インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜   作:ボイスターズ

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皆様、あけましておめでとうございます。

ようやく今年最初の投稿が出来ました。お待たせしてしまい申し訳ありません。
タイトル通り、今回は嘗てウルトラセブンやウルトラマンマックスとも戦ったあの宇宙人や怪獣の登場です。

それでは、今年もどうぞよろしくお願い致します。


第52話 現れし放電竜

OP【TAKE ME HIGHER(V6&織斑一夏)】

 

 

亡国企業との激戦を終えた翌日のことーー

 

「皆、大事な話がある」

 

朝のホームルーム前に、マドカが重傷を負ったことが一夏から1年1組に知らされた(※亡国企業のことは伏せている)。突然の知らせに誰もが驚いている。

 

「・・・本当なの?それ」

 

「俺がこんな嘘をつくと思うか?信じられない気持ちはわかるが事実だ。先生によると、幸い命に別状はないが、いつ目を覚ますかわからないらしい」

 

「そんな・・・!」

 

代表して聞いた静寐は、ショックで涙を流す。無理もない。マドカが学園の生徒になってから彼女はずっとマドカを気に掛けており、名前で呼び合う程の仲になっていたのだから・・。

 

「マドカ、ちゃんと治るんだよね?帰って来るんだよね!?」

 

「ーー帰ってくるさ、必ず。だから皆、今はマドカが1日でも早く元気になって帰ってくることを祈ろう。そしてちゃんと笑顔で迎えようぜ?こんな悲しい顔をしていたら、アイツに怒られちまう」

 

一夏の言葉に、静寐や他の泣いている生徒達は頷く。

 

「俺からの話は以上だ」と、一夏は話を終了し、席に戻る。一方、廊下で様子を見ていた千冬と真耶は、タイミングを見計らって教室に入る。

千冬はクラスの落ち込みように一声かけた。

 

「今織斑から話があったように、織斑妹は現在入院している。諸君にとってはとても辛いことだろう。だが一番辛いのは、心身に負った痛みと今も必死に戦っているアイツだということを理解しておいてくれ。では、ホームルームを始めるぞ」

 

『はい・・』

 

千冬の呼びかけに生徒達は沈んだ表情で席に戻る。その様子を真耶が心配そうに見つめるなか、席に戻った一夏は、マドカや皆への罪悪感で拳を握りしめていた・・。

 

 

 

 

「・・・ふむ」

 

同じ頃、学長室では十蔵が学園上層部から送られてきた報告書を読んでいた。その内容を見て、彼は険しい表情を浮かべる。

 

「各地の水力発電所の電圧が相次いで低下、更に作業員数名と警備員が負傷、もしくは遺体で発見・・そしてケーブルには爪で斬り裂いた様な跡。何か良からぬことが起こる気がしますね・・私の思い違いだといいのですが」

 

兎も角、先ずはGUTSにこのことを伝えなければ。そう判断した十蔵は、電話の受話器を手に取った。

 

 

 

 

「キィィィ・・!」

 

とある発電所にある制御室で生き物の鳴き声が響く。

身体が白地と黒模様なのが特徴のその生き物は、尻尾をケーブルに突き刺し、そこから次々と電気を吸い取っていく。

 

『フフフ。いい子ね』

 

だが制御室には生き物だけでなく、大きな黄色の目を持つ人型の異形がいた。声や口調からして女性らしい。仮に彼女をアルファと呼称する。

 

『そっちはどう?』

 

そこへ、目の色が赤いもう1人の女性の異形がやって来た。こちらはベータと呼称しよう。

 

『見ての通り、順調よ。これなら結構強く育つんじゃないかな?』

 

『そう・・』とベータは満足そうに頷く。

 

『そういえば、ココの人間達はどうしたの?』

 

『とりあえず今は気絶させといたわ。どうせココが最後だし、殺すならこの子に派手にやって欲しいもの♫』

 

そう言いながら笑うベータ。アルファは『それもそうか』と同意し、白と黒の生き物を見つめる。

 

『もう直ぐね』

 

『えぇ。後はこの子が立派になれば、私達の地球侵略は確実。たとえウルトラマンでも止められないわ!』

 

「キィィィィィ・・!」

 

2人が期待の眼差しで見つめるなか、白と黒の生き物は、自身の進化のために、発電所の電気をひたすら吸い続けるのだった。

 

 

 

 

「発電所の電圧低下・・でありますか?」

 

「あぁ。それも一つじゃなく複数の、な。作業員や警備員が既に被害を受けていて、制御室のケーブルには爪で斬り裂いた跡があったらしい」

 

学園地下の会議室で、千冬から事件の概要の説明が行われるなか、一夏はケーブルにあったという爪跡が気になった。

 

「ケーブルに残っていた跡は、単に動物がやった・・という訳ではないんですか?」

 

「調査隊も最初はそう思ったそうだが、形状が地球上のどの動物のデータとも一致しなかったそうだ。それに作業員や警備員の死因は感電によるもの・・大の大人数名を電気で殺せる動物などいないからな」

 

「ということはやはり怪獣の仕業か?」

 

「随分と変わってるわねぇ、電気を餌にするなんて」

 

「でも、考えてみれば当然のことじゃないか?この前のガクマやリガトロンのように石や高エネルギーを餌にする奴もいるのなら、電気を狙う怪獣がいても不思議じゃない」

 

「あぁ。諸君にはこれより問題の水力発電所の調査に向かってもらう。そこが電圧低下が起きた最後の場所だ。何が起こるかわからんからくれぐれも注意しろ。それとーー」

 

箒や鈴に説明する一夏に頷いた千冬は、机に置いてあった2つの銀色のボックスを開いた。中にはそれぞれ五角形の銀色の端末が8個と、下部が黒く上部が金色のラインが入っているカートリッジ式の銀の銃が8丁入っている。

 

「束からの贈り物、《PDI》こと《GUTS COM》と《GUTSハイパー》だ。ISが使えない時、これらで連絡や護身用として使うようにとのことだ」

 

「束さん・・俺達のために」

 

後でお礼を言わなければ。そう決意し新たな装備を受け取った一夏達は、電圧低下が最後に発生した水力発電所へ向かった。

 

 

 

 

IS学園から東へ3kmの地点。そこが電圧低下が最後に発生した場所だった。

一夏達は《GUTS COM》を身分証明書としてスタッフに見せ、問題の現場に案内してもらうことになった。

 

「此方です」

 

一夏達が見たもの、それは至るところを破壊され、ケーブルの内部が露出している制御室だった。

 

「ーーこれは、思っていた以上に酷い状態ですね」

 

「ええ。ご覧の通り現在も作業員が修理していますが、完了にはまだ時間がかかる見込みです」

 

一夏の言葉にそう返す男性スタッフは、意気消沈した様子だった。

 

「制御室がやられた日、何か怪しいものや妙な音はありませんでしたか?」

 

「その日は、私も他のスタッフと共に勤務していましたが特に怪しい物は・・・そうだ!気絶する前、鳴き声のようなものが聞こえました!」

 

男性スタッフに反応して他の作業員も、「自分も聞いたぞ!」や「私もよ!」と応えた。

 

「鳴き声、ですか?」

 

「ええ!それと女の子が2人・・その鳴き声をする生物を1人が持っていたんです!最初は、ただ迷い込んで来ただけだろうと思い声を掛けたんですが、その直後に意識を失って・・・」

 

「俺達の時もそうだったよな?」

 

「あぁ、声を掛けた途端に身体が痺れたと思ったら力が抜けて・・」

 

「ちょっとどういうこと?これは怪獣の仕業じゃないの?」

 

「ーーいや、これは間違いなく怪獣がやったものだろう。だがどうやら今回は、怪獣だけじゃないのかもしれないぜ」

 

楯無と簪の質問にスタッフや作業員が答えるなか、混乱する鈴に一夏が説明する。その間、彼は破壊されたケーブルをじっと見つめ、スタッフが見たという女の子こそ今回の黒幕ではないかと考えていた。

だがその様子を小型の虫型スパイロボットに見られていることは気付かなかった。

 

 

 

 

同じ頃、アルファとベータは自分達の宇宙船から、スパイロボットを通じて一夏達の様子を伺っていた。

 

『お待ちかねのウルトラマンが来たわ。オマケに人間達に私達のことがばれたみたい。やっぱり彼処の人間は殺しとくべきだったんじゃない?』

 

『心配ないわよ、後であの子に殺して貰えばいいんだから。もう準備はできてるんでしょ?』

 

『まぁね』

 

ジト目?で見るアルファをベータは慰めると、『さて・・』と呟く。

 

『私達ピット星人にとっての邪魔者を封じる〈最後の仕事〉にかかりましょうか』

 

『ええ』

 

2人のピット星人・・アルファとベータは、地球侵略のための〈最後の仕事〉を果たすべく行動を開始した。

 

 

 

 

一方一夏達GUTSは、《PDI》が強力な生命反応を感知したため、発電所の調査をIS部隊に任せ、近くの湖へ調査に訪れていた。

 

「ーーここか」

 

一見ごく普通の大きな湖に見えるこの場所。《PDI》が反応する程の生命力を持つ者が、本当にここにいるのだろうか?

一夏は一瞬そんな考えが頭をよぎったが、上着の内ポケットにあるスパークレンスが僅かに振動している。怪獣がいるのは間違いなさそうだ。

 

「う〜ん・・何にもありませんわね」

 

「ただの綺麗な湖にしか見えないけど?」

 

「だが《PDI》はココに反応している・・何かいるのは確かだ」

 

「まさか怪獣が?」

 

「あぁ、それもあり得る」

 

「・・・ん?」

 

セシリア、シャルロット、箒、簪、ラウラが話し合うなか、一夏は視線を感じて森に目を向ける。

そこに、青の服に黒のショートへアが特徴の少女が立っていた。見た目からして歳は一夏達と同じくらいだろうか?

 

「どうした一夏・・って、あの子は?」

 

箒やシャルロット達も、一夏と同じ方向を見て少女に気付いた。

 

「なんでこんなとこに・・ちょっとー!アンタそこで何やってるのー?」

 

鈴が尋ねるが少女は答えることはなく、おいでと手招きをした後、森へ走っていく。

 

「おい、ちょっと待てよ!?」

 

駆け出した一夏を追って、箒達も走る。

だが、少女は見た目によらず素早く森を走り、木の枝に飛んだと思えばまた別の枝へと移っていく。

 

「何あの出鱈目なジャンプ力!?」

 

「それに速いなあの子・・!?」」

 

森に入って少しすると、突如一夏達の周囲に霧が発生し始めた。

 

「霧・・?」

 

「どうして急に?皆、逸れないように気を付けて!」

 

自然発生したにしてはどうもおかしい・・楯無はそう不審に思いながら、全員に注意を呼び掛ける。

 

「ーーにしても木を飛びまくってるあの子もそうだけどさ、一夏もどうなってんのよ!?アイツどんどん離れてくじゃない!」

 

鈴の言う通り、一夏は体力を消耗して速度が落ちるどころか寧ろどんどん速くなっており、徐々に箒達と距離が開いていく。

 

「ちょっと一夏ー!待って!!」

 

シャルロットの呼び掛けも聞こえていないのか、一夏はそのまま霧の中へと消えてしまった。

 

「もう、あのバカ一夏!」

 

「霧が濃くなってきてるわ!急ぐわよ!」

 

箒達も後を追うべく速度を上げた。

 

 

 

 

「(確かこっちに行った筈だが・・)見失ったか」

 

先程から俺ー織斑一夏ーは謎の少女の追跡を続けていたのだが、途中で見失ってしまった。それに箒達とも逸れて森の奥まで来てしまったようだから、合流しないと。

 

「白式、箒達のISを探知できるか?上空から探したいんだけど」

 

『気配は感じるから今のところ無事だと思う。でもこの霧のせいか上手く展開できなくなってる・・それにセンサーが狂ってて場所の特定ができないみたい』

 

「そうか・・」

 

ISが使えないのなら自力で出るしかない・・最悪の場合は変身する必要もあるだろう。けど、あいつらならきっと大丈夫だ。そう思い飛ぶのを断念して先程の少女について考える。

 

「さっきの女の子、見た目からして年齢は俺達より下ぐらいだけど、それにしては走る速度がおかしかった・・オリンピックで優勝した陸上選手でもあそこまで速く走れる人はいない筈だ」

 

『うん。一夏は兎も角として、どう見てもあの歳の女の子が出せる速さの限界を超えてた。まさかあの子が作業員が言っていた犯人なんじゃ?』

 

「その可能性は高いな・・・」

 

白式の言う通り、俺もあの子の身体能力について引っかかてはいる。地面からあんな高い枝にIS無しで飛ぶなんてあの歳の女の子がやるにはおかしすぎる。

 

「兎に角、まずはあの子を見つけるぞ。話はそれからーー」

 

「その必要はないわよ」

 

『「!?」』

 

歩き出そうとした直後、後ろから聞こえた声に驚いて振り返ると、さっきまで俺が探していた女の子がいた・・いつの間に後ろに立ったんだ?

 

「君・・いつからそこにいたんだ?」

 

「貴方がその腕輪と話し始めてからずっと」

 

それにしては物音もしなかったし気配を感じられなかった・・。こんな深い森なら否応でも音がなる。俺は警戒を強めた。

 

「探す必要がないなら話が早い。俺は君に聞きたいことがあるんだ。俺達をこんな森に呼んだのは何故だ?さっきから霧が立ち込めているが」

 

「用は1つだけ。貴方を抹殺すること」

 

「・・なに?」

 

「本当は他の小娘達も一緒に殺りたかったけど、まぁいいわ・・我々ピット星人の侵略計画のために、先ずはお前から消えてもらうわ!」

 

「くっ!」

 

本性を現した少女・・ピット星人が放った白い光弾を左に飛んで避ける。代わりに命中した木は一部が黒く焦げ、僅かにスパークが起きている。

ISが使えない今、あんなの一発でもくらえばアウトだ!俺はすぐさまGUTSハイパーを取り出す。

 

「ーーなるほど。作業員が見たというのは、やっぱりお前らのことだな?」

 

「えぇ。感謝しなさいよ?私達の怪獣に派手にやってもらうために、あそこの連中はわざわざ気絶だけに済ませたんだから。でも最高だったわよ、人間達がバタバタと倒れるところは♬」

 

ヘラヘラと笑うピット星人に、俺は無性に嫌気が指す。

 

「じゃあ何故他の発電所の人達を殺した?」

 

「何故って決まってるでしょ?私達の怪獣を育てるには邪魔だった・・ただそれだけよ」

 

「っ・・ふざけんなぁ!!」

 

俺は叫ぶと同時にGUTSハイパーを発砲。3発撃ったが、これは奴の光弾で相殺された。これを使うにはもう少し弱らせてからじゃないとダメらしいな。

 

「フフフフ・・!」

 

不敵に笑いながらピット星人は大きな黄色い目を持った姿に変わり此方へ走って来る。大方、本来の力で俺を殴り殺しにでもする気なんだろう。

 

『(ティガは私が引きつけるわ。その間に〈あの子〉と一緒に小娘達を)』

 

『(OK。気をつけてね)』

 

GUTSハイパーをしまった俺は、ティガ〈マルチタイプ〉と同じ構えをとる。

 

『やあああっ!』

 

「ふっ!」

 

互いに拳を放ち中央で激突させる。ピット星人はすぐさま左・右の順に突きを放って来る。

避けた俺は右腕を掴んで腹にエルボーを打ち込んで投げ飛ばしたが、奴は空中回転して着地し足払いを仕掛ける。

 

「うおりゃ!」

 

避けた俺は右足の蹴りを放つ。防がれはしたもののその蹴りは奴を後退させた。

 

『意外とやるわね、でも挨拶はここまで。覚悟しなさい!ウルトラマンティガ!』

 

「覚悟するのはお前らの方だ!地球侵略は、俺達が絶対に止める!」

 

これ以上、コイツらの思い通りにさせてたまるか!拳を握りしめ俺はピット星人に向かって行った。

 

 

 

 

その頃、箒達は森で一夏と少女の捜索を続けていたが、霧に阻まれ見つけられずにいた。ISを使うことも考えたが、こちらも一夏同様展開できない状態だった。

 

「ダメだ・・霧が濃くてよく見えない!」

 

「それにまずいわよ、これ以上動いたら私達も危ないわ!」

 

「これほど濃い霧が自然発生するなんて、どう考えてもおかしいわ。何処かに霧を発生させてる装置がある筈よ!それさえ見つけられれば!」

 

箒と鈴が悔しげに呟くなか、楯無は霧の不自然さから、人口的に発生させられたモノだと睨んだ。

 

「でも、ISが使えないのにどうやって!?それにこんな霧の中じゃ・・」

 

「方法はある。皆、耳を澄まして稼働音を探して!」

 

楯無の指示で全員が目を閉じて意識を集中させる・・。

辺りが静寂で包まれるなか、暫くすると、カチ、カチ、カチ・・・という音が聞こえてきた。

 

「・・っ!あっちよ!(ボソッ)」

 

指でジェスチャーしながら鈴が知らせる。

そこを一点に見つめると、霧が僅かに揺らぐのが見えた。

 

「そこか!」

 

すかさずラウラがGUTSハイパーを放つ。すると、金属に命中した音が聞こえた後、地面に何かが落ちてきた。

慎重に近づいてみるとーー

 

「ロボット・・?」

 

「ーーこれ、地球上のどの金属とも一致しない。宇宙人が作った物とみて間違いないよ」

 

地球でいうてんとう虫のような形をした虫型ロボットは、シャルロットの《PDI》によると地球にあるどの金属とも異なるもので作られているらしく、画面にはNOと表示されていた。

 

その時、箒が「あっ」と何かに気付く。

 

「霧が晴れてきたぞ!」

 

「なるほど・・コイツが周辺の天候を操作していたということか」

 

ロボットが破壊されたことで、周囲に広がっていた霧が晴れ始めた。どうやら楯無の睨んだ通りこのロボットが霧の発生装置だったようだ。

霧が晴れたことでそれぞれのISも機能を回復した。

 

『あらら・・まさかロボットの仕業だと見抜いて尚且つ見つけ出すなんてね。まぁ想定外ではあったけど問題はないわ・・・さて、行くわよ!〈エレキング〉!』

 

隠れて隙を窺っていたベータは、予想外のことに少々驚くものの、直ぐに切り替えて次の手段を使う。

テレパシーで自分達の最強戦力に指示を出す。

 

「キィィィイイイイッ!」

 

突然聞こえてきた甲高い鳴き声に全員が驚く。

 

「今の鳴き声は!?」

 

「湖の方だよ!」

 

「行ってみましょう!」

 

一行は鳴き声が聞こえた方向へ走る。

 

『さぁどう出るかしら?地球の小娘達♪』

 

その間にベータは瞬間移動で宇宙船に戻る。

一方、森を出た箒達は湖から巨大な生物が現れるのを見た。その生物は白地と黒模様、頭部に2本のアンテナを持っている。

 

「キィィィイイイイッ!」

 

その名も、〈宇宙怪獣エレキング〉。エレキングは湖から陸へノッシノッシと歩いていく。その行く先には、作業員やIS部隊がいる発電所がある。

 

「あの怪獣、発電所に向かってる!」

 

「食い止めるわよ!」

 

『はい!』

 

楯無に頷いた箒達は、それぞれISを展開してエレキングに向かって行く。

 

「(お願い・・応答して、一夏!)」

 

その間にシャルロットは個人通信で白式に連絡を入れるが、コール音がなるだけで彼が出ることはなかった。

 

 

 

 

『さっきの減らず口はどうしたの!?』

 

「チッ!」

 

少し時間を遡り、一夏はピット星人(アルファ)相手に苦戦していた。純粋な肉弾戦では互角だったが、アルファが高速移動を使い始めたこと、そして霧の影響で攻撃が避けられてしまうからだ。

 

ティガに変身しようとしても動きが止まる隙を突いてくるため、中々チャンスを掴めずにいた。

 

「(クソ、このままじゃ殺られる!何か手はないのか!?)」

 

光弾を避けながら一夏は反撃の手段を考える。

 

『はあっ!』

 

「ぐあっ!?・・はぁ・・はぁ・・!」

 

高速で放たれた蹴りを腹に受けてしまい木に叩きつけられる一夏。それでも痛みに耐え、アルファを睨み付ける。

 

『随分と頑張ったけど、これで終わらせてあげるわ!』

 

トドメを刺すべく、アルファは左腕に電撃を纏わせ殴りかかって来る。

 

「っ・・うおおおおおおおおおっ!!!」

 

一夏も対抗するべく左腕にありったけの力を込めて駆け出す。

 

「死ねっ!」

 

迫るアルファの拳を、一夏は身体を逸らすことで右頬を掠める程度に留める。これにより発生した隙を、彼は見逃さない。

 

「負けるかあああああっ!!」

 

『がはっ・・!!?』

 

一夏の左拳はアルファの腹部に命中、悶絶する彼女を数メートル吹き飛ばす。

更にGUTSハイパーを取り出し素早く追い打ち射撃。

アルファの右肩に命中した。

 

『チッ・・おのれ!』

 

これ以上は不利と判断したアルファは、瞬間移動で撤退して行った。直後に一夏はダメージで膝を付くが、同時に周囲に広がっていた霧が晴れ始めた。

 

「はぁ・・はぁ・・とりあえず、霧に関してはこれで大丈夫だな」

 

ピット星人も追い払ったので一先ず安堵する一夏。だが、安心するのはまだ早かった。

 

「キィィィイイイイッ!」

 

「!?」

 

遠くから聞こえて来た鳴き声に驚き、急いで来た道を引き返す。その途中で、箒達とエレキングの戦いが見えた。

 

「あの方向からして、やっぱり湖に怪獣がいたのか!」

 

《pipipipi!pipipi!》

 

加勢しようとした一夏のもとへ、シャルロットからの個人通信が入った。

 

「・・・ごめんな、シャル。また心配かけちまうけど、許してくれ」

 

罪悪感を感じつつも一夏は通信を切り、スパークレンスを取り出して展開。

ウルトラマンティガへと変身した。この時、通信を切られたシャルロットが大変ご立腹だったのは言うまでもない。

 

 

 

 

『ウゥ・・!』

 

『ちょっと、大丈夫?』

 

一夏との戦いに敗れたアルファは、宇宙船に戻ってメディカルマシンに手当てをしてもらっていた。ベータが心配そうに見つめるなか、アルファの手当ては完了した。

 

『フゥ・・これくらい平気よ。にしてもアイツ、変身してないからって甘く見てたわ・・!ウルトラマンにならなければ勝てると思ったんだけど』

 

『ま、世の中甘くないってことね』

 

アルファとこんなやりとりをしているベータだが、今も先程から現れた自分達の天敵(ウルトラマン)をどうすれば倒せるかと考えを巡らせている。

 

『(あ・・あるじゃない。至極単純なことではあるけど)』

 

浮かんだ作戦をアルファに伝えると、お互いに笑みを浮かべる。

それは地球人で言う"歪んだ笑み"そのものだった。

 

 

 

 

「チャッ!」

 

ティガはGUTSに加勢してエレキングに右上段蹴りを放つ。

 

「キィィィイッ!」

 

エレキングの右腕の突きに対して、背後に回って後頭部にチョップを打ち込む。

 

「キィィイ!」

 

フラついたエレキングはティガの腹に蹴りを放つ。ティガは怯むも、すぐ右脚、左脚順に連続で蹴り、最後に右回し蹴りでダメージを与える。

 

しかしこのエレキング、陸に上がってからティガや箒達の攻撃を何度も受けているが、あまりダメージを受けていないうえにまだまだ体力に余裕があるようだ。恐らく湖で相当な力を溜めていたのだろう。

 

「(コイツ、頑丈ではあるが全く効いてないわけじゃない。それならーー)」

 

「キィッ!」

 

一夏が冷静に対抗策を練るなか、エレキングが口から三日月状のカッター光線を放ってきた。

 

「(重い攻撃を叩きこめば、勝機はある!)」

 

素早く避けたティガはパワータイプにチェンジしようとするがーー

 

「ウワァッ!?」

 

上空から突如降り注いだ青い光弾の雨がそれを防いだ。

幸いダメージは低いため、すぐに上空に視線を移す。

 

『フフフ、驚いた?』

 

『そう思い通りにはさせないわよ』

 

八角形型の銀の宇宙船から、アルファとベータの声が聞こえてきた。声からして明らかにティガを馬鹿にしている。

 

「あれが黒幕の宇宙船か!?」

 

「どうやらそのようですわね」

 

「ピット星人、まだ侵略計画を続けるつもりか!」

 

『決まってるでしょ?諦めるわけないじゃない』

 

『こんな綺麗な星なら尚更よね』

 

初めて見る宇宙船に箒達が驚くなか、ティガの問いかけにピット星人はさも当然という態度で答える。

 

「キィィィィイッ!」

 

「ッ!」

 

直後、エレキングが咆哮と同時に全身から電気を放出して力を引き出し始めた。

同時にエレキングの両手に2本の鋭い爪が現れる。

 

『さぁ、ここからが本番よ!私達が育てたエレキングの力を思い知りなさい!』

 

「キィィィイ!」

 

アルファが高らかに宣言すると同時にエレキングは爪に電流を纏って向かってくる。

 

「ンンンン・・ハッ!」

 

対抗するべくティガもパワータイプにチェンジ。

自身の眼前に迫る爪を得意の怪力で受け止め、互いに押し合う。

 

箒達はティガを援護しようとするが、突如光線が放たれたので慌てて回避する。

見ると、円盤が左右から3門の砲口を展開して此方に向けている。どうやらあれがメインの攻撃武装のようだ。

円盤はベータの操縦で箒達の正面に静止する。

 

『あの子の邪魔はさせないわよ。ティガを助けたければ私達を倒してみなさい』

 

『まぁアンタ達みたいな雑魚が私達に勝てるとは思えないけどねw』

 

「上等よ!絶対にアンタ達をぶっ倒してやるんだから!」

 

スピーカーから聞こえてきた挑発に、沸点の低い鈴が即座に反応して龍砲とビームライフルを放つが、円盤を覆う光の壁に防がれる。

 

「バリヤー!?」

『今度はコッチの番よ』

 

驚く鈴を他所にアルファは円盤を操作して先程の光線を連射してきた。

左右に分かれて何とか避けた箒達は一斉にビームライフルやスターライト、ティアーズ、スパル砲、レールカノンを放つ。次々に円盤に命中するが、やはりバリヤーを破ることはできない。

 

 

 

 

「ハッ!ハッ!ハッ!ジュアッ!」

 

エレキングの爪を振り払ったティガはダブルチョップとパンチで後退させ、続けて背負い投げでダメージを与える。

 

更に、上空へとジャンプして急降下キックを放とうとするが、命中まであと少しのところで尻尾を叩きつけられ不発に終わる。

幸い着地に成功し、すぐにエレキングに視線を戻す。

 

「キィィ!」

 

「!」

 

カッター光線を横に転がって避けたティガは、エレキングの懐へと一気に走る。

 

「デアッ!」

 

途中で軽くジャンプして頭部にストレートパンチ、腹部に前蹴りを打ち込んでエレキングにしがみ付き、前方へと押していく。

 

「キィィイ・・!キィィ!?」

 

「ハアアアアア・・ッ!!」

 

エレキングも負けじと押し返すが、パワータイプの怪力には敵わずどんどん押され、次第に足が地面から離れた。

 

「ッ!チャアッ!」

 

それを確認したティガは勢いよくエレキングを投げ飛ばす。

大地に叩きつけられた瞬間、轟音と共に衝撃で砂が舞い上がった。エレキングは身体に余程強い衝撃がかかったのか、上手く立ち上がれない。

 

「・・・」

 

ティガは戦闘態勢のまま、エレキングにゆっくり近付く。

その際、煙の一点に光が見えた。

 

「グッ!?」

 

次の瞬間、中からカッター光線が飛来。命中して怯んでしまう。

これを好機と見たのか、態勢を立て直したエレキングは電気を放電、再度力を上げてティガに接近。

 

首を締め威力の上がった爪でティガを切り裂いて痺れさせると共にダメージを与え、前方一回転して尻尾を叩きつける。

 

「キィィィィイ!」

 

「グゥッ・・!?ウワアアアッ!!?」

 

フラつくティガにエレキングは尻尾を巻きつけ、体内に蓄積していた電気を一気に流し込む。

その凄まじい威力にティガは膝をついてしまう。

 

 

 

 

ティガがピンチのなか、アルファとベータの策で上空へと誘導された箒達は、未だ円盤に決定的なダメージを当たられずにいた。

 

『そろそろ諦めたら?』

 

『そうそう。ティガももう直ぐやられるし、アンタ達の武器じゃこの宇宙船のバリヤーは破れないわよ?』

 

アルファとベータの言葉に箒達は悔しさで顔を顰めるが、アルファ達の言う通りこのままでは間違いなくティガは敗北し、自分達もISのエネルギーが尽きる。

何とかして突破口を見つけなければ・・・。

 

「(このままでは埒があかん。一か八か、賭けてみるか)」

 

そんななかラウラは、ある賭けに出るべくシャルロットに個人通信を繋ぐ。

 

「シャルロット、今から私が言う通りに動いてくれ。まずーー」

 

「っ!わかった」

 

シャルロットはラウラに聞かされた内容に一瞬驚くが、彼女を信じてそれを承諾する。

それに頷いたラウラは、円盤を見て不敵な笑みを浮かべる。

 

「フン、私達に全くダメージを与えられていない奴らがよくもまぁ言ったものだな!貴様らこそ諦めたらどうだ?」

 

ラウラの挑発に円盤内の2人、特にアルファが苛立ちを露わにする。

 

『言ってくれるわね・・!いいわ、先ずはアンタから落ちなさい!』

 

アルファはそう答えると同時に、ラウラに狙いを定めて光線を発射。

 

「今だ!シャルロット!」

 

「うん!」

 

ラウラや他の者達が避けるなか、シャルロットは避けながら背部のアムフォルタスプラズマ収束ビーム砲を起動、円盤の砲口に狙いを定める。

 

「行っけええええ!!」

 

放たれたビームは一直線に砲口に向かい命中、破壊した。砲口があった部分からは黒煙が上がり、円盤を覆っていたバリヤーも消えた。

 

「ウソ、当たった!?」

 

「どういうことですの!?」

 

「あれだけ撃っても破れなかったのに・・」

 

『バカな!?コッチに攻撃が届く筈が!』

 

声をあげる鈴、セシリア、簪。箒や楯無は勿論、アルファやベータも驚くなか、ラウラとシャルロットは種明かしをする。

 

「そのバリヤーは確かに強力だ。だが攻撃に移る瞬間、砲口の部分だけはどうしても解除しなければならない。これまでの攻防でそう見抜いた私は、自身が囮になってお前達を引きつけている間にーー」

 

「僕が穴の空いた部分に向けてビームを撃ち込んだってこと。もう、急に言うからびっくりしちゃったよ?」

 

「お前なら必ずやってくれると確信していたからな。だから実行に移せた。さぁ策に溺れてしまったわけだが、どうする宇宙人共?」

 

『クッ・・でももう一度展開すれば・・な!?』

 

アルファは再度バリヤーを展開しようとするが、先程の攻撃で装置が故障したのか展開されない。

 

『おのれ小娘共が・・!』

 

『こうなったらたっぷりと礼をするわ!』

 

だがアルファとベータは円盤の各部からミサイルやレーザーなど他の武装を展開し、尚も戦おうとする。

最早今の2人には地球侵略など頭にない。ただ目の前の敵への怒りで血が上っているのだ。

 

あまりの執念深さに呆れつつも、厄介なバリヤーがこれで無くなったので、箒達は決着を付けるべくそれぞれの近接武装を展開して突撃して行った。

 

 

 

 

地上ではカラータイマーが点滅を始めたティガが、電流攻撃に耐えながら拳を握りしめる。

 

「まだだ・・!ここで・・負けて、たまるか!!ウオオオオオオオオッ!!!」

 

一夏の雄叫びと共に《SEED》が発動、同時にティガの全身から赤い光と熱が溢れる。

 

「キィィィイ!?」

 

高熱に慌てて尻尾を離したエレキングは、光に包まれたティガを唖然とした様子で見つめる。

 

「フッ!」

 

やがて光が収まり、そこには金色のラインとクリスタルを持ち、全身に赤い炎のオーラを纏うバーニングタイプとなったティガの姿があった。

 

「キィィ!」

 

「ジュアッ!」

 

エレキングは爪に電気を纏って斬り裂こうとするが、ティガは左手で難なく弾く。

驚くエレキングをティガは右腕で殴って爆発を起こし、数メートル吹き飛ばす。

 

「キィィィイ!!」

 

頭にきたのかエレキングはカッター光線を連射して来た。

 

「デアッ!ハッ!ジュアッ!」

 

ティガはその全てを弾き飛ばし、エレキングに向けて炎の跳び蹴りを放つ。

怯んだエレキングは、もう一度ティガを締め付けようと尻尾を振るうがーー

 

「フッ!ハアアアアアア・・ッ!」

 

ティガはその前に受け止めて回転、遠心力を発生させる。

 

「チャアッ!」

 

数回転した後、上空へと投げ飛ばす。トドメを刺すなら今だ。

 

「ジュアッ!ンンンン・・!ハアッ!」

 

胸の前で高熱火球を作り出し、ウルトラマンエックスの力を解放。

必殺のデラシウムブレイズを放った。

 

「キィィィイ・・!」

 

無防備な態勢で命中したエレキングは爆発し、忽ちスパークドールズへと変換された。

落下して来たエレキングを受け止めたティガは、カラータイマーに回収して上空へと視線を移す。

 

ちょうどセシリアのブルー・ティアーズが放った青いビームが、円盤の最後の武装を破壊しているのが見えた。

様子からして地球を脱出しようとしているらしい。

 

「ジュアッ!」

 

ティガはピット星人と決着を付けるべく上空へと飛んだ。

 

 

 

 

ティガがエレキングを撃破した頃、箒達もピット星人をあと一歩まで追い詰めていた。円盤の武装を全て破壊し、最早抵抗する術は残されていない。

 

『こうなったら仕方ないわね・・逃げるわよ!』

 

『えぇ!これで勝ったと思わないことね!次は必ずアンタ達を殺すんだから!!』

 

アルファとベータがそう叫ぶと、円盤は方向転換して更に高空へと飛ぶ。宇宙へと逃げるつもりなのだ。

 

「待て!」

 

だが、円盤を追い抜いて正面にティガが回り込んで来たので急停止する。

 

『ティガ!?まさかあのエレキングを倒したというの!?』

 

「ピット星人、お前達に次はねぇよ!これで・・終わらせる!」

 

驚くアルファを無視して、ティガは自身に宿るもう一つの光、ウルトラマンガイアの力を解放。デラシウムブレイズと同じモーションでエネルギーを溜める。

 

「殺された人達の痛みを、思い知れ!!ジュアッ!」

 

腕をL字に組んで放つ灼熱の光線、バーニングゼペリオン光線を発射。

 

『『ギャアアアアアッ!?』』

 

光線は一寸の狂いもなく円盤に命中し、アルファとベータは断末魔を上げて円盤ごと爆散した。

 

「ジュワッ!」

 

ティガは箒達に頷き、空へと飛び去って行った。

 

「アイツ、ちゃっかりと美味しいとこ持って行っちゃって・・ったくもう」

 

少々不満そうに呟く鈴だが、その表情は笑顔だった。それを見て、箒達も笑みを浮かべる。

発電所でも、戦いを見守っていたスタッフやIS部隊も一安心したようだ。

 

《pipipipi!pipipi!》

 

「っ!一夏!?大丈夫なの!?」

 

『あぁ。あの宇宙人に襲われたところを、ティガが助けてくれたお陰で何とかなったよ・・心配かけて悪かった』

 

そこへ、一夏から開放通信が掛かってきた。すぐに出た全員の空中ディスプレイに、擦り傷こそ負ってはいるが一夏の無事な姿が映された。

 

「本当だよ!こっちが呼んだ時切られたからどうしたのかと思ったんだから!でも良かったぁ〜・・・」

 

「一夏君、無事で何よりだわ♫とりあえず発電所に向かってくれる?そこで逸れた後のことを詳しく聞かせて欲しいの」

 

『わかりました』

 

楯無から指示を受けて通信を切った一夏は、箒達と合流するべく白式を展開。発電所へと飛んでいく。

 

こうして、ピット星人の地球侵略の野望は潰えたのだった。

 

 

ED【Brave Love Tiga(インフィニット・ヒロインズ)】

 




次回予告

IS学園の海岸に悪臭を放つ怪獣の腐乱死体が打ち上げられた。GUTSと教員部隊による撤去作業の最中、突如息を吹き返した怪獣は、エネルギーを求めて街への進行を開始する。

次回、インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜

『怪獣が出てきた日』

お楽しみに!

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