ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursの戦国太平記 作:截流
最近は『若虎と女神たちの物語』が1期の佳境に入っていてそっちの執筆に力を割いていますが、こっちもちゃんと更新を続けています!両作品とも応援よろしくお願いします!!
それではどうぞお楽しみください!!
武田信玄が小田原からの撤退を始め、氏康氏政父子が兵を率いてそれを追撃するべく小田原城から進軍を始めてしばらく経った頃―――――
「南の商人町の鎮火を急げ!!」
「民たちの居住区の復興も急がねば!」
小田原城に残った奉行たちは、武田軍に蹂躙された城下町の復興のために城と城下町を往復し、声を嗄らしながらそれぞれの役目をこなしていた。
「これを運べばいいんだね?わかった!千歌と曜も運ぶの手伝って!」
『はーい!』
城下町では千歌、曜、果南の3人が町の復興を手伝い、
「え、えーっと。町もきっとすぐに元通りになりますから・・・、それまで頑張ってくださいね・・・!」
「はーい!みんな順番に並んでくださーい!ご飯はたっぷりあるし逃げないずらよ~!」
「ククク・・・。さあ無辜の民たちよ、この堕天使ヨハネの施しを受け取るのです・・・。」
「やめるずら。」
「じょ、冗談に決まってるじゃない!」
「ありがてぇ、ありがてぇ・・・!」
ルビィ、花丸、善子の1年生組は炊き出しなどといった、武田軍に家を燃やされて行き所を無くした避難民たちの慰撫の手伝いをしており、
「ねえダイヤ、町を元通りにするのはいいんだけどいっその事町をもっと改造しちゃってもいいと思うのよね~。」
「鞠莉さん!今は城下町の復興が最優先ですわ!!今は都市開発計画を練っている暇はありませんの!」
「まあまあダイヤさんに鞠莉さんも・・・。とりあえずこの区画の復興をどこから進めたらいいか安藤さんに聞いてきますね。」
ダイヤと鞠莉、そして梨子の3人は安藤良整ら復興の指揮を執る奉行たちのサポートを任されており、Aqoursも小田原の城下町の復興のために汗水を流しながら働いていた。
「どうしてこーなったああああああああ!!?」
「うるさいよー千歌ちゃん。」
「そうそう、口より手を動かさなきゃ。」
千歌の渾身の叫びも幼馴染2人に完全にスルーされてしまった。
事の始まりは、氏政と氏康が武田軍の追撃に出る少し前の事・・・。
「氏政さん、話っていうのはなんですか?」
千歌たちは氏政のいる本陣に呼び出されていた。
「うむ。千歌殿たちも知ってはいるだろうが、武田軍が退却を始めた。もちろん我々もこれを追撃するつもりだ。」
「っていう事はいつも通りの出陣ですね!?準備してきます!」
千歌が氏政の話を聞くや否や、そう言って準備に行こうとしたが、
「いや、今回は違うぞ。」
と氏政に引き止められた。
「出陣じゃないって・・・。武田軍は追わないんですか?」
氏政の言葉に対して曜は首を傾げながら、彼にその真意をたずねる。
「もちろん武田軍は追う。だが、今回はお主たちを小田原に置いて行こうと思うのだ。」
「な、なんでですか!?私たち、今まで氏政さんと一緒に戦って来たのに!」
氏政の言葉に納得できない千歌は彼に抗議した。
「ああ、確かに私たちは今まで共に戦って来たし、お主たちに助けられてきたことを忘れたことは一度もない。だが私としてはお主たちに戦ばかりをやらせたいというわけでは無いのだよ。」
「氏政さん・・・。」
「だから今回はお主たちに合戦への参陣を免ずる代わりに別の役目を与えようと思う。」
「別の役目・・・ですか?」
「ああ、父上はこの戦で信玄との決着をつける気だ。ゆえにこの城に籠った主な将はこぞって出陣することになるのだが、そうなると人が足りなくなるんだ。」
「人が足りなくなる・・・?」
「何をする人ずら?」
ルビィと花丸が首を傾げていると、
「荒らされた城下町の復興に用いる人員ですわ。」
「うん。ダイヤさんの言う通り、町づくりをするにも人手がいるからね。」
ダイヤと梨子が2人に氏政が言わんとしていたことをみんなに教えた。
「その通りだ。ダイヤどのと梨子どのの言う通り、復興事業に携わることのできる将のほとんどが私たちと共に出陣してしまうから、人員が少し足りなくなってしまったのだ。」
「それで私たちにその足りない部分を補って欲しいってことデースね?」
鞠莉が納得がいった様子でそう言った。
「そうだ。此度は戦働きはお預けになってしまうが、その分も我らが北条の民のためにその才覚を使ってくれると嬉しい。だからこの通り、よろしく頼む!」
氏政はそう言って頭を下げた。
「氏政さんにあそこまで頼み込まれたからしっかりやらなきゃって思ってちゃんと働いてはいるけど大変すぎるよ~。」
それぞれに与えられた仕事の一つにめどが立ったので集まって休憩していたAqoursだったが、千歌は愚痴をこぼしていた。
「仕方ないよ千歌ちゃん、だって小田原の町は広いから・・・。」
「そうそう。それが焼かれたってなると元通りにするのが大変だからねえ・・・。」
千歌と同じく現場で働いている曜と果南が彼女を宥める。
「そういえば、住民の方々の方はどうなっておりますのルビィ?」
「えっと、石巻さんの話だと、もともと被害が少なかった城下町の外の村とか武田軍にそこまでひどく荒らされてなかった地区に住んでた人たちは帰せたみたいなんだけど・・・。」
「それでもまだまだ帰れない人たちの方が多いみたいずら~。」
「町も広いけど人も多すぎんのよ!」
ダイヤに促されルビィ達も避難民たちの状況を報告した。ちなみにルビィの言った石巻さんとは石巻康敬のことである。彼は兄の康保が氏政たちと一緒に出陣しているので、兄に代わって城に残って城下町の復興に従事している。
「やっぱりどこも状況が芳しいわけではないのですね・・・。」
「気にすることないよダイヤ~。こういうのは上手く行かないものなんだから~。」
ため息をつくダイヤを鞠莉は気楽な様子で慰める。
「・・・。」
「どうしたの梨子ちゃん、そんなに考え込んで?」
難しい顔で1人考え込んでいる梨子に千歌が声を掛けた。
「え!?あ、あのね?氏政さんが言っていたことが少し気になってて・・・。」
「氏政さんが言ってたこと?」
「うん。氏政さんは私たちの『才覚』を復興に役立ててくれって言ってたけどそれが何なのかなって考えてたの。」
梨子は氏政が出陣前に自分たちに残して言った言葉が気になって考え込んでいたようだ。
「私たちの才覚か・・・、何だろう?」
『う~ん・・・。』
千歌もそれが気になって考え出すと、他のメンバーもそれにつられて考え込み始めた。
「あれれ、君たちそんなに難しい顔をしてどうしたの?」
そんな能天気な声を出しながら現れたのは氏真であった。
「あ、氏真さん!氏真さんは出陣してないんですか?」
「僕は戦は苦手でね・・・。専ら留守番要員だよ。」
千歌の言葉に氏真は苦笑しながら答える。
「それで君たちは何を考え込んでるんだい?」
「実は・・・。」
千歌たちは氏真に氏政から言われたことを全部話した。
「なるほどね、話はよく分かったよ。」
「私たちはこれから何をすればいいんでしょうか?」
「そんなの簡単だよ!!氏政どのが言っていたように君たちの才覚をそのまま活かせばいいんだよ!ほら、歌と踊りとか!!」
「歌と踊り・・・ですか?」
氏真の言葉を聞いて千歌たちは思わず首を傾げた。
「うんうん。小田原に着いた後に綾と一緒に君たちの歌と踊りを見せてもらって思ったんだよ、『ああ、今のこの時代にはこの子たちのように人の心を癒して希望を与えるものが必要なんだ!』ってね!」
「そんな・・・、私たちはまだそこまで・・・!」
梨子は顔を赤くして照れていたが、
「そうだよ!!それがあった!!」
と千歌は合点がいったのか晴れやかな顔で叫んだ。
「私たちらしい方法ではありますが、町の復興とかで大変な時にいいのでしょうか?」
ダイヤも一応賛同するが、少し躊躇っているようだった。
「確かにこういう大変な時にいいのかな~って思っちゃうよね。」
果南もダイヤの言葉に頷く。厄災に見舞われた時には娯楽を慎むべきという現代の日本人の大半が抱いている概念が彼女たちにもあるが故に、踏み出せずにいた。
「No!No!No~~~ゥ!!みんな揃ってしみったれすぎデース!こういう時だからこそ盛り上げることが大切なの!!そもそもスクールアイドル・・・というかアイドルってどういう存在かしら!?はい千歌っち!」
「え!?えーっと、みんなを楽しませること・・・かな。」
「Exactly!そう、それよ!!町の人たちの心が沈んでるこんな時だからこそ私たちの歌が必要なの!!」
「うん、鞠莉どのの言う通りだね。確かに町を復興するのは大事な事だと僕も思うよ。でもね、町を元通りにするのにも時間はかかる・・・。避難民もいつ自分の家に帰れるか分からなくて不安だろうし、そんな時はどんな事でもいいから安心したいし安らぎや楽しみが欲しいものなんだよ。僕も父上が亡くなってから混乱続きだった領国を立て直す中で和歌とか蹴鞠で現実逃避に興じることもあったからね。」
氏真は鞠莉に続いて自分の考えを語りだした。
『氏真さん・・・!』
千歌たちは氏真の言葉に感激していた。ほんの少し前までは『名家の当主だから高貴な人かと思ったら自分たちの入浴を覗くくらい俗っぽくて、若干綾の尻に敷かれてる気がある、めちゃくちゃ現代人っぽい自由人』と思っていたのでそのギャップもあったが、彼女たちの氏真への眼差しには確かに尊敬の念が宿っていた。
「氏政どのが語る『民と武士のための理想の王国を作る』という理想は確かに素晴らしいものだし、臣民が付いて行くのも分かる。でもそれが実現するまでにあとどれくらいの時が掛かるか分からない以上、人々には今すぐに安心や楽しみを抱けるものが必要だと僕は思うし、それが出来る力が君たちにはある!きっと氏政どのもそれを考えたうえで君たちを城に残したんだと思うよ。」
「そっか。氏政さんは私たちの事を真剣に考えてこの仕事を与えてくれたんだ・・・!」
千歌は改めて氏政の自分たちへの想いを感じていた。
「そうそう!氏政どのはいろんな人にそれぞれ適した役目を与えるのが上手いんだよね~!でも僕の役目はちょっと荷が重い気がするような」
「氏真さま?こんな所で何してらっしゃるのかしら。」
「あ、綾?いつの間に・・・。」
いつの間にか氏真の背後に綾が立っていた。
「いや~、ちょっと休憩がてらに千歌どの達の相談に乗ってたんだよ~!」
「そうなんですか~!・・・仕事を放り出してですか?」
「ひっ!」
綾の声色が一瞬で冷ややかに変わったことで氏真の顔色も一瞬でサーッと青くなった。
「とにかくさっさと仕事に戻りなさい!!泰朝どのもあなたがどこに行ったか心配してたんですからね!!」
「痛だだだだだだ!!耳引っ張るのはやめてって!僕はああいう仕事は不向きなんだってば!」
氏真は綾に耳を引っ張られながら引きずられていった。
「ごめんなさいね、みんなうちの夫に付き合わせちゃって。」
綾は立ち止まると千歌たちにそう言って頭を下げると、
「いえいえ!氏真さんのおかげでやるべき事が分かりましたので!!氏真さんもお仕事頑張ってくださいね!」
千歌は笑顔でそう言うと、氏真に激励の言葉を贈った。
「そう、うちの馬鹿旦那が役に立ってくれたなら私も嬉しいわ。」
綾も笑顔でそう言うとそのまま氏真を引きずりながら去っていった。
「ああ〜!お礼を言ってくれるなら引き止めてくれた方が嬉しいんだけどな〜〜〜〜!!」
「で、結局どうするの千歌ちゃん。」
「ふっふっふ・・・!よくぞ聞いてくれました曜ちゃん!実はライブを開こうと思うんだ!!」
『ええ!?』
千歌の提案に千歌以外のメンバーは驚いた。
「さっきの氏真さんの言葉で私たちには私たちらしいやり方があるんだって思った時に浮かんだんだ!」
「でもどうやってやるの?衣装だってこの時代じゃ材料も現代に比べて全然無いし・・・。」
「あーそっか!う~ん・・・、いっそ制服でもいいんじゃないかな!?」
「それでいいのかな・・・。」
千歌の制服を衣装に使う案に梨子は若干呆れ気味だったが、
「でも、この時代の人たちにとって制服って凄く珍しいものみたいだし・・・、それにスクールアイドルだから制服で踊るのもいいと思います!」
ルビィは乗り気な様子だった。
「あっ!でも確か私たちがタイムスリップした日、みんなに新しい衣装を見せようって9人分持ってきてたような・・・。」
「ほんと!?今ある!?」
曜の言葉に千歌は目を輝かせて食い気味にたずねたが、
「ごめん、山賊に追われてる時に落っことしちゃったんだ・・・。」
「そうなんだ~・・・。じゃあ制服でいっか!」
千歌は衣装を失くしたことに落胆したがすぐに切り替えた。
「ライブの場所はどうするんですの?」
「それは~・・・。」
問題はライブの場所だった。避難民を集めてライブを行うからにはそれなりに広い場所が必要なのだ。
「場所だったら城の一画を借りちゃいましょうよ!」
「城主の氏政さんがいないけどいいのそれって?」
鞠莉が城の一区画を借りようと提案したが善子は城主たる氏政が不在なのに一部とはいえ勝手に使っていいのか疑問に思っていた。
「No problem!それなら復興チームのリーダーの安藤さんに聞けば心配ないわ!!」
鞠莉が言うには復興の総指揮を採っている奉行の良整に聞けばいいようだ。
「じゃああとはどうやって宣伝を・・・。」
「それはこうした方が・・・。」
「もっと来やすいようにしなくちゃ!・・・」
千歌たちはライブのための作戦会議に時間を費やしていった・・・。
「・・・なるほど、そのライブの為に城の一画を使わせてほしいと?」
「はい!お願いします!!私たち、自分たちの力で住民の皆さんに安心と希望を与えたいんです!!」
千歌たちはその日の夜、良整の所に行って許可を取るために交渉していた。
「確かに、復興が終わるまでには時間がかかりますしそれまで民心を安定させるのも楽なものではありませんからね・・・。」
そう言って良整は考え込む。
「分かりました、そういう事なら許可しましょう。」
『ありがとうございます!!』
千歌たちは許可が取れたことで良整に頭を下げた。
「私もあなた達がこの城に来た時に歌っていたのを見てましたからね。あれならば落ち込み気味な民たちの心の慰みにもなるでしょう。楽しみにしてますよ?」
『はい!!』
そしてその翌日、10月7日の朝・・・。
「なんだ?こんな所に立て札があるぞ?」
「なんて書いてあるんだ?」
避難民たちのいる仮居住区に立て札が置かれていた。
「なになに・・・。『今日の未の刻(午後2時頃)より、小田原城二の丸にて『あくあ』の『らいぶ』を行う』・・・って書いてあるな。」
避難民の1人が立て札に書いてある内容を読み上げた。
「あくあってなんだ?」
「確かお屋形様の家臣にいる9人のおなごがそう名乗ってるらしいぞ。」
「ああ、あの娘っ子たちか。」
「あんな可愛らしい見た目してて実は強えらしいぞ!」
「討ち取りは出来なかったが敵の大将とやり合ったんだってな!!」
ここに来てから小田原の城下町に行くことがよくあったので千歌たちの存在は既に町の住民たちにも知れ渡っていた。
「でもこの『らいぶ』ってなんだ?」
「なんでも歌と踊りを見せるらしい。」
「って事は舞とか猿楽みたいなもんかね。」
「だが俺たちみてえな下々の奴らが見てもいいのか?そういうのはお侍様とかしか見れねえって聞くぞ?」
「いや、どうもそうでもねえみたいだぞ!『来るもの拒まず、身分も問わず』って書いてある。」
立て札には、住民の1人が言うように誰でも来ていいと書かれていた。
「ほんとか!」
「って事は俺たちも見れるんか!」
「じゃあ女房や倅たちも連れてってやらねえとな!」
住民たちは大喜びであった。
「でもそこまでしてくれるってなると金を取られるんでねえか・・・?」
「確かに、ここまでしてくれてタダって話が美味すぎるもんなぁ。」
住民たちは、こんどは料金が必要ではないのかと心配し始めた。
「札には何も書いてねえや。」
「あ、あそこのお侍様に聞こうぜ!」
住民たちは近くを通りかかった侍に聞くことにした。
「すみませんお侍様、少しお聞きしたいことが・・・。」
「む、何だ。なんなりと申せ。」
「実はこの札の『らいぶ』ってのについてなんですが、どれくらい銭を払えばいいでしょうかね?」
「ああ、あの娘たちのか。あの者たちが言うにはお主たち城下の民の為にライブを開く、だから銭はびた一文取ることはないとの事だ。」
「じゃあ、俺たちはタダで『らいぶ』を見れるって事ですかい!?」
「うむ、そういう事だ。存分に楽しむといい。」
『は、ははー!!』
城下の民たちは喜びのあまり、無料であると教えた侍に頭を下げた。
「そうと聞いたらこうしちゃいられねえぞ!」
「ああ、町のみんなに教えてやらねえと!」
住民たちは大喜びで千歌たちのライブの話を町中に広めていった。
そして未の刻、小田原城二の丸にはライブの話を聞きつけた住民たちでごった返していた。
「すごい人だかりだね・・・。」
「やっぱりタダってのが効いたのかな?」
千歌たちは控え室代わりに使っている建物から集まった人々を見ていた。
「うぅ、私たちのライブでみんな喜んでくれるかなぁ・・・。」
「大丈夫だよルビィちゃん。いつも通りに一生懸命歌ってればちゃんとみんなに伝わるずら。」
ライブを前に、果たしてパフォーマンスが通じるのかと不安になっているルビィを花丸が励ました。今回のライブは元の時代のように自分たちの歌と踊りが伝わらないかもしれないという可能性も孕んでいるため、ルビィが気弱になるのは無理もない話であった。
「大丈夫大丈夫!あの時のミニライブだってウケてたんだから心配いらないよ!行こうみんな!!」
千歌はそう言ってステージに向かって歩き出した。
『うん(ええ)!!』
「おい!出て来たぞ!!」
「あれがあの『あくあ』っつう娘っ子たちかー!」
「変わった服着てんな~!」
千歌たちが出てくると住民たちは大いに沸き上がった。
「こんにちは!!私たちは氏政さんの馬廻衆として北条家に仕えている・・・!」
『Aqoursです!!』
「私たちは今から7年前に、この時代から400年以上経った未来の伊豆にある内浦という町からやって来ました!」
「突然この時代に迷い込んで山奥で山賊に追い回された私たちを氏政さんの弟である氏規さんと笠原康勝さんが救ってくださり、北条家に置いてもらえることになりました!」
「素性の知れない私たちを置いてくれた北条家の皆さんの恩に報いるために、政に戦と色々な事をやってきて、ここまで来るのに辛い事や悲しい事もありました。」
「でも、どんな事があっても私たちは仲間と一緒に支え合って乗り越えることができたずら!」
「でも、こうして私たちの第二の故郷になりつつあった小田原の町は昨日の戦いで焼かれてしまいました・・・。」
「私たちは、もう一つの故郷と言えるこの町が煉獄と化すのをただ見ていることしかできなかった・・・!」
「そして武田軍が去っていったあと、私たちは他の残った家臣たちと一緒に氏政さんから町の復興を任されました。」
「辛い思いをしている人たちの心を癒すにはどうしたらいいのか・・・、そう悩んでいる時に私たちのリーダー千歌っちがこのライブを開くことを提案したのデース!!」
「私たちは、北条家の方々と共に私たちを受け入れてくださったこの小田原の城下町に住む皆さま方の為に、微力ではありますが歌と踊りで勇気と希望を振りまきたいと思っております!!」
千歌、曜、梨子、花丸、ルビィ、善子、果南、鞠莉、ダイヤの順に自己紹介と、北条家と小田原の町に対する思いを住民たちに語った。
「皆さん!皆さんには夢はありますか!?」
千歌が大声で住民たちにたずねると、
「夢?商売が繁盛して大金持ちになることだ!」
「おいらは将来父ちゃんみたいな立派な足軽になるんだ!!」
「田舎の父ちゃん母ちゃんに楽させてやりてえ!!」
と住民たちは口々にこの町に対する思いを大声で叫んだ。
「氏政さんは関東をみんなが笑って暮らせる理想の国にするという夢を背負って戦っています。私たちもスクールアイドルとして精一杯輝きたいという夢を追いかけています!これから歌う歌はそんな夢を見る気持ちを、夢を抱いて未来に突き進みたいという想いを歌にしたものです!」
『それでは聞いてください!『ユメ語るよりユメ歌おう』!!』
千歌たちがそう言ってからラジカセの再生ボタンを押すと、曲のイントロが流れ始め、千歌たちは歌い始めた。
「なんか俺たちの知っている唄とは雰囲気が違うなあ。」
「でも、なんか楽しい気分になってこないか?」
「ああ!なんて言えばいいか分かんねえけど、辛い気持ちがどっかにぶっ飛んじまうような感じがするぜ!!」
千歌たちの歌を聞いた住民たちは口々に歌の感想を語り合い、
「いいぞー!嬢ちゃんたちー!!」
と、Aqoursを囃し立てた。
(やっぱり氏政さんや氏真さんが言ってた事は間違ってなかった!私たちのスクールアイドルとしての力はこの時代でもみんなを楽しませることができるんだ!!)
千歌たちは沸き立つ住人達を見ながら、心の中で彼らを楽しませることができたという喜びを噛みしめた。
そして千歌たちは、『ユメ語るよりユメ歌おう』が歌い終わった後も他の曲を何曲か歌ってライブを盛り上げ、酉の刻(午後6時頃)まで行われたライブは無事に成功した。そのライブでの歓声は城下町の端にまで響いたという・・・。
いかがでしたでしょうか?
今回は、千歌ちゃんたちにアイドルらしい事をさせる話を書きたいな~と思って書きました。荒れ果てた町で民心を癒すためにライブを開く・・・。すごくアイドルっぽいですよね!!
さて、次回はいよいよ小田原から撤退する武田軍とそれを待ち受ける氏照、氏邦兄弟の間で繰り広げられた戦国時代における最大規模の山岳戦と名高い『三増峠の戦い』が始まります!
感想や意見があったら、誰でも書けるようになっていますのでどしどし書いてくださると嬉しいです!!
それでは次回もまたお楽しみください!!