ストライクウィッチーズ対ミステリアン   作:サイレント・レイ

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第1話 芳佳の卒業式

――― 横須賀 ―――

 

 

 至る所でネウロイとの激戦が続く欧州とは逆でアジア唯一の超大国である扶桑皇国は桜が満開咲きである春真っ只中を迎えている通りに平和そのものであった。

 そしてその扶桑が世界に誇る皇国海軍の重要拠点の1つである横須賀の横須賀第六女子中学校では卒業式が行われており、つい先程卒業書を受け取った卒業生を含めた学生全員(+教師と親御)での教師に感謝しつつ学生生活を思い返す内容の明治から続く名曲“仰げば尊し”の合唱が行われていた。

 そしてその合唱も拍手喝采で終わり、更に在校生代表の送辞がたった今終わり…

 

「…卒業生答辞、卒業生代表・宮藤芳佳!」

 

「はい!!」

 

 最後の見せ場である答辞を学年首席ではなく、501JFWの1人として伝説的偉業を成し遂げた故に大任を任された芳佳が立ち上がって壇上に向かうのを卒業生達全員は好意的に見つめ中にはエールを送る者達がいた。

 只、此の為か当の芳佳が緊張して動きがかなり硬く…

 

「…あ!?」

 

……案の定、絨毯の間に蹴躓いて頭から転け落ちていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・山道 ―――

 

 

「はぁ~…」

 

 卒業式を無事(?)に終えて実家に一旦戻った芳佳は現在ぶつけた額を時折撫でながら横須賀軍港への道をトボトボ歩いていた。

 

「大丈夫、芳佳ちゃん?」

 

「な、何ともないよ、みっちゃん」

 

 芳佳が“みっちゃん”と呼ぶ親友の山川美千子は何かと気に掛けて、芳佳が元気が無いのは中学生活の最後の最後で語り継がれる程の大恥をかいた事に加えて何かがあると見抜いていた。

 

「……芳佳ちゃん、やっぱり…」

 

 美千子が何かを言う直前に2人の前に子熊が……何があったかまでは分からないが血を流して倒れていた。

 

「…っ!」

 

「芳佳ちゃん!!…っ!?」

 

 子熊の所に駆け寄った芳佳に美千子が子熊が母親を呼んでるかの様に鳴き続けていた為に止めようとした直前に、その母親と思われる大熊が茂みから出てきた。

 しかも不味い事に只でさえ子育て期間中で気性が荒い母熊は柴犬の耳と尻尾を展開させた芳佳の治癒魔法で治療されている我が子を彼女が傷つけたと誤解して唸り声を上げながら戦闘体勢を入っていた。

 だが母熊が芳佳に飛び掛かろうとした直前に治癒が終わった子熊が目を覚まして起き上がると芳佳の顔をねぶり初めた。

 芳佳もそれに笑っていたが、直ぐ様母熊が子熊を食わえ上げるとそのまま茂みへと入っていった。

 子熊が礼を言う様に鳴き続けていた事もあって子熊に手を振っていた芳佳であったが、暫くするとまた溜め息を吐いた。

 

「大丈夫、芳佳ちゃん?」

 

「……うん、何ともないよ…」

 

「…芳佳ちゃん、やっぱり欧州のが気になるのね?」

 

 自分を不安にさせない様に空笑いをした芳佳の原因を察した美千子の質問に当の芳佳は無言で了承した。

 と言うのも確かに芳佳達がブリタニアを守りガリアをも解放したが、相変わらず激戦が続いていた。

 処がロマーニャにて504JFWが基地に残留していた司令官以外全員がMIA(作戦中行方不明)認定を受ける一大事が起こって以降、欧州の至る所でウィッチ達が行方不明になる事件が相次いでいた。

 訓練生か玄人ウィッチ、休暇中か任務中等々条件や人種はそれぞれ多様であったが、かなりの人数がやられているのは確かであり、現に致命傷を受けた504JFWだけでなく505JFW(ミラージュウィッチーズ)や新設なった507JFW(ノーブルウィッチーズ)が機能不全になりかけている程(不幸中の幸いな事にネウロイも何故か活動を縮小していた)であった。

 更にロマーニャには此れに加えてシチリア島全域で謎の火災や地盤沈下が多発するだけでなく島民達が姿を眩ます出来事までが相次いでいた。

 ウィッチなら前者のみを主に気にしそうなのだが、芳佳の場合は同じ501JFW所属であったペリーヌ・クロステルマンが彼女の故郷ガリア防衛を主体とする507JFWの隊長就任要請(本人は就任拒否)が、フランチェスカ・ルッキーニがシチリア島出身である事から気にするなと言うは無理な話であった。

 更に上記のペリーヌにリネット・ビショップが、ルッキーニにはシャーロット・E・イェーガーが夫々にいるだけでなく、カールスラントにはミーナ・ディートリンゲ・ヴィルケとゲルトルート・バルクホルンにエーリカ・ハルトマンが、オストマルクの502JFW(ブレイブウィッチーズ)(幸いな事に503JFW(ハリケーンウィッチーズ)共々行方不明者がまだ出ていないが激戦区で作戦行動中)にサーニャ・V・リトヴャクとエイラ・イルマタル・ユーティライネンがいる等、501JFWの面々が夫々各国にいて変に不安にさせていた。

 しかも更に悪い事に卒業式の早朝に芳佳に死んだ筈の父・一郎(芳佳曰く他に見ない程間が悪い)の手紙が昨年のブリタニア戦の時と同様に届き…実は此の届いた物こそがかなりの曲者であったのだ。

 

「…あ、横須賀港が見えてきたよ!……っ!?」

 

 まあ、だからこそ届いた物の相談をしに横須賀の海軍教練所で教官をしている…昨年までは501JFWの戦闘隊長として芳佳を501JFWに勧誘(一郎をダシに芳佳をブリタニアに連れ出す等少し謀ったが…)するだけでなく彼女をウィッチとして鍛え上げた坂本美緒の所へ訪れようとしていたが、どうやらその横須賀港が見えてきた処で港から出てきた扶桑海軍の連合艦隊の先頭の船に美千子が反応し芳佳もそれに釣られた。

 

「芳佳ちゃん、あの戦艦!!」

 

「アレって…『大和』!?」

 

「違うよ!! 長10cm砲が片舷に6基載っているから『信濃』だよ!!」

 

 芳佳が46cm三連装砲3基を搭載した扶桑海軍最大最強の戦艦『大和』と勘違いしたが、美千子が対空砲から昨年11月に此の横須賀で竣工した大和級三番艦にして扶桑海軍栄光の連合艦隊旗艦である『信濃』だと見抜いた。

 因みに現時点での大和級は一番艦『大和』なら片舷に長10cm砲の1世代前の砲である12.7cm砲が6基、二番艦『武蔵』なら12.7cm砲が半分の3基である事から見分ける事が出来るのだが、その『大和』は先週から欧州に旅立ち、『武蔵』は遂先日から近代改装を行う為に『大和』の故郷である呉で長期ドック入りを始めていた。

 

「おっきくて綺麗だね!!」

 

 女子には珍しい軍艦好きの美千子は『信濃』の存在だけでなく、その『信濃』に続く…40cm連装5基の主砲等で無骨な力強さを感じさせる加賀級戦艦の『加賀』と『土佐』、その加賀級の原型となり「古いが旧式(ポンコツ)ではない」と言わんばかりの風格の世界で初めて40cm砲を連装4基搭載した長門級戦艦の『長門』と『陸奥』、そして彼女達5隻の周囲に多数の秋月級と夕雲級の駆逐艦が展開する堂々たる扶桑第一艦隊であった事とあってかなり興奮していた。

 

「でも何で艦隊が?」

 

 美千子程興奮していなかった芳佳が第一艦隊の行動に疑問を感じていたが、『信濃』が汽笛を鳴らして暫くすると水平線の向こうをよく確認すると何かが多数おり、そこから返答の汽笛が聞こえてきた。

 

「…何か来るよ。

何か分かる?」

 

「分かんない」

 

 美千子と芳佳が思わず目線を合わせていたが、少しすると水平線の彼方の何か……否、艦隊が第一艦隊にへと接近していた。

 

「…あれはエセックス級空母…それに続いている細い船体と艦首の形は……アイオワ級戦艦だ!!

しかもアイオワ級6隻全艦が踏み揃いしている!」

 

 接続している艦隊の先陣が『イントレピット』『ランドルフ』『フランクリン』『シャングリラ』『バンカーヒル』『ハンコック』のエセックス級空母の大姉妹の一角である彼女達をボルチモア級とデモイン級重巡洋艦、クリープランド級とファーゴ級にウースター級軽巡洋艦、フレッチャー級とアレン・M・サムナー級にギアリング級駆逐艦と共に守っている戦艦が『アイオワ』『ニュージャージー』『ミズーリ』『ウィスコンシン』『ケンタッキー』『イリノイ』の『加賀』や『長門』のより強力で、此の場にいない紀伊級戦艦と同じ長身40cm砲を三連装3基搭載のアイオワ級6隻である事に気づいた。

 

「って事はあれはリベリオンの艦隊なんだ」

 

 此の為、近づいてくる艦隊はシャーリーの故郷のリベリオンの艦隊である事が芳佳にも分かったが、凄い事にリベリオン艦隊はまだまだ続いていた。

 続いて護衛艦群と共に表れたのは『信濃』より一回り大きい船体に長身40cm砲を三連装4基搭載してアイオワ級では速度関係で妥協したリベリオン伝統の重装甲を具現化させたモンタナ級戦艦の『モンタナ』『オハイオ』『メイン』『ニューハンプシャー』『ルイジアナ』の5隻にそのモンタナ級を超える巨体にエセックス級や嘗て芳佳が世話になった今は亡き空母『赤城』を超越する145機も搭載可能の世界最大の空母ミッドウェー級の『ミッドウェー』『フランクリン・D・ルーズベルト』『コーラル・シー』の3隻であった。

 戦時下で扶桑が戦艦だけでも大和級3隻で精一杯であったのに対して此れ等に加えてノースカロライナ級及びサウスダコタ級戦艦の計6隻を作り上げたリベリオン威信の新造艦ばかりの大艦隊を構成する彼女達でも十分な物であったが、最後のトリを務める艦はそれ等を粉砕するとんでもない力を秘めていた。

 

「…何、アレ?」

 

 それは姿形こそモンタナ級に酷似していたが、問題はその大きさで前を行く『ルイジアナ』と『コーラル・シー』を楽に超える超巨大戦艦であったのだ。

 

「…全長340m、最大幅42m、排水量10万1650t、主砲長砲身46cm砲を三連装四基搭載のリベリオンの最新鋭戦艦アリゾナ級一番艦『アリゾナ』!!」

 

 『アリゾナ』…リベリオンのネウロイ戦での損失戦艦一号となったペンシルヴェニア級戦艦の名を受け継いだ大和級に変わって世界最大最強の戦艦となった連合軍総旗艦に美千子は驚き興奮していた。

 因みに大和級が全長263m、最大幅38m、排水量6万4千t、モンタナ級が全長281m、最大幅36m、排水量6万5百t、ミッドウェー級が全長295m、最大幅41m、排水量4万5千tである事から『アリゾナ』が如何に桁外れであるかが良く分かる。

 此の『アリゾナ』に歓迎の祝砲を射ち続けている『信濃』以外の扶桑艦艇の甲板上で軍帽を振っている水兵達と同様に美千子も見とれていたが、芳佳に振り向くと彼女は何故か『アリゾナ』を嫌っている様に見えていた。

 もしかしたら芳佳はブリタニアで大問題を起こしたウォーロック同様に『アリゾナ』がウィッチから変わろうとする存在である事を本能的に感じていたのかもしれず、現に胸元に抱えている2つの茶色の大型封筒の握る力を強めていた…




 か…

加賀
「良い内容ね。 気分が高揚します」

 喋らさんかぁぁー!!!

…では改めて、感想・御意見お待ちしています。

加賀
「今回、お遊び要素で『信濃』だけでなく私と『土佐』を出したんですよね?」

 まぁ、軍艦の知識がそこそこ知っていれば分かると思いますが、本来ストライクウィッチーズには『赤城』の姉妹艦の『天城』が出ているから『加賀』(と『土佐』)は戦艦として竣工しているか存在その物が無いのどちらかですが、原作は大方後者だと思いますが、本作では『信濃』と長門級の三隻では寂しかった事もありまして前者にしました。

加賀
「と言いましても、あの作品で『信濃』が戦艦か空母のどちらかで竣工したかは分かりませんけど…」

 その事で一つ、私のガメラとストライクウィッチーズの二次クロス作品の何十年先になるかもしれないイリス編では、原作(『信濃』が戦艦か存在しない、空母であっても関与不可等)しだいで『大鳳』に代わるかもしれませんが、空母『信濃』が大佐に昇進した坂本美緒を艦長としてリネット(かペリーヌ)政権の501JFWの居候先で後方支援に当たらせる予定です。
 で此のノウハウから美緒は原作とは違って最終局面で魔法力が枯渇するが、ネウロイ化しない『大和』の艦長代理として501JFWの支援にあたる予定です……そこ、古代進とか言わない!

加賀
「大丈夫なのですか?」

 まぁ、映画で似た様な事をしましたから大丈夫だと思いますが…

加賀
「いえ、あの娘その様なプレッシャーに弱いのか、先程からやたら転けたり衝突事故を起こしていますから」

 ああ、そっちの事…

 因みに『信濃』(と『武蔵』)はほぼ無理ですが、もしかしたら『加賀』と『土佐』が沈む危険性がありますが最終局面で『大和』と共に戦ってくれるかもしれませんよ。
 その時はお遊びで『加賀』の艦長が加賀さんみたいな人かもしれませんよ。

加賀
「…やりました」(V)

 後、今回の終盤のリベリオンの戦艦郡は未完成のが多々いますが、リベリオン(アメリカ)の国力を考えれば可能性だと思います。

長門
「……ビッグ7は…」

…只、此の代償でカサブランカ級(とインディペンデンス級?)空母が存在しない、もしかしたらエセックス級も史実程建造されていないのかもしれません。

長門
「…連合艦隊旗艦であった此の私は?」

……あ、後、次回から芳佳が本来はいない501JFWの誰かと一緒に杉田大佐の案内で『アリゾナ』がどんな戦艦なのかと見学(と説明)していく予定です…

長門
「…此の『長門』は出ないのか!?」

…喧しいわぁぁー!!!

長門
「頼む、『長門』も戦わせてくれ!!
無理ならイスカンダル遠征に同行させてくれ!!」

 PIXIVの作品を持ち込むな!!!
(注:PIXIVで連載を始めた“SPACEBATTLEGIRLヤマト”の事。簡単に言えば、艦これの大和が他の艦娘達と共にイスカンダルを目指し帰ってくる作品)
 アレではお前は公式四コマ(吹雪頑張ります)と戦力バランスが崩れる危険性があるから出さないと言っただろ!

長門
「頼む、私も活躍したいんだ!!!
そして大和に同等以上だと示したいんだ!!!」

 だぁぁー!!!
 泣き叫ぶな!!!
 文句を言うな!!!




芳佳
「…アレ?
艦これ要素が一切無いのに後書きが乗っ取られてる…」

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