らくだい魔女と最初のラブレター   作:空実

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なんでもないなんてウソはお決まりのやつ。


・3・

そんなことのあった次の日、あたしはなんだかぼーっとしていた。

あれが夢だったような気がして、心がチクリと痛む。その度にあれはきっと現実なんだと、そう思い返していた。

心が軽いようで、すごく重い。心臓な鉛になったようで、ズッシリと沈む。友だちと喧嘩して、そのあとのような。もどかしい気持ちのままだ。

チトセは手紙にかいてあった通りじゃなくても、きちんとこの場所へと帰って来たんだ、と心をしっかりともつと少しばかり心が軽くなった気もする。

嬉しくて、嬉しくて、たまらない。

今すぐここで、何かを大声で叫びたい。

チトセの好きな人が他の人でもいい。貴方が帰って来てくれただけで、あたしは嬉しいんだって心から思えた。

 

「フウカちゃん、いきましょぉ〜」

 

また、同じ1日が始まるけれど、あたしにとってはどこか違った。ラブレターが届いただけのときとは違う。

窓をあけて、一度だけちらりと青の城へと視線を向けた。

今までもこういうことが何度かあったから、カリンは何も言わずに待っていてくれた。

 

そして、何も気づかれないまま学校にいって授業が始まる……と、思っていたのに。

 

「やっぱりフウカちゃん、どこか嬉しそうねぇ。本当に、どうしたのぉ?」

 

やっぱりカリンにはかなわなかった。

 

「ひ、ひみつ……」

「そぉなのぉ?」

 

カリンはそういって、また正面を向いた。

あたしがふぅ、と息をつくと、ばっとカリンの顔があたしのを覗き込んだ。

 

「うわぁっ!?」

「もしかしてぇ」

「え?」

「チトセくん、とか?」

 

やっぱりわかるのか、と思いながらもごまかすことはやめられない。

それでもやっぱりカリンには隠しきれなくて、カリンはあたしの周りをぐるぐる回り始めた。

 

「チトセくんがどぉしたの?あのお手紙に続きがあったのぉ?」

「だっ、だから、ひ、秘密だってばぁ〜!!!」

 

そう言って、学園に向かって猛スピードで突撃した。

 

「フウカちゃん、はやぁーい!」

 

カリンも猛スピードで追いかけてくる。

カリンもものすごくホウキが上手になって、あたしと追いかけっこすると、結果的にはあたしが勝つけどほぼ一緒。

そのまま追いかけっこするようにして学園に入った。

ホウキを降りたあたしたちに、アリサちゃんが仁王立ちした。

 

「フウカっ。カリンっ。姫が猛スピードで学園に突っ込むなんて、あっちゃならないでしょーが!」

「ご、ごめんなさい……」

 

アリサちゃんに怒鳴られるとつい小さくなってしまう。

昨日セシルに「学校にはついていけない私の代わりに、アリサさま、姫さまをお願いいたしますっ」なんて言われちゃったからなのか、容赦がない。

冷ややかに見つめる他の生徒なんて、眼中にないようだった。

すると突然、ん?とアリサちゃんがあたしの顔をじぃっと見つめて、

 

「ん、フウカ、いいことあった?」

 

と、聞いて来た。

……アリサちゃんにもバレた。

 

「い、いやぁ……

「あったんでしょぉ?」

 

あたしたちにカリンが割って入って来た。

 

「アリサちゃん、フウカちゃんにいいことあったと思うでしょぉ〜?フウカちゃんったらわたしにも教えてくれないのよぉ〜。」

 

カリンがため息を吐いて、あたしを上目遣いでみる。

 

(ゔっ…そんな目で見つめないで…罪悪感に包まれるからぁっ)

 

「何があったか、推理してあげよっか?」

 

あたしは嫌な予感がして、必死に抵抗した。

 

「い……いや、いいっ!」

「ズバリ!チトセくんのこと、でしょ?」

「わたしも同意見よぉ〜っ」

 

あたしってそんなにわかりやすかったっけ、って考えるけど、二人に見抜かれるってことはそうなんだろう。

否定するのも疲れてきたけど……果たして、チトセが帰ってきたなんてこの学園のど真ん中で言ってもいいのだろうか。

 




この辺書きにくいわ。
もうすぐ赤の国編ですね!あの城は王女四人の王子一人だそうなので(セシル曰く)、その辺も混ぜるのもありかなーって思ってます。
……ただのリメイクじゃなくなる。
ちなみに明日は三人視点とかいうてんこもり具合です。それぞれの城の描写があるからしょうがない。

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