やはりあざとい後輩とひねくれた先輩の青春ラブコメはまちがっている。   作:鈴ー風

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どうも、鈴ー風です。
もっぱらISのssを書いていたのですが、最近あまり筆が進まず、リフレッシュがてら書いてみました、俺ガイルです。私は俺ガイルはいろはす派です。次点でルミルミ。次小町。
そうですロリコンです。大丈夫、罵倒はご褒美です。
というわけで、良かったら見てやってください。

いろはす~


病院編
第一話 比企谷八幡の青春は変わらず、されど変化の兆しを見せる。


 突然ではあるが、俺ーー比企谷八幡(ひきがやはちまん)の中学生活は暗黒だった。ろくに話す相手もおらず、それほど仲の良くないクラスメートの唐突な話に適当に相槌をうち、女子の何気無い仕草に幾度となく勘違いを繰り返した。一体、この三年間でどれだけの黒歴史が刻まれたのだろう。…やばい、思い出したくない。思い出したらただでさえ不人気な目から水が溢れだしそう。

 俺の顔の中で唯一の不人気、目。周りの奴らからは「腐ってる」とさえ言われるほど酷いらしい。この目さえなければ整った好青年だと自負できるのだが。愛しい愛しい妹、小町に言わせれば、「目さえまともなら見られるレベル」。あれ、目がまともでも駄目じゃね?

 と、まあ長々と愚痴を垂れ流していたわけだが。なんだかんだ言っても俺もまだまだ夢見たい中学生。中学は無理だったが高校こそは!と思うわけですよ。で、頑張った。超頑張ったね、俺。苦手だった数学を含め猛勉強の末に、同じ中学から誰も進学しない千葉市立総武高等学校を受験し、見事合格した。これで俺の過去を知るものは高校にいない。つまり、高校からは「友達のいる明るい俺」という人物像を一から作り上げることができる。所謂、「高校デビュー」というやつだ。

 人間関係なんてものは環境の変化で簡単にリセットできる。だから、俺は性に合わない努力を重ね、その環境の変化に懸けた。少しはまともに青春ってやつを楽しめる高校生活が訪れることを信じてーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーいた時期もありましたよ、俺にも。どうやら、人は簡単には変われないらしい。

 あれは、待ちに待った総武高校入学式。俺は最初の印象が大事だと思い、式が始まる二時間前に家を出た。一番乗りでクラスに行けば、少なくとも二番目に来た奴は俺に声をかける。つまり、その時点で「クラスメートに認識される」という第一関門は越えることができると考えたからだ。因みに、俺の作戦をお袋と愛しの小町に話すと、同情の眼差しで泣かれた。解せぬ。

 とまあ、そんなこんなで家を出た俺は新品の自転車を走らせて学校へ向かっていた。このままだと教室で一眠りできるまである……などと考えていた頃だっただろうか、反対側の歩道を、犬を連れた女の子が走っていた。いや、どちらかというと犬に引っ張られている感じだったか。危なっかしい感じがして目を離せなくなり、暫く目で追っていたのだが……

 急に、犬のリードが切れた。そして、そのまま犬は、女の子を置き去りにしたまま俺の方に走ってくる。おいおい、道路に出たら危ないだろ……とか考えてた正にその時。

 

 対向車線からけたたましいクラクションを鳴らしながら、黒塗りの車が走ってきた。

 

 そこからはよく覚えてない。覚えているのは、自転車を捨てて車道に飛び込む感覚と、全身を駆け巡る鈍い痛みにやたら吠える犬の鳴き声。

 まぁ、つまりだ。

 

 俺は入学式当日に、犬を庇って車に轢かれたわけだ。薄れゆく意識の中で、俺は問わずにはいられなかった。

 これ、何てアニメ展開?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんてことがあって、俺は入院。命に別状は無いらしいが、足を中心に打撲や骨折、全治一ヶ月だと言われた。小町には泣かれ、お袋には罵倒された。「無茶するな」と。それもまあ大変だったが、俺はぼんやりと学校のことを考えていた。俺は初日からこの有り様。たとえ俺がいなくとも学校の時間は進む。元より、俺という歯車は既に学校という枠組みからはみ出しているまである。学生復帰は五月から、既に仲良しグループは出来上がっているだろう。

 必然的に、高校でもぼっちが決定した瞬間だった。

 

「っはぁ……」

 

 あれから一週間。やることと言えば小町に持ってきてもらった文庫本を読み漁るだけ。今までと何も変わらない。結局、俺の性に合わん努力で分かったことは、人は簡単には変われないということだけ。どうあっても、俺という人間は一人に縁があるようだ。このまま高校でも中学の時と同じ、ぼっちとしてひっそりと過ごしていくだけなんだろうなぁ。いっそぼっちを極めるか、なんてことすら考え出した。

 最強のぼっち、か。

 

「それもいいかもな」

 

 真っ白い病院の個室で、誰に言うでもなく一人呟く。友達とは期待し、期待され、押し付け合って、勝手に失望する。そんなものだと思っていた。現に、今まで友達だと思っていた奴らはみんなそうだった。恐らく、これからも友達というものはそういうものから変わらないのであろう。ならば、そんなものを作る意味などあるのだろうか?ただただ相手の顔色を窺い、合わせるだけで本音も言えないような友達(それ)は、果たして本当に必要なものなのだろうか?恐らく、答えは否である。

 取り繕わなければいけない関係など、「偽物」だ。きっとまた勝手に期待して勝手に裏切られ、勝手に傷つくのだろう。そんなものを、俺は必死に作ろうとしていたなんて、笑えてくる。今までの俺の行動は、全部裏目に出ていたわけじゃないか。

 笑えてきたら、楽になった。そして、気づいた。俺は友達が欲しかったんじゃないんだ、と。俺が求めていたものは、そんな薄っぺらじゃない、何でも話せて何でも分かり合える。そんなーーー

 

「俺は、本物がほしかったんだ」

「何です?本物って」

 

 心臓が飛び出るかと思った。いやマジで。何気無い独り言に返事が返ってくるとビックリするよね。

 声がしたほうを見ると、個室の入り口に女の子が立っていた。粟色の髪の毛、大きなくりっとした目の、まんま「美少女」が。

 いや、それより。

 

「いや、あの、な、何でここに?」

 

 ここは俺の個室の筈。入院の時にもそう言われた筈なんだが、部屋を間違えたのか?

 が、返ってきたのは予想外の返答だった。

 

「何故と言われましても…私の部屋だからとしか」

 

 ……ホワイ?え、どゆこと?

 

「いや、ここ俺の部屋なんだが……」

「えぇーでも、ここって205号室ですよね?」

「そうだが……」

 

 確かにここは205号室で合っている。だが、俺の個室だというのも合っていて、彼女の個室だというのも合っている。もう何が合ってるのかすら分からん。

 

「あぁ、やっぱり先に来てた」

「瀬谷さん?」

 

 そう言って、新しく入ってきたのは瀬谷沙也加(せやさやか)さん。俺の担当看護師だ。

 

「瀬谷さん、やっぱりってどういうことですか?」

「いやぁ、一色ちゃんを部屋まで案内しようと思って待っててもらったらいなくなってたからさ。先に行っちゃってたんじゃないかって。で、来たら案の定」

「だって部屋の番号さえ聞けば一人で行けますし。っていうか瀬谷さん!何で男の人がいるんですか!ここ私の部屋なんですよね!?」

 

 一色、と呼ばれた女の子が瀬谷さんに抗議の異を唱えた。まあ、今の話通りにいけば俺とこの一色って子が相部屋ってことだもんな。流石にそんなことはーー

 

「そうだよ?ここは一色ちゃんとそこの比企谷くんの相部屋ってこと」

 

 ーーそんなことあった。え、いやマジで?

 

「マジですか!?私まだ14ですよ!中学生ですよ!?男の人が相部屋なんて危ないじゃないですか!色々と!」

 

 中学生だったのか。俺の一つ下、いくら年が近いとはいえ、確かに男女相部屋なんて普通はあり得ん。特に思春期真っ盛りの女の子への配慮が無さすぎる。

 つーか、本当のこととはいえ、もう少しオブラートに包んでもらえませんかね、一色さん。俺のハートにグサグサ来る。軽く泣きそう。

 

「そうは言っても、急な入院だから部屋が用意できなくてねぇ。まあ、どーしてもって言うなら進言しとくけど、多分ここの方がいいと思うよ?他に空いてる部屋って、一日中愚痴りっぱなしの婆さんや偏屈爺さん位だし。それでもいい?」

「……」

 

 一色が凍りついた。まあ、俺にさえ拒否反応示すんだし、同じ異性でしかも偏屈な爺さんなんて論外。同姓でも婆さんの愚痴は聞くに耐えられん。俺だって一色さんとやらの立場なら御免だ。

 

「その点彼はいいわよぉ。基本本ばっか読んでるからうるさくしないし。後、イビキも掻かないし寝顔もかわいいし」

「おいちょっと待て」

 

 瀬谷さん?何であなた俺の寝顔知ってるんですかね?

 しかし、俺の言葉はスルーで瀬谷さんは続ける。

 

「それに、彼はあなたが思うようなことはしないわよ。彼、ヘタレだから」

「おいこら」

 

 何で一色さんの説得で俺がディスられ続けてるんですかねぇ……納得いかん。正論だから余計に。

 

「それに、本気で危なくなったらすぐにナースコールなさい。飛んでくるから」

「俺の信用無さすぎだろ……」

 

 瀬谷さんの場合、冗談だと分かってても遠慮無しにグサグサ来るからキツイ。後キツイ。

 

「んー……まあ、そう言うことなら……」

 

 それで納得しちゃったよ、一色さん。いいのか、それで。

 とか言ってたら、一色さんが俺の目の前まで歩いてきて、先程までの勢いはどこえやら、嫌々というか、渋々というか、いやはっきり嫌そうな顔で頭を下げた。

 

「そう言うわけで今日から相部屋になる一色いろはです。嫌々ですけどよろしくお願いします、比企……比企……」

「比企谷な、ひきがや。まあ、よろしく」

 

 名前を思い出そうと頑張っていたので、自分から名乗る。ついでに挨拶も返すと、下げていた頭をガバッとあげた。

 

「何なんですかそれ狙ってるんですかまさか自分から名前を訂正することでさりげなくアピールしてるんですか私こんな見た目なんで確かにモテるし勘違いされやすいですけど流石に会ったばっかりの人とか無理ですそれ以前に目が何かアレなんで生理的に無理ですごめんなさい」

「勘違いも甚だしいわ」

 

 早口で何て言ってたかよく分からんかったが、とりあえず何か俺が告白して振られたっぽいこと言ってたな。いや何でだよ。

 

「いきなり仲いいわねー」

「「よくない(です!)」」

 

 ぼっちを嘆き、ぼっちを決意し、漸く受け入れようと思った病院ライフは、呆気なく崩れ去ったようだ。

 これが、俺と一色との出会い。

 

 

 これが、俺の間違った青春ラブコメの始まりだった。

 

 




一話目です。早くもいろはすが出てきました。
それと、オリキャラの瀬谷さん。わざわざ神奈川の地名調べて産み出したキャラです。もう暫くは出てくるよ!
さて、かなり突発的に考えた作品なので、更新は不定期かと思われます。月一で、できればいいなぁ……

では次回、

第二話 一色いろはは模索し、歪な闇の中に光を見る。

いろはす~

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