何故かこちらを書きたくなったのでこっちをあげました。
活動報告でいろんな人から意見をもらえたので、メインはともかくヒロインとなり得る人は随時そのフラグ話が入ると共にタグに加えていきたいと思います。
では2話目です。
どうぞ(=゚ω゚)ノ
【見習いと第二級冒険者】
「正義の女神アストレア様率いるアストレアファミリアです」
静まり返っていた酒場はベルがフィンへと応えた言葉が発された瞬間、今までにないほど凍りついた。
酒場にいる人々はピシリと固まり、ロキファミリアは目を見開いてベルを見ている。
ただそのファミリア内において、エルフのリヴェリアだけは違う。彼を見る以外にもほんの一瞬だけ厨房の方に視線を向けていた。
その厨房からは不穏なオーラが漂っていた。中では多くの店員が1人のエルフを支えるように寄り添っていた。その中心にいるエルフ、リューという女性はなんで?と今にも膝から崩れ落ちてしまいそうなほど震えていた。
「え、あ、あの?」
そんな空気に思わずベルはフィンへと声をかける。彼はあのファミリアの事情を知らない。それ故、この場が凍りついた理由など知る由もないのだ。
「あ、ああ。すまない、驚いてしまってね。その……君を疑うわけじゃないんだが、何かその女神様との関係を証明できるものはないかな?」
そんなベルに対しフィンは言葉を選びながら対応する。彼を疑っているわけではないだろうが、アストレアファミリアのあの事件に関係して、嘘を言っている可能性も捨て切れなかったからだ。
「えっと……これじゃあ駄目ですか?」
何故フィンがそんなことを知るかわからないだろうが、彼は腰に下げていた小太刀を取り出すとその柄をフィンへと見せた。
よく見ればその小太刀の頭には文様が彫られている。その文様こそかつてアストレアファミリアが掲げていたエンブレムそのものである。
その文様を見たフィンは自身の主神であるロキや他の幹部たちへと視線を向ける。
リヴェリアは顔を背けたが、それ以外は静かに頷く。それを確認した後その口を開いた。
「そうか……こちらとしても謝礼を込めて君の質問に応えたい。でも、それは君にとってショックになることになるかもしれないよ?」
「?……わかりました。聞きます」
最初はわからなかったベルだが、彼らの雰囲気に何かを察したのか覚悟を決めたように首を縦に振った。
「実は………」
〜〜〜
〜〜〜
「そう……ですか」
話が終わる。
今まで聞くことに徹していたベルから漸く言葉が出てくる。その表情は何処か悲しげで、今にも泣き出しそうな顔だった。
「もう1つだけ聞いてもいいでしょうか?」
「なんだい?」
「その、【疾風】が何処にいるか知りませんか?」
『っ⁉︎』
そんなベルから発された質問に一部の人間が息を飲む。幸か不幸かそれがベルや他の客に気づかれることは無かったが。
「聞いてどうするんだい?」
そんなベルの質問にフィンは質問で返す。
「会いたいんです。会ってお礼と謝罪をしたい。会っていろいろ話したいんです」
「謝罪と礼を?」
その言葉の意図がフィンにはわからなかった。
「傲りかもしれませんが……僕がいれば少しでも結果が変わったかもしれないので、今頃のこのこ出てきたことへの謝罪です。それと……」
そこまで言って言葉を切ると僅かにベルの雰囲気が変わった。それに気がついた面々は背筋に薄ら寒いものを感じる。
「もし、【疾風】がやっていなくて、今尚そいつらがのうのうと生きていたら……おそらく僕がそいつらを塵にしてたと思うのでそのことについてお礼が言いたい」
『っ‼︎⁉︎⁇⁇』
そのベルの悲しげな顔からは到底出るとは思えない声色にその場の全員が息を飲んだ。
「それが罪だとわかっていても、それでも僕は【疾風】のやったことを肯定します。たとえ多くの者達がそれを非難しても、結果ブラックリスト入りしているのだとしても、僕は【疾風】に言いたい。ありがとうって。本人は後悔してるかもしれないですけど、それでも復讐はやるべきだ。復讐は何も生まないなんて、そんなの本当に辛いことにあったことのない人達が言う綺麗事です。復讐を果たさなければ進めない人もいるから……大事なのはその過程で復讐に囚われないことだと思うので。だから会いたいんです、会ってしっかりと伝えたい」
そういう彼の声色は冷たいものではなく暖かいものに戻っていた。
「いや、申し訳ないけど知らないよ。生きてるかさえ定かじゃないからね」
「そう……ですか……」
そんなベルの移り変わりにたじろぎながらフィンが応えるとベルは最初の雰囲気に戻り、肩を落とした。
「はぁ、でもそっか……もういないのか……」
あはははは、と乾いた声を出した後ベルはため息をつく。
「フィンさん、今日はおさわがせしました。それに女将さんや他のお客さんも。賑わってるところを盛り下げてすみません」
そう言って彼はカウンターまで歩いて行くとドサリとかなりの重さのある袋を女将であるミアに渡した。
「なんだいこれは?」
「僕の食事代と迷惑料です。今日は本当にすみませんでした」
今までの事を黙って見続けてくれたミアに謝罪をするとベルは出口へと歩いて行く。
「ああ、そういえば忘れてましたね」
その道中、思い出したように固まったベートの至る所を瞬時に殴る。するとガハッと息を大きく漏らす音が聞こえ、これまで固まっていたベートは地に伏しながら咳き込む。しかし、それでも目は覚めない。目を瞑り規則的な呼吸を繰り返しながら寝ている。
「本当におさわがせしました。では、もう会うこともないと思いますが……」
そう言ってベルは店の出口を開けようとした。そんな彼に対し堪らず声をかけるものがいた。
「これからどうするの?」
それはずっと出口付近で立っていたアイズだった。隣ではティオナも彼を見つめている。
「さぁ?それもこれから考えていきます」
「良ければうちに来ない?」
はぁ⁉︎とアイズの発言に周りが驚愕する。
「いえ、こんなことがあった後ですし……それに………………」
そんなアイズの提案をベルは断り言葉を続けた。
「僕はアストレア様のファミリアが良かったんです。あの僕を認めてくれた、僕を見込んでくれたあの方の。ですので暫くは何処のファリミアにも属す気はありません……」
「そっか……なら名前……」
「ああ、言ってませんでしたね。ベル・クラネルです。では……」
そう言って彼は店を後にする。
その後夜の酒場ではありえない、お通夜のような状況が暫くの間続いていた。
side変更 ベル視点
深夜、酒場での一件があった後、僕は1人都市から少し離れた所にある草原にいた。ポツリと置かれた石の上にその身を任せるとひんやりとした岩の冷たさが身に染み込んでくる。本来なら気持ちいいはずのこの時期の夜風も何処かヌメッとしていて肌にまとわりついてくる。
ここにくる道中で買ったお酒を軽く口に含むも美味しさを感じられない。夜空にひろがる星も今日は綺麗に見えない。照らす月明かりも草原が風で奏でる音もその全てが普段とは打って変わり気持ちの良いものではなく、むしろ不快なモノにと変わっていた。
「本当に1人になっちゃったな……」
ポツリとこぼれた声と共に冷たいものが瞳から溢れ出す。悲しくて泣くのはこれで4度目だ。
1度目はずっと飼っていた子犬が死んでしまった時。初めて目の当たりにした大切な命の死に対し僕は泣きじゃくった。
2度目は次狼さんの死。
人が死ぬということをこの時改めて理解した。死ぬということを理解したはずなのに、それでも僕は泣いてしまった。お爺ちゃんの胸に飛び込み、暫くの間泣き続けた。
3度目はお爺ちゃんが死んだ時。辛かった。大好きだったお爺ちゃんがいなくなってしまったことが。だからもう泣かないと決めていた。
もうこんなに辛いことはもう起こらないと。そう思ってた。
でも、また泣いてしまった。アストレア様がいなくなった事実に。アストレアファミリアがなくなってしまったことに。
次狼さんもお爺ちゃんもいなくなって、最後にはアストレア様が行方をくらませてしまったら、僕は……
「やっぱり全然美味しくない」
グイッともう一杯酒を口に含みながら呟く。
お酒はそんなに飲むほうじゃないがそれでも美味しいとは感じる。それが今感じないということは……
「心が病んでる証拠か」
次狼さんが僕に最初に飲ませた時に言った言葉を思い出す。
いつの世も酒は美味い
春は夜桜、夏は星
秋には満月、冬は雪
世の中にはそんな自然のつまみがいっぱいあるんだ。それなのに酒が美味く感じないのはいつだって人の心がそれを駄目にしているからだ。
酒が美味く感じないのは飲んでるやつの心が病んじまってるんだ。
戻りたい、あの頃に。
楽しかったあの頃に。
お爺ちゃんがいた。
次狼さんがいた。
そしてあの頃ならアストレア様のファミリアも健在だった。なのに今は
「誰もいない」
僕のその言葉を夜風がさらっていく。
そして、思いもよらない人物を運んできた。
「ベル・クラネルさん……ですね」
「え?」
side変更 ???
私はわからなかった。
何故あの少年からその名が出てきたのか。
あの方が見込んだ?唾をつけていた?
わからない。
そんな話は聞いたこともなかった。
心配したみんなが私をあがらせたため、部屋の中で私は1人考え込んでいた。
考えれば考えるほどわからなかった。
それでも、彼が言った言葉が頭の中でこだまし続ける。
"それが罪だとわかっていても、それでも僕は【疾風】のやったことを肯定します"
彼は悲しそうな雰囲気を纏いながらもそれでも力強くそう言った。
"たとえ多くの者達がそれを非難しても、結果ブラックリスト入りしているのだとしても、僕は【疾風】に言いたい。ありがとうって"
やめて欲しい。感謝されるようなことは何1つしていないのだから。
"本人は後悔してるかもしれないですけど"
その通りだ。あれは私怨が混じったものだ。あんなことをしても仲間たちは決して喜びはしない、自己満足だ。
"それでも復讐はやるべきだ"
どうしてだ、復讐なんて……
"復讐は何も生まないなんて、そんなの本当に辛いことにあったことのない人達が言う綺麗事です"
そんなことはない、結局何も生まなかった。ただ虚しかっただけだ。
"復讐を果たさなければ進めない人もいるから"
私は…………
"大事なのはその過程で復讐に囚われないことだと思うので"
………
"だから会いたいんです。会ってしっかりと伝えたい"
そういう彼の声色は暖かかった。
「アストレア様……貴方ならばどうするのでしょう」
彼の言葉を思い出しながら呟く。
彼の言葉がシルに助けられたあとも後悔し続けている心の鎖を切り裂いていく。
"はぁ、でもそっか……もういないのか……"
そして彼のあの顔がどうしても離れない
あの表情が、雰囲気が、声色がどうしても放っておけない衝動に駆られる。まるですべてが終わったかのような、1人世界に取り残されたような彼のあの姿がどうしても頭から離れないのだ。
「私はどうしたいんだ」
何度目にもなる自問に頭を悩ませる中ふと視界にかつての服が入った。あの日からそこに無造作に放った服。アストレアファミリアにおける一級品で常に清潔で良い匂いを発する特別な作用を持つ素材でできているため、あの日から触れずにそこに放ったままだった。
なんとなくそちらに行きその服を手に取る。
かつて仲間達と一緒にいた頃着ていたこの服は今尚捨てることができなかった。これがあればあの頃を思い出して辛くなってしまうのにだ。
「アストレア様……」
ギュッとその服を抱きしめる。
こんなことで頭を悩ませることになるなんて思ってもみなかった。
服に顔を埋め抱きしめる力を強める。
クシャッ
「ん?」
本来服から出るはずのない音が鳴り、疑問に思い服を見る。特に音が出そうなところはないのだが、裏返しにして見るとそこにあったものに驚きの声を上げてしまう。
「え⁉︎」
そこには一枚の皮袋が縫い付けてあった。
広げれば出てきたのは何枚もの紙。
今迄ここに放り投げ、そのままにしていたため気がつかなかった。
「どうして……」
なんでこんなものがあるのか、訳も分からず手紙を開けばその瞳が大きく見開かれる。
「アストレア様、貴方は……」
そこにあるモノに思わず涙をこぼしてしまう。
「さて、何処にいるのでしょうか」
涙を拭い、窓から街を見渡す。
自分がもっと早くにこの手紙に気がついていればこんな手間はかからなかっただろう。
そう思いながら、私は窓から隣の屋根に飛び乗り、彼を探しに行く。アストレア様がその意志を託した子に会いに。彼にこの手紙を届けに。
side変更ベル視点
「ベル・クラネルさん……ですね?」
「え?」
かけられた声に僕は思わず立ち上がった。
かけられた方を見ればそこには少し前に見たエルフのウェイトレスが立っている。
「あ、ええ、っん……えっと確かリューさんでしたか?」
急いで涙を拭いなんとか言葉をだした。
「はい。女性と話すのは緊張するというのは本当なんですね」
そんな僕に彼女は優しく微笑みかけてくる。わからない。なんでこの人はここにいるのか?どうして僕に話しかけてくるのか?そもそもなんでここにいるのか?わけがわからなかった。
「私は貴方と話したいことと見せたいものがあってきました」
「ぼ、僕にですか?」
戸惑う僕だが次の言葉に思わず石から転げ落ちてしまいそうになった。
「はい。アストレアファミリアの生き残り、【疾風】のリオンとして貴方にこれを見せなければなりません」
「え?」
落ちそうになる身体をなんとか堪えたが力が入らない。彼女が【疾風】⁉︎
「すみません。もっと早ければ良かったんですが、これに気がついたのは私もつい先ほどだったので」
そう言って彼女は3枚の紙を渡してくる。
一枚目にはリオンへと書かれた文
二枚目はベルちゃんへと書かれた文
ベルちゃん言うな……
そして三枚目は2人へと書かれたものだった。
「え、えっと……」
「構いません。全て読んでください。貴方にはその権利がある」
僕が疑問を言う前に彼女は自分宛の文も呼んでいいと促して来た。そんな彼女の言葉に頷き、文へと目を向け言葉に出し読んでいく。
リューさんへの手紙にはアストレア様から謝罪の言葉が綴られていた。ファミリアがなくなったのはリューさんの所為ではなく自分の不手際だと。だからこそ、気負うなと書かれていた。気負うことなく自分の望む人生を歩めと。頑張れとリューさんに向けた励ましの言葉も添えられていた。そして最後には僕のことが書き記してあった。可愛い白髪頭の子供ベル・クラネルがオラリオに訪れてきた時助けてやって欲しいと、アストレアファミリアに入る約束をしていた子供だと。
僕の文にも殆どが同じものだ。
僕が来る前にファミリアがなくなってしまったことの謝罪とこれから頑張れということが綴られていた。そして約束の小太刀をリューさんのために使ってくれと。リューさんを助けてやってくれとそう綴られていた。最後に、貴方は1人ではない。この手紙を渡してきた人は少なくとも貴方の"家族"であると書かれていた。
その言葉に再び視界がぼやけていく。
身体が震えるのが止まらない。
「すみません、私だけが生き永らえてしまいました」
そんな僕にリューさんは声をかけてくる。
「リューさん……アストレアファミリアは楽しかったですか?」
「はい」
「アストレア様は最後まで正義の女神として遜色なかったですか」
「ええ、あれほど素晴らしい方を私は他に知らない」
「アズドレアざまがつぐったブァミリア"は最後の瞬間まで輝いでましたが?」
「はい!」
どうしても止まらない涙のせいで最後は言葉が濁りながら出されてしまう。赤い目が更に赤く腫れ上がっていく。
そんな僕の頭の後ろに目の前のエルフはゆっくりと手を回してくる。
「初めまして、ベル・クラネルさん。アストレアファミリア所属level4【疾風】リュー・リオンです」
そう言いながら優しく僕の事を抱きしめてくれた。僕だってエルフがどういう種族かは知っている。気位が高く、男の手を握ることさえ嫌うエルフが今こうして僕を抱きしめてくれいる。
でも、そんな希少な体験をしたことに高揚する事もなく、僕はただ彼女に頭を埋めながら、泣きながらだが自己紹介をした。
「アストレアファミリア見習いベル・クラネルです」
只、今だけは母親に甘える子供のように彼女に身を任せた。
いかがでしたか?
感想お待ちしてます。
次回予告。
(本編以上にこの予告ではキャラ崩壊してるので注意)
ベル「先輩!次回三枚目の手紙に書かれた内容が明らかになるそうです‼︎」
リュー「そうですか、それよりその先輩とは?」
ベル「え?だってリューさんは僕からしたら先輩じゃないですか?僕アストレアファミリア見習いですし」
リュー「で、ですがもう解散してしまっていますし先輩というのは……」
ベル「じゃあなんて呼べば……ピコン!……リュー姐」上目遣い
リュー「///(なにこの可愛い生き物)」
ベル「リュー姐?」チラリ
リュー「そ、その呼び方はやめてください‼︎/////普通にリューでいいです」
ベル「はーい。わかりましたリューさん」
リュー「全く////」ドキドキ
ベル「さて次回、動き始める物語その中でアストレアファミリア関係者を巡る話に進展が」
リュー「私とベ…クラネルさんの前に現れる影」
ベル(ベルって呼んでくれていいのに)
ベル「現れた人物を前に僕とリューさんは決意する」
リュー「次回、3話目女神降臨」
ベル「ハーレム王に僕はなる‼︎」
リュー「その前に女性と普通に話せるようになりましょう」
ベル「ふぁい……」
(次狼・ゼウス「頑張れ(るのじゃ)ベル」)