずっと怖くて低い威厳に満ちた声。

オレは震えそうになる身体を押さえつけて、女王を見上げた。

 

「ふむ。チトセ王子」

「はい」

「今回のことをあなたがどう思ったか。それだけが聞きたい」

 

少し、オレは迷いがあった。

なんとも言えない、世界中を騙していたという罪悪感。

知らぬ間に死んだことにされていたからオレは悪くないと思う気持ち。

どちらかと言えば、オレは悪くないという気持ちの方が強かった。

でも、世界のためには罪悪感を選ぶ方がいい。

そう思い、口を開こうとした。

口を半分ぐらい開けた時、オレはハッとした。

これは…ふさわしい事なのか?

 

『オレは悪くない。』

 

それは違うような気がして。

オレだって城の者。

オレじゃなくたって、同じ城の者が言ったことなんだ。

それにオレは真実を知っても、ウソだと言うことを世界に知らせなかった。

それじゃあ……

 

『同罪』

 

なんだ。

フウカにも、カリンにも。

そして、あのときのクラスメイトをの奴らを騙していたことには変わりない。

 

「……罪悪感を、感じています」

「なぜ?」

「……世界中の人々に嘘をつき、身の回りの大切な人まで傷つけてしまっていたから、ではダメでしょうか」

 

女王はしかめていた顔を緩めて微笑んだ。記憶の中の優しい赤の女王がそこにいた。

 

「よく言った。大体は嘘をつき、いいイメージを持たせたいと思ったり、正直に言い過ぎることがある。しかし貴方はそれがなかった。王族として、素晴らしいです」

「ありがとうございます」

 

そして、赤の女王さまはオレとレイ兄さんに会議に出るよう言うと、部屋に戻れと言ってくださった。




ちーくん一番文字数少ない。

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