ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursの戦国太平記 作:截流
今回はいよいよ千歌ちゃんたちが初めて本格的に戦闘に参加します!!果たしてうまく描写できるか不安ですが、見守っていただけると幸いです!!
それではどうぞお楽しみください!!
梨子たちが綱景と直勝の救出に尽力していた時、綱成に代わって先陣を任された松田憲秀は、里見軍の先陣である正木信茂の部隊と戦闘を繰り広げていた。
「綱成どのに代わって先陣を引き受けたのはいいが・・・、槍大膳は死んだのではないのか!?話が違うではないかぁ!!」
憲秀が率いる松田隊は、松田家の領地が北条家の家臣の中でも最大規模を誇ることから一門衆以外の家臣の中では1、2を争う兵力を有していたが、信茂による苛烈な攻勢と太田資正と康資が綱景と直勝の部隊を奇襲し、追い詰めてるとの知らせを受けて兵士たちの士気が上がっていたことから、数で劣る信茂隊に押されっぱなしだった。
「ったく、これだからもうちっと兵たちの鍛錬をしとけって言ったのによお!!」
そう言って群がる里見軍の兵たちを次々となぎ倒していく赤い鎧に身を包んだ荒武者の名は、松田康郷という。彼は憲秀のいとこであり、力自慢で知られた猛将であった。
「そうぼやくな康郷。我が隊の練度もそこまで悪いものではない。綱景どのや直勝どのの隊が逆に奇襲されたことが敵にとっての活力になってしまったようだな。それに敵将の正木信茂の武勇は、まだ若いというのに父である正木時茂にも劣らないというではないか。」
そう敵を分析しながら康郷と共に敵を倒しているのは康郷の兄で、同じく憲秀のいとこである松田康長で、彼は評定衆に所属している。弟とは対照的に落ち着いた性格で主に内政面で活躍しているが、戦の腕もなかなかのものであった。
「憲秀どの、これ以上は兵の士気が保たない!一旦後ろに下がるべきだ!」
「う、うむ・・・。分かった!ここはいったん退こう!!松田隊、全軍引き返せ!!」
康長の提案を受けて憲秀は退却を兵たちに命じた。そして松田隊が撤退していくのを見た信茂は、
「よし!!敵は退いていってる!!このまま追撃するぞ!!」
と北条軍にさらなる打撃を与えるためにさらに軍勢を前に進めた。
「そうか、ご苦労であったな。お主も憲秀の陣に戻って休んでくれ。」
憲秀からの伝令から松田隊が撤退したという知らせを聞いた氏政は伝令を労って下がらせた。
「まずいことになりましたな氏政さま。」
「ここは危険です!!我らも陣を下げなくては・・・!」
と氏政の部下が後ろに下がることを進言した。それを聞いて氏政は、
「いや、ここは打って出るぞ。」
と部下たちに命じた。
「な!?」
「危のうございます!!敵は遠山・富永隊を退け、さらに松田隊を蹴散らして勢いに乗っているのですぞ!!勢いに乗っている敵に挑むのは下策にございます!!」
部下たちは真っ先に反対した。相手の士気は最高潮、さらにそれを率いるのは若き猛将と名高い正木信茂である。真正面からぶつかり合えば大損害を被るのは日の目を見るより明らかであった。
「何か策はあるのですか?」
ダイヤが訝しげにたずねると、
「否、これといった策はない。だが、敵が勢いづいているのはよく分かる。」
と氏政は兜の緒を締めながら言うと、
「そ、それってルビィたちは大ピンチってことですよね・・・?」
とルビィは今にも泣きだしそうな顔で氏政に問いかけた。
「うむ、確かに敵が勢いづいているという事は我らにとっては非常に不利な状況なのは明白だ。だが、逆に考えてみよ。敵は勢いづいてるだけに長きにわたって戦い続けていることが分かる。そこが絶好調に見える奴らの弱点よ。」
と氏政は床几から立ち上がっていった。ルビィをはじめ、千歌たちは氏政の言葉の意図を読めなかったが、
「そうか!!」
と曜が何かに気付いた。
「どうしたの曜ちゃん、何が分かったの!?」
と千歌が曜に何が分かったのかをたずねた。
「簡単な事だよ千歌。今私たちの所に迫って来てる正木さんって人の軍勢は朝からずっと戦いっぱなしで、私たちは今までここで待機していた・・・。ここで相手と私たちに出てくる違いは体力だよ!」
果南は腕に力こぶを作って千歌たちに力説した。
「果南ちゃんの言う通り、相手はたくさんの部隊と戦ってそれを破ってきたけど、その分私たちよりもずっと疲れてると思うんだ。氏政さんはそこを見抜いていたから今が攻撃するのに一番適してるって思ったんだよ。そうだよね氏政さん?」
曜はみんなに自分が予想した氏政の考えを分かりやすく説明し、それが合っているかを氏政に確認した。
「ああ、果南どのと曜どのの言う通りだ!敵は勝ちに乗じて戦い続けて我らよりも著しく疲弊している、そこを叩くのだ!」
と氏政は刀を空に掲げて声を張り上げていった。刀身に光が反射しているせいか、その姿は実に雄々しく見える。
「待たせたな千歌どの、いよいよお主たちの出番だぞ!」
と氏政が千歌に向かって微笑みながら言うと、
「は、はい!!」
と千歌は目を輝かせながら返事をした。
「皆の者、覚悟をきめろ!ここが我らの正念場だ!!ここでの働き次第でこの戦の趨勢が決まると思え!!」
と氏政は兵士たちに指示を出す一方で、
「いよいよお主たちの本格的な初陣の時がきた。覚悟はできているな?」
と千歌たちに聞いた。
「「「「「「「「・・・はい!!」」」」」」」」
千歌たちは頷いた。いつもは臆病風に吹かれているルビィもそれなりに覚悟を決められたようだ。
「よし、ではお主らに作戦を伝える。そこまで難しいものではないから気構え無くてもいい。まずは敵を惹きつけてから鉄砲隊の一斉射撃を浴びせる。それを受けて敵の動きが止まったら次は弓隊が一斉に奴らに矢を射かける。この二つの攻撃を繰り返し、敵の勢いを削いだらいよいよ突撃だ!とにかく前に出て敵を押し返すのだ。だが深追いはするなよ、ほどほどに追い回すほどで十分だ。」
氏政は千歌たちAqoursや部下たちに作戦を伝えた。
「「「はっ!!!」」」
作戦を聞いた部下たちは駆け足で自分の持ち場へ走っていった。
「さて、いよいよお主たちにも本格的に働いてもらうことになるが問題ないな?」
氏政が千歌に聞くと、
「はい!何でも言ってください!!」
と答えたのを聞いてから、
「そうか。ではまずダイヤどのは弓隊に就いてくれ。次に千歌どの、曜どの、果南どのは
「ふふふ・・・。風に潜む魔の力を得たヨハネにかかればお安い御用ね・・・って善子言うなあ!!」
「あの・・・、氏政さん。ルビィと花丸ちゃんは何をやればいいんですか?」
氏政に指名されなかったルビィは何をすればいいのかを聞いた。
「ああ、ルビィどのと花丸どのは私の側にいてくれればいい。」
「それだけでいいずら?」
「もちろん私が出るときは一緒についてきてもらうぞ。」
「ぴぎぃ!?大丈夫かな・・・。」
「大丈夫だよ。おらがついてるずら!」
不安になるルビィを花丸が励ますと、
「氏政さま!敵が近づいてきております!!」
と伝令が氏政に敵の襲来を伝えた。
「よし!では千歌どの達も配置についてくれ!!」
「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」
「氏政さま・・・。」
鉄砲隊を指揮する氏政の部下が不安そうに言うと、
「まだだ。まだもう少し引き寄せろ。」
と命じた。
敵は少しづつ近づいてくる。一歩・・・、二歩・・・、三歩と・・・、そして相手方は何もしてこないのを怖気づいたと判断したのか走ってきた。
「よし今だ!放てええ!!」
氏政が軍配うちわを振るって叫ぶと、鉄砲隊の一斉射撃が始まり辺り一帯を轟音で包み込んだ。
「「「ぐあああ!!」」」
敵兵が少しづつ倒れていくのを見ると氏政は、
「弓隊放て!!敵に矢の雨を降らせよ!!」
ともう一度軍配うちわを振るった。それを聞いてダイヤは、
「この黒澤ダイヤの誇る強弓・・・、受けてみるがいいですわ!!」
と言って矢を放った。矢は他の弓兵が放ったものと一緒に放物線を描いて敵陣に降り注いで、敵兵の一人に刺さった。ダイヤはそれを見ると、
「ふふ、私にかかれば造作もありませんわ!もっと行きますわよ!!」
とさらに矢をつがえて次々と矢を放つ。
そして鉄砲隊の一斉射撃と弓隊による矢の雨を交互に受け続けた里見軍の勢いが少しづつ減っていき動きが止まると、氏政はそれを見逃さなかった。
「敵の勢いが止まったぞ!!この機を逃さず全力で敵を打ち破れ!!突撃せよ!!!」
氏政が軍配うちわを前に向けると、
「「「おおおおおおおお!!!」」」
と氏政隊の兵士たちは鬨の声を上げて、里見軍に向かって突っ込んでいった。
「よーし!私たちも行こう!!」
「うん!」
「そうだね、私たちも負けてられないからね!!」
千歌たち三人も負けじと突っ込んでいった。
この氏政隊の攻勢を受けて、正木隊の兵士たちは驚いて押し返そうとするが、ただでさえ疲労困憊なうえに、氏政は戦の腕では弟の氏照や氏邦に劣るからその配下たちも弱いと思っていたが予想外に精強であったので、その強さと勢いに驚いて今まで通りの戦いが出来なかった。
「うおお!!普通魔人ちかちーの槍捌きを喰らえー!!」
と千歌は槍を滅多やたらと突き出して敵兵をなぎ倒していき、
「ヨーソロー!!千歌ちゃん、あんまり前に出すぎると危ないよ!」
曜も千歌をたしなめながらもノリノリで敵兵を打ち倒していく。
「おいおい!なんで北条軍に女がいるんだ!?」
「分からねえよ!でも女にしちゃ少し強すぎねえか!?」
里見軍の兵士たちは奮戦する千歌たちを見て戸惑った。そもそも戦場に女がいることなんて普通はありえない(例外はいるが)ので戸惑うのも無理は無い。里見軍が戸惑う一方で氏政隊の兵士たちは、
「あんな嬢ちゃんたちが戦ってるんだ俺たちも負けられねえな!」
「ああ、あの子たちを死なせちまったら一生の恥だ!!みんな!!あの嬢ちゃんたちを討たせるなよ!!」
と男特有の負けず嫌いな性分と、女を死なせちゃならないという庇護欲が混ざりあって今までの合戦とは比べ物にならないほどの爆発力が生まれた。
だが、士気が上がるのは敵兵も同じで、
「おい、あいつらを生け捕りにしたら捕虜としてかなり高く売れるんじゃねえか!?」
「ああ、それになかなか顔もいいしな!」
「売る前につまみ食いするのも悪かねえよな!!」
と、ゲスなものではあるが勢いを取り戻した何人かの兵が千歌たちに向かっていくと、
「どりゃああ!!勝った勝った!!」
と何者かが風のように走って来て薙刀を振り回して敵兵たちを一瞬でなぎ倒した。
「ふふふ、綱成さん直伝の武術の味はどうかな?」
と微笑んで敵に言ったのは果南であった。
「すごいよ果南ちゃん!今のどうやってやったの!?」
千歌が目を輝かせて果南にたずねるが、
「話は後で。今は合戦の最中だからね。」
と言って前へ走り去っていき、千歌と曜もそれに着いて行った。
「よし、そろそろ頃合いだな。」
徒武者隊が敵を少しづつ押し返しているのを見た氏政はそう呟いて、
「鞠莉どの!騎馬隊を率いて敵陣を縦横無尽に引っ掻き回してくれ!!」
と鞠莉に命じた。
「イエス、ボース!!行くわよみんな!マリーについてきてちょうだい!!」
と鞠莉が走り出すと、
「「「おおおおお!!!」」」
と騎馬隊がその後ろに続いていった。
「あれ?善子ちゃんはどこいったずら?」
「ほんとだ、さっきまでここにいたのに。」
と花丸とルビィが辺りを見回すと、
「ああ、善子どのならば徒武者隊が突撃していったのと一緒に敵陣を攪乱しに行ったぞ。」
と氏政が言った。
「えええ!?気づかなかった・・・。」
「善子ちゃんすごいずら・・・。」
それを聞いたルビィと花丸は目を丸くした。
「忍びとしての才が皆無であったとはいえ、風魔党の攪乱戦術や破壊工作などと言った戦場における影働きのほぼ全てを体得したのだ。その力はまさに敵を恐怖に陥れる魔となるであろうな。」
と氏政は呟いた。
その頃戦場では・・・、
「くそ!北条軍の奴ら強すぎるだろ!!」
「ああ、このまま正面から戦うのは無謀すぎる。とにかく迂回して本陣を狙おう!」
と、正木隊のうちの2、30人ほどの兵士たちが氏政のいる本陣に奇襲をかけるべく迂回していた。
「いくら我らを押している氏政でもこれには気づけまい!がははは!」
とその隊の大将と思わしき男が高笑いしてると、彼らの足元に5個ほどの煙玉が転がって来て煙を噴き出した。
「な、なんだ!?敵襲か!」
「煙玉です!!前が見えません!!」
「分かっておるわ!だがそれは敵も同じこと、皆の者散開するな!一塊になれ!!」
と大将が指示を出す。だが、
「ぐわ!」
「ぎゃあ!!」
と次々と部下の悲鳴が聞こえてきた。
「馬鹿な!!敵も我らの姿は見えないはず!!」
「分かりません!ですが我らの兵がやられているのはじじtぎゃあ!!」
大将の側にいた側近と思われる男も遂に討たれ、気づけば全く悲鳴が周りから聞こえなくなっていた。
「くそ・・・おのれ出てこい!!煙に姿を隠して我が部下たちを殺めるとは卑怯なり!!武士としての誇りがあるなら今すぐわしの前に出てきて尋常に勝負せよ!!」
大将は刀を抜いて叫ぶが、
「お断りよ。だってヨハネは武士じゃなくて堕天使なのだからあなたのようなむさ苦しい男と一騎討ちする必要なんてないじゃない。」
とどこからともなく声が聞こえてきた。
「貴様が部下たちをやったのか!その声は女だな、出てこい!!女とて容赦せぬぞ!!」
大将はさらに怒りで顔を赤くして叫ぶが、
「言ったでしょ?一騎打ちする必要なんてないって。」
と、また別の方向から声が聞こえてきた。その言葉を聞いて堪忍袋の緒が切れた大将は、
「おのれ馬鹿にしおってえええ!!!ならばわしが貴様を葬ってくれるわ!!」
と我を忘れて刀を振り回すが、手ごたえは何一つ感じなかった。だが、しばらくすると喉のあたりに違和感を感じ、触ってみると首にクナイが刺さっていたのだ。
「な・・・、馬鹿・・・な・・・!」
男はそう呟くと地面に倒れ伏した。
「き、貴様・・・、なにも・・・の・・・。」
最期の力を振り絞って大将が聞くと、
「私はヨハネ。風に潜む魔より新たな力を授かった堕天使よ。」
と返ってきた。
「風に潜む魔・・・。風・・・魔か・・・。」
と言うと大将は事切れた。しばらくすると煙は風に流され消え去り、善子と氏政から与えられた兵士たちが姿をあらわにした。
「すげえ、善子どのの言う通りに動いてたら本当に全滅させちまった・・・!」
と兵士の一人は驚愕の声を漏らした。
「当然でしょ!!ヨハネの手にかかればこんなの楽勝なんだから!!さ、次行くわよ!堕天使の力を見せつけてやるんだから!!」
と善子は自慢げに言いながら走っていった。
「なあ、『だてんし』ってなんだ?」
「知らね。」
善子について行きながら兵士たちはひそひそと話していた。
そして場所は千歌たちが戦っている主戦場に戻って・・・。
「よし、そろそろ私も出るか。」
「ええ!?出るんですか?」
氏政の前に出るという発言を聞いて驚いたのはルビィだった。
「うむ、確かに今のところは我らの方が優勢だが、数は相手の方が多い。戦いが長引いて相手に体勢を立て直されたらそこで我らは負ける。だから私が前線に出ることによって兵たちの士気をさらに上げるんだ。」
と氏政は馬に乗りながら言う。
「でも・・・。」
ルビィも氏政の言わんとしていることは分かっていた。だがそれでも戦に出ることへの恐怖は拭えない。
それに乗馬が出来るようになったのも一番最後だったことや、この時代に来て最初に野盗に襲われた時もへばってみんなの足を引っ張りそうになってしまったことなど、周りで仲間が活躍しているのに何もできない自分に劣等感を抱いていたルビィは戦場で氏政や他のみんなの足を引っ張ってしまわないかと言う不安に駆られていた。
「大丈夫だよ。」
そう言ってルビィの手を取ったのは花丸だった。
「マル知ってるよ、ルビィちゃんがみんなの足を引っ張らないように必死にお稽古していたの。」
「花丸ちゃん・・・。」
「大丈夫、ルビィちゃんの努力は絶対にルビィちゃんを裏切らないから!」
そう言って花丸はルビィに微笑んだ。
「花丸さんの言う通りですわ。一生懸命に研鑽を積んだ者にこそ勝利の女神は微笑むのです!行きなさい、ルビィ!今こそ黒澤家の名を内浦だけではなく、この乱世にも知らしめておやりなさい!!」
いつもはルビィに対して厳しいダイヤも、この時は優しく、そして強くルビィの心を震え立たせた。
「花丸ちゃん、お姉ちゃん・・・!うん、ルビィ頑張るよ!!」
姉と親友の励ましを受けたルビィの覚悟は決まった。
「姉と親友に励まされたなら百人力だな、今のお主ならどんな大手柄でも立てられるぞ!!」
氏政もルビィの頭を馬上から兜越しに優しく撫でた。
「ではいくぞ皆の者!!これより敵陣に突入する、我に続けえ!!」
氏政は刀を抜いてそれを振りかざし、馬を走らせた。
「「「うおおおおおお!!!」」」
陣にいた氏政の部下たちもそれに続き、
「ずらあああああああああ!!」
「うおおおおおおおおおお!!」
花丸とルビィも大声を上げて氏政と共に走り出した。
そして前線では・・・、
「うーん、どんどん相手の勢いが戻ってきたみたいだね。」
「え!?それってなんかまずくない!?」
「まずいなんてもんじゃないよ、調子に乗って一番前に出てきたけどこれじゃ逆に囲まれちゃいそうだよ・・・!」
千歌と曜は最前線で戦っていたがゆえに徐々に敵に勢いが戻りつつあることを感じていた。その証拠に周りで戦っている味方の数が少しずつ減っていっており、少しづつ囲まれて行っていた。
「女のくせに散々俺たちを痛めつけくれやがって!死ねえ!!」
少しの疲れから気が抜けていた千歌の背後から敵の兵が刀を振りかぶって襲い掛かってきた。
「千歌ちゃん!!くそお!邪魔だよ!!」
曜が助けに行こうとするも敵兵に阻まれる。そして、敵の振りかぶった刃が千歌に迫っている時、彼女の脳内に今までの出来事がよぎった。
(あ、これって走馬燈ってやつだよね・・・。てことは私、死んじゃうのかな・・・?そんなの嫌だな・・・。まだみんなと輝きたいのに・・・!)
千歌はあまりにも突然の事で体は動けなかったが、不思議と頭の中ではいろんなことを考えることは出来た。どれも『まだみんなと輝きたい』というただ一つの願いだった。
「くたばれえ!!」
敵兵が勝利を確信したその時、
「シャイニー!!」
そう叫んでやってきたのは鞠莉だった。彼女の駆る馬がなんと千歌に襲い掛かった敵兵を轢き飛ばしたのだ。
「ま、鞠莉ちゃん!?」
千歌はまたあまりにも突然の出来事だったのでこれまた驚きを隠せなかった。
「ヤッホー!遅くなってソーリー♪」
鞠莉が千歌たちに手を振ると、
「遅いよ鞠莉さん、何やってたの!?」
と千歌はふくれっ面をしながらたずねた。
「うーん、実はちょっと道に迷っちゃってね。まあ、軽い散歩にはなったから他の馬たちのコンディションも最高よ!」
と鞠莉はガッツポーズをし、
「それじゃあみんな!私たち騎馬隊の力を見せるわよ!!シャイニー!!」
と声を上げて走り出すと、彼女の後ろから、
「うおおおおお!!」
「鞠莉どのに続けえええ!!」
「シャイニー!!なんだかこの叫び方癖になるなあ!!」
と騎馬武者たちが走っていった。
「あれ?果南ちゃんがいる。」
曜は騎馬武者隊に紛れて走ってる果南を見かけた。
「あれが敵の騎馬隊の大将だ!!あの金髪の女を狙え!!」
敵の武将が部下の弓兵たちに鞠莉を撃つように命じるが、
「鞠莉はやらせないよ!」
果南が馬から飛び降りながら弓兵たちを薙刀で切り裂いた。
「サンキュー果南!」
「もう、ただでさえ恰好が目立つんだからしっかりしてよね。」
「はいはい、ダイヤみたいな事言わないの!」
二人がそう言い合ってるところに、
「くそお・・・、喰らえ!!」
と生き残っていた弓兵が矢を放とうとするが、
「だめええ!!」
とルビィが飛び込んできて弓兵を刀で殴った。
「オゥ!ルビィ、ナイスファイト!!」
と鞠莉がルビィを褒めた。
「あれ、ルビィがいるってことは氏政さんも出てきたってことかな?」
「うん!氏政さんはあっちにいるよ!じゃあルビィは氏政さんのとこに戻るね!」
ルビィが指さす方向には氏政がおり、彼女は彼のもとへ走っていった。
「氏政さん、少し前に出すぎな気がするずら~!!」
花丸は敵兵を防ぎながら氏政に前に出すぎてることをたしなめるが、
「ああ、確かにそうかもしれないな!だが、『俺』はこの関東の乱世を終わらせることが目標なんだ・・・!それを成し遂げるためにはみんなの協力が必要不可欠・・・。だからこそ当主である俺が前に出ることでみんなを引っ張っていくんだ!!」
氏政の一人称が普段使っている『私』から恐らく素であろう『俺』に戻っていることから、花丸は彼がどれだけの覚悟と想いを持っているのかを悟った。
「氏政さんはやっぱりすごい人ずら・・・。でも、その気持ちはおらたちも負けて無いずら!!」
花丸がそう言うと同時に、
「うりゃああああ!!!」
「よおおおそろおおおお!!」
千歌と曜が躍り出てきた。
花丸の言葉を聞き、奮戦する千歌たちを見た氏政は笑って、
「そうだな、お前たちの想いも見事なものだ・・・!よし、全軍総攻撃をかけろ!!正木信茂隊を押し戻すんだ!!!」
「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」
氏政が出てきたことで士気が最高潮にまで上がった氏政隊は、なんと数で自分たちより有利な正木信茂の軍勢を押し返し、兜首(大体中級武士以上の首)を4、50人ほど討ち取るという戦果を挙げ、その勝利を誇示するかのように、氏政のものである『钁湯無冷所』の旗印が雄々しく翻っていた。
「北条氏政・・・、獅子の子はやはり獅子であったか・・・!」
信茂はそう言い残し、これ以上の損害は出すまいと本陣である国府台城まで退いていった。
「やったあ!!やったよ曜ちゃん、皆!!相手を追い返したよ!!」
千歌は大いに喜んだが、
「千歌さん、相手はまだ国府台に残っているんですのよ?喜ぶのは早すぎますわ。」
ダイヤがくぎを刺した。
「まあまあ、相手を追い返したのは確かなんだから喜んでも罰は当たらないんじゃない?」
といつものようにダイヤを果南が宥めた。
こうして、『第二次国府台合戦』の前哨戦は北条軍は史実とは違い富永直勝が生還するも、遠山綱景ら幾人かの重臣たちが戦死するという大打撃を受けながら里見軍を追い返すという痛み分けに近い結果に終わった。
だがこれはあくまでも『前哨戦』である。この日にはそれ以降戦いは行われずに両軍はそれぞれ休息をとった。
関東の覇権を握らんとする北条家と、上杉謙信率いる反北条連合の急先鋒である房総半島の雄、里見家による、房総半島の覇権を懸けた決戦の決着は翌日へと持ち越された。
いかがでしたでしょうか?
千歌ちゃんたちの初めての戦いはとりあえずは成功という形で終わりました。ですがこれはまだ前哨戦にしかすぎません!
来たる『第二次国府台合戦』の本格的な決戦ではいったいどのような結末が待ち受けているのか、その目で是非とも確かめてください!!
感想があればどしどし書いちゃってください!!よろしくお願いします!!(久しぶりの宣伝)
それでは次回もまたお楽しみください!!