ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursの戦国太平記 作:截流
およそ半年の間更新を止めてましたが失踪したわけではありませんぞ!!
それではどうぞお楽しみください!!
1574(天正2)年の5月頃、氏政から関宿城を攻めている氏照の陣に加わるように命じられた千歌たちAqoursは氏照が関宿城攻略の拠点として軍勢を置いている下総の栗橋城に入城した。
栗橋城に入った千歌たちは氏照から栗橋城の城代を任されている布施
「ねえ、なんか聞こえてこない?」
「本当だ。向こうの方から聞こえてくるね。」
突然聞こえてきた笛の音を聞いて辺りを見回す千歌に曜が応える。
「綺麗な音ですわね・・・。素朴ですがどこか爽やかな音ですわ。」
ダイヤは聞こえてくる音色に耳を傾け、その美しさにうっとりとしていた。
「多分氏照さんじゃないかな?氏照さん笛が好きでよく吹いてるって言ってたし。」
梨子はその音の主が氏照であると看破してみせた。時代や得意な楽器は違えど、音楽を奏でる者としてどこかシンパシーを感じていたのだろう。
「如何にもその通りでございます。氏照さまは時折笛を吹いて無聊をお慰めになるのです。平時はおろか、戦の時は城中の者や兵士たちの癒しにもなっております。」
景尊は氏照の笛が家臣たちにも人気であることを嬉しそうに語った。
そしてしばらく歩くと城の広間に通され、そこに入ると上座には氏照が座っており、彼の傍らには笛が置かれていた。
「氏照さん、お久しぶりです!」
「ああ、久方ぶりだな。確か最後に会ったのは父上の葬儀の時であったかな?」
千歌たちがお辞儀をして挨拶すると氏照は髭の生えた顎を撫でながら千歌たちと最後に会った時の事を思い返した。
氏康の葬儀は一族や重臣、氏康の側近だった者のみ参列を許されたというしめやかなものであったが、千歌たちも参列を許されていた。これは、千歌たちの家臣としての位は高いとは言えなかったが氏政をはじめとした北条家の一族から一族重臣と同等の待遇を受けていたと言える。
「世間話はさておき、話は兄上から聞いている。」
「はい!しばらくの間お世話になります!!」
「ははは、そう堅苦しくせんでもいいぞ。わしらはもうかれこれ10年も付き合いがあるのだからな。それで、何か元の時代に戻るための手掛かりは何か見つかったか?」
氏照は笑いながら千歌たちにそうたずねるが、
「ううん、江雪斎さんたちがいろいろ手を尽くしてくれてるみたいなんだけど全然見つからないみたいで・・・。」
千歌から返って来た返事は芳しいものではなかった。まずい事を聞いてしまったと思った氏照は話題の転換を図り、
「おおそうだ、お主たちは此度の戦について兄上から何か聞いているか?」
と、関宿城攻めの話を出した。
「いえ、関宿城攻めについては現地にいる氏照さんに聞いた方がいいかなって思いまして・・・。」
「あと氏政さんは最近色々忙しいみたいであまりお話しできてないんですよね~。」
「まあ、そうなるな。兄上ももう名実ともに当主となったのだ。近臣であるお主らとて今のような状態では早々話ができる機会も無かろうな。」
梨子と曜の答えを聞いた氏照は苦笑しながらそう言うと、
「よし、では軍議の前にわしが此度の戦についていろいろ教えてやろう!おい、地図を持ってまいれ!」
と氏照は小姓に地図を持ってくるように命じた。少しして小姓が地図を持ってくるとそれを受け取り地図を広げ、
「そら、近う近う。」
と千歌たちを近くに呼び寄せ、絵地図の周りを輪になって囲むように座らせた。
「さて、お主らはこのあたりの地理はまだ明るくないであろうからそれと共にこの関宿城攻めについて説明しよう。」
氏照は扇子で地図に書いてある関宿城を指しながら千歌たちに言った。
関宿城攻めと呼ばれる合戦は1574年、つまり千歌たちが今携わろうとしてる戦い以外にも過去に2回行われている。
まず最初の関宿城攻め、「第一次関宿合戦」は1565(永禄8)年、第二次国府台合戦の次の年に行なわれた。国府台での戦いで里見と太田資正を完膚なきまでに叩きのめし、下総、そして上総の大半を制圧した北条家が次に狙ったのが関宿城だ。
関宿城は利根川(現江戸川)と常陸川(現利根川)といった関東の大型河川に囲まれた流通経済の一大拠点であると同時に北関東侵攻への橋頭保になる重要な城であったため、他の城のように懐柔で手にするのではなく直接手に入れる必要があり、この戦いでは氏康が自ら槍を取って指揮を執ったという記録が残っている。
しかしこの戦いでは関宿城の地の利を生かした城主、簗田晴助の伏兵戦法や、上杉謙信率いる上杉軍来襲の報せを受け取った事によって、退却を余儀なくされている。
2回目の関宿城攻め、「第二次関宿合戦」が行われたのはその3年後の1568(永禄11)年であった。この戦いでは氏政が直接出向くのではなく、氏照を総大将とした軍勢が攻略を担当していた。氏照は古河城と関宿城の中間地点にある古河公方の家老、野田氏の城である栗橋城を接収、そこを拠点として関宿城攻めを行なった。氏照は山王山砦や不動山砦を築き、関宿城を追い詰めていたが、ここで予想だにしない緊急事態に見舞われた。
武田信玄の駿河侵攻による三国同盟の崩壊であった。これによって北条家は外交方針を転換させて上杉謙信と越相同盟を結び、上杉謙信の同盟勢力の1つであった簗田晴助と和睦して兵を退くことになった。だが、反北条の盟主であったはずの謙信が他でもない北条と手を結んだことに不満を覚えた晴助は他の北関東の国衆たちと共に武田信玄を同盟を結んだ。
もっとも、その同盟を結んでいた信玄も北条と和睦、同盟を結んだことで簗田家は北条、上杉、武田の関東を巡る三大強国の間で孤立することになり窮地に陥るも、なんとか佐竹義重ら北関東の諸侯や上杉謙信と手を結び、生き延びて来た。
そして1574(天正2)年の春、氏政は氏照に関宿城攻略を命じ、「第三次関宿合戦」が幕を開けることになる。
「かれこれ10年くらい関宿を手に入れるために戦ってきたんだね~。」
氏照の話を聞いた千歌が感慨深げにそういうと、
「うむ、今までは幾度と予想外の事態や敵方の抵抗に悩まされてきたが、兄上の綿密な戦略とわしらが着々と重ねてきた地道な努力が実っていよいよこの関宿城攻略も大詰めに・・・!」
氏照は普段の冷静な雰囲気からは想像できないくらいの大仰な仕草で語りだした。
「・・・氏照さま、御家老衆の皆様が集まりました。」
「む、いい所だったのだが・・・。まあよい、時間も悪くない。千歌どのたちも軍議に加わってはどうかな?」
景尊が割り込んできたことで氏照は憮然とした表情を見せたがすぐに切り替えて千歌たちに、軍議への同席を誘った。
「いいんですか!?」
「私たちは氏政さんの直属の家臣とはいえ山角さんや岩付にいる康明さんのように軍議に同席できるような身分ではありませんが・・・。」
梨子とダイヤは驚くと同時に、山角康定や笠原康明といった氏政の幕僚といえる家臣たちと自分たちを比較して遠慮し、
「ルビィたちじゃあんまり氏照さんたちの役に立てそうにないような・・・。」
「おらも幻庵さんに習ったって言ってもあまり兵法とか得意じゃないし自信無いずら・・・。」
どちらかというと戦いが好きではないルビィと花丸は自信無さげにそう言った。だが氏照は、
「案ずることはない。こうして軍議に立ち会う経験が少ないお主たちにいきなり戦術などの意見を求めるほどわしも鬼ではない。今はただ見ているだけでよい。わしらの軍議を見て後のために学んでくれればそれでよいのだ。もちろん少しでも名案があれば忌憚なく申し出てくれてもよいぞ!」
と緊張している千歌たちを宥め、呵々と笑った。
「じゃあお言葉に甘えて軍議に参加させてもらいます!」
千歌たちがそう言ってお辞儀をすると、
「ああ、こちらこそお主らの成長の糧になる軍議をせねばな。」
氏照が照れ臭そうに笑った。
「氏照さま、家老衆参上仕りました!」
「おお、来てくれたか監物、綱秀、家範、将景、泰光、照基。ささ、近う寄ってくれ。」
氏照は家老たちから挨拶されるとにこやかに自分の元に来るように促した。
「氏照さま、この者たちは?」
4、50歳ほどの男が千歌たちを訝しげに見ながら氏照にたずねた。
「その方たちは氏政さま・・・御本城さまの直臣であるAqoursの皆さんですよ監物どの。」
監物と呼ばれた男、横地監物の質問に答えたのはかつて評定衆の筆頭を務めていた狩野泰光であった。
「なるほど、一庵どのは先代氏康公にお仕えし小田原に詰めておられていましたな。その縁で知り合ったというわけか。」
監物は合点がいったような様子で頷き、
「しかし、この者たちは女子だ。いくら御本城さまの直臣と言えど戦の役に立ちましょうか?」
「言葉は悪うござるがそのあたり、少し疑わしいですな。」
そう言って千歌たちに懐疑的な目線を向けたのは、氏照の家臣の中でも武辺者として名高い中山家範と、かつて武田軍が滝山城を攻めた時に勝頼と一騎討ちを繰り広げてみせた師岡将景であった。
「この者たちを侮らぬ方がいいぞ家範に将景。千歌どのたちは政に携わっているだけでなく、兄上に付き従って多くの戦場に臨んだのだ。国府台、三船山、駿河、下総・・・、それに駿河では9人がかりとはいえあの武田勝頼と渡り合ったのだから女子としては上出来も上出来だと思うぞ?」
氏照が笑いながら家範と将景にそう言うと、それを知っている泰光以外の者たちがざわついた。
「泰光さん、お久しぶりです。」
「ダイヤどのも皆さんも、あの日から変わらず息災なようで何よりです。」
ダイヤが泰光に挨拶すると泰光はにこりと笑ってお辞儀をした。
「泰光さん、頭にかぶってるそれって何ですか?」
「ああ、これですか?実は氏康さま亡き後に頭を丸めましてな。名も一庵と改めたのです。」
千歌にたずねられた泰光は頭巾を脱ぎ、髪をそり落として綺麗さっぱりとした頭を軽く撫でた。
狩野泰光は詳しい時期こそ分かってはいないが、氏康が没する少し前から没後にかけた時期に出家し、狩野一庵と名を改めている。
「へぇ~、じゃあ私たちもこれからは一庵さんって呼ぶね!」
「はい、よろしくお願いします。」
「よし、それでは皆集まったからそろそろ軍議を始めるぞ。」
『はっ!!』
千歌たちAqoursと泰光改め一庵の話が一区切りついたところで氏照が軍議を始めるように号令をかけると、一庵を含めた氏照の家老たちがそれに応え、氏照を上座にして床に置かれた地図を中心に、車座になって座った。千歌たちは少し離れたところから氏照たちを見守る事にした。
「なんかすごい雰囲気あるよね・・・。」
「うん、実際にこうやって軍議してるのを見るの初めてだからね。」
「氏照さんたちすごい真剣な表情ずら・・・。」
千歌たちは氏照とその家老たちによる軍議を見守りながらひそひそと話していた。
「私たち、氏政さんの部下だけど基本的に会議は見たことないもんね。」
「当然ですわ。私たちは氏政さんの直属の家臣とはいえど、知行(領地)も家臣も持っていない馬廻の1人でしかありませんから。」
果南の言葉にダイヤがそう言って頷いた。千歌たちは当主である氏政の直臣であり、身分も高いと思われがちだが、実際には知行の無い食客同然であるため、実際に氏政の側近である板部岡江雪斎や馬廻衆の筆頭である山角康定、氏繁と共に岩付城代を務めていた笠原康明に比べたらその身分はかなり低いと言っても過言ではなかった。
それ故に軍議に出ることがなくとも氏照の陣に派遣されるなど氏政に重用されているのは、彼女たちが氏政の側で着実に実績を積み、重臣たちからもある程度の信頼を得ているのが一番の理由であると言える。
「秋に兄上が後詰めに来るまでの間、これまで通り包囲と多少の強攻を織り交ぜ少しずつ城方を消耗させるという方針で固まったが、何か他に意見はある者はいるか?いないのであればこれで軍議を・・・。」
「ハイハーイ!マリーに提案がありマース!!」
関宿城攻めの方針が固まったところで氏照が家老たちに意見を求めたところ、誰も発言しなかったので氏照が軍議を終わらせようとすると、鞠莉が大きく手を振って名乗りをあげた。
「鞠莉さん!?」
「なんだお主!?いくら御本城さまの直臣とはいえ我々の軍議に口出しは・・・!」
「まぁそう言うな監物、この者たちは凡庸ならざる才を持っていると兄上は常に言っておった。その者たちが意見があるというのなら聞こうではないか。」
「サンキュー氏照さん!ではお言葉に甘えて・・・。」
鞠莉に対して不快感を見せる監物を氏照が宥めると、鞠莉は驚くダイヤを尻目に掛けることなく自分の意見を語り始める。
「確かに関宿城攻略の方針については氏照さんたちが決めた通りでオッケーだけど、私はここにもう1つスパイスを加えた方がもっと有利に攻められると思うわ。」
「すぱいす、とは何だ?」
「氏照さん、確か関宿城にはこっちに内通してる人がいるって言ってましたよね?」
首を傾げる氏照に対し鞠莉は1つ質問をした。
「う、うむ。簗田の家老や侍大将数名を既に内通させているが・・・。」
「オゥ!それなら話が早いデース!じゃあちょ~っと耳を貸してください♡」
氏照が鞠莉の言葉に頷くと鞠莉はここぞとばかりに氏照の側に駆け寄り耳元に顔を寄せる。
「な!?何をするのだ鞠莉どの!?」
「ちょっと内緒話をしたいだけですよ~。マリーの作戦は・・・。」
鞠莉は驚く氏照にそう言うと氏照の耳元で何かを話し始めた。氏照は鞠莉の言葉に合点がいったような表情で何度も頷きながら話を聞いていた。
「―――っていう感じでどうかしら?」
「なるほど・・・。確かに面白い策だ、それが実現できれば彼奴らに大きな打撃を与える事ができるな!流石は兄上の下で着実に手柄を立て、大道寺政繁をも言いくるめただけあるな!」
話を聞き終わった氏照は晴れやかな表情で鞠莉を褒めた。
「何を話したの鞠莉ちゃん~!」
「ノーノ―!これはマリーと氏照さんだけの秘密デース!知ってる人が多いとどっかから漏れちゃうでしょ?」
鞠莉に氏照に伝えた提案を教えて欲しいとねだる千歌に対して鞠莉は人差し指を唇の前に立てながらそう言って断った。
「鞠莉どのの言う通りだ。しかし鞠莉どの、これは確実に成功するとは限らんがそれでも構わんな?」
「ええ、ぶっちゃけ私もこの作戦が確実に成功するとは思ってないけど、それでも関宿城に籠ってる人たちを動揺させることができるでしょうからそれで充分よ。」
「分かった。では後で密使を関宿城に派遣しておこう。他に意見がある者は?」
氏照は鞠莉の言葉に頷き、更なる意見を求めた。
「あ、じゃあ私も意見言ってもいいですか?」
次に手を上げたのは曜だった。
「曜どのか。忌憚のない意見を頼むぞ。」
氏照が曜の発言を認めると、曜は咳ばらいを一つして語り始めた。
「関宿城って、利根川とか常陸川とか逆川とか色んな川に挟まれてるんですよね?」
「如何にもその通りだ。それ故に攻めにくく守りやすい、まさに堅城と言える城だ。それにこの辺りは湿地帯も多く兵の運用が難しいのだ。」
氏照は曜の言葉を受け、彼女に関宿城の守りの堅さの秘密を教えた。現に氏照はこの城の攻略を数年前に任されながらそれを果たす事ができなかっただけあって、この城の攻略が難しい事を深く実感していたと言える。
「それで一つ提案なんですけど、この城の総攻撃を行う時に船を使った方がいいって思ったんですよね。」
『船だと!?』
曜の発言に家老たちはざわついた。
「確かに船があれば関宿城への攻撃は楽にはなるが・・・。」
「問題はその船をどこから手配するか・・・ですね。」
監物と泰光は唸り、
「成田に船を出すよう書状を出すか?」
「バカを言うな、成田は羽生城の攻略の最中ではないか!こちらに船を回す余裕など・・・!」
氏照と歳の近い大石照基がそう言うと近藤綱秀がそれに反論するなど、曜の発言をきっかけに軍議の席が騒然となったが、
「あの~・・・。船に関しては私に一つあてがあります・・・。」
そう言って手を上げたのは梨子だった。
「船にあてがあるだと?利根川周辺の城はほとんどが氏繁さまと一緒に羽生城攻略に兵と船を駆りだされておる。そんな中で他に船を出せる城があるとは・・・。」
綱秀が梨子の言葉に首を傾げながらそう言った。
「遠山さん達の江戸衆なら船をたくさん持っています。それに利根川を通じて関宿城まで一気に呼び寄せる事ができると思います!」
『!!』
梨子の言葉に氏照や、綱秀ら氏照の家老衆はハッとした。梨子は今は亡き江戸衆の筆頭であった遠山綱景や富永直勝と共に江戸の内政に携わっていた事で、江戸城の構造や江戸衆を構成している軍の編成、そして当時の江戸が水上交易のターミナルであることから数多くの船が用意できるという事を熟知していたのだ。
「なるほど、江戸衆か!!そうと分かれば急いで政家を呼んでまいれ!」
氏照は梨子の提案に膝を打つと小姓に1人の男を呼ぶように命じた。
「富永孫四郎政家、ただいま参上仕りました。」
少し経つと小姓と共に一人の若者が部屋に入って来た。
(この人が直勝さんの息子さん・・・、直勝さんも若かったころはあんな感じだったのかな?)
梨子は政家の顔を見ながら彼の父である直勝について思いを馳せた。直勝は温和だった綱景とは対照的に真面目ではあったもののどこかぶっきらぼうというか不愛想な雰囲気をしており、息子である政家からも父親のような雰囲気を感じ取っていた。
「政家よ、江戸にいる政景に連絡を取る事は出来るか?」
「はっ、可能ではありますが一体如何なるご用向きで?」
政家がたずねると氏照はにこりと笑いながら、
「実はな、そこにいる曜どのの提案で関宿攻めに船を使いたくてな。そしてかつてお主や政景の父であった直勝どのや綱景どのに仕えていた梨子どのが江戸衆なら船を数多く用意できると聞いたのだ。」
と、政家に理由を説明した。
「なるほど。」
氏照の説明を聞き終わった政家は梨子の方に顔を向けると、
「流石は父上や綱景どのの下で内政に携わっていただけあるな。父上からお前の話は聞いていたが、実に利発なおなごだ。」
と梨子に向けて賛辞の言葉を贈った。にこりと笑う事もない不愛想な表情だったものの、褒められていることに変わりは無かったので梨子も悪い気分ではなかった。
「あ、ありがとうございます。」
梨子がそう言って頭を下げると、政家は特に何を言うでもなくそのまま部屋から出て行った。恐らく江戸にいる政景に向けた書状をしたためる為だろう。
「なんかあの人ちょっと感じ悪いわね。」
鞠莉がそうこぼすと、
「そう言わんでやってくれ。政家はあまり人付き合いが上手いわけではないのだが、それでも心根が悪いわけではない真面目な男なのだ。」
と、氏照がフォローを入れた。
「さて、策ももう出尽くしたところで今日の軍議を終えるとしよう。」
『はっ!!』
氏照が軍議の終わりを告げると氏照の家老たちはそれぞれの持ち場に戻るべく速やかに部屋を出て行った。
「Aqours衆の方々。この戦は今までお主たちが加わって来た戦とは違う、時間をかけた長丁場となる。今までとは勝手が違うであろうが、思う存分に腕を振るってくれよ!」
『はい!!』
氏照の言葉に千歌たちは強く頷く。関宿城を巡る北条軍の、そしてAqoursの長い戦いが始まろうとしていた。
いかがでしたでしょうか?
前回の更新から半年にわたって、モチベーション不足やら社会人としての忙しさや疲れにかまけて更新が滞っていましたが、なんとかまた1話だけですが話を進める事ができました。
千歌ちゃんたちがこれから直面する関宿城攻略戦こと「第三次関宿合戦」は関東とそれを取り巻く勢力の歪で複雑な政治事情が絡んで複雑でわかりづらい話が出てきますが、これを読んでくださっている、歴史にそれほど強いわけではないラブライブファンの皆さんにも分かりやすいように話を組み立てていきたいと思います!
それでは次回もまたお楽しみください!!