オリ主と男の娘と召喚獣   作:あるく天然記念物

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バカテスト

問題・以下の良いに答えなさい
「人が生きていく上で必要となる五大栄養素を答えなさい」

姫路瑞樹の答え
「脂質・炭水化物・タンパク質・ビタミン・ミネラル」

教師のコメント
さすがは姫路さん。優秀ですね。


吉井明久の答え
「砂糖・塩・水道水・雨水・湧き水」

教師のコメント
先生はそこに霞と書かれないだけましだと思ってしまっています。


土屋康太の答え
「初潮年齢が10歳未満の時は早発月経という。また、15歳になっても初潮がない時を遅発月経、さらに18歳になっても初潮がない時を原発性無月経といい───」

教師のコメント
保健体育のテストは1時間前に終わりました。


黒乃創の答え
「金さえあれば大抵の場合生きていけ──」←走り書き。

教師のコメント
書き掛けなのが気になりますが、先生はそんな愛のない生活は嫌です。それと黒乃君とそれに続く生徒のみなさん、廊下は走らないように。


木下秀吉の答え
「く、黒乃創……」

教師のコメント
この回答と先ほど黒乃君が廊下を全力疾走していたのには関係があるのですか?


カビの臭いのする教室からでる方法

「ん? なんだ?」

「なんか用か、明久?」

「うん。ここじゃ話しにくいから、廊下で」

「別に構わんが」

「右に同じく」

 

 雄二と俺は立ち上がり、明久と三人で廊下へと出る。

 

「んで、話って?」

 

 廊下に出ると雄二は明久に用件を聞き出す。

 ホームルームとあって廊下は人気もなく静かだ。

 うぅ……やっぱり春先だから地味に肌寒い。

 そんな人気のない事に安心したのか、明久は話を切り出した。

 

「この教室についてなんだけど………」

 

 無論ここでの教室というのは間違いなく F クラスの事だろう。

 

「F クラスか。想像以上に酷いもんだな」

「まるで倉庫……いや、廃屋だ」

「雄二と創もそう思うよね?」

「もちろんだ」

「寧ろこんな環境で喜ぶ奴なんかいるのかってレベル」

「A クラスの設備は見た?」

「ああ。すごかったな。あんな教室は他に見たことがない」

「俺も最初は、いつこの学園はネットカフェになったのかって、思っちまったよ」

 

 ここまでの雑談をして、明久はある提案を俺たちにしてきた。

 

「そこで僕からの提案。折角二年生になったんだし、『試召戦争』をやってみない?」

「戦争、だと?」

 

 その提案に雄二は目を細めて聞き返し、肯定するように明久は頷く。

 

「うん。しかも A クラス相手に」

「……へぇ」

 

 続く明久の言葉に俺は思わず笑みが零れた。

 当然ながらこのバカは何の目的も無しに言うようなバカではないのを俺は知っている。

 だからこそ、面白いのだ。

 理由に直ぐ気がついたから。

 ほんと、お人好しだねぇ。

 

「まあ大方、姫路の為だろ、明久?」

「なっ?! ななな、何を言ってるんだね創君は?!」

 

 俺が訪ねると、面白いぐらいに慌て出す明久。

 おいおい、バレてないと思ってたのかよ。

 

「お前は単純だからなぁ。大方、追試無しにこのクラスになった姫路を不憫に思ってんだろ?」

「ギクッ?!」

 

 図星をつかれたのか、見てわかるどころか口にして背筋が伸びる明久。

 お前どこのリアクション芸人だ。

 

「べ、別にそんな理由じゃ───」

「だとよ。どうする、雄二?」

「そうだな……」

「話を聞いてよ!」

 

 明久の事を軽くあしらい、雄二の判断を待つ。

 さすがに『試召戦争』となれば、クラス代表の決定が必要になる。

 それだけの試召戦争は大々的な行事なのだ。

 もっとも、答えは決まってるだろうが。

 

「明久五月蝿ぇぞ。まっ、お前に言われるまでもなく、俺自身 A クラス相手に試召戦争をやろうと思ってたところだ」

「だよな。さすが雄二、俺の期待を裏切らねえ」

「なんだ、気づいてたのか?」

「あぁ、試召戦争以外で俺の力が必要なら、わざわざ同じクラスになってくれって頼むわけ無いもんな、お前」

「へっ、その通りだぜ」

「え? どうして? 雄二はクラスの設備に何ら興味ないよね?」

 

 明久の疑問ももっともだ。

 確かに雄二は勉強などこれっぽっちも興味ないし、設備なんてもんにも価値を見いだしてない。

 でも『野望』ならある。

 

「世の中学力だけが全てじゃないことを証明したくてな」

「なるほど、だからこその F クラスなのか 」

「あぁ。寧ろ、それ以外にこの掃き溜めにくる理由があるか?」

「いいや、無いねぇ。けど、他にも理由があるんじゃねえか?」

「さーて、何の事やら?」

「?????」

 

 話についてこれず疑問符を大量に浮かべる明久とは違い、俺は納得の意を示す。

 この事こそ俺を持ってくる理由に繋がる。

 まっ、それ以外の理由も大体見当はつくが、あまりプライバシーに干渉するのは止めておこう。

 俺だって嫌だし、幼稚園の頃から相手のいやがることはするなって、習ってきたからな。

 

「さーて。そんじゃ、A クラスに勝つ方法も思いついたし──っと、先生が戻ってきたな。残りは教室でやるから、二人とも戻るぞ」

「りょーかい」

「あ、うん」

 

 雄二に促され教室に戻る俺たち。

 そして、

 

「先生、少し時間を貰えますか?」

「おや、坂本君。説明事項は殆ど終わりましたので、それは別に構いませんが……」

「時間と言っても五分程度です。ちょっとクラス代表として挨拶しておこうと思いまして」

「そうですか、それならどうぞ」

「ありがとうございます」

 

 先生に時間をもらった雄二は教壇に立つと、俺たちの方に向き直った。

 

「F クラス代表の坂本雄二だ。俺のことは坂本でも代表でも好きな用に呼んでくれ」

「ほぉ、では大馬鹿と呼んでもいいということか?」

「それとこれとは話がちげぇよ創!」

 

 茶々を入れたらガチでキレられた。

 おぉ、最近の若者はこれだから怖い。

 

「ゴホンッ。話を戻す。さて、一つ皆に聞きたい」

 

 咳払いしつつクラス全員の目を見るかのように見渡す雄二。

 まるで詐欺師のように上手い間の取り方によってクラス全員の視線は雄二に向けられる。

 ほんと、こいつは政治家に向いてんだよなぁ。先導する役としては。

 全員の視線が集まったこと確認した雄二は、次に教室内に視線を向けた。

 

「カビ臭い教室………古く汚れた座布団………薄汚れてボロボロな卓袱台………」

 

 雄二につられるように見渡す教室内。

 そこにあるのは廃屋の内容だ。

 

「A クラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが、お前ら───」

 

 一呼吸おいた後、雄二は静かに口を開く。

 

「────不満、一つもないのか?」

 

 一瞬の静寂の後、

 

『『『『『大ありじゃぁっ!!!!!!』』』』』

 

 阿呆どもの叫びが教室内に響いた。

 これで主導権は完全に雄二の手の上だ。

 

「だろう? 俺だってこの現状は大いに不満だ。代表としてどうにかすべきだと考えている」

『そうだそうだ!』

『同じ学費払ってんのになんでこんな格差があるんだよ! 横暴じゃねぇか!』

『学費安いって言ってもさすがにこれはあり得んだろ! 俺らにもリクライニングシート寄越せ!』

『つーか女子が教室にあまりいない事に甚だ遺憾だ!』

『『『『『その通り!!』』』』』

 

 堰を切ったかのように次々と出てくる不満や罵詈雑言。

 というかその通りじゃねぇよ。このクラスに来たのはテメェ自身の結果だろうに。

 だがその事はあえて口には出さない。

 だってここで変に志気を傾けたら雄二に迷惑になるし。

 いや待てよ。それはそれで面白い気がする。

 

「創。さすがにそれやったら俺もガチで殺るぜ?」

「………すまん」

「よろしい」

 

 あまりの迫力に素で謝る俺。

 だって、ずっこくいい笑顔で指鳴らしまくってたんだもん。滅茶苦茶怖いわ。

 ………ぐすん、もういいや。憔悴しきったこの硝子の心は秀吉になおして貰うことにする。

 と言うことで俺は秀吉のお膝を枕にゴロンと寝そべる。

 

「ひょわっ! はは、創! おおお、お主は何をしておるのじゃ!」

「秀吉……僕もう疲れちゃった。なんかあったら起こして」

「じゃからと言って何もワシの膝でなくとも」

「おいおい、こんなに寝やすそうな枕があるのに使わんわけないだろ───くぅ─」

 

 そこまで言い掛けたところで俺は意識を闇へと落とし───

 

『異端者は処刑を執行する!』

『『『『『おぉ─────!!!』』』』』

「───おちおち寝てられねぇじゃねぇかよ」

 

 ──かけたところを襲ってきたFFF団(非モテないアホども)を当て身で意識を刈り取っていく。

 FFF団とは、モテないアホどもでほぼわかる。

 まあいわゆる残念な奴らの集まりで、ちょっとでも羨ましいこととかを目にすると火炙りなどと処刑にかかる連中だ。

 構成人数は団長を須川を筆頭に約31名。

 まったく、そんな事に金と労力を割くなら少しはティーンズ雑誌でも読んでろ。

 

「あぁーあ。眠気が一気に無くなっちまった」

「創……大丈夫かのぉ?」

「大丈夫大丈夫。おそらく一時間ぐらいしたら起きるだろ」

「いや…お主の心配しておったのじゃが。しかし……勿体なかったかのぉ(ボソッ)」

「ん? なんか言ったか?」

「い、いや。何でもないぞい」

 

 なにやらボソッと聞こえたような気がしたから聞き返したが、何でもないならいいか。

 

「おい創。今から仕掛けると言うのに大切な戦力(下僕)を減らすなよ」

 

 教卓の方を見るとやれやれといったばかりに肩を竦めている雄二。

 ありゃ、いい感じに邪魔してしまったみたいだ。

 というか振り仮名間違ってないか? 

 

「悪い悪い。それと雄二、まだ言ってないんだろ? さっさと言っちまえよ」

「お前が話の腰を折ったんだろうが。いいや、こういう奴だってわかってたし」

 

 おい雄二よ、それってどういう意味や。

 そんな思いを持った俺を後目に、雄二は不適な笑みを浮かべて再び俺たちを見渡す。

 

「これは代表としての提案だが───」

 

 そして軽く数秒溜、

 

「───FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」

 

 戦いの火種に盛大に油を投下した。

 これから忙しくなりそうだ。


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