インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜   作:ボイスターズ

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今回から、それまでの「(登場人物)side」を「◇」に変更します。

今回は戦闘よりも会話の方が多い気がします・・・。


第45話 強くなるために

OP【STRAIGHT JET(栗林みな実)】

 

 

11月の初旬になり、紅葉が各地で見頃を迎え始めた。

レギーラのスパークドールズ(大地さん曰く)は、束さんのところで厳重に保管されている。

渡した時に「部屋に飾る」と何故か喜んでいたが・・・。

 

「本日はより実戦形式の訓練を行うぞ。教員部隊にも協力してもらうから、気を引き締めるように!」

 

「はい!」

 

紅葉に魅了されながら、俺ー織斑一夏ーが所属する1組は、3・4・5限目に第1アリーナで2組や4組との特別合同授業を受けることになった。

クラス全員が声を揃えて返事をしている。それにしても千冬姉、本当に凄い統率力だ。

 

「では、各自それぞれの班に分かれてISを装着。教員部隊と模擬戦を行え」

 

そして、8班に分かれて担当の教員の元で授業という名の修行が始まった。

 

 

「ドンドン行くわよっ!次は相川さんと鷹月さん」

 

「「はい!」」

 

穏やかな笑みを浮かべているのは、普段は国語を教えてくれている園田理恵先生。嘗ては山田先生と同じ日本の代表候補生で、山田先生に匹敵する力を持っていたらしい。

顔が何故か携帯で変身するヒーローのヒロインに似ているが、寧ろ本人は嬉しいとか。皆の応援を受けて2人が打鉄に乗ったのを確認し、園田先生もリヴァイヴに乗り込む。

 

「織斑君、合図頼めるかしら?」

 

おっと先生に指名されたか。そうそう、ハイパーセンサーをオンにしとくか。

 

「はい。それじゃあ・・始め!」

 

「「「っ!」」」

 

俺の合図と共に3人は上空に飛び上がった。まず、相川さんと鷹月さんが近接用ブレード《葵》を取り出し園田先生に斬りかかるが、先生はそれを難なく避けて五一口径アサルトライフル《レッドバレット》を発砲。

 

「くっ、やぁぁぁ!」

 

葵の刀身で耐えた相川さんは、連続で斬りかかるが、逆に先生は全てを近接ブレード《ブレッド・スライサー》で受け流してからの回し蹴りで態勢を崩す。

 

「筋は悪く無いわ。後は速度を上げなさい!」

 

「はい!」

 

「これでっ!」

 

一方の鷹月さんは遠距離で挑もうとアサルトライフル《焔備》を放つが、先生は落ち着いて弾丸を避けながらサブマシンガンを展開。

一気にシールドエネルギーを削っていく。

 

「静寐!」

 

「っ!」

 

相川さんがライフルを撃つのを先生は上昇して回避、その勢いで六二口径連装ショットガン《レイン・オブ・サタディ》を発砲して2人に大ダメージを与える。

 

「先生、さっきより速い!」

 

「しかも強い!」

 

「量産型の機体であそこまで戦えるなんて・・・!」

 

一方、地上では園田先生の実力に驚きの声を上げる生徒が多い。

俺も実際その強さに驚いた。間違いなく彼女はできる。

 

(あとで俺も戦うんだろうけど、どこまでいけるか……もし先生が専用機を持っていたら、かなりの強敵になりそうだ)

 

現在先生は、白式のハイマットモードほどではないがかなりの速度で飛行している。更には正確な射撃をして相川さん達を圧倒しているのだ。

やがて数分もしない内に2機の打鉄は地上に落下した。

 

「あっちゃ〜負けちゃった・・・」

 

「はぁ・・・」

 

「2人ともそんなに落ち込むことはないわよ、鍛えさえすればもっと戦えるわ」

 

降りて来た先生が励ましているが、肝心の2人はショボンとなっている。

 

「これは・・先生が強すぎた・・とか?」

 

「う〜ん、これでも力を抑えた方なんだけどな。精々発砲する気配を捉えたぐらいだし・・・」

 

おいおいアレでまだ力を抑えているのかよ・・!?

しかも発砲の気配を捉えるって簡単なことじゃない。ん?ということは怪獣とも戦えたんじゃないか?

 

「織斑君、そこは相手が悪かったのよ」

 

「・・・そうですね」

 

先生には顔でバレていたようだ。過ぎたことはしょうがないので、言う通りに相手が悪かったということにしよう、うん。

 

(なんせ鞭を振り回すわ、岩を投げるわ、火や冷気を放つわだもんな)

 

しかも全員ISの弾丸を受けても平気だったし。

 

「さぁ次、織斑君!行くわよ!」

 

「はい!」

 

俺は白式を展開し、先生を追って上空に飛ぶ。

 

「手加減はいらないわ、全力で来なさい!」

 

頷いた俺は左腰のMA-MO1《ラケルタビームサーベル》を抜刀、同時に左腕には《対ビームシールド》を持ち、翼も展開してハイマットモードになる。

 

「ウォォォ!!」

 

急接近して振り下ろした俺の剣は、先生の《ブレッド・スライサー》とぶつかり合った。

 

 

 

 

「遅い。もっとスピードを出しなさい!」

 

「「はいっ!」」

 

同じ頃、私ーシャルロット・デュノアーの班では担当の新見佳恵先生がリヴァイヴに乗って模擬戦を行いながら、相手のリヴァイヴに乗る谷本さんと鏡ナギさんに指導を行っていた。

速度が遅い2人に対して喝を入れていく。

 

「実戦でそんな速度だとあっという間に落とされるわよ!」

 

先生は両手に五五口径アサルトライフル《ヴェント》を発砲。

鏡さんが盾で防いでいる間に谷本さんは《ブレッド・スライサー》を抜刀、瞬間加速を発動して先生に斬りかかるけど、その一閃は簡単に避けられてしまう。

 

「やぁぁぁ!」

 

「大振り過ぎ!」

 

谷本さんは諦めずに攻撃するが、同じく抜刀した先生の剣に弾かれてしまう。

 

「!」

 

次の瞬間、谷本さんは後方に吹き飛ぶ。何が起きたのかと手元を見てみると、そこにはアサルトライフル《ヴェント》が握られている。

 

「敵の手元に注意するのも忘れちゃ駄目よ。」

 

「くぅ、はい・・・!」

 

今の連射でシールドエネルギーが尽きたのか、谷本さんは悔しそうに地上に降りて来る。

 

「ハァァ!!」

 

その隙に鏡さんは盾殺し《シールド・ピアース》を展開して後ろから殴りかかる。

 

「おっと!」

 

先生は上昇して回避。真上に飛んでグレネードを放ち、地上に落とす。

 

「まさか不意打ちされるなんて・・・」

 

「攻撃にあんなやり方があるとは思わなかったな」

 

「でもその分スラスターを上手く調節しないといけないわよ。下手すると態勢が崩れて的になっちゃうから」

 

地上に降りてきた先生は、一旦リヴァイヴを解除してクゥゥ……と身体を伸ばす。

 

「よしっ!ちょっとは楽になったわ。次はデュノアさん、やるわよ」

 

「はい!」

 

私はリヴァイヴ・カスタムIIを展開。再びリヴァイヴに乗った先生を見据える。

 

「始めっ!」

 

合図と共に私達はスラスターを点火し、上空に飛び立つ。

 

(手加減無しの全力で!)

 

「ハァァァ!」

 

私は腰のMA-BAR70《高エネルギービームライフル》を取り出し連射。避けられるけど構わず次は《ヴェント》を展開した。

 

 

 

 

「う〜〜ん・・むむ〜〜・・」

 

いっくん達が特別授業を受けている頃、学園の地下4階にあるGUTSの専用運用艦《エターナル》のドックで、私は空中ディスプレイに映されたある物にひたすら唸っていた。

 

「弱ったなぁ〜・・・」

 

現在、私はがっくん達と共にエターナルの調整と、それの機首左右に搭載する予定のとある巨大補助兵装の開発に着手していた。

 

「博士?」

 

「束様?どうかしましたか?」

 

「あ、皆。いやねぇコレのことで参っちゃってさ・・・」

 

そこへやって来たクーちゃん、がっくんとひろくんは、私の空中ディスプレイを覗き込み、あ〜と声を上げる。

 

「なるほどな」

 

「これか・・・」

 

「確かに悩み物ですね」

 

「だよね〜・・・」

 

私が悩むその武装は、中央にISを装着することで真の力を発揮できるのだが、問題はそれを行うためのエネルギーだった。

ISのマキシマからエネルギーを供給して作動するのだけれど、エンジンや武装に回すそれが膨大ゆえに活動時間が短くなってしまう。

 

「それでしたら皆さんのマキシマを強化すればいいのでは?」

 

「そうは思ったんだけどねぇ・・・」

 

「肝心のデータが足りないんだね?」

 

「うん」

 

「だが、たとえやったとしてもコレの力で結局エネルギー切れになるのがオチだろ」

 

ひろくんの指摘に、「となると何か新しい動力源が必要かなぁ」と呟く私は、空中ディスプレイを消す。

 

「小腹が空いたなぁ、クーちゃん何かおやつある?」

 

「それでしたらクッキーを用意しますよ?」

 

「おっ、イイね!食べよう食べよう!」

 

私達は一旦休憩に入り、クーちゃんの手作りクッキーを頂くことにした。

 

 

 

 

ガギンッ!!ガギンッーーー!!

 

バシュッ!!バシュッーー!!

 

「やるわね織斑君!」

 

「先生こそっ!」

 

一夏と理恵の模擬戦は、互いに"強敵"と思わせる激しい物だった。

地上で模擬戦を終えた生徒達が見守る中、彼の《ラケルタビームサーベル》と理恵の《ブレッド・スライサー》、2人の剣が激突し火花が発生する。

途中、互角の勝負をしていたシャルロットや佳恵が加わり複数戦になったことで、戦いは更に激しさを増していく。

 

「凄い戦い・・・!」

 

「4人共負けてないよ!?」

 

「頑張れ兄さん!」

 

「ガンバレ〜!」

 

地上ではその凄まじい戦いにマドカや生徒達が大興奮している。

模擬戦を終えた箒達もそれを見届けてい

た。

 

「デアアッ!!」

 

「ハァァ!!」

 

一夏は理恵の腕を掴んで振り回し、ウルトラスィングで彼女を、シャルロットのマシンガンを受けている佳恵に投げ飛ばした。

 

「シャル、頼む!」

 

「っ!うん!」

 

シャルロットは一夏の狙いに気づき、近づいて来た彼の腕を掴んで振り回す。やがて勢いがつくと彼を理恵と佳恵に投げつける。

 

「ウオォォォリャアァァァッ!!」

 

「くっ!」

 

瞬間加速の勢いを乗せたキックを盾でどうにか防ぎ、後退加速《バックブースト》を発動。

後方に下がる理恵と佳恵に、一夏とシャルロットは逃さないとばかりに雪羅のブレードモードと、《ネオブレッド・スライサー》で斬りかかる。

佳恵は右に避け、理恵は真上に避けてそのまま瞬間加速を発動、落下速度を加えた斬撃で一夏のシールドエネルギーを削る。

 

(一か八か、やってやる!)

 

2撃目を避けた一夏は、スカイタイプにチェンジして改めて理恵に立ち向かう。

 

「それが噂のタイプチェンジね!」

 

(くっ、やっぱ制動が難しくなってるか・・・だがやるしかない!)

 

理恵が感心しているが、それに答える余裕が一夏にはない。

ハイマットモードの状態でタイプチェンジしたことで改修前よりも素早く動けるようになったが、スピード特化とは相性が良すぎたのか、超音速でしかも制動が困難になっていたのだ。しかも、シールドバリアーでも防ぎきれない凄まじいGが身体を襲う。

だがそれでもーー

 

「俺は、もっと強くなる!!」

 

 

 

 

「今日はここまで!片付けに入れ!」

 

予鈴がなり千冬姉の指示で、全員ISの片付けを行う。

結果は俺達の勝利となったけど、今回の戦いで教員の方々の強さを改めて思い知った。

それにしても、『貴方達、中々お似合いよ♫』って園田先生が言ってたけど一体何のことだ?

シャルも何故か顔を赤くしてたし……。

 

そりゃタッグトーナメントで組んだ時、いい連携はできたとは思うがな。

だめだ・・・全然わからない。

 

「あぁ〜身体中が痛てぇ・・・」

 

それよりも、今はスカイタイプを使ったことによる体力消耗と、身体中の痛みがキツイ。アレはなるべく使わないようにしないと・・・。

絶対防御ェ・・・。

 

「全く、しょうがないな・・・そんなに痛いのなら後で湿布を貼ってやってもいいぞ?」

 

箒のその一言で他の皆が一斉にこっちに視線を向けた。

ちょっと怖いと思ったのは内緒だ。

 

「箒さん?抜け駆けは許しませんわよ!」

 

「そうよ、此処は幼馴染である私に任せなさいよ!」

 

「何を言うか!私だって幼馴染だぞ!?」

 

「ズルいよ箒!僕も立候補する!」

 

「待てシャルロット。これは夫である私の役目だぞ?」

 

「私なら手当てを完璧にできる」

 

皆が俺の手当て役であーだこーだ言ってる。おいおい、片付けを忘れるなよ・・・さもないとーー

 

「騒がしいぞ!」

 

バシーーンッ!!

 

ほらやっぱり叩かれた。にしてもあれはそれなりに力を入れてたな。

 

「・・・兄さん、とりあえずビットに行こう。手当ては私がしてやるから」

 

「マドカ、ありがとよ・・・」

 

ーーその後、マドカに手当てをしてもらったまでは良かったが、あまりの痛みで夕食は食べ辛いわ夜は中々眠れないわで散々だった。

 

 

 

 

「フゥ・・・」

 

とある高層マンションの最上階。豪華な飾りで溢れる部屋で、1人の金髪の女性がバスルームから出てきた。

 

彼女の名は《レイン・ミューゼル》。

嘗ては《ダリル・ケイシー》という偽名でIS学園3年生にして、アメリカの代表候補生の専用機持ちだったが、京都修学旅行への下見兼亡国機業掃討作戦時に本性を現しこちら側に戻った。

その際恋人関係であった1年後輩でギリシャ代表候補の《フォルテ・サファイア》も連れている。

 

現在彼女は金髪が濡れてかなりの色気を放っており、バスローブからは豊満なバストが覗いている。

 

「さっぱりした?」

 

「あぁ。お陰で気持ち悪りぃ汗は全部流れたぜ」

 

それはよかったと、赤いドレスを着た女性は窓から外を見ていた金髪の美しい女性は腰を降ろす。

彼女は《スコール・ミューゼル》。

亡国機業に所属する女性幹部だ。レインは彼女の姪で、レイン同様、豊満なバストを持つ彼女は赤ワインを入れてゴクリと飲み始める。

 

「それにしても本当にワインが好きだな」

 

「フフフフ、ワインはとても美味しい物だもの。全く飽きないわ♫」

 

そうかよとスコールの隣にドカッと座り込むレイン。

そしてさりげなく自身もワインを飲む。

 

「にしてもよぉ、ゼットって何者なんだ?修学旅行の時にIS無し、しかも1人で護送中のオータムを助け出したそうじゃねぇか」

 

「ま、一言で言えば"私と同様普通の人間ではない"、そして"この世界の人間ではない"ぐらいね」

 

「おまけにいっつも黒いオーラ纏ってて顔を隠してるよ〜・・・信用して大丈夫なのかよ?」

 

「心配無用よ、現に今まで裏切る素振りなんてなかったもの。今はまだ無理でも、待っていれば色々聞かせてくれるわ」

 

だと良いがなと呟きながらグビッと飲むレイン。

一方、一息ついたスコールは表情を真剣なそれに変えた。

 

「さてと・・・そろそろ貴女達にも仕事して貰おうかしらね」

 

「お、やっとか。待ちくたびれたぜ・・・!」

 

スコールの言葉に反応し、レインが不敵に笑うと同時に両眼が一瞬赤く光った。

 

「でも、その分たっぷりと鍛えることは出来たでしょう?」

 

「まぁな。お陰でオレもフォルテもバッチリだし、機体の調整もあと少しだぜ、叔母さん。で、作戦名は?」

 

「そうねぇ・・・名付けるのなら、《エムリターンズ作戦》ってところかしら?」

 

亡国の新たな作戦の準備は、着々と進んでいた。

 

 

ED【BEAUTIFUL SKY(インフィニットヒロインズ)】

 




次回予告

宇宙に生息していた筈の邪悪な生命体が、突如地球に降り立った。次々とエネルギーを奪っていく怪獣を食い止めるべく、GUTSは立ち向かう。

次回、ウルトラマンティガ〜The Beginning of Legend〜
【サ・ヨ・ナ・ラ地球 PART1】
お楽しみに!

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