オリ主と男の娘と召喚獣   作:あるく天然記念物

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バカテスト

問題・下の文章の( )に正しい答えを入れなさい。
『光は波であって、( )である』

姫路瑞樹の答え
「粒子」

教師のコメント
さすがです。


土屋康太の答え
「寄せては返すの」

教師のコメント
君の解答はいつも先生の度肝を抜きます。


吉井明久の答え
「勇者の武器」

教師のコメント
先生も RPG は好きです。


黒乃創の答え
「粒子、そして二つの特性を持っている量子。また近年では、光の粒子性に重点を置く場合は光子、波動性に重点を置く場合には光波、光が粒子と波の二面性を持った量子である、という点に重点をおく場合は光量子」

教師のコメント
さすがは黒乃君。いつも物知りですね。先生も解答用紙の裏にまでびっしり書きすぎてあって驚きです。普段もこれくらい真面目に生活して欲しいものです。


屋上って、どうして不良がいるイメージ?

「騙されたぁっ!」

 

 意気揚々と出て行った明久だが、その後分後には命辛々とばかりな勢いで教室へと戻ってきた。

 顔には痛々しそうな痣や切り傷が見える。

 

「やはりそうきたか」

 

 そんな明久の様子などどうでもいいように平然とそんな事を言ってのける雄二。

 本当にどうしようもないバカって認識なんだな。

 

「やはりってなんだよ! やっぱり宣戦布告の使者への暴行は予想通りだったじゃないか!」

「当然だ。そんな事も予測できないで代表が務まるか」

「えっ、明久は知らなかったの?」

「少しは悪びれてよ! というか創も知ってたら教えてよ!」

 

 掴みかかって来そうな勢いで俺に詰め寄ってきた明久。

 俺はそんな明久の肩を優しくたたく。

 

「明久、良いこと教えてやる」

「一応聞くけど何!」

「とある天才詐欺師が言っていた。騙される方も悪い。今回のお前の教訓はそれだ」

「最悪すぎる!」

 

 よよよ、とばかりに崩れ落ちてゆく明久。

 そんな明久を心配して姫路と島田が駆け寄るが、島田の言葉を聞いて更に明久は悶え出す始末。

 どうやらまた島田が折檻宣言でもしたんだろ。

 あぁ、どんどん島田の失恋の相がどぎつくなっていく。

 

「創……さすがにワシも明久にはちゃんと言っておくべきだとと思うのじゃが?」

 秀吉もさすがに不憫と思ったようで俺に聞いてくる。

 うむ。秀吉は優しいね。俺はそんな秀吉の頭を軽く撫でつつ大丈夫だと返す。

 

「明久は麦の苗のような奴なんだ。踏まれても踏まれても何度でも立ち上がる。それに基本明久はドMだから喜んでるだろ」

「はにゃ──ハッ?! う、うむ…………まあそれならいいのじゃが」

「よくないからね?! 聞こえてるからね?! 創君ー! さらっと人を変態みたいに秀吉に言うのは止めてよ! それと島田さん? 違うからね? 僕ドMじゃないからね? だから笑顔で僕の関節は狙ってこないで、お願い!」

「そんな事はガチでどうでもいい。それよりこれからミーティングを行うぞ」

「そんなことって何よ! ムキィーー!!」

 

 どうやら作戦会議は別の場所で行うようで、雄二は扉を開けて教室を出て行った。

 軽く明久をいたわりつつ、俺もその後をつられるようにして俺、そして秀吉も出て行く。

 出て行く俺たちのあとを追うように、明久、ムッツリーニ、島田、姫路の五人がついて来る。

 歩くこと数分。雄二が学園の屋上に繋がる扉を開け、俺たちは次々に太陽の下に出ていく。

 うーむ。お天道様が暖かい。

 

「明久。宣戦布告はしてきたな?」

 

 雄二は屋上のフェンスの前にある階段に座り込む。

 俺も座るか。

 俺も階段に腰を下ろし、そして俺の隣に秀吉が座る。

 やっぱり秀吉は俺の隣か。まあいいけど。

 

「一応今日の午後に会戦予定と告げてきたけど」

 

 明久らも俺と同じように各々階段に腰を下ろした。

 

「それじゃ、先にお昼ご飯って事ね」

「そうなるな。明久、今日の昼ぐらいまともな物食べろよ?」

「今日は何を食うつもりだ。雑草か?」

「さすがに雑草は不味くて無理だったよ。それと僕の気持ちを汲んでくれるならパンでも奢ってくれたら嬉しいんだけど」

 

 明久は気持ち以外は快く受け取るもんな。

 というか明久、お前とうとう雑草に挑戦したのかよ。

 

「えっ? 明久君ってお昼食べない人なんですか?」

 

 明久の言葉に姫路は驚いたような表情出明久を見る。まあ普通の男子高校生はお昼抜かないもんな。

 というか明久、お前何を想像してんだ? 視線が姫路の胸にいっとるぞ。

 

「いや。一応食べてるよ」

「……あれは食べてると言えるのか?」

「少なくともあの食事は辞書だと食べるにはならんな」

 雄二と俺の横やりに不満げな顔をしてくる明久。

 え、なんか間違ってた?

 

「二人とも、何が言いたいのさ」

「いや、お前の主食って────水と塩だろ?」

「あとは雨水と湧き水、それと井戸の水だっけ?」

「なんて失礼な!」

 

 心外だと言い、明久は強い口調で俺たちに言い返してきた。

 

「きちんと砂糖だって食べているのさ!」

 

 明久、それ食べ物ちゃう。調味料や。

 

「あの、吉井君。水と塩と砂糖って、食べるとは言いませんよ…………」

「舐める、が表現としては正解じゃろうな」

 

 みんなの優しい視線に明久は逆に傷ついていく。

 まあもっとも、

 

「ま、飯代まで遊びに使うお前が悪いよな」

「ホント、その内霞とか食べ出すんじゃね?」

「し、仕送りが少ないんだよ! それと創はさっきから僕の事を何だと思ってるのさ! 霞はこの前から挑戦してるよ!」

 

 もうどうしようもねぇわ。

 それとなんだかんだで明久は一人暮らしをしてたりする。

 なんでも両親が海外で共働きで、姉も海外にいるのだと。

 元々自制心の少ないこのバカは生活費は全部趣味につぎ込んでしまい、それを叱る親もいないからそれがずるずると続いてしまって今に繋がるというわけだ。

 

「……あの、良かったら私がお弁当を作ってきましょうか?」

「ゑ?」

 

 明久は姫路の言葉に思い切り時代遅れの驚愕な顔をしだす。

 そこまで強烈な言葉か?

 

「本当にいいの? 僕、塩と砂糖以外の物を食べるのなんて本当に久々だよ!」

 

 だからそれは調味料だ。動詞は食べるじゃねぇ、舐めるだ。

 

「はい。明日のお昼で良ければ」

「よかったじゃないか明久。手作り弁当だぞ?」

「うん!」

 

 雄二の言葉に素直に喜びだす明久。

 しかし、そんな彼を放っておけない少女が一人。

 

「……ふーん。瑞希って随分優しいんだね。吉井“だけ”に作ってくるなんて」

 

 絶賛恋の茨道を爆進中の島田だ。

 多分、というかおそらく姫路に対しての牽制の一言だと思われるが、明久に取っては死活問題を悪化させる要因になって嫌われる要因になっとるぞ。

 

「……創」

 俺にしか聞こえないほどの小さな声で秀吉が声をかけてきた。

「ん? どうした秀吉」

「お主も弁当は作ってもらったら嬉しいか?」

「そうだなぁ……嬉しいな。単純に自分を思って作ってもらえる料理ってのは誰だって喜ぶだろ?」

「そ、そうか。なら、ワシもお主に明日から作ってきてやるかの!」

「おう。楽しみにしてる。秀吉の料理は旨いからな」

「う、うむ!」

 素直に喜んでおく。

 かなりの頻度で朝飯を作ってもらっているから俺は秀吉の料理の腕が高いのを知っている。

 しかし、一日のうちに二回も秀吉の料理を食べることになるとは。

 こりゃいよいよもって夫婦みたいな感じだな。

 まだ答えは見つかってないけど。

 

「……お手並み拝見ね」

 

 ん? なんか秀吉と話している間に向こうは向こうで盛り上がってるな。

 

「なぁ雄二、なに盛り上がってんだ?」

「あぁ。なんでも姫路が俺たちの分も弁当を作ってくれるってさ」

 

 なるほど。まあ大方島田に牽制されて逃げに走ったようだな。

 やれやれ、二人の恋は何故自ら茨に突っ込んでいくのか。

 見てて飽きないから放置するけどな!

 

「はぁ、どうして恋する人間は自ら茨に向かって進むのか、理解できないね。まあもっとも、その好意を理解できないバカもいるけど」

「……お前はお前で呆れた奴だな」

「どういう意味よ?」

「言葉通りだ。てか、お前は秀吉から弁当作ってもらわないのか?」

 

 そうそう、雄二は俺が秀吉から好意を受けていることを知っている。

 といっても、俺と秀吉のことを理解してないのは明久と姫路の二人ぐらいだ。

 姫路は接点がないからともかく、明久が気づいて無いのは単純に色恋沙汰に唐変木だからな。

 

「ふっ、何を言い出すのかと思えば。そんなもの明日から作ってもらう約束をしたに決まっているだろうが。羨ましいだろ?」

「ふーん、そうか。ということは、もう決めたのか?」

 

 その問いに対して俺は首を軽く左右に振る。

 

「いや、まだだ。いまだに思案中。そんで迷宮入り」

「おいおい、まだ返事先送りにしてるのかよ。それって男としてどうよ?」

「うっせ。別に男同士だから答えに迷ってるわけじゃねぇ。ただ、秀吉が本気だから、俺も本気になって答えを探したいんだよ。今までの人生、悲しいことに秀吉以外から告白なんてされたことなくてな」

「そうか。まっ、人の恋路には踏み込むつもりはない。馬に蹴られたくないからな」

「そういうお前はどうよ。今回で決まりそうか?」

「…………黙秘権を使わせてもらう」

「ふっ、まあお互いに悔いのない答えを見つけるか」

「……だな」

 

 人生短し。人よ恋せよ。

 果たして俺は、俺たちは正しい恋を見つけられるのだろうか。

 

「さて、話がかなり逸れたな。試召戦争に戻ろう」

 

 おっと、そういや試召戦争のミーティングのために俺たちはここにいるだった。

 

「雄二。一つ気になっておったのじゃが、どうしてDクラスなのじゃ? 段階を踏んでいくならEクラスじゃろうし、勝負に行くのならAクラスじゃろう?」

「そういえば、確かにそうですね」

「まぁな。当然考えがあってのことだ」

「どんな考えですか?」

「色々と理由はあるが、とりあえずEクラスを攻めないのは簡単だ。戦う必要がないからだ」

「え? でも、僕らよりクラスは上だよ?」

 

 明久の疑問も確かにわかるのだが、実際問題Eクラスは本当につ戦う意味なんて無い。

 

「明久、一つ言うが、俺たちFクラスとEクラスってあまり差なんて無いんだぜ?」

「え、そうなの?」

 

 俺は頷きを返す。

 

「そうさ。俺の見立てなら、振り分け試験の結果で平均を求める計算したら、多分一人頭5点か良くても10点ぐらいしか違わん。それ以上ならそれ以上のクラスになるしな。そんなクラス程度に勝っても意味ないだろ」

 

 振り分けに関してだが、おそらくは平均100点満点中90点までがAクラス。以後15点感覚で振り分けられていると考えられる。

 そうなると30点から15点までがDクラスで、15点以下がFクラスになる。

 ほら、30点以下の点数なんざ誤差の範囲になってくる。

 俺の説明に納得したように明久は大きく頷く。

 

「なるほど。え、じゃあなんて一気にAクラスに攻めないの?」

「そっちはそっちで簡単だ。単純にAクラスに勝てないからだ」

「えっ! 勝てないの? だって雄二は勝てるって言ってたよね!」

 

 俺が答えてもいいがどうすると視線を雄二に向けたら頷き返されたので、全員に聞こえるように説明を始める。

 

「いいか、初期装備である檜の棒装備の勇者が最初から魔王に勝てるか?」

「それは無理だよ。ちゃんとレベルも上げないと」

「そう。魔王どころか魔王の城にいる雑魚敵にすら殺される」

「それは当然ね」

「普通ならレベル上げでどうにかなる。しかしこれらを俺たちFクラスに当てはめるとそうはいかん。一日でテストの点数が30も40も上がるわけないし、10点すら危うい」

「…………確かに」

 

 さて、こっからが重要だ。

 

「では、確実に負ける戦いを勝つためにはどうすればいいか。簡単だ。勝てる試合を構築すればいい。最も、それを行うプロセスも要れば、戦略がいる。まあ今回のDクラスへの侵攻は俺たちFクラスの志気を高めるのと同時に大事なAクラス戦への布石、といったところだろうよ。だろ、雄二?」

「あぁ。その通りだ。さっき言いかけたAクラスの作戦に必要なプロセスだ。だからこそ、俺たちはDクラスに挑む」

「あ、あの!」

 

 めずらしく姫路が大きな声を上げてきた。

 

「ん? どうした姫路」

「えっと、その。さっき言いかけた、って…………吉井君と坂本君、黒乃君は、前から試召戦争について話合っていたんですか?」

「ああ、それか。それはついさっき、姫路の為にって明久に俺と創が相談されて────」

「そうそう!」

 

 雄二の言葉を遮るように明久は体を割り込んできながら声を荒げる。よほど聞かれたくないんだな。

 

「さっきの話だけど、Dクラスに勝てなかったら意味ないよ」

「負けるわけないさ」

 

 明久の不安な声を笑い飛ばす雄二。

 俺も同様に明久に笑いかける。

 

「だな。というか明久、俺や雄二が負けるような勝負を挑むと思ってるのか?」

「それは……無いね」

「あぁ。お前らがいれば必ず勝てる」

 

 むしろそうでないと、俺がこのクラスに来た意味がねぇよ。

 

「いいか、お前ら。ウチのクラスは────最強だ」

 

 不思議な心境だ。

 明らかに根拠のない言葉。

 だが、どうしてだろうか。その言葉には中身があるように感じられた。

 雄二の持つカリスマ性故に成り立つ芸当だ。

 

「いいわね。面白そうじゃない!」

「そうじゃの。創と同じクラスで不満はないが、Aクラスの連中を引きずり落としてやるとするかの」

「…………(ビシッ)」

「が、頑張りますっ」

「僕も、全力で頑張るよ」

 

 目指すはAクラスの設備。いや、その座だ。

 きっとそれは想像を絶する過酷な道のになのだろう。

 だけと、不思議だ。このメンバーとなら、やり遂げられる気持ちしかない。

 頼むぜ、雄二。お前の野望を手伝ってやるんだ。逸れ相応に俺を楽しませてくれよ?

 

「そうか。それじゃ、作戦を説明しよう」

 

 春先の肌寒い風を前進に受ける屋上で、俺たちは勝利への一歩を踏み出した。


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