インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜   作:ボイスターズ

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皆さん、お待たせして申し訳ありません!

スランプとIS《インフィニット・ストラトス》の原作を読んでいて書けませんでした。次回の投稿も未定です・・。
今回、遂にマドカの奪還作戦が始動!

ではどうぞ。


第50話 エムリターンズ

OP【Believe(玉置成実)】

 

 

「ーーよしっ!じゃあマドカ、始めようか?」

 

「あぁ」

 

私ー織斑マドカーと、兄さんー織斑一夏ーの1日は、朝早くに行うトレーニングから始まる。まだ5時ということもあって、他の者達は眠っている。

 

お互い、専用機がかなりの高スペックを持っているから、それに付いて行けるように身体を鍛えるのは欠かせない。そのため最近は、操縦訓練の他にもこうした生身の訓練を行うようになっていた。

 

「ところで兄さん、今日は何周走るんだ?」

 

「ん?そうだな、5周ぐらいにしておくか。その後は組手をやって身体を温めようぜ」

 

「わかった」

 

私達のトレーニングは主に学園内を走ったり先程兄さんが言った組手、後は腕立て伏せや瞑想と言った基本的なものだ。しかし、兄さんはウルトラマンということもあって中々手強い。まぁ私としては逆にやる気が出るから良いがな。

 

「それにしても、最近セシリアのビットの腕が上がってきたな〜」

 

兄さんのそんな独り言に、私も走りながら彼女を思い浮かべた。確かにBT兵器の速度が少しずつだが速まっている。そういえば昨日も、アリーナの閉館時間ギリギリまで訓練していたな・・。

 

「俺はビットは使わないから良く分からないけど、やっぱ操作って難しいんだろ?」

 

「あぁ。一機毎にどの方向から攻撃させるか考えると同時に、自分の行動も判断しなければならないからな。複数操るとなると、かなりの処理能力が必要だ」

 

「そうだよな・・にしてもマドカは12機もあるのによくあんなに動けるな?」

 

「フフ、アレくらい私ならどうという事はないのさ」

 

そう言ってドヤッとした顔を兄さんに向けると、彼はこれから手こずりそうだなと苦笑いを浮かべていた。

 

 

ー20分後

 

 

ランニングをおえた私達は水分補給をしたのち、海岸で組手を行った。因みに、兄さんに頼んでお互い手加減無しでだ。

 

 

「はぁ・・はぁ・・マドカ、お前また強くなったな・・」

 

「に、兄さんこそ・・うぅ・・」

 

帰るかと、息切れをしながらも起き上がった兄さんは、動けない私を背負って寮へと歩き始めた。

 

「一体いつになれば兄さんに勝てるのだ?いつも先に行かれては、私が言うのもなんだが自信無くすぞ・・」

 

今日で既に7戦目だが一度も勝てていない。ウルトラマンとはいえ幾らなんでもおかしいのではないか?

 

「そんなことないって!少しずつだけど、お前は確かに腕を上げてるぜ?いずれ必ず追いつけるさ」

 

「だといいのだがな・・"次は"必ず勝たせてもらうぞ?」

 

「おう、上等だ。まぁ負ける気はないがな」

 

そんなことを話しながら、私達は寮に戻った。因みに兄さんにおぶられているのを千冬姉さんに見られた際少々恥ずかしかったというのは内緒だ。

 

 

 

だが、そう遠くない未来で、この時の"兄さんに追いつく"という願いが最悪な形で叶うとは、私自身、そして皆が知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

「おーいフォルテ、どうよお前の機体?」

 

「大丈夫っスよレイン。全機能は正常に作動してるっス」

 

亡国企業の基地にある整備室。そこではレイン・ミューゼルと、その恋人であるギリシャ代表候補生であったフォルテ・サファイアの機体の最終調整が行われていた。

 

2人の機体は改修により出力が以前よりも数倍上がり、フォルテのIS『コールド・ブラッド』は武装が新たに高エネルギービームライフル。

 

《2連装52mm超高初速防盾砲》という右腕に装備するシールドと2連装高初速機関砲を組み合わせた複合武装、100mmエネルギー砲《ツォーン》という両肩に装備するビーム砲。

 

そして普段は拡張領域《パススロット》にあるスパイク付きの金属球《ミョルニル》と両手に装備するクローが追加された。

 

《ミョルニル》のワイヤー部分は、ビーム攻撃を受けても耐えられるよう特殊コーティングが施されており、振り回すことで防御することができる。

 

レインのヘル・ハウンドver2.8(※以降ヘル・ハウンドと記載)は改修によりver3に強化。

武装は337mmプラズマサボット・バズーカ砲《トーデスブロック》という携行式バズーカ砲。

 

腰に装備する125mm2連装高エネルギー射程ビーム砲《シュラーク》、胸部に装着して放つ580mm複列位相エネルギー砲《スキュラ》、対装甲コンバットナイフ《アーマーシュナイダー》が追加された。

 

「いやぁゼットさんも凄いっスねぇ〜。他の整備員も一緒だったとはいえこんな装備を作るなんて・・・」

 

「ま、作れたのはアイツらの今までの戦闘データを取得したからだけどな」

 

どうやら一夏達は、改修後の戦闘データを亡国企業の衛星から取得されていたらしい。

 

それでもっスよ〜と言いながら機体を待機形態である髪止めにしたフォルテは、同じく待機形態のチョーカーにしたレインを見てふとあることが浮かんだ。

 

「そういえば、新しく入った人ってどうしたんスかね?」

 

「あぁアイツか?機体の方はもう少しだが、肝心のアイツ自身の"調整"がまだなんだと」

 

「"調整"ねぇ・・・」

 

そう呟くフォルテにレインはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「フォルテ〜お前何を想像してんだ〜?」

 

「べ、別に何もないっスよ!?」

 

狼狽えるフォルテの小柄な彼女の背中を、レインはバンバンと叩いた。

 

「へへへ、冗談だよ冗談!行こうぜ!」

 

そう言って歩いて行くレインを、フォルテは自身の三つ編みの髪を弄りながら追いかけた。

 

 

 

 

 

 

『ーー以上が今回の任務だ』

 

その頃とある一室では、スコールが亡国企業の上層部と次の任務の会議を行っていた。モニターに映る黒いスーツとサングラスを付けた男性は、野太く冷たい声で話す。

 

「お言葉ですが、あそこには織斑千冬だけでなく今は篠ノ之束がいます。エムの奪還はリスクが高いかと」

 

『だが裏切ったとはいえ、彼女は我々にとって貴重な戦力だ。多少の危険を冒してでも取り戻さねばならん。それとも、たかが小娘1人恐ろしくてできないと言うのか?』

 

「・・・いえ」

 

『フン、ではよろしく頼むぞ』

 

それを最後にモニターは消えた。スコールはふぅと一息つくとコーヒを飲んだ。

 

「(全くとんだ無茶振りね・・命令だからやるしかないんだけど。それにしてもーー)」

 

篠ノ之束を"小娘"呼ばわりするとは、手を組んでいたスコールからしたら彼女を舐めているのかと苛立つものだ。

 

「彼女が敵になるということが何を意味するかわからないのかしら?とにかく、直ぐに皆を集めないと・・・」

 

そう呟いて立ち上がったスコールは、他のメンバーに伝えるべく自身のIS『ゴールデン・ドーン』の開放通信(オープンチャネル)を開いた。

 

 

 

 

 

 

亡国企業が動き出した頃、皆が普段通りの日々を過ごすなか、休み時間の間、マドカは1人違和感を感じていた。

 

「(なんだ、この胸騒ぎは・・・今まで以上に厄介なことが起きるような・・・)」

 

兄さん達に話すべきかと顔を向けるマドカだが、直ぐにその考えを取り消した。

 

「(いやよそう。心配を掛ける訳にはいかん・・・)」

 

「?マドカ、どうかしたの?」

 

妙に感じたのか静寐が声をかけて来たので、マドカ笑みを浮かべて答える。

 

「いや、なんでもない。ちょっと疲れただけだ(しかし、やはり姉さんには放課後にでも話しておいた方がいいかもしれんな)」

 

そして時が流れ、学園が昼休みに入った頃、学園から少し離れた海底に、数隻の潜水艦がやって来ていた。

 

「ーーったくよぉ〜!なんであのクソガキの奪還なんてしないといけねぇんだよ・・・!!」

 

「仕方ないでしょ、上からの命令なんだから。それより、ゴーレム達の準備は?」

 

不貞腐れるオータムを宥めるスコールは、フォルテにゴーレムの確認をする。

 

「今聞いたら何時でもokみたいっスよ」

 

「ゼットの奴どうやってあそこまで作ったんだ?ISコアにだって限りがあるだろ?」

 

「彼曰く『あんな玩具作るのは容易い』とのことよ」

 

どんな頭をしてるんだよと呆れるオータムを尻目に、スコールは指示を出す。

 

「全員出撃準備。【エムリターンズ作戦】を開始するわよ」

 

全員が了解と答え、各自カタパルトへ向かう。

その間に潜水艦は浮上し、ゲートを開ける。

 

《進路クリア!ゴーレム、発進どうぞ!》

 

まず、30機以上のゴーレムIV部隊が発進した。

 

 

 

 

 

 

《緊急事態発生!緊急事態発生!多数の未確認飛行物体接近! 生徒の皆さんは、速やかにシェルターに避難して下さい!繰り返しますーー》

 

「な、なに!?」

 

「未確認飛行物体って、どういうこと!?」

 

「(胸騒ぎが当たってしまったか・・!)皆、落ち着いて避難するんだ!」

 

「さぁ、早く!」

 

生徒達に混乱が広がるなか、一夏達は全員をシェルターへと誘導する。

 

《先ほど確認の結果、亡国企業と断定した!恐らく総力戦となる!GUTS、教員部隊は総員出撃!私も出る!》

 

『了解!』

 

千冬の指示を受け、一夏達は自身のISを展開、出撃する。

 

「織斑一夏、白式、行きます!」

 

「篠ノ之箒、紅椿、参る!」

 

「セシリア・オルコット、ブルー・ティアーズ、参りますわ!」

 

「鳳鈴音、甲龍、行くわよ!」

 

「シャルロット・デュノア、リヴァイヴ、行きます!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、シュヴァルツァ・レーゲン、出るぞ!」

 

「更織楯無、ミステリアス・クイーン、発進します!」

 

「更織簪、打鉄・参式、行きます!」

 

「織斑マドカ、黒騎士、発進する!」

 

教員部隊、更に束が製作したらしいゴーレムIII部隊と合流した一夏達は、ゴーレムIVの大群に戦慄する。

 

「なんて数だ・・」

 

「奴ら、本気で私達を潰す気のようだな」

 

ゴーレムIVは女性のようなスマートな体格で、ビームサーベルにもなる鋭い5本の爪と手の甲にあるビーム砲、口にあたる部分にもそれがある。

また、両腕には折りたたみ式の近接ブレードが搭載されている。

 

「学園には指一本触れさせねぇ!」

 

「一夏!?」

 

「私達も行きましょう!」

 

そう叫んで突っ込む一夏は、白式のリミッターを解くと同時に、左腰のラケルタビームサーベルを抜刀。

一方、一機のゴーレムIVが近接ブレードにレーザーを展開して対抗する。

 

「でぇあああああっ!!」

 

刃が激突して火花が散る。ゴーレムIVが手のビーム砲を使おうとするが、一夏はそれをさせない。

 

「くっ・・はああああああっ!!」

 

雄叫びを上げてブレードを上に弾くと同時に雪片弐型・真打を抜刀。零落白夜・極を発動して勢いに任せゴーレムIVを右切り上げで真っ二つに切断する。

 

『一夏!5時の方向からビーム!』

 

白式もハイパーセンサーをフル活用して一夏のサポートを行う。後方から迫るビームを察知し、一夏に避けさせる。

 

「!はっ!」

 

素早くルプスビームライフルで撃墜した。

 

「ふっ!」

 

箒は空裂と雨月の二刀流でビームや斬撃を放って撃墜していく。

 

「行け!」

 

膝のミサイルと高エネルギーライフルを同時に放つ。

ゴーレムIVはミサイルを落としたが、その爆発を突き抜けて来たフラッシュエッジビームブーメランによって切断された。

 

「はっ!」

 

セシリアは展開装甲で上昇した機動力で飛び回りながらスターライトmkIVを連射、ブルー・ティアーズも射出して撃ち落としていく。

 

「こんのおおおおっ!」

 

鈴は龍咆を連射しダメージを与え、双天牙月のビームソードを展開、瞬間加速で接近して切断する。

 

「であああああっ!!」

 

更にもう一本展開して連結し、ビームブーメランのように投げ飛ばす。

 

「負けないっ!」

 

シャルロットは回転して高エネルギービームライフルと両肩のアムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲で薙ぎはらっていく。

 

「数があれば勝てると思うな!」

 

ラウラはワイヤーブレードを射出してゴーレムIV達の装甲にダメージを与え、素早くアグニのビーム砲で破壊。

 

「お姉さんの底力を見せてあげるわ!」

 

楯無は蒼流旋に水を纏わせ、次々と弾丸として放っていく。

それまで不可能だった〈ミストルテインの槍〉の連射である。

 

「いっけええええ!」

 

一方簪はマルチ・ロックオン・システムを起動。左右と背部にある発射管を開き、荷電粒子砲と山嵐96発を一斉発射。小型化したことで搭載数と威力が増したミサイル群が、ゴーレムIVを撃ち落としていく。

 

「皆やるな・・よし、俺も!」

 

箒達の奮闘を見ていた一夏はそれに続くべくマルチロックを起動。翼を広げて全武装を展開しハイマット・フルバーストを放つがーー

 

「ちっ・・きりがねぇ!」

 

今ので大半を破壊したと思ったが、後から次々とゴーレムIVがやって来る。しかしだからと言って引く訳にはいかない。

一夏は雪片弐型とラケルタビームサーベルを抜刀して立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

「であああっ!!(やはり感じる。間違いない、この気配は・・!)」

 

一方マドカはゴーレムIVを破壊しながら、先程から感じる殺気を追っていた。

 

「邪魔だああああああっ!」

 

ランサー・ビットを展開しビームを放って一掃した時、殺気の持ち主が現れた。

 

「久しぶりね、エム」

 

「・・!やはりお前か、スコール!!」

 

その名の通り全身が黄金のIS『ゴールデン・ドーン』を纏ったスコール・ミューゼルが、不敵な笑みを浮かべて此方を見つめている。

 

「一緒にいた頃とは随分と変わったようね。まるで別人みたい」

 

「お陰さまでな。だが、お前はなにも変わっていないようじゃないか」

 

お互い軽口を叩き合ってはいるが、2人とも全身から凄まじい殺気を放っている。

 

「ーー改めてお願いするわ。戻って来なさい、貴女には平和な日々よりも戦場の方がお似合いよ」

 

「断る。オータムから聞かなかったか?そんなつもりはないと!」

 

マドカの言葉を聞いて諦めたのか、スコールは仕方ないわね・・とため息をついて笑みが消えた。

 

次の瞬間、《プロミネンス》という両肩にある炎の鞭を振るってくる。スコールにとってはマドカが断るのは想定内だった。寧ろ最初から力尽くでやるつもりだったのだから。

 

「ふっ!」

 

素早く避けたマドカはフェンリル・ブロウNEOで斬りかかるが、巨大な尾の先端のクローで防がれる。

 

「相変わらず厄介だな・・!」

 

「前より重い一撃ね。でもそんな攻撃じゃ私は倒せない・・わかってるでしょ?」

 

「あぁ・・・よくわかってるさっ!!」

 

距離をとったマドカは背部の翼からプロヴィデンス・ビットを12機全てを射出、更に高エネルギービームライフルとスターブレイカーで四方八方からビームの雨を降らせる。

 

「篠ノ之束自ら改修したからかしら?結構やるじゃない。でも、私には勝てないわよ」

 

「試してみるか?後悔しても知らないぞ!はあああああああっ!!」

 

ビームを避けながら感心するスコールに、マドカは左手にビームライフルを、右手にフェンリル・ブロウNEOを持って突っ込んで行った。

 

 

 

ED【BEAUTIFUL SKY(インフィニットヒロインズ)】

 




次回予告

IS学園と亡国企業の死闘が続くなか、千冬はイタリアの代表操縦者であるアリーシャ・ジョセスターフと再会する。一方の一夏もレイン、フォルテ達と再会。迷いを捨て、彼女達を止めようするが、彼女達の予想以上の力に苦戦を強いられてしまう・・!

次回、インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜

『激闘の果てに』

お楽しみに!

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