オリ主と男の娘と召喚獣   作:あるく天然記念物

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 試験召喚戦争
 それは、文月学園で導入された新たな学力向上システム。
 クラス対抗でテストの点数がそのまま戦力に直結する召喚獣を駆使し、クラスの施設を掛けて勝負する。
 負けたクラスは買ったクラスと施設の交換をするか、ランクダウンさせることができる。
 これを利用して強い戦力を求めて全生徒がテストを頑張ることによって学力の向上を目的としている。
 この文月学園の試験は特殊で、点数の上限が無くなっているため、頭の良い生徒の召喚獣は化け物の戦力を誇る。
 下のクラスは勝つためには、如何にうまく戦略を立てるかが鍵だ。


勝利の鍵はこの教室に!

 Aクラスへの宣戦布告。

 これには大きな意味が伴ってくる。

 無論、Fクラスに対してだと悪い意味でだ。

 はっきり言って無謀としか思われない。

 こちらは最低辺の最悪クラス。対して相手は最高ランクのクラス。

 明らかに地力が違いすぎる。

 その証拠に、

 

『勝てるわけがない! 相手は伝説のクラスなんだぞ!』

『非難する準備だぁー!』

『この俺はクールに去るぜ』

『ここ、こわこわ、怖いんじゃぁ、なな、ないんだぜ?』

 

 などと慌てふためく声が飛び交う我らFクラス。

 というか後半の奴ら逃げようとするなよ。まだ勝負すら始まっとらんぞ。

 

「そんな事はない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせてみせる」

 

 そんな意気消沈どころではない敗北ムードを纏うクラスメイトに対して雄二はそう心強く宣言した。

 その宣言に次々に『無理』だの『不可能』だの『女子がいるだけでもマシ』だのヤジが飛んでくる。

 さぁ雄二、この空気を如何に変えてくる?

 

「根拠ならあるさ。このクラスには試験召喚戦争で勝つことができる要素が揃っている」

 

 雄二の言葉を受けてクラスが静まり返った。

 誰もが思うだろう。どこにそんな要素がこの最低辺クラスにあるのか、と。

 

「それを今から説明してやる」

 

 未だに不適な笑みを浮かべたままの雄二は、まず一人の生徒を呼び出す。

 

「おい、康太。畳に頭擦り付けて姫路のスカートを覗いていないで前に来い」

「……………!! (ブンブン)」

「ひ、ひゃっ」

 

 エロリストは誤解だと言わんばかりに首を千切れそうな勢いで振り回す。

 残念ながら、その行動と先ほどの行動は結びつかないぞ。

 そのムッツリーニは顔に付いた畳の後を消しながら壇上に上がり、雄二から改めて説明される。

 特にムッツリーニの由来に関しては詳しく。

 前もいったが、こいつはそっち方では有名だから。

 

「姫路のことは説明するまでも無いだろう。皆だってその実力はよく分かってるはずだ」

「あの……私がですか?」

「あぁ。ウチの主戦力一号だ。期待している」

 

 「恐縮です」と言って姫路も教壇に上っていく。

 確かに元々Aクラスの実力を持つ彼女はこのクラスだと主戦力だな。

 しかし、はて? 一号? と言うことは二号は……。

 

「続いてウチの主戦力二号こと、黒乃創」

 

 ふむ、やはり俺か。学力で考えたら妥当か。

 呼ばれたので俺も先に呼ばれた二人同様に壇上に上がる。

 

『黒乃………創? どっかで聞いたことあるような?』

『ほら、暗記教科の魔神と呼ばれた化け物だよ。噂だと教師に余裕で勝てるらしいぜ』

『というか姫路さんは理由があるから分かるとして、なんでそんな化け物がこのクラスにいるんだよ』

『しかし、これでAクラスの実力者が二人ってなるな!』

『先ほど羨ましいことをしやがった異端者か。処刑執行第二陣の手配をしなくては』

 

 はは、散々な言われようだ。

 まあその言われたことがあんまり否定できないから それと最後いった奴、後で校舎浦に来い。お兄さんと進路相談しようぜ?

 

「木下秀吉だっている」

 

 おっ、今度は秀吉か。

 だが秀吉は演技力だけが唯一の武器。

 一体全体雄二はどう利用するつもりなのやら。

 

「当然俺も全力を尽くす」

 

 雄二の言葉にクラスが行けそうだ、やれると声が上がりはじめ、志気が上がっていく。

 

「それに、吉井明久だっている」

 

 

 ……………シーン─────ヒュゥ──

 

 

 そして一気に冷めた。

 やはり明久はオチに利用したか。

 流石雄二。物事の起承転結を分かってるぜ。

 

「ちょっと雄二! どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさっ! 全く必要ないよね! むしろ無駄だよね!」

 

 明久は早速抗議に入る。

 当然ながら明久の名前をいったところで『誰それ? 食べ物?』ぐらいの認知度のバカだもんな。

 しかし、そんなバカでもある称号を持っている。

 

「明久はなんと……《観察処分者》だ!」

 

 ──シーン──

 

 再び静まり返った教室。

 

『観察処分者って?』

『新しいカップめんの名前じゃね?』

『観察処分者って何だぁ?』

 

 一部を除いて皆が疑問に持つ。

 当然と言えば当然。

 何故なら普通に生活していたらとてもじゃないが《観察処分者》なんて称号を受けるなんて事はないし、聞くこともない。

 というか、明久の為に急遽作られたモノだし。

 

「あのー、観察処分者って何ですか?」

 

 そんな疑問を抱く全員を代表して姫路が手を挙げて雄二に質問し、雄二はそれに答えるように全員に向けて説明を始めた。

 

「観察処分者ってのは、学園からどうしようもないバカだと定められた人間に付けられるどうしようもないことこの上ないバカな称号だ。もう本当にバカなので、矯正するために召喚獣を使用して教師の雑用係となる」

「ちょっと?! みみみ、皆違うんだ! 観察処分者ってのはちょっぴりお馬鹿な生徒につけられる可愛らしい称号なんだよ!」

 

 明久が焦って教壇に来て取り繕うためにあれこれ言い出すも時はすでに遅く、全員から明久はどうしようもないバカという認識を受けてしまった。

 是非も無し。

 

「まあ明久の事は忘れてくれ。正直戦力としては悪い意味で未知数だ」

「だったら言わないでよ! てゆーか悪い意味で未知数ってなんなの! というか、おかげで皆に僕がバカな生徒って認識を受けたじゃないか! この責任はどう取るつもりだ雄二!!」

「いや明久、責任も何もお前────バカの地域代表だろ」

「創まで?! しかもそのネタまだ引っ張るの?!」

 

 少なくともあと三日は引っ張るの。

 

「さて、この俺を含めた五人がFクラスにいるんだ。先ずは小手調べにDクラスを踏破しにゆく。お前ら────行ける気がしてこないか?」

「うわ、凄く大胆に無視されたよ!」

 

 ちゃっかり明久を除いた数を言って不適な笑みを再び浮かべながら全員を見渡す雄二。

 その様子にこのクラスのバカ共は、

 

『いっ、いけるかもしれない』

『あぁ、あの五人がいたら確実にAクラスにも勝てる!』

『ふふっ、遂に俺の暗黒の右腕を解放する時が来たな』

『……私は真の戦士と闘えればそれでいい』

『俺も楽しく闘えたらそれでかまわねぇな』

『待て二人とも。我々の目的はあくまでも赤石だということを忘れるな』

 

 完全にやる気となった。

 若干名本来の目的を勘違いしている気がしてならないが、流石は雄二、見事な手際だ。クラスの志気が一気に頂点になりやがった。

 

「皆、この境遇には不満だろう?」

『然り!』

「ならば全員ペンを執れ!出陣の準備だ!」

『オォーー!!』

「俺たちに必要なのは何だ? このカビ臭い教室? 卓袱台? 綿のない座布団? 否、断じて否! 俺たちに必要なのは、Aクラスのシステムデスクただ一つだ!」

『うぉおおおっー!!』

 

 教室に木霊するアホどもの絶叫。

 ホント、単純なバカかしねぇ。

 

「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」

 

 この流れに乗りつつ、雄二は明久に指示を出す。

 だが、指示が指示なだけに明久の表情は微妙なものだ。

 まあその顔は間違ってはない。

 

「……下位クラスの宣戦布告の使者って、大抵ひどい目に遭うよね?」

「大丈夫だ。ヤツらがお前に危害を加えることはない。騙されたと思って行ってみろ」

「本当に?」

「勿論。お前、俺を誰だと思ってる」

 

 明久の疑問を瞬時に捌く雄二。

 最後にだめ押しとばかりに大丈夫だと言われ、そんな雄二の言葉に安心しきった明久は意気揚々と教室を出て行った。

 ふむ。

 

「雄二、大切な戦力(下僕)が一人逝ったぞ」

「大丈夫だ創。俺は明久なんざ──いてもいなくても同じような雑魚としか認識してない!」

「それもそうだな」

「お主等二人は」

 


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