インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜   作:ボイスターズ

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「リガトロン戦」完結です。


第47話 サ・ヨ・ナ・ラ地球 PART2

OP【TAKE ME HIGHER(V6&一夏)】

 

 

放課後、大地が行っていたリガトロンの破片の調査結果が出たため、一夏達は再び会議室に集まった。

 

「現場で回収したこの怪獣の破片を調べた結果、『ジュピター4号』の外壁の一部が見つかりました」

 

「じゃあ、乗組員は・・!?」

 

『ーーあの怪獣に襲われたか、或いは不慮の事故に遭遇したか・・・』

 

「全員、生還は絶望的ということか?」

 

「ーー恐らく」

 

「そんな・・」

 

それを聞いてショックを受けたのか、鈴は椅子にもたれてしまった。

 

「鈴ちゃん、しっかりして!?」

 

「アスナさん、すいません・・大丈夫です」

 

「鈴、部屋で休んだ方が良いのではないか?」

 

そんな彼女が心配になったのか、箒は寮に戻ることを促すがーー

 

「いいのよ、大丈夫だから」

 

「・・・」

 

普段よりも暗い笑みに、一同は何も言えない。

そこへーー

 

「あった!!!」

 

「!?」

 

突然大声を上げた簪に全員の視線が向く。

 

「簪、どうしたのだ?」

 

そう尋ねるラウラに、簪は笑みを浮かべる。

 

「江川博士程の人なら、何かメッセージが残ってるんじゃないかと思って、コンピューターを探ってみたの。そしたら・・・」

 

「見つけたの!?」

 

「うん、どうやら博士の研究所のコンピューターに送られていたみたい」

 

「さっすが簪ちゃん!」

 

「凄いよ、よく見つけたね!」

 

「やるじゃん!」

 

「い、いえそんな・・」

 

楯無や大地、一夏に褒められて照れ笑いする簪。

兎も角、一同は簪が見つけたデータを解析し、江川博士が送ってくれたメッセージを聞くことにした。

 

 

 

 

『私の送った通信を、誰かが気付いてくれていることを願い、事件の経緯をお話しする・・。ーー我々3人を乗せたジュピター4号が、予定通り木星の衛星軌道に乗った時、アレが現れた・・。

 

逃げることも出来ないまま、我々は発光体に取り込まれてしまった・・恐らく、ジュピター4号の動力エネルギーを狙ってやって来たのだろう・・・取り込まれた我々は次のエネルギーを求め、地球にやって来た。

 

アレは、感情も実態も持たない未知のエネルギー体だ・・・。 怪獣は、我々の心にある”恐怖”の感情を探りだし作られたものだ。

我々が持つ知識も武力も、全てアレの思うままに操られ、抵抗することもできない・・・。

 

人間として覚醒していられる時間も残り少ない・・・地球を、我々の手で滅ぼすような悲劇が起きないことを、願うばかりだ・・・』

 

それを最後に画面に激しいノイズが走り、映像が途絶えてしまった。

 

「ーー何とか、彼らを元の姿に戻す方法があればいいのだが・・」

 

「しかし、謎はまだあります。怪獣に取り込まれた筈の彼らが、どうやって家族の元に現れたのか・・・」

 

「そうだな・・彼らは言わば怪獣に幽閉されている状態。外に出るなどできる筈がない」

 

ラウラやマドカの言う通り、先程の江川博士の言葉通り、リガトロンに取り込まれた彼らは身体の自由が利かない状態。それにもかかわらず何故現れたのだろうか?

 

「ーー多分だけど、ピュアな家族や肉親への『愛』の感情を怪獣が理解出来ず、彼らの意識が怪獣の能力を借りて実体化したんじゃないか・・・?」

 

「この通信は、既に政府や学園上層部でも解析中です。間も無く解答が出るかとーー」

 

轡木がそう話している途中、彼の携帯電話が鳴り始めた。同時に千冬にも通信が入る。

 

「轡木です。はい、はい・・・」

 

「あぁ・・わかった。怪獣が現れた。恐らく鶴ヶ崎発電所が狙いだろう」

 

千冬の言葉に全員に緊張が走る。

 

「分かりました、失礼致します・・学園上層部からです。政府との検討の結果、怪獣を倒せと、正式に命令が下りました」

 

「ーー分かりました」

 

その命令に対しあくまでも冷静な千冬に、特に鈴が驚いた。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい千冬さん!政府が言っているのは、彼らと戦って殺せってことなんですよ!?」

 

「織斑隊長と呼べ、バカ者!ーー鳳、お前の気持ちも分からんでもないが、迷ってる時間はない。我々が戦うのは、平和を壊す恐るべき宇宙怪獣だ。GUTS、出動!」

 

「了解!」

 

こうして、GUTSは(簪は除く)鶴ヶ崎発電所へと出撃した。

 

 

「鈴・・・」

 

「いいのよ。私はGUTSとして、自分の任務を全うする、それだけだから・・!」

 

「ーーわかった」

 

苦しそうな表情で話す鈴に対し、一夏はその一言の後は何も言わなかった。

 

『鶴ヶ崎発電所は、関東地区の電力の70%を占めています。もし破壊されたら、都市機能が完全に麻痺してしまいます!』

 

オープンチャネルで真耶の声が一夏達に響く。

 

「皆聞いたわね?何としても怪獣を倒すわよ!」

 

「はい!」

 

一同は更にスラスターの出力を上げて現場に向かう。

 

 

 

 

「キシャアアアアアアッ!」

 

送電線を爪で切断し、リガトロンは発電所を目指す。

 

「怪獣確認!発電所まであと10kmですわ!」

 

「発電所を背にして攻撃するわよ!」

 

「了解!」

 

8人は一旦リガトロンを追い越し、旋回して注意を向けさせる。

 

「キシャアアアアッ!」

 

一夏達に気付き、リガトロンはまたお前達かと言わんばかりの奇声を上げる。

 

「行けぇっ!」

 

全員ビームライフルを、更に一夏とシャルロットのプラズマ砲を加えた一斉攻撃を放った。

 

「キシャアアア・・!」

 

怯むリガトロンに、楯無は追い打ちとして蒼流旋に搭載されているマシンガンを放つ。

 

「オマケだっ!」

 

続いて一夏は腰のレール砲を展開しリガトロンの胸部に命中させた。

 

「キシャアアアッ!」

 

リガトロンは目の爆撃と、両手の爪を合わせて放つ破壊光線で応戦する。

二手に分かれた一夏達は、それらを必死に回避しながら攻撃を続行するがーー

 

 

ドォォォォン!!

 

 

「キャアッ!!」

 

「鈴・・!?」

 

龍咆の1つが光線を受けて大破してしまい、発生した衝撃で鈴は体勢を崩す。

それにより一夏が彼女に気を取られた一瞬の隙を見逃さず、リガトロンは光線を彼や鈴にめがけて放った。

 

「くぅ・・うわあああ!」

 

「キャアアアアッ!」

 

ギリギリで雪羅のエネルギーシールドを展開して防ぐ一夏だったが、破壊光線の威力はシールドの許容範囲を超えており、数十秒で破られて地上へ吹き飛ばされてしまう。

 

「一夏!」

 

「鈴さん!」

 

シャルロットとセシリアは2人の元へ向かおうとするが、リガトロンが破壊光線で妨害する。

 

「邪魔をしないで貰えたいね!」

 

「全くですわ!」

 

 

 

 

「はぁ・・はぁ・・。鈴・・?ーー!鈴、大丈夫か!?」

 

地上に吹っ飛ばされ、白式が強制解除された俺は、同じく甲龍が解除され、気を失った鈴を安全な場所に運ぶ。

 

(クソッ、頭が少し痛むけど、急がないとな)

 

俺は多分ティガと一体化しているお陰で意識を保てたんだろうけど、普通の人間である鈴はそうはいかないよな・・。

 

(よし、此処なら大丈夫だろ。なるべく早く目を覚ますといいが・・)

 

「キシャアアアアアッ!」

 

「!ここで待っててくれ、鈴」

 

鈴を寝かせながらそう思っていると、怪獣の奇声が聞こえてきた。見ると、皆が今も尚怪獣を攻撃している。

俺は鈴に声をかけた後、周りに人がいないのを確認して、スパークレンスを展開した。

 

 

 

 

BGM【Brave Love Tiga(地球防衛隊)】

 

 

「チャッ!」

 

ティガはリガトロンの前に降り立ち、構える。

 

「キシャアアアアッ!」

 

「テァッ!」

 

向かってきたリガトロンにティガは跳び蹴りを放つが、まるで効いていない。

 

「ジュアッ!テァッ!」

 

リガトロンは爪を振り下ろすが、それを避けて今度は頭部を掴み、胸部にニーキックを放つ。

が、これも爪で押し返された。

 

「フッ!デュワッ!ハッ!」

 

頭部にチョップを、胸部にパンチを連続で叩き込むが、逆に殴り飛ばされる。

 

「ティガ・・」

 

一方、鈴は箒達に保護され、ティガの戦いを見守る。

 

 

「キシャアアッ!」

 

リガトロンは爪を合わせて破壊光線を撃ってきた。

ティガは横転と側転で避けた後、足元で起こる爆発を突き抜けてリガトロンへとダッシュする。

 

「チャアッ!デェアッ!ハァッ!」」

 

ダッシュの勢いを乗せたストレートパンチに続き、胸部へハイキックと回し蹴りを放つが、やはりリガトロンにはさほどダメージにならない。

 

「キシャアアッ!」

 

振り下ろされる爪を前転などで避けたティガは再びリガトロンに掴みかかる。

が、腹に蹴りを受けて怯んだ隙に爪で首を絞められ、投げ飛ばされてしまった。

 

「ウッ・・!チェアッ!」

 

「キシャアアアッ!」

 

ハンドスラッシュを首筋に命中させるが、これすら通用せず、目の発光による爆発を喰らう。

 

「キシャアアアアアアッ!」

 

敵を倒したと喜びの奇声を上げるリガトロン。

だがーー

 

 

「・・・ンンンン、ハッ!」」

 

炎の中で立ち上がったティガは、赤き姿、パワータイプへとチェンジした。

 

「キシャアッ!?」

 

想定外の事態に驚くリガトロン。

 

 

BGM【光を継ぐもの】

 

 

「フッ!」

 

「キシャアアッ!?」

 

ティガは突撃すると見せかけて急停止することでリガトロンを転倒させる。

 

「デェアッ!ハッ!ハッ!チャアッ!」

 

倒れたところを頭を地面に何度も叩きつけ、更に跨って2連続でパンチを放つ。

 

「キシャアアッ!」

 

「ウワッ!?」

 

背中のブースターの噴射で吹き飛ばされるが、すぐに立ち上がる。

 

「キシャアアアアッ!!」

 

頭を叩きつけられたことに腹を立てたのか、怒り心頭のリガトロン。

 

「フッ!ハアアア・・デェアッ!」

 

一気に勝負をつけるべく、ティガは胸にエネルギーを溜めて、必殺のデラシウム光流を放つ。

 

 

ドシュウゥゥッ・・!

 

 

「!?」

 

そんな音を立てて腹部に命中したものの、リガトロンは平気な様子だ。

 

「キシャアアッ!」

 

「ウッ・・!」

 

破壊光線を受けて怯むティガに、リガトロンはそれをもう1発放って膝をつかせる。

いくらパワータイプでも、連続で高威力の光線を浴びれば堪らない。

 

「キシャアアアアアアッ!」

 

好機と見たのか、リガトロンは背中のブースターでティガに急接近。

爪の連続攻撃でいたぶり始めた。

 

「ジェアッ・・!」

 

まだまだ余裕なリガトロンに対し、ティガはカラータイマーが点滅を始める。

 

 

 

 

「あの怪獣の身体、まるで難攻不落の要塞だよ・・。これじゃ、僕達が何百人で外側から戦っても歯が立たない・・・!」

 

「チッ、面倒な奴だ!」

 

シャルロットがリガトロンの装甲に自身の考えを述べるなか、マドカはその見た目に寄らない強さに舌打ちする。

 

("外側"から・・?てことはもしかしたら・・!)

 

「IS学園、聞こえる!?」

 

2人の声を聞いていた鈴は、何かが閃いたのか、オープンチャネルでIS学園に通信を入れる。

 

『鈴!?大丈夫!?』

 

すると、簪の心配そうな声が聞こえてきた。

 

「これぐらい全然平気よ!それよりもお願いがあるの。今すぐ『ジュピター4号』のコンピューターに、乗組員の家族の写真を送って!いいわね!?」

 

『!わかった!』

 

鈴の狙いを悟った簪は、すぐに作業に取り掛かる。

 

 

「キシャアアアッ!」

 

「ジェアッ・・!ウゥ・・!」

 

リガトロンはティガを両腕で持ち上げ、爪で締め付ける。

ティガは脱出しようと腕にパンチを放つが、消耗しているうえに締め付けられる痛みで上手く決まらない。

その時ーー

 

 

ドクン・・!ドクン・・!

 

 

「!?」

 

「キシャアア・・!」

 

突然リガトロンが脈打ったと思いきや、今度は全身から火花が散り始めた。

 

「怪獣の様子が変だよ!?」

 

「鈴の読みが当たったようだな!」

 

「えぇ・・眠っていた博士達がやっと起きたみたい!」

 

そう、これこそが鈴の狙い。リガトロンは人間の『愛』を理解できない。

ならばそれで苦しめると同時に、内部で眠っている乗組員の意識を目覚めさせるというものだったのだ。

 

「!簪ちゃん、コッチにも送って!」

 

出現させた空中パネルに次々と写真が映されていく。

その写真の全てが、笑顔で満ちている。

リガトロンがウイルスとするなら、これはいわばそれを消すワクチンなのだ。

 

「もう一度・・もう一度生きて!人間として!貴方達のためにも、待っている家族のためにも!」

 

鈴の叫びに応えるように、リガトロンの内部では乗組員が必死に抵抗している。

それを表すように、リガトロンの火花が激しさを増していく。

 

「エネルギーを奪うの!奴が持ってる力を全て使って、怪獣を倒して!!」

 

「キシャア・・・」

 

遂にリガトロンはエネルギーが尽きて抜け殻の状態となり、同時に体内から3つの光が飛び出した。

トドメをさすのは今だ。

 

「ンンン・・ハッ!」

 

ティガはマルチタイプに戻り、残されたエネルギーを集約させる。

 

「デェアッ!」

 

そして、渾身のゼペリオン光線を放った。

 

「グシャアアアアアア・・・」

 

断末魔を上げながら、リガトロンは爆散した。

 

「や・・やった!!」

 

「奇跡ですわ・・」

 

「ううん、奇跡じゃないわ。人としての心を取り戻したあの人達が、もう一度命を懸けて、地球と私達を救ってくれたのよ・・」

 

そう語る鈴の頬には、一筋の涙が流れている。それは嬉し泣きか、悲し泣きか、どちらなのかは彼女にしかわからない。

 

「ジェワッ!」

 

ティガはそんな鈴の考えに賛同して頷き、空へと飛び去って行った。

 

 

 

 

日没まであと僅かとなった頃ーー空には3つの光が輝いている。

 

「あれって?」

 

「『ジュピター4号』の乗組員だ・・。」

 

「一夏、いつの間に・・!」

 

いつの間にか隣にいた一夏に一瞬ドキッとしてしまうシャルロット。

 

「ーー彼らは、人間を超えた光の生命体になったんだ。」

 

「人間を?ーーあの方々は・・何処へ行かれるのでしょうか?」

 

「宙《そら》よ・・あの人達が行くのはきっと、無限に広がる宇宙よ、絶対!」

 

3つの光は一瞬光った後、宙へと飛び去って行く。まるで"ありがとう"と伝えたように。

 

それから暫し、一夏達は光が飛んで行った宙を見つめていた・・・。

 

 

ED【Brave Love Tiga(インフィニットヒロインズ)】

 




次回は番外編を投稿予定です。

次回予告

1日の授業と訓練を終えて一息ついていた一夏は、ある出来事を思い出す。それは、生まれ変わった自身の剣を受け取った日のこと・・・。

次回、ウルトラマンティガ〜The Beginning of Legend〜番外編。

『自由への進化』

お楽しみに!

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