インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜   作:ボイスターズ

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第37話 石の神話 PART2

Noside

 

轡木十蔵は、自身が所有する小型ジェット機に乗って、自ら久良々島へ訪れた。

 

「ご苦労様です!」

 

到着した彼に隊長が敬礼をし、轡木も敬礼を返した。

 

「状況はどうですか?」

 

「はい。現在、作業員3名と調査隊員3名が行方不明です。」

 

隊長は現在の状況の簡潔に説明し、作業員達のもとへ案内した。

 

「皆さんの中で、ガクマという怪獣を見た方はいらっしゃいますか?」

 

「えぇ!岩みたいな怪獣で・・・、そうだ、角が一本生えてました!」

 

「おっさん呆けたのか?ガクマは2本の角だろ?」

 

「そうだ2本だよ!」

 

「何を言ってるんだ1本だよ!」

 

角の本数を口々に言い合う作業員達。

 

「・・・ちゃんと見た方は居ないんですか?」 

 

「えぇ・・・。」

 

轡木は現状に頭が痛くなるのだった。

 

 

 

暫くして、ガクマ殲滅のため採石場付近に爆弾を仕掛けることになった。

 

 

「本当にこれで倒せるのかしら?」

 

「できるに決まってるでしょ。幾ら怪獣でも、これだけの爆弾の爆発に巻き込まれたら一溜まりもないわよ。」

 

「だといいけど・・。」

 

隊員達はそんなやり取りをしながら作業を行う。

そしてーー

 

ピー!!ピー!!ピー!!ピー!!

 

「来るか・・!」

 

センサーが異常を知らせる音を鳴らし、それを見た隊長はガクマの出現を確信した。

 

「ギュオオオオオオオオッ!」

 

地響きと共に頭に巨大な一本角を持つ4本足の怪獣が現れた。

これぞ【岩石怪獣ガクマ】である。

 

 

「爆破っ!!」

 

隊長の指示で隊員達は一斉にスイッチを押した。

その瞬間、凄まじい爆発と衝撃波が発生し、全員地面に伏せて耐え凌ぐ。

 

「グギュアアアアアッ!」

 

ガクマには傷一つ入っていなかった。しかも唸りながらこちらに向かってくる。

 

「なんと・・あれだけの爆発を耐えるとは!」

 

このままでは不味い。全員が退避、あるいはISを使用しようする。

 

 

「グッ?」

 

すると、ガクマは突然上空に視線を移す。

なんだと思い全員が見上げると、こちらに飛行してくる8機のISが見えた。

 

「来ましたか・・。」

 

GUTSが、久良々島に到着したのである。

 

 

「グギュアアア!」

 

ガクマは口から石化光線を放つ。

 

箒達は回避するが、後方にあった車が忽ち石になった。

 

「あ、危ない・・。」

 

「あれに当たったら忽ち石になってしまうのか・・。」

 

「皆気をつけて、次が来るよ!」

 

シャルロットの言葉に反応して前を見ると、今度は光線を拡散させて撃ってきた。

 

「そんなのあり!?」

 

避けた後、全員束から与えられた新装備の一つ、高エネルギービームライフルを放つ。

 

「くらえ!」

 

放たれた緑の光は、ガクマの額や背中に命中。

ガクマは悲鳴をあげて首を振る。

 

「効いてる!」

 

「どんどん行くわよ!」

 

ビームライフルやスターライト、ティアーズ、ミサイル、荷電粒子砲といったそれぞれの武装の総攻撃で、ガクマはダメージが蓄積していく。

 

「ウォォォォォ!!」

 

マドカがフェンリル・ブロウを連射していく。

 

「お行きなさい!」

 

「テェェェェ!!」

 

セシリアが2門になったブルー・ティアーズを射出して全方位を攻撃。

ラウラもレールカノンを放つ。

 

「「やあぁぁぁぁ!!」」

 

シャルロットはスパル砲、鈴は龍咆を放つ。

 

「いっけぇぇぇぇ!」

 

「受けてみろ!」

 

簪は山嵐を、箒はミサイルを撃つ。

 

「これで決める!皆、下がって!」

 

楯無が蒼流旋にナノマシンのエネルギーを貯めていく。それを見て箒達は左右に散った。

 

「ミストルテインの槍、発動!!」

 

槍から放たれた水色の弾丸は、ガクマの腹部に直撃。爆発を起こした。

だがーー

 

 

「グギュアアアアア!!」

 

『!?』

 

今の攻撃で完全に怒ったガクマは攻撃に耐えながら前足を上げて立ち上がり、勢いよく叩きつけることで凄まじい衝撃波を起こした。

それにより上空にいたGUTSや地上の人々は全員大きく吹き飛ばされてしまった。

 

 

「皆、大丈夫!?」

 

「はい!」

 

「なんとか・・。」

 

「くっ、油断してしまった。」

 

「ウゥゥゥ・・!」

 

全員地面に叩きつけられてはいるが、ISのお陰で怪我はしていないようだ。

 

 

「皆さん逃げて下さい!早くっ!!」

 

轡木の声が全員が見てみると、ガクマが踏み潰そうと迫ってきている。

 

「退避っ!」

 

楯無の指示で全員が逃走するため飛行するが、シャルロットが先程の衝撃でスラスターに異常が生じたのか思うように飛べず直ぐに地面に落ちてしまう。

 

「シャルロット!?」

 

「ウソ、こんな時に・・!」

 

何とか逃げようとするがガクマは直ぐそこに迫っていた。

反撃しようにもガクマの威圧感で手が動かない。

ならばとISを解除しようとするがシステムにトラブルが起きたのか解除できない。

 

「(あぁ・・もう、だめだ・・僕・・ここで死んじゃうんだ・・。)」

 

ラウラや皆の叫び声が聞こえるが、既にシャルロットは諦めていた。

 

「(ハハハ・・思えばあっという間の日々だったなぁ・・ごめんね・・一夏。まだちゃんと気持ち伝えてないのにーー

"大好きだ"って・・・)」

 

「グワァァァァ!!」

 

シャルロットは絶望で涙を流しながら目を瞑る。

もはや助からない、誰もが思ったその時だった。

 

 

「シャルーーッ!!」

 

 

ドォォォォォン!!

 

 

「グワァァァァァ!!?」

 

「え・・?」

 

緑色のビームが頭に命中、爆発が起きガクマが苦しむ中、目を開けたシャルロットは自分を呼ぶ声に気づく。

その方向に目を向けるとーー

 

「シャルっ!大丈夫か!?」

 

「一夏っ!」

 

そこには、天使のような姿の白式を纏った一夏の姿があった。

右手にはルプス・ビームライフルを持っている。

 

「全く・・やっと来たか!」

 

「遅いわよバカッ!」

 

漸く来た想い人に文句を言うラウラと鈴。

 

 

「グワァァァァ!!」

 

立ち直ったガクマが石化光線を放つが、一夏はそれを余裕で避け、腰のビームサーベルで右脚を斬りつける。

 

「これで・・!」

 

一夏は白式のカスタム・ウィングを広げて

ハイマットモード《高機動空戦形態》に移行、翼の中、腰、右手に持つ武装にエネルギーを供給、ガクマをロックオンする。

 

「どうだ!!」

 

白式から放たれた一斉射撃・・ハイマットフルバーストはガクマの角に命中、撤退させた。

その威力に一瞬唖然としたのも束の間、直ぐに仲間達の元へ着陸した。

 

 

 

「助かりました。ありがとうございます。」

 

「いえ、当然のことをしただけですから!ですので頭を上げて下さい!」

 

降りた後、轡木に頭を下げられ慌てる一夏。

その様子を、一部の人間は疎ましそうに見ていた。

"なんでこんな奴に"という屈辱からだろう。

 

「アンタ凄いじゃない!何なのあの一斉射撃!?」

 

「いや、勢いでできたぞ?」

 

「勢いってアンタねぇ・・。」

 

勢いであんなのができる訳がないと呆れる鈴。

 

「(言えない・・本当は背中を狙ったのに外れたとは言えない・・。)」

 

「あの・・一夏っ!」

 

そこへシャルロットが声をかけてきた。

 

「あ、シャル!大丈夫だったか!?」

 

「うん、一夏が助けてくれたから・・。本当にありがとう。」

 

「い、いや。無事ならそれでいいさ。」

 

顔を赤くしながら話すシャルロットに、少々照れる一夏。

轡木はそれを暖かな眼差しで見つめていた。

 

「あー・・オホン。しかし一夏、凄まじい威力を持つ武装だな。」

 

「取り扱いに気をつけないといけないな・・下手すれば相手を殺しかねないぜ。」

 

「あーあ・・でも怪獣には逃げられちゃったわね。」

 

「このまま大人しくしてくれるといいんだけど・・。」

 

というやりとりをしているとーー

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!!

 

突然激しい揺れが起こった。

 

「な、なに!?地震!?」

 

「土砂崩れか!?」

 

「っ!まさか!」

 

「グワァァァァァ!!!」

 

なんとガクマが、然も今度は二本角を持つ個体が現れたのだ。

 

「え!?」

 

「まだいたの!?」

 

「ガクマは、一体だけでは無かった・・! 作業員達はこの事を言っていたのか・・!!」

 

全員が散り散りに避難する中、一夏はIS部隊のテントの裏に隠れた。

 

 

「グワァァァァ!」

 

「(早く怪獣を止めないとっ!)」

 

ガクマは一夏の隠れたテントを踏み潰そうとする。

一夏はすかさずスパークレンスを取り出し展開した。

 

「デェアッ!!」

 

ティガに変身して押し返した一夏は、ガクマと睨み合う。

 

「ティガ!」

 

箒達は影から様子を伺う。

 

「グワアァァァッ!!」

 

「チャッ!」

 

ガクマと組み合ったティガはそのまま胴体を持ちあげた後、がら空きの腹に蹴りをお見舞いする。

 

「テアッ!ジェアッ!」

 

ガクマにまたがり、エネルギーを纏って連続でチョップを浴びせる。

 

「グワァァァ!」

 

だがガクマも黙ってやられるつもりはなく、背中に高熱を起こして怯ませる。

 

「グアッ!?」

 

倒れこむティガに石化光線を放つが、ティガはバク転とジャンプで避ける。

再び組み合いティガは膝蹴りを打ち込むが、次第にそのパワーに押され始める。

 

「グァァァ!」

 

ガクマはティガが掴んでいる己の角から電撃を放って後退させた。

痛みで手を押さえるティガに、爪を伸ばして突進し、爪による連続攻撃でティガをダウンさせる。

 

「グァァァァァ!!」

 

角を前方に向け、足に突進角突きを浴びせる。更にダウンした体勢を利用して、放り投げた。

その隙に石化光線をティガの足に打ち込む。それにより、徐々に彼は石になっていく 。

 

「ヤバいわよ、ティガが石にっ!」

 

「援護さえできれば・・。」

 

「無理よ!さっきの衝撃波でシステムがおかしくなったみたいで上手く展開できないの!」

 

全員が何もできない悔しさに顔を歪めるなか、カラータイマーが点滅を始める。

ガクマはチャンスと言わんばかりに突撃してくる。

「ンンンン・・ッ!チャアッ!!」

 

このままではやられる。そう思ったティガは腕を交差させ、額のクリスタルを赤く光らせた後、勢いよく振り下ろす。

その瞬間ティガは赤い姿、パワータイプへとチェンジ、同時に石を吹き飛ばした。

 

「フッ! ハァッ!」

 

ティガはガクマをあっさり片手で受け止めて持ち上げ、腹にパンチを打ち込む。

余りのパワーにガクマはひっくり返った。

 

「そこだっ!行けっ!!」

 

ラウラは勝機を感じて声をあげる 。

 

「グァァァァァァ!!」

 

「フッ!デェェェアッ!」」

 

ガクマは熱戦を放つが、片手で払いのけられ、角も難なく破壊された 。

「グァァァァァ・・!」

 

「フッ!ハァァァ・・!」

 

ーー倒すことだけが全てではない

 

「っ!」

 

トドメを刺そうとした一夏は、不意にティガの言葉を思い出し、踏み止まる。

 

「(コイツらは今まで何人もの人を殺してる。普通なら倒すべきなんだろうけど・・そうさせたのは恐らく人間なんだよな・・)」

 

見ると、あれ程荒れていたガクマは戦う意思が無くなったのか、蹲っている。

 

 

「グァァァァァァ・・。」

 

「・・・。」

 

立ち上がったガクマに、静かに頷くティガ。ガクマは暫しティガを見つめた後、そのまま静かに地底へと帰って行った・・。

 

「デュワ!」

 

それを見届けたティガも、空へと飛び去った。

 

「ティガ、どうして怪獣を見逃したのかしら?」

 

「全く本当よね、倒した方が楽なのに。」

 

「アイツも怪獣と同じだからじゃない?同胞を殺したくないとか。」

 

女尊男卑の隊員達はティガの行動を批判する。

そこに、轡木が待ったをかけた。

 

 

「あの怪獣には、もう戦う意思はなかった・・これ異常力をぶつけるのはただの暴力と判断したんですよ。」

 

「でも、あの怪獣は私達の仲間を殺したんですよ!?」

 

「そうよ!」

 

隊員達は次々に批判の声を上げるがーー

 

「いい加減にしてっ!!」

 

『!?』

 

シャルロットが叫んで黙らせた。

 

「確かに彼らは多くの人を殺した!でも彼らにそんなことをさせる原因を作ったのは、私達人間なんですよ!どちらかが一方的に悪いんじゃない!!」

 

『・・・』

 

全員その言葉に押し黙り、何も言えなかった。

 

「(結局、この戦いはお互いを憎しみあったから起きたんだよな・・。)俺達は、これからどうすればいいんだろうな・・?ティガ。」

 

変身を解除した一夏も、影からその言葉を聞きながら、沈みゆく夕陽とスパークレンスを見つめていた。

 

 

ーー翌日、政府に環境破壊と判断されこの島の開発は中止となったというニュースが報道された。

開発を押し通した業者の上層部の人間は、逮捕された。その中の一人が女尊男卑主義者で、この島の開発を多額の給与を条件に上司に強要していたそうだ。

 

そして今回逃したガクマは、後に再びティガの前に現れることになるのだが、それはまだ先のことである。

 




本作では、ガクマを生存させました。

原典を見てると、ガクマが可哀想に思えたのであれはどうかと思い、生き残らせました。

次回は改修されたGUTSの機体紹介の予定です。

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