文スト2次。
敦君と太宰さんのモフモフほのぼの交流(?)
ホワイトタイガー可愛いです!
(この作品はピクシブにも投稿しております。

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モフモフなお付き合い

 僕の名前は中島敦。

 武装探偵社に最近入社したばかりの新人だ。

 

 白い虎に変身してしまうという異能力のせいで孤児院を追い出され、行くあてもなく彷徨っていた僕を保護し、仕事場を紹介してくれたのはあの人だった。

 

 太宰さん……。

 太宰さんはウェーブがかった茶色い髪に美しい目元のイケメンだが、自殺マニアという変わった趣味の持ち主だ。

 

 だけど、僕の恩人であることには変わりない。

 

 

 今日、探偵社の仕事は事務作業がメイン。新人の僕は計画性重視の国木田さんの指示のもと、コツコツと作業をこなして行く。

 おかげで、定時に仕事が終わった。

 

 するとデスクで伸びをしていた太宰さんが僕に近づいてきて、

「今夜……いいよね?」

 と、耳元で囁いてきた。

 

 太宰さんが僕のことをわざわざ探偵社に雇った理由の半分は僕と、

【秘密のお付き合い】

 をするためなのだろう。

 

 秘密のお付き合い……その名も、

『モフモフ』だ。

 

 太宰さんは僕のことを、

『ひと目で気に入った』

 と、ホワイトタイガーに変身した僕をモフっている最中に呟いていた。

 

 僕なんかのどこが良かったのか……?

 

 太宰さんいわく、珍しいホワイトタイガーの毛並みは猫マニアなら一度はモフりたい対象だという。

 

 けれど、僕は太宰さんと秘密のお付き合いをすることで、孤児院時代の寂しさから解放されていることも確かだ。

 

 僕は太宰さんと出会うまで、ネコ科の生物としてそれらしいスキンシップをしたことがなかった。

 

 猫じゃらしで遊んでもらうこともなければ、ゴロゴロとノドを鳴らして甘えた記憶もない。

 

 子虎時代に満たされなかったコミュニケーションを、今補充しているのかも。

 

 本能の赴くまま欲望に駆られて、モフりモフられる僕と太宰さん。

 僕は所詮、猫……いやホワイトタイガーなんだ。

 

 

「敦キュン……今夜は新しいグッズを試したいんだけど……いいかな?」

 

 職場だというのに敦キュンとか呼んでくる太宰さん。

 恥ずかしいからやめて欲しい。

 僕たちがモフっているのが職場の人達にバレたら……。

 隣で国木田さんがワザとらしく、咳払いをした。

 

 

 

 あやしい……。

 あやしすぎる……!

 

 国木田は、新人の若者と太宰の間に流れるただならぬ空気に動揺していた。

 こんな展開は、国木田の理想が書き込まれたメモ帳には予定にない。

 

 しかも太宰はワザとらしく、人前で「敦キュン」とか呼んで、世間に謎のアピールをしている。

 

 このままでは、探偵社の風紀が乱れてしまう……!

 

 国木田は、異能じゃないけど異能並みにすごい超推理でお馴染みの乱歩さんとともに、新人と太宰のアフターファイブを調査することにした。

 

 

 横浜市内の小洒落たリストランテで夕食を終えた新人と太宰は、いそいそと寮の太宰の部屋に入って行った。

 

 あの太宰が、金のかかりそうなリストランテで他人に食事を奢るなんて……。

 

 

『敦キュンって、細すぎるからもう少し肉付きをよくした方がいいと思うんだよね……抱き心地が良くなるし……あっいや何でもないよ!』

 と、聞いてもいないのに語っている太宰を国木田は思い出す。

 

 

「太宰のヤツ……てっきり普通の女好きだと思っていたが、やはりもうひとつ趣味があったのか……」

 

「僕はもう、超推理で推理できちゃっているけど国木田にこの場は任せるよ」

 

 

 仕方なく、ドアの向こうの様子を探るがよく分からない。

部屋の中から2人のあやしげな声が聞こえる。

 

「敦キュン、今夜も楽しくモフろうね! いいかい?」

「太宰さん……」

 

 上司の権力で無理強い……というワケではないようだ。

 

 

 国木田は、太宰が新人をモフりたがっていることに気付いていた。

 太宰のもうひとつの趣味は、動物をモフること。

 特に猫が大好きのようだ。

 猫の専門誌を買ったり、猫カフェにひっそりと通っていたことも知っている。

 

 特定のモフれる相手(ホワイトタイガー)ができて嬉しいのだろう……。

 

 これ以上、2人の秘密を探っても虚しくなるだけだ。

「もう自室に戻ろう」

 国木田と乱歩さんが、太宰の部屋の前から立ち去ろうとしたその時だった。

 

 

『ガタガタ!』

『ゴトン!』

 太宰の部屋から、不穏な物音が聞こえる。

 

「敦キュンー? どうしたのかなぁ?」

「ガルルルル……」

「私には君の異能はきかな……ぎゃああああ!」

「ガウ! ガウ! ガルルルル!」

 

『ガブガブ!』

 

しーん……。

 

「太宰? 太宰の声がしなくなった⁉︎ 部屋の中で一体何が?」

 

 国木田と乱歩さんが部屋のドアをこじ開けると、そこには無数の猫じゃらしと猫用おもちゃ……そして、猫用おもちゃ片手にホワイトタイガーに変身した新人にガブガブ噛まれている太宰の姿だった……。

 

「太宰……お前……」

 

《虎に襲われて死ぬのも悪くない》

 太宰が時折呟いていたあのセリフ……まさか自殺マニアの夢が叶うとは……。

 

 今宵は満月。

 俺に隠れて新人のホワイトタイガーとモフっていた太宰に、ネコ科の生物は満月の日に狂暴化するという事実を教えてやれば良かった。

 

 

 

「いやあ、なかなかスリリングだったねえ敦キュン! 三途の河に入水しかけたよ!」

 

「ごめんなさい、太宰さん……僕よく覚えていなくって……」

 

 国木田達が救急治療した為、かろうじて助かった太宰。

 包帯の量が増えたものの楽しそうだ。

 

 国木田は懲りていない様子の太宰に忠告した。

 

「太宰! いくらホワイトタイガーが可愛いからって、普通の猫じゃないんだ! 今後は気安くモフろうとするなよ!」

 

 

 懸賞金が70億円もかけられているというホワイトタイガーこと中島敦……もしかすると、懸賞金をかけた誰かもホワイトタイガーを捕まえてモフりたい……のかもしれない。

 



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