インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜   作:ボイスターズ

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今回は短めになっています。

因みに、『サ・ヨ・ナ・ラ地球』完結後に番外編を投稿する予定です。


第46話 サ・ヨ・ナ・ラ地球 PART1

OP【True Blue Traveler(栗林みな実)】

 

 

「「「ハアアアアッ!」」」

学園の高度2万メートルの上空で、俺ー織斑一夏ーはスカイタイプでのハイマットモードを慣らすために、鈴やセシリアは展開装甲を使いこなすために、共に高機動訓練と模擬戦の真っ最中(2人は何故か箒達とジャンケンをしていたが)。

何故アリーナではないのかというと、そこだとハイマットモードによる訓練がやりにくいからだ。

 

有難いことに、ここは飛行機のルートから外れているため、激突の心配もない。

訓練の内容は、バレルロールをしたり空中に出現させたターゲットを高速移動しながら撃ち抜いたりするもの。

そんな中、俺はあることが頭に浮かび、2人にプライベートチャネルを繋ぐ。

 

 

「フゥ・・なぁ2人とも、ちょっといいか?」

 

「はい?」

 

「なによ、どうかしたの?」

 

「そういえばさ、例の『ジュピター4号』の行方・・まだわかってないんだよな・・・」

 

「あぁアレね・・木星探査に飛んだっきり行方不明になって、もう3ヶ月も経ってるっていう・・・」

 

「そうですわね・・帰りを待っているご家族にとってどれだけ辛いことか・・」

 

「危険な仕事だよな・・宇宙飛行士って」

 

俺達は空を見上げながらそんなやり取りをしていた。

するとーー

 

 

ー警告!未確認飛行物体確認!

 

 

「「「!」」」

 

ISからの警告に、ハイパーセンサーを確認する。見ると、11時の方向から何か巨大な物体が落下して来ている。

 

「一夏さん!直ぐに学園に連絡を!」

 

「わかってる!こちら織斑、IS学園、応答願います!」

 

『!こちらIS学園だ』

 

すると、千冬姉が俺の通信にすぐさま答えてくれた。

 

「隊長、ハイパーセンサーに謎の飛行物体を確認しました!」

 

『あぁ、此方もレーダーにキャッチしている。その物体が何か確認できるか?』

 

「現在の高度、2万メートル・・マッハ6の速度で急速降下しています。大きさからして、航空機ではありません!」

 

一夏の視線の先で、謎の物体は速度を落とすことなく落下を続けている。

 

『到達予想地点はわかるか?』

 

「この方向のままだと、鹿島湾付近と思われますわ!」

 

『ちょっと待って!確かそこには、宇宙開発局の施設が有った筈だよね!?』

 

そこへオープンチャネルで聞いていたシャルが加わる。

 

『うん、次世代恒星間ロケット用に開発されている『高純度エネルギー』の備蓄基地だよ!』

 

『アレはそこを目指しているというのか?』

 

「となるとヤバイわね・・」

 

シャル、簪、ラウラ、鈴の順で話し、彼女達は不安げな表情を浮かべる。

 

「とにかく、俺達3人は飛行物体を追跡します!」

 

『わかった。此方も直ぐに出撃させる。くれぐれも気をつけろ』

 

「「「了解!」」」

 

通信を終えた俺達は、飛行物体を追うべくスラスターを点火させた。

 

 

 

 

一方、宇宙開発局でも、レーダーが飛行物体を捉えていた。施設に警報が鳴り響く。

 

「来ます!アレです!」

 

部屋の窓から様子を見ていたスタッフが声を上げる。落下しているのは、なんとロボット型の怪獣ではないか。

怪獣は速度を落とさず頭から海に落下、それにより激しい揺れと波が発生した。

 

「あ、アレは・・!?」

 

「キシャアアアアアッ!」

 

怪獣の容姿は、身体が銀色で目が単眼、両手が鎌状になっている。頭部には黄色に発光する物体がある。

これぞ"複合怪獣リガトロン"である。

 

「局長、此処は危険です!早く奥へ避難を!」

 

「あ、あぁ・・!」

 

奇声を上げながら、リガトロンは上陸しようとしている。そこへ、一夏と鈴、セシリアがやって来た。

 

「飛行物体の正体は、あの怪獣だったんだ!」

 

「そうみたいねっ!」

 

続けて、箒達も現場に駆けつけた。

 

「奴の正面から一斉攻撃よ!」

 

「了解!」

 

楯無の指示で、全員ビームライフルを取り出しリガトロンに放つ。

 

「キシャアアアアアッ!」

 

火花こそ散るが、奴はそれに対して全く怯まない。見た目通り頑丈なようだ。

リガトロンは近くのタンクを破壊しその中のあるエネルギータンクを見つけると、嬉しそうな奇声を発しながら、両腕の爪を突き刺してエネルギーを吸い取り始めた。

 

「あぁ!?」

 

「高純度エネルギーが・・!?」

 

「まずい・・エネルギーがどんどん奪われていきます!」

 

「局長!」

 

「・・よし、防衛コントロールシステム『DCS』を作動させろ! 備蓄タンクをシールドするんだ!」

 

「「はい!」」

 

スタッフ2人がキーボードを操作してシステムを起動させる。

すると複数の柱がリガトロンを囲む形で放電を始めた。

 

「シールド完了!システム正常に作動中!」

 

「よし」

 

これで奴は逃げられまい。局長はそう確信した。

だが、次の瞬間リガトロンの目の部分が数回光った。

 

 

ーアクセス不能!アクセス不能!

 

 

「こ、これは一体!?」

 

「どうしたんだ!?」

 

「DCSに異常が起きています!」

 

「なんだと!?」

 

どうやら今の光で、防衛システムが停止してしまったようだ。

局長達が驚いている間にも、放電から逃れたリガトロンは他のタンクを破壊していく。

 

「チィ・・止まれっ!」

 

マドカは《ランサービット》を展開して穂先から高出力ビームを放つ。

 

「キシャアアアアッ!」

 

多少は効いたようだが、直ぐにエネルギーの吸収を再開する。

 

「だったらこれでどうだっ!」

 

今度はラウラがレールカノンを展開、発射。

 

「キシャアア・・・!」

 

痛そうな奇声を上げるリガトロン。実体弾の効果は抜群のようだ。

すると、奴は両腕を振り下ろして背部のブースターを起動。そのまま猛スピードで飛んでいく。

 

「逃がすかよっ!」

 

ハイマットモードならば追える!一夏はそう思いスラスターの出力を上げて上昇するがーー

 

「キシャアアアアッ!」

 

「くぅ・・!」

 

振り向いたリガトロンは目を発光させて白式の装甲を爆発させる。

 

「一夏!?」

 

「クソ・・」

 

一同が驚くのをよそに、リガトロンはそのまま雲の中へと消えてしまった・・・。

 

 

 

 

地上に降りた私ーラウラ・ボーデヴィッヒーは、嫁や仲間達と共に備蓄基地に訪れ、スタッフに詳しい事情を聞いていた。

 

「どうやら外部からのアクセスを受けたことで、このDCSは機能を停止してしまったようなんです」

 

「けど、DCSは最新のセキュリティシステムを搭載していたんですよね?侵入するのは不可能と思いますが・・」

 

「ううん一夏、"このDCSを製作した人物"なら、それは可能になる」

 

「確かにな」

 

簪の言葉に私は納得した。

どんなシステムにも穴があるとはこのこと・・如何に優れたシステムでも、 必ず何処かに突破口がある筈だからな。

 

「それで、製作者は?」

 

「『ジュピター4号』で行方不明の江川《えがわ》博士です・・」

 

「!?」

 

局長から告げられた事実に私達は唖然とすると同時に、あの怪獣との関係を疑うのだった。

 

 

 

 

リガトロンが備蓄基地から姿を消した翌日のこと。

病院の一室で、高齢の女性がベッドに眠っていた。彼女は病弱のため、ここ最近入院する日々が続いている。

 

側にある棚には、孫と思われる少女と撮った記念写真が置かれている。

そこに、青い制服を纏った女性ーユリーが光に包まれて現れた。

 

(懐かしいな・・この写真)

 

自身がまだ小学生だった頃、水族館で撮ってもらった思い出の品だ。

 

「ユ・・リ・・?」

 

暫く写真を眺めていると、祖母が目を覚ました。それに気付いたユリは、祖母の布団を整え、優しく手を握る。

 

「来てくれたんだね・・」

 

「ーーうん」

 

祖母はユリの雰囲気から何かを察し、涙を流しながらも、久しぶりに再開した孫に微笑んだ。

 

 

 

 

3日後、千冬は轡木に呼ばれて学園長室を訪れていた。

 

「先程、日本政府から連絡がありました。『ジュピター4号』の乗組員達が、ここ数日間の間に、家族の元に現れた形跡があったそうなんです」

 

「なんですって・・!?」

 

驚く千冬に、轡木は乗組員が映った写真を見せながら語った。

 

「しかし、 彼らが地球に帰還しているとはーー」

 

「到底考えられません。ただーー」

 

「例のDCSの件ですね・・?」

 

千冬の問いに、轡木は頷く。

 

「どうも不可解なことが多すぎます・・。隊長、この件に関しては政府や我々といった、極限られた者にしか知らされていません。GUTSの皆さん以外には、くれぐれも機密として扱ってください。」

 

「はい!」

 

 

 

 

4限目が始まる前、俺ー織斑一夏ー他GUTSのメンバー全員は千冬姉に地下会議室へ呼ばれ、学園長からの情報を説明された。

 

「それってつまり、今回の怪獣出現がきっかけで、政府は『ジュピター4号』の家族を嗅ぎまわったってことですよね・・!?」

 

「おいどうした、何を熱くなっている?」

 

「やっぱりあの怪獣、『ジュピター4号』と何か関係があるんじゃないですか!?」

 

「鳳さん!」

 

「おい鈴、ちょっと落ち着けって!」

 

気にかけるラウラに構わず激情を露わにする鈴を止めようとする山田先生。それを見て、俺は思わず怒鳴ってしまった。

 

「あ・・すいません」

 

それで少し落ち着いた鈴は萎縮しながら謝る・・クソ、怒鳴ることなかったな。

 

「ーー構わんさ。向こうは向こうの、我々は我々のやり方でやる。それだけだ」

 

 

その後、会議を終えて教室に戻る途中、俺は鈴に声をかけた。

 

「さっきは怒鳴って悪かったな・・」

 

「ううん、謝るのは私の方よ。つい熱くなりすぎた・・ごめん」

 

「鈴さん、一体どうしたんですの?あんなに感情を爆発させるなんて・・」

 

「頭に来んのよ。帰りを待ってる家族の気持ちを、情報が欲しいあまりに土足で踏みにじるのが・・!」

 

「ーーお前の気持ち、私にも分かる。私も、姉さんがISを作ったことで、家族とバラバラになった挙句何度も政府から尋問を受けたからな」

 

「箒・・」

 

まさか箒にそんな過去があったとはな・・。それなら直ぐにカッとなってしまうのも、今ならわかる。俺だって同じようになるだろうからな。

 

その後、俺達は言葉を交わさないまま、自分達のクラスに戻ったが、その間鈴の表情は怒りに満ちていた・・・。

 

 

ED【BEAUTIFUL SKY(インフィニットヒロインズ)】

 




次回予告

ついにリガトロンの討伐命令が下された。博士達と戦わなければならない現実に、鈴は苦しみながらも戦う決意を固める。己の任務を果たすために・・・。

次回、ウルトラマンティガ〜The Beginning of Legend〜

『サ・ヨ・ナ・ラ地球 PART2』

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