ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursの戦国太平記   作:截流

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どうも、截流です!

今回はタイトルの通り、氏政たちの弟である三郎がメインの話です。

それではどうぞお楽しみください!!


29話 三郎の決意

1570(永禄13)年の2月末、三増峠の戦いから4か月経った今、北条家はあまり好ましいとは言えない状況の渦中にいた。

 

まず、3代目当主氏康の病気である。彼は武田との抗争が始まって少し経った頃から体調を崩すことが時々あったが、三増峠の戦いの直後に症状が悪化。中風を患ってしまい、この4か月は寝込んでいることがほとんどであった。一応氏政に家督を譲っている隠居の身であるとはいえ北条家家中における影響力はまだまだ強大だから、彼が病床に臥している現状に不安を抱いている家臣は少なくなかった。

 

2つ目に武田との抗争である。武田信玄の駿河侵攻をきっかけに北条家は今川氏真を匿い、駿河をめぐる抗争に身を投じていた。しかし、武田軍に抵抗していた岡部正綱、元信兄弟を中心とした今川の旧臣たちは次々と武田に降伏し、さらに信玄の小田原侵攻のしばらく前には北条家の重要拠点の1つである韮山城が狙われ(氏規が撃退する)、さらに三増峠で敗北を喫した事によりさらに勢いを増し、駿河における北条の前線基地である蒲原城と深沢城への攻勢が強まり12月には蒲原城が落城してしまい、駿河戦線は劣勢と言わざるを得ない状況に追い込まれていた。

 

そして3つ目は、越相同盟であった――――

 

 

 

 

「どうされたんですか?皆さんそんなところで・・・。」

 

「あっ、三郎くん。久しぶり!」

 

小田原城にある氏政の屋敷にて、氏政の自室の前にたむろしていた千歌たちに声を掛けたのは氏政たちの末の弟である三郎であった。幻庵の元で暮らしていたのだが、12月に蒲原城が落城した際に幻庵の息子であり、氏政夫妻の離縁騒動の際に花丸と舌戦を繰り広げた氏信とその弟である長順が戦死してしまい、氏信の遺児である孫の菊千代(のちの氏隆)しか後継ぎがいなくなってしまった幻庵の養子となっていた。

 

「それで千歌さんたちは兄上の部屋の前で何をされてるんですか?」

 

「実は氏政さんの機嫌が悪くて・・・。」

 

「兄上の機嫌が・・・ですか?」

 

「うん、越相同盟の条件の事で色々悩んでるみたいずら・・・。」

 

「ああ、上杉との同盟の件ですね・・・。」

 

花丸から兄が不機嫌である理由を聞いた三郎はそう言う事かと言わんばかりに頷いた。

 

 

越相同盟。それは北条家が武田家と戦うために氏康が画策した、武田家の宿敵である上杉家と手を組むことで、武田家をけん制するだけでなく、上杉家と同盟を組んでいる北条家と敵対している里見や佐竹、結城といった国衆たちとも手を結ぶことで後顧の憂いを失くすという目論見もあった。

 

交渉に関しては1569年から始まっており、交渉は氏照と氏邦の2人がそれぞれ別のルートで行っていた。氏照は上野の厩橋城主で、かつては上杉謙信の重臣であった北条(きたじょう)高広を仲介人としたルートを、氏邦は同じく上野の金山城を守る元上杉方の国衆であった由良成繁を仲介人としたルートを用いた。

 

そして1569年の6月には氏邦が用いたルートによって越相同盟は成立した。余談ではあるが、この同盟に対して上杉家の家臣たちは強く反対しており、氏政が妻であり信玄の娘でもある梅を離縁していないことに関して言及する者たちも少なからずいたが、謙信はこれに対して、

 

「この乱世において妻の実家と相争うことなど日常茶飯事であろう。我も姉上の夫であった政景(長尾政景、上杉景勝の実父)と争ったこともあった。武士たる者がそのような細事に目くじらを立てるな。」

 

と歯牙にもかけなかったという。

 

 

そんなこんなで同盟が成立したのだが、ある問題が発生した。それは同盟の条件であった。両家は同盟を結ぶにあたって次の条件を提示したという。

 

・8月15日までに謙信は武田攻めのために信濃に出兵すること。

 

・氏政の三男の国増丸を謙信の養子とし、謙信は柿崎晴家(柿崎景家の子)を北条家の人質とすること。

 

・足利義氏を古河公方として、謙信が関東管領を務めること。

 

・上杉家が岩付城をはじめとした武蔵・上野の諸城を領有すること。

 

3つ目の条件は無事に果たされたが、それ以外の3つの条件が理由で少しばかり面倒な事態になってしまったのである。

 

まず1つ目は謙信が当時、信玄に扇動された越中の一向一揆と対峙していたため果たされず、4つ目の条件は氏政が難色を示し、さらに交渉を進めた結果、岩付城を太田三楽斎に返すことを渋々誓詞をしたためて応じた。

 

そして最も大きな問題となったのが2つ目の条件であった。

 

「馬鹿な!!国増丸はまだ6歳だぞ!?それにこっちは息子を送れといわれているのに向こうは家臣の子を送るだと?ふざけるのも大概にしろ!!これでは我らが風下に立たされることになるではないか!!」

 

2つ目の条件を聞いて氏政は激怒した。国増丸はまだ6歳と幼く、小田原と気候が違いすぎる越後での生活に耐えられるとは思えず、さらに凛との『国増丸を太田家の養子にする』という約束もあったので氏政が条件を聞き入れられないのも無理のない話である。また、氏邦を人質に出すという案もあったが、幻庵の息子の氏信兄弟が戦死したことにより氏邦の家中での立場はさらに重くなったので、この案もあっけなく取り消しとなった。

 

「つまり兄上は誰を人質に出すかを悩んでおられるという事ですか?」

 

「うん、それで昨日から氏政さんずっとあんな調子で・・・。」

 

千歌に促されてわずかに開いている襖の隙間から部屋を覗いてみると、氏政が難しい顔をして唸っているのが見えた。

 

「では私が兄上と話してきますね。」

 

三郎はそう言うと襖を開けて氏政の部屋に入った。

 

「おお三郎、久しぶりだな。小田原に来るのは珍しいな。」

 

氏政は久しぶりの弟の来訪に頬をほころばせた。

 

「はい、父上の見舞いに来ましたので兄上にも挨拶をと思いまして。」

 

「そうか、何ももてなせなくて済まんな。ところで小机の方は上手く行ってるか?」

 

「はい、養父上(ちちうえ)の教えのおかげで上手く行っております。」

 

「そうかそうか、それは何よりだな。」

 

三郎と氏政はしばらく和やかに談笑していたが・・・。

 

「兄上、越相同盟の件でお悩みのようですね。」

 

三郎が千歌たちから聞いた話を切り出すと、氏政の表情が曇った。

 

「うむ、そうなのだ・・・。誰を謙信の養子に出せばいいのか見当がつかなくてな。」

 

「なるほど・・・。」

 

「国増丸は無理だという旨を伝えたら、『こちらもできれば成人である者をお願いしたい。』と返答が帰ってきてな。」

 

氏政曰く、謙信もあまりにも幼い子では不都合だったのか氏政の要請はあっさりと受け入れられたらしい。

 

「それで謙信どのは誰をご所望になったのですか?氏忠か氏光か・・・。他に養子に出せる者は・・・。」

 

「実は言いにくいのだが・・・。三郎、お前が欲しいと言われているのだ。」

 

氏政は声を絞り出すようにそう言った。

 

「私がですか!?」

 

「うむ、氏忠や氏光も考えたのだがあやつらは元はと言えば今は亡き氏尭叔父上の子・・・。謙信はあくまでも嫡流の者を望んでいる・・・。だが正直なところ俺としてはお前には氏照たちのようにこの北条家を支える柱石となって欲しいのだ・・・。」

 

氏政もどうやら三郎を養子に出すことに関してはかなり躊躇いがあったようだ。もちろん北条家を担う人材として手放したくないという理由もあったが、彼が三郎を手放したがらないのには他にも理由があった。

 

それは彼が氏政、氏照、氏邦、氏規たちとは母親が違っていた腹違いの弟であることと、それが理由で肩身が狭い思いをしているであろう三郎を気にかけている兄弟たちの中でもとりわけ氏政は弟として目にかけていたからだった。そんな可愛い弟を雪深い越後に追いやりたくない・・・それこそが氏政の兄としての想いであった。

 

苦悩する兄の顔を見た三郎は氏政になんて言葉をかけていいのか分からず沈黙する。そして2人の間に沈黙が流れ始めてから数分ほど経った時、三郎は意を決したように兄に声を掛けた。

 

「・・・兄上。」

 

「どうした三郎、何かいい考えでも浮かんだか。」

 

「私が上杉家に行きましょう!」

 

「そうか、お前が上杉家に・・・なんだと!?」

 

氏政は弟の言葉に耳を疑った。

 

「私は本気ですよ兄上。」

 

「それは分かっている!だが・・・。」

 

「兄上たちの私への想いは言われずともわかっております。」

 

氏政は三郎に対して何か言いたげな様子であったが、三郎はそれを遮って自分の意志が固い事を兄に言外に伝える。

 

「それにお前はもう幻庵大叔父上の養子になっているではないか。」

 

「それに関しましてはあとで養父上を説き伏せますゆえ。」

 

「・・・考えが変わるなどという事はなさそうだな。」

 

「ええ。私ももう大人ですので。」

 

「ふっ、つい最近まで子どもだと思っていたが・・・。もう19になれば無理もないか。」

 

氏政は三郎の熱意にほだされたのか、説得をやめて寂しそうに笑った。三郎はそんな兄の笑顔を見て在りし日の思い出が脳裏によぎり目頭が熱くなったが、それを堪えて笑顔で、

 

「私もいよいよ北条の役に立てる時が来ました。私は私の役目を全うするだけでございます!」

 

と言った。

 

 

 

 

 

 

「三郎くんたち何を話してるんだろうね~。」

 

三郎が氏政の部屋に入ってからしばらく経った頃、千歌たちは変わらず氏政の部屋の前でたむろして三郎が出てくるのを待っていた。

 

「・・・。」

 

すると噂をすれば影というべきか、三郎が氏政の部屋から出てきた。

 

「あ、三郎くん!どうだったずら・・・三郎くん?」

 

三郎が出てくると彼の姉のような存在といえる花丸が真っ先に声を掛けるが、彼のあまりにも真剣な表情を見て何か違和感を感じた。

 

「どうしたの?」

 

「・・・皆さんにも話したいことがあります。ここだとあれですのでお部屋にうかがってもよろしいですか?」

 

千歌が何があったのかをたずねると、三郎はいつものような柔和な笑顔を浮かべてそう言った。

 

そして、千歌たちの部屋にAqoursのメンバー全員と三郎を合わせた10人が集まって三郎を上座に、輪になって座った。

 

「それで話したいことと言うのは何ですの三郎さん?」

 

ダイヤが話を切り出すと三郎は深く息を吸ってからそれを吐き出し、意を決したような面持ちで氏政と話したことの一部始終を語った。千歌たちは最初こそ驚きの声を上げはしたが、ダイヤがそれを制してからは真剣な様子で三郎の話を聞いていたが、1人だけ彼の話に納得できないメンバーがいた。

 

「そんな!どうして三郎くんが養子に行かなくちゃいけないずら!?」

 

花丸であった。彼女は北条家に拾われてからの1年にわたる修業期間では久野の屋敷で幻庵の教えを受けていた。花丸はその当時幻庵の元に預けられていた三郎と、幻庵や久野屋敷の者たちからはまるで実の姉弟のようだと言われるほど仲良くなった。修業期間が終わってからも暇を見つけては幻庵の屋敷に出かけて三郎と遊んだり、勉強を教えたりしていた。

 

そしていつしか三郎が花丸の歳や背を追い越すようになっても花丸は変わらず三郎とは姉弟のように接し、三郎の方も花丸の事を姉のように慕っていた。もっとも、三郎の方は花丸の歳を追い越してからは少しばかり態度を改める事こそあれど2人の仲が悪くなることはなかった。

 

寺生まれで歳や見た目に似合わず精神年齢が同年代の少女たちよりも高めで、どこか達観している雰囲気があった花丸が子供のように駄々をこねる姿を見た彼女以外のメンバーや三郎は驚きを隠せなかった。

 

「花丸ちゃん・・・。」

 

花丸に連れられて三郎と過ごすことが多々あったルビィには花丸の気持ちが痛いほど理解できていたが、事情が事情なので、何も言う事ができなかった。

 

「花丸さん、三郎さんと長く過ごしてきたあなたの気持ちは分かりますが、何も三郎さんは無理やり行かされるのでは無く自分の意志で上杉家の養子になろうと決めたのですよ。であれば三郎さんの意志を尊重すべきかと・・・。」

 

「それはおらも分かってるずらダイヤさん!でも、でも・・・!」

 

ダイヤが花丸をたしなめるが、それでも花丸は納得できなかった。頭では三郎を止めることはできない事や上杉家に行くのは彼の意志によるものだと理解できていても心では納得できないのだ。

 

「・・・花丸さん。」

 

三郎が花丸の名を呼んだ。

 

「・・・ずら?」

 

花丸は涙をぬぐい、三郎の呼びかけに答えた。すると次の瞬間・・・。

 

「花丸さん、申し訳ありません!!」

 

『さ、三郎さん(くん)!?』

 

何と三郎が花丸に向かって土下座をしたのだ。

 

「ちょっ、三郎くんどうしたの!?」

 

「さ、三郎さん頭を上げて!!」

 

氏政たちとは腹違いであるとはいえ大名の弟である三郎が土下座したことで花丸やルビィ以外のメンバーは慌てて顔を上げるように言うが、三郎はそれでも土下座をやめる気配はなかった。

 

「三郎くん・・・。」

 

「花丸さん。先ほども言いましたが私は兄上に無理やり行かされるのではなく、自分の意志で上杉家に行くと決めたのです。北条家の役に立つために。」

 

「でも、北条家のためにって言っても他にやり方があるはずずら・・・。」

 

「ええ。ですが、上杉謙信どのは北条家の嫡流の成人を出すようにと仰せられました。氏政兄上の子たちは未だ幼く、氏照兄上たちは今や北条家の柱石とも言える立場にあり、六郎(氏忠)や四郎(氏光)は今こそ我らの兄弟ですが元はと言えば亡き氏尭叔父上の子で嫡流とは言えません。ゆえに謙信どのの出した条件を満たせる者は私だけだと判断したのです。」

 

「・・・。」

 

「私はようやく初めて兄上たちの役に立てる方法を見出したのです。花丸さんも言っていたではありませんか。『大切なのはやりたいかどうかだよ』と・・・!」

 

「!!」

 

三郎は幼いころから花丸に言われていた言葉を彼女に伝え、花丸もそれを思い出した。

 

「三郎くん、それって・・・。」

 

「ええ。幼い頃より寺に預けられていたので兄上たちに比べて非力で、武芸の鍛錬も振るわず挫けそうになっていた私にかけてくださった言葉です。花丸さんのこの言葉こそが私の心の支えとなり、氏政兄上からも北条の柱石として働いてほしいと仰っていただけた・・・。そうなることができたのも全ては花丸さんの言う通り、『北条家のために役に立ちたい』という思いを胸に抱き続けて来たからこそだと私は思っています。」

 

「そ、そんなことないよ!それは三郎くんが必死に努力した結果で、おらは特に何も・・・。」

 

花丸は照れ臭そうに三郎の言葉に反論するが、

 

「その三郎さんの努力の源って言うのがあんたの言葉なんでしょ、ずら丸?」

 

と善子にあっさりと論破されてしまい、花丸は顔を真っ赤にして唸り黙りこくってしまった。

 

「とにかく、今回の件も私のやりたいという気持ちに従って決めたことなのです。これはたとえ兄上や養父上、そして花丸さんに反対されようと曲げる気はありません。」

 

その三郎の言葉には誰にも異を唱えさせない威圧感があった。まさに相模の獅子と謳われた戦国大名、北条氏康の血を受け継ぐ男として相応しい雄姿だった。

 

「・・・そっか。」

 

花丸はそんな三郎の姿を見てふと呟いた。

 

「ずら丸?」

 

善子はそんな花丸の様子を不思議に思い彼女の名を呼びかける。

 

「そっかそっか!三郎くんがそこまで言うんだったらおらにはもう止められる権利も理由も無いずらね!三郎くんってば本当に大きく、強くなったね。」

 

花丸は晴れやかな笑顔でそう言うと三郎の元に歩み寄って彼の頭を優しく撫でた。

 

「は、花丸さん!?もう私は子供じゃありませんよ!」

 

三郎は花丸の突然の行動に困惑し、照れ臭そうに手を振り払おうとした。

 

 

「って言ってる割りには三郎さんも満更じゃなさそうね。」

 

「うん、花丸ちゃんと三郎さんは見てて本当の姉弟に見えてくるもん。」

 

2人の様子を見て善子とルビィは微笑ましそうにそう言った。実際に端から見た今の花丸と三郎の様子はまるでじゃれ合っているように見えているのだ。

 

「三郎さんってもう私たちより年上なのに、マルってばすっかりお姉さん気分だよね。」

 

「ええ、血は繋がって無くともその絆は肉親のように固いですわね。」

 

「まさにsoul brother&soul sisterね!」

 

「いいなあ、私もお姉ちゃんになってみたかったなぁ。」

 

「千歌ちゃんだって国王丸くんたちのお姉ちゃんみたいなもんだよ。」

 

「でも国王丸くんって落ち着いてるところがあるからどっちがお兄さんかお姉さんか分からなくなる時があるわよね。」

 

「あはは、確かにそうかもね。」

 

千歌が花丸の事を羨んでいると、曜が国王丸たちとの仲の良さを挙げて千歌をフォローするが、梨子の指摘を聞くと笑ってそれに同意した。

 

「もう!梨子ちゃんも曜ちゃんも笑わないでよ!」

 

『あはは!』

 

そんなこんなでしばらくの間、千歌たちと三郎の間に和やかな時間が流れた。

 

 

 

そして三郎が帰った後・・・。

 

「ねえ千歌さん、みんな。」

 

「どうしたの花丸ちゃん?」

 

「珍しいね、マルが何か言いだすなんて。」

 

花丸が真剣な表情でみんなを呼んだので、果南は珍しいと微笑んだ。

 

「おら、三郎くんの為にライブがしたいずら!」

 

『ライブ!?』

 

花丸が千歌たち8人を呼んだ理由、それは三郎の為にライブをしたいという提案でみんなは驚いた。

 

「だめ、かなあ・・・。」

 

みんなが驚いたのを見て、花丸はシュンとした様子で言うが、

 

「ううん、全然だめじゃないよ!」

 

「むしろすごくいいと思うであります!」

 

「私もそう思うよ花丸ちゃん。」

 

「ルビィもやりたいって思ってたんだ!」

 

「ふふふ、貴公子の門出に私たちのライブ・・・。いいアイデアじゃないずら丸!」

 

「うんうん、きっと三郎さんも喜ぶよ!」

 

「Wonderful!さっすが花丸ね!」

 

「私も賛成ですわ。」

 

千歌たち8人は揃って花丸の提案に大賛成だった。だが、

 

「でもこの前のライブみたいに大掛かりにってわけにもいかないよねぇ。」

 

と千歌が言った。小田原の復興の時に行ったライブは城下町の復興のためにたくさん人が集まっていただけでなく、理由が理由だったので普請に携わっていた人夫たちも快く無償で協力してくれたからこそ大規模に行う事ができたのだ。しかし、今は平時であるからステージを作るには人夫を雇わなければならず、千歌たち9人の所持金を合わせてもそれほどのステージを作るための人夫は雇えなかった。

 

「じゃあ氏政さんにお金を出してもらうって言うのは?」

 

「それができたら苦労しませんわよ・・・。」

 

果南の提案にダイヤは首を振る。今は武田との臨戦態勢が続いており、いくら当主とはいえどもそのような事に金を出せる余裕はあまりなかった。

 

若くして、そして女性でありながら評定衆として政治に参画しているダイヤだからこそその現状を理解していた。

 

「それについてはおらにいい考えがあるずら!」

 

「ほんと!?」

 

花丸の言葉に千歌は目を輝かせる。

 

「前に使ったステージを作り直して再利用するずら!」

 

『再利用!?』

 

それは実に花丸らしい意見だった。

 

「確かに、あのステージを作り直すだけなら私たちにもできますわね・・・。」

 

「しかもローコストでお金もそこまでかからないわね!niceよ花丸!」

 

ダイヤも鞠莉もその案に乗り気であった。

 

「じゃあライブの場所と歌う曲は・・・。」

 

「それもおらに考えがあるずら!それはね・・・。」

 

千歌が次の議題に移ろうとすると、また花丸に考えがあるようで彼女はまたスラスラと意見を話し始めた。

 

「なんか花丸ちゃんが別人みたいだね・・・。」

 

「うん、私の出番あっという間に取られちゃった。」

 

「いいんじゃない?マルにとって三郎さんは弟みたいなものだし、その弟分のために何かしてあげたいって思うのはいい事だと思うよ。」

 

『そうだね。』

 

花丸の話を聞きながら話していた千歌と曜と果南はそう言い合って微笑むと、また熱心に花丸の話に耳を傾けた。

 

 

花丸による三郎のためのライブの企画会議は丑三つ時まで続いたという・・・。




いかがでしたでしょうか?

いよいよ第三章も終盤に差し掛かり、北条家の歴史のターニングポイントの一つである『越相同盟』が話に絡んできました!史実同様に三郎は越後に赴くことになりますが果たしてどうなる事か?

そして千歌たちも花丸を主導に三郎のために動き出す!どの様なライブが開かれるかは次回を乞うご期待!

感想があったら、一行でも書いてくださると幸いです!


それでは次回もまたお楽しみください!!

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