アリゾナ級戦艦の艦名は一番番『アリゾナ』を含めて史実の真珠湾攻撃で廃棄された戦艦群から取っています。
只、ストウィ零で、紀伊級四隻の内の二隻が長身砲に改装された以外の情報が無く、しかも紀伊級のどの船に行われたかと安否が不滅なので紀伊級は出ません。
後、アリゾナ級のは出せれる様にする為の保険みたいなので『オクラホマ』と『ユタ』が出るかは微妙ですが、『相良』は『信濃』を出す為の布石にしたので春風級と共に出ません。
少し長くなりましたが、本編をどうぞ。
――― ????? ―――
此所は扶桑皇国本土でも深部の山脈地帯でも屈指の魔境と言える場所である。
しかも草木があまり生えていない上、年中濃霧が多発している事から、何かが出てきそうな程に不気味さを感じさせる所であった。
だがその場所に唯一存在するも、地元民すらほぼ忘れられていた古く小さな山小屋から、時折絶えながらも鎚の音が……風音すら無い無音状態であった事とあって遠くまで響いていた。
そしてその山小屋の中で、音の主である坂本美緒が汗だくになりながら、赤く熱せられた自分の愛刀を鎚で叩き続けるのを一旦止めて、山の清水に着けて冷した。
「……駄目だな」
冷えきった刀を持ち上げて確認した美緒は、出来がまだまだであると思い、刀を再び窯に入れて赤くなるまで熱すると、また叩き始めた。
「…っ!」
そしてまた冷した後、既に持ち上げる直前に何かを感じていたが、確認した刀が満足のいく出来であると判断した。
「…出来た……遂に出来たぞ!」
まだ磨ぐ等の最終作業が残っていたが、何処か怪しく光っている此の刀……後に“烈風丸”と名付けられる妖刀を美緒は暫く笑いながら見つめていた…
――― 横須賀 ―――
設計図を杉田に託して『アリゾナ』を降りた芳佳と美千子は、シャーリーとルッキーニと別れて帰ろうとしていた。
「おい、何だ此れ!?」
だがその途中の通信施設から妙な声が聞こえたので、そちらへと向かった。
『……今、わt…i達の…』
「なんとか出来んのか!?」
「やってますが、相手側の電波状態が悪いんです!」
班長らしき者が思わず怒鳴っていたが、部下達も必死に通信機の調整を行っていた。
『…欧しゅ…早く、誰か……此n…』
「…っ! 此の声」
今にも途切れそうな通信を送っている声に、芳佳は聞き覚えのあるモノだと気づいた。
『…早く…誰か、此の通信を…』
「…リーネちゃん!
リーネちゃんなの!?」
「っ! オイ、何なんだ、君は!?」
通信士が怒鳴っているのを無視して、芳佳は通信機のマイクを取った。
『……i佳ちゃ…』
「リーネちゃん! どうしたの!?」
どうやら芳佳の読み通りに、通信の相手はリネットに間違いはなさそうであり、通信先のリネットが芳佳が出た事に驚いているみたいだった。
『…芳………い…欧しゅ』
「おい、どうした!?」
「…駄目です。
完全に切れました」
リネットが芳佳に何かを言おうとしていたが、その直前に通信が途切れてしまった。
「リーネちゃん!! リーネちゃん!!」
だが、芳佳はその事を知ってか知らずか、無線機でリネットへ叫び続けていた。
そんな芳佳に通信士達は止めれずに硬直していたが、彼等の後ろから誰かが近づいていた。
「リーネちゃ、っ!?」
「切れてるぞ」
自分から通信機を取り上げられた芳佳は、その人物が当初の尋ね人だった美緒であった事に通信士達共々驚き、圭助に続いて通信士達は慌てて美緒に敬礼した。
「…何故お前が此所にいる?」
だが芳佳がなにより驚き戸惑っているのが、本来は豪放磊落な女傑と言うべき美緒が、表情だけでなく内面からも何か冷たいモノを感じ取れた事であった。
此の為、芳佳は目の前の美緒が同姓同名の別人かと一瞬思ってしまった。
「宮藤、何故お前がいる?」
「…坂本さん!!」
そんな芳佳であったが、美緒の怒鳴り声で直ぐに正気に戻った。
「リーネちゃんが、リーネちゃんが!!」
「そんな事は分かっている!」
芳佳が何かを言おうとしたが、美緒はそれを怒鳴って遮った。
「宮藤、お前は予備役だ!
お前には関係ない!!」
「関係あります!!
リーネちゃんは友達なんです!」
「……相変わらずだな、お前は」
自分に食って掛かる芳佳に美緒が“フッ”と笑った。
「だが此の事は我々扶桑海軍に任せてもらおうか」
「ですが…」
「宮藤、今のお前は扶桑軍人ではない。
お前に此所にいる資格は無い!
今すぐ出ていけ!!」
此の美緒の怒鳴りでショックの芳佳が硬直していたが、更に美緒は圭助に命じて芳佳を強制的に基地の外へ連れ出させた。
そんな芳佳達に当初はオドオドしていた美千子は、美緒に一礼して芳佳の後を追い……その美千子が去って暫くした後に美緒は特大の溜め息を吐いて施設から出てきた。
「美緒!! なんで芳佳にあんな仕打ちをするんだ!!」
出た直後に美緒に食って掛かろうとするルッキーニを抱え上げているシャーリーがいた。
「…少佐、アンタ不器用だね。
素直に芳佳は連れていけないって言えばよかったのに」
芳佳への仕打ちにシャーリーも思う事があって目線が冷たかったが、美緒の本意を察してもいる様だった。
此の発言にルッキーニが少し戸惑っている様だったが、当の美緒は息を吐いて苦笑した。
「…それはそうだ。
なにせ欧州の現状は明らかに危険過ぎる。
まず生きて帰れる可能性は低い」
「ああ、しかも501は連合軍司令部に嫌われてるしな」
シャーリーの冗談に近いのに美緒は余り反応しなかったが、美緒には他にも何かがあるなともシャーリーは何となく察した。
「…でどうすんだ?」
「当然、これから欧州に向かう!
土方、準備は出来ているな?」
敬礼した圭助が行動で“着いてきて下さい”と示し、その圭助に美緒に続いてシャーリーと降ろされて少しオドオドしたルッキーニも続いた。
で目的地の一つである倉庫の扉が開かれると、そこにストライカーユニットが存在していた。
「…コイツがそうか?」
「はい、そうです」
「おお、新型か!」
「紫電二一型、通称・紫電改です。
前の零戦二二型より倍近くの高出力魔導エンジンが搭載されています」
「倍って事はコイツは二千馬力か!」
紫電改にシャーリーとルッキーニが興奮していたが、美緒はその紫電改の隣の愛機であった零戦に寂しそうな目線を向けていた。
「…本当によろしいのですか?」
「ああ、載せてくれ」
若干迷いの感じられる圭助は美緒の命令に了解して紫電改の運び出しを始めた。
「すまん、潤子。
コイツは借りるぞ」
「……?」
シャーリーが美緒の呟きに気付いたが、その意味を分からずにいて……実は此のストライカーユニットは本来504JFWの竹井潤子に渡させる筈のモノであったのだ。
そんな事はさておき、その紫電改が近くで泊まっていた二式大艇へ積み込まれ、更にシャーリーのP51とルッキーニのG55Sまでが積み込まれ始めていた。
「うわぁ~…おっきな飛行機だね」
その積み込み状況を美千子と、少し泣き顔の芳佳が軍港近くの高台で見ていた。
「……飛ぶ気なんだ、坂本さんは……もうシールドも張れないのに…」
それから芳佳は美緒が欧州に向かおうとしているのを察していた。
だが先のブリタニア戦で美緒がウィッチとして衰え出している事に……そして燃え尽きかけの蝋燭の火になりかけているのに戦いに赴こうとしている美緒の決意を察した。
「……っ!」
「…あ、芳佳ちゃん!!」
そして芳佳は再び軍港に走っていった。
「…本当に芳佳を連れていかなくていいのか?」
「そうだよ!!
芳佳を連れていこうよ!」
そんな芳佳の事など知る訳がない美緒達は丁度、二式大艇に乗り込んでいた。
「……アイツは前の戦いで十分戦ってくれた。
只、それだけだ」
シャーリーとルッキーニ、更に内心圭助もが、芳佳を連れていきたそうだったが、当の美緒は完全に芳佳を連れていく気は無さそうであって半ば諦めていた。
尤も美緒の目の奥に迷いらしきモノがある事をシャ-リーは気付いた。
だがその直後、小銃を携えた水兵達が駆け寄ってきた。
「坂本少佐、此れはどう言う事だ!?」
「……どうとは?」
指揮官と思われる士官の怒鳴り声にシャーリーとルッキーニが“えっ!?”となり、圭助が顔を押さえていた。
「少佐、貴女には出撃命令が出ていない!
直ぐに降りるんだ!」
「……やれやれ…」
水兵達に美緒がわざとらしく溜め息を吐き……背負っていた刀で抜刀術の要領で桟橋を斬り、更に桟橋を蹴飛ばして中に入った。
此の美緒の行動に水兵が当初は驚き戸惑っていたが、直ぐに我に返って二式大艇に発砲しようとした………が、機体右舷の銃座に着いていたシャーリーに気付いて動けなくなり、結果シャーリーだけでなく扉を閉めようと顔を出したルッキーニの二人に舌を出された後、二式大艇が動きだした。
「…ど、どうします?」
「直ぐ司令部に連絡だ!
幸い、今『信濃』には古賀
「では『信濃』に砲撃要請を…」
「リベリオンの艦艇が犇めいてるのに出来るか!」
まぁ、埠頭でこんなやり取りが行われていたが、此の間に芳佳は軍港に……侵入(オイ!)して美緒達が乗った二式大艇が飛んでしまったのに気付いた。
「……っ!
あれだ!!!」
「…っ!? 宮藤さん!?」
で、咄嗟に辺りを見渡した芳佳は近くの倉庫の零戦……つまり美緒の零戦を見付けて直ぐにそれを装着した。
「…宮藤芳佳、発進します!!」
「待って下さい!!」
そして直ぐ発進しようとした芳佳だったが、整備員達が前に立ち塞がられた。
「坂本さんの所に行かせて下さい!」
「いや、しかし…」
整備員達が許可を出さない処か、不味い事に美緒達を取り逃がした水兵達が芳佳に気付いた。
「芳佳ちゃん!!」
「…みっちゃん!!」
その水兵達が芳佳の所に向かう直前、美千子が芳佳の所に駆け寄った。
「……みっちゃん……私、行かなきゃ…」
芳佳には罪悪感が、美千子には「行ってほしくない」と泣き顔且つ無言で訴えていた。
「……行ってらっしゃい!」
「うん!!!」
だが美千子は涙を拭って芳佳の背を押し、芳佳も笑顔で答え、整備員達も分かってくれた。
そして芳佳は整備員達を驚かせる魔法力と魔方陣を展開して発進した。
「おい待て!!
その発進は認められないぞ!」
水兵達も半ば無意識で芳佳に発砲して士官に怒鳴られていたが、それ等は芳佳のシールドに防がれてしまい、更に整備員達に止められていた。
「坂本さぁぁーん!!!」
「「…お!」」
「…っ!?」
二式大艇に追い付いた芳佳は、並走しながら美緒を呼び、当の美緒が慌てて扉を開いて出てきた。
「何をしている宮藤!?
早く戻れ!!」
どうも芳佳までが軍港で騒ぎを起こしたのを察した美緒は慌てて芳佳に戻らそうとしていた。
「私も連れていって下さい!」
「駄目だ!!
お前は此の国でやる事をやるんだ!」
「でも私……私も守りたいんです!!」
「…っ!?」
芳佳の決意ある叫びに美緒の心の何かに触れた。
「芳佳!!?」
「芳佳丁度来たのか!」
更にルッキーニのシャーリーも芳佳に気付いて出てきたが、突然美緒が爆笑し…
「来い、宮藤!!」
…美緒が芳佳に手を伸ばし……ブランクが暖め為に多少もたついていたが、芳佳が手を握ってシャーリーとルッキーニ協力下で彼女を機内に引き上げた。
で、四人折り重なって笑い合い、更に圭助達搭乗員達も釣られて気付かれない様に笑い出していた。
かくして芳佳達、501JFWは再び欧州の戦場へと向かった…
『発、連合艦隊司令長官古賀峯一大将。
坂本美緒海軍少佐が同調する501JFWの部下を引き連れて脱走せり。
全軍直ちに坂本美緒を捕縛せよ。
繰り返す…』
…だが今回の旅立ちは幾つか乗り越えねばならない事がある様だった。
感想・御意見お待ちしています。
今回の此の話を書くだけの為に“ストライクウィッチーズ2”を見直したんですけど、“なんか1話の出来事、特に軍港でのってあんまり……と言うより全く生かされないよな?”と思ってこんな風になりました。
さぁ、遂に旅立った芳佳達でありまずが、その前に嘗て美緒も所属した台南空、リベリオン・アジア艦隊、そして美緒の元仲間にして芳佳も治療で関わった雁淵孝美が属する508JFWが立ち塞がります。
もしかしたらエイラとサーニャが合流するかもしれませんよ。
では次回、こう御期待!!!