オリ主と男の娘と召喚獣   作:あるく天然記念物

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バカテスト

問題・次の文章を読んで後の問いに答えなさい。

「定吉はどこに行ったんだ」
次平が尋ねると、太助は肩を竦めて答えた。
「お菊のところだよ。十年来の恋心を得意の和歌として伝えてくるんだとさ」
それを聞いて次平は眉を顰める。
「恋の和歌ときたか。それなら【結果】は知れたようなものだな」
「違いない。あいつの歌は『下手の』(  )だからな」


問① ( )に正しい語句を入れて『 』の慣用句を完成させ、その意味を答えなさい。
問② 【 】の“結果”とはどのような結果なのか。次平と太助が予想しているであろう結果を答えなさい。


姫路瑞希の答え
「問① 下手の(横好き) 意味:下手であるにもかかわらず、その物事にやたらと熱中していること」
「問② 下手な和歌で失敗してしまって、禎吉の想いは成就しないという結果」

教師のコメント
正解です。この文脈で他に当てはまる“下手の――”で始まる慣用句としては、“下手の真似好き”というのもあります。どちらの慣用句であろうとも、拙い技量を示すため、次平と太助の2人が予測する結果は失敗であることが分かります。


吉井明久の答え
「問① 下手の(一念)
意味:へたくそでも一生懸命頑張ること」
「問② へたくそでも自分の為に一生懸命に歌う定吉の姿に、お菊はきっと心を動かされるに違いないという予想」

教師のコメント
決して正解とは言えませんが、先生はこの解答を好ましく思います。


黒乃創の答え
「問① 下手の(横好き) 意味:下手であるにもかかわらず、その物事にやたらと執着していること。まさに滑稽そのもの。愉悦に他ならない」
「問② 実はお菊には既に旦那さんがいて、それを知らずに和歌を聞かせに行く禎吉が旦那さんにボコボコにされるという予想」

教師のコメント
先生そんなドロドロした昼ドラは好きじゃありません。それと最初の回答と共に話があるので、この後黒乃君は職員室に来るように。


Dクラス戦という名のチュートリアル

「雄二」

「ん? どうした、創」

 

 ミーティングを済ませて解散となった後、俺は雄二を屋上に話があると言って残しておいた。

 一応言っておかないとな。

 

「わかってると思うが、俺はあくまでもお前のケジメの為に力を貸す。断じて世の中学力だけが全てじゃないとか、Aクラスの設備が欲しいってことで強力するわけじゃ────いや、できればAクラスの施設は欲しいな、訂正する。まあなんだ、友人としてお前に力を貸す、それだけだ」

 

 正直なところ、クラスの為に戦うなんて俺は考えていない。

 そこのところを雄二には理解してもらった上で作戦をたててもらわなければ、最悪、クラス内で内部分裂が起きちまう。

 だって、基本的に俺は、傍観主義だからな。

 

「…………わかってるさ。俺から頼んだんだ。必要以上には頼らねえ。だが、それでも来てくれるとは思ってなかったぞ」

「おいおい、これでも明久やお前、ムッツリーニに秀吉とは親友だって思ってんだぜ? 頼まれたら助ける。当たり前だ」

「へっ、そうだったな。お前はそういう奴だよな。頼りにしてるぜ……親友」

「あぁ、期待以上の働きをしてやるよ」

 

 軽く互いの手を交わし、俺たちは屋上を後にした。

 さて、いよいよ戦争の始まりだ。

 

● ● ●

 

「と意気込んだものの、Dクラス戦は最後くらいしか力貸せないんだよな、これが」

「黒乃君、テスト中です。お静かに」

「はは、すんません」

 

 手元にあるテスト用紙に次々と回答を入れ、空白を無くしていく。

 今現在俺は回復試験の真っ最中なのだ。

 既にDクラスとの試召戦争が開始されて一時間が過ぎようとする中、依然として俺はテストと睨めっこしている。

 何故なら、俺は振り分け試験を無記入で提出してるため得点無しなのだ。

 もしそのまま勝負を挑み、挑まれた日には即戦死扱いされ、戦死者は補習という名の地獄を鉄っちゃんから受けさせられる。

 そのため、こうして点数を補充しているのだ。

 

 ピンポンパンポ──ン《連絡をいたします》

 

 点数補充も終わりかけた時、聞き覚えのある声が放送されてきた。

 須川か。なんか雄二が入れ知恵したな。

 

《船越先生、船越先生》

 

 船越先生……と言うことは数学。つまりは島田を前衛に進める戦略か。

 しかし、どうやって誘導するんだ?

 

《吉井明久君が体育館裏で待っています》

 

 あぁ、一発で誘導可能だ。

 

《生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです》

 

 完璧だな。ついでに明久の逃走撃が始まるファンファーレを鳴らしてやがる。

 船越先生は三十路を超えた辺りで実家から結婚の催促を受けており、本人も結婚願望が強いためか成績を盾に結婚を申し込んだりする先生なのだ。

 

 今頃は昭久を血眼で追いかけているに違いない。

 

「はははは! やっぱりFクラスは最高だわ! さてと、俺も行きますかね」

 

 先生から補充試験の結果を貰い、教室から出る。

 

「あ、あの、黒乃君!」

「ん? 姫路か、どうした?」

 

 筈なのだが、その途中で姫路から止められた。

 なんか結構本気な目をして。

 

「その……さっきの放送の事なんですけど、明久君は本当に船越先生に」

 

 なんだそんな事か。

 あの放送で真面目な雰囲気を持つとか、姫路も純粋だね。将来壺とか買わされないか心配になってくるわ。

 

「大丈夫、大丈夫。おそらくは誘導半分、悪戯半分での放送だ。気にする必要はねぇよ。てか、去年ならこれぐらい日常茶飯事だ」

「そ、そうなんですか。よっ、よかったぁ(ボソッ」

「まっ、そんな事するぐらいに状況は不味いみたいだ。姫路もなるだけ早く試験終わらせろよ?」

「は、はい! 頑張ります」

「おう、んじゃ作戦通り戦地でな」

 

 今度こそ教室をでて、戦地となっている廊下──ではなく、作戦通りに雄二のいるFクラスの教室に向かった。

 歩いて数分、予定通りに教室へと到着。

 

「よぉ雄二、戦況はどうよ?」

「創か。概ね予定通りってところだ」

「となれば、もうそろそろ来るって事になるな」

「あぁ──っと、来たみたいだぜ」

 

 雄二はおもむろに教室のドアを指差す。

 するとそこには五人の生徒がいた。

 見た目が馬鹿そうでないことから、対戦相手のDクラスの生徒だと分かる。

 

「Dクラスの松永信治」

「同じくDクラスの竹下直晃」

「Dクラスの原春菜」

「Dクラスの橋本恵美」

「そしてDクラスの信藤英樹」

 

 五人は呼吸を合わせ、叫んだ。

 

「「「「「Fクラス代表坂本に試召戦争を───」」」」」

 

 でもな、

 

「あぁ、俺が受けるわ」

「「「「「申し込み……えっ?」」」」」

 

 簡単に雄二に挑めると思った? 残念、黒乃君でした~。

 

「つーわけで、田中先生、よろしくっ、頂戴!」

「えぇ。期待してますよ、黒乃君。承認します」

 

 先生の承認を受け、召喚フィールドが構成されていく。

 教科は勿論。

 

『Fクラス  黒乃創   世界史 563点

            VS   

 Dクラス  松永信治      122点

       竹下直晃      104点

       原春菜        93点

       橋本恵美       77点

       信藤英樹      132点』

 

 俺が大得意な暗記ものだ。

 

「「「「「え、はっ? ……えええぇぇっ?!」」」」」

 

 あまりの点差にDクラスの刺客が驚きの声を出す。

 だろうな、俺も逆の立場なら発狂するね。

 呼び出された俺の召喚獣は黒色のフードを被り、両手にはこれまた黒色の拳銃を二丁構えている。

 うーむ、自分の召喚獣ではあるが、明らかに強そうだ。

 というよりどこの黒ずくめの組織だと言いたい。

 

「残念だけど、これ、戦争なのよね」

 

 そんな死刑宣告をやりつつ、俺は挑んできた全員の召喚獣の眉間に鉛玉を打ち込んで戦闘が終了。

 呆気ない。んでもって言葉にしたら雑なことこの上ない。

 そして、決着がつくということは、

 

「戦死者は補習!」

「ひぃ?! てて、鉄人!」

「見逃してくれ! 俺たちはあんな化け物と戦うつもり無かったんだ!」

「黙れ! 捕虜は問答無用で補習室送りだ! そして戦闘が終わるまでみっちり特別講義をしてやる!」

「先生! 先生の補習は補習やない! 拷問や!」

「大丈夫だ! 終わる頃には趣味は勉強、尊敬する人は二宮金次郎と言えるような立派な生徒になる!」

「それは補習ではなく洗脳って言います!」

「えぇい! いいから来いっ!」

「や、止め────やめてぇぇええええぇぇ!!!!」

 

 地獄に向かう事を意味する。

 哀れDクラスの刺客。

 君たちの事は五分ぐらいは忘れない。

 

「流石だな、創」

「まあ得意教科だったしな。それにしても、予測通り過ぎて笑えてきたわ」

 

 そう、これは予め雄二と共に予測していた状況なのだ。

 そして、予測通りに事が運んだということは──。

 

 ピンポンパンポーン《Dクラスの対戦、平賀源二君が戦死しました。よって、Fクラスの勝利です。繰り返します──》

 

 放送を聴き、一言こぼす。

 

「本当、予測通り過ぎ」




短い? だってチュートリアルだもん

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