インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜   作:ボイスターズ

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第36話 石の神話 PART 1

Noside

 

ー寮長室

 

箒との和解から1週間が過ぎた。束とクロエは現在は千冬の部屋でもある寮長室で過ごす日々を送っていた。

 

「しかし、お前は随分変わったな。今までのお前なら、あんなことを言わないだろうに。」

 

「コッチに来る前に出会ったある2人組にも、いっくんと似たようなことを言われてさ。最初は何とも思ってなかったのに、何故だか頭に残っちゃって・・。その後いっくんに怒鳴られて謝らなきゃいけないって気付かされたの。」

 

「2人組・・?」

 

「うん、今はラボで留守番してくれてるけど、いずれ紹介するよ!」

 

束をここまで変えるとは一体どんな人達なのだろうか?千冬はその人物達に興味を持った。

 

「束様、千冬様。ケーキでもいかがですか?」

 

「あぁ、頂くとしよう。」

 

「ありがとクーちゃん!」

 

クロエが自作のケーキと紅茶を持って来た。彼女の料理は当初かなり酷いレベルだったが、一夏が料理本を貸したことで一気に腕が上がってきているそうだ。

 

それから暫し、3人はデザートを楽しんでいるとーー

 

コンコン・・

 

 

「千冬姉、俺だけど。」

 

「一夏か、入れ。」

 

「ん。」

 

そこへ、一夏が一冊のノートを持ってやって来た。

 

「お〜いらっしゃい、いっくん。んん?そのノートはどうしたんだい?」

 

「ちょっと、束さんや千冬姉に相談したいことがあって・・。」

 

「相談?」

 

そう言って二人にノートをみせる一夏。その題名を見て真剣な表情になり、一枚一枚に目を通していった。

 

「一夏様、ケーキはいかがですか?」

 

「あ、サンキュー。頂くよ。」

 

 

 

ーそれから1時間後、久良々島・洞窟内

 

 

 

「ガ、ガクマだ!ガクマが出たぁぁぁ!」

 

「逃げろぉぉぉ!」

 

作業員が数名顔を真っ青にして叫びながら走っていた。

 

「ウワァァァァ・・!!」

 

だが背後から謎の光を受け、忽ち作業員は石になってしまった。

 

「グルルル・・」

 

それを見て必死に逃げていく作業員達を、一本角を持つ巨大な存在が見つめていた・・。

 

 

ー2時間後

 

 

採石場では、作業員達とIS部隊の隊員が揉めていた。

 

「何で説明できないんだよ!?」

 

「現在調査中です。(チッ。鬱陶しい連中ね・・頭にくるわ。)」

 

「だから、現状がどうなっているのか教えてくれって言ってんだ!」

 

「仲間が何人もいなくなってるんですよ!?」

 

隊員は女尊男卑に染まっているのか、内心彼らに毒づいていた。本当なら殴り飛ばしたいところだが、そうすると色々面倒なので耐えるしかない。

 

ー洞窟の入口

 

 

「何?誰もいない?そんな筈がないだろう。そこが生体反応が一番高いんだ。岩の向こうに作業員が閉じ込められているかもしれん、よく探せ。」

 

洞窟の入り口では、隊長が中にいる調査隊に指示を送る。

 

『了解。』

 

調査隊は更に奥へと進んでいく。

 

「隊長さん・・。」

 

「どうですか?」

 

そこへ、作業員が不安げな表情を浮かべて尋ねてきた。

 

「皆さん、もう暫くお待ちしていただけませんか? 只今捜索中ですので。」

 

「もう生きてる奴は居ねぇよ・・・!」

 

「皆、ガクマに石にされてしまったんだ・・。」

 

「『ガクマ』?」

 

「えぇ・・。」

 

聞き慣れない言葉に首をかしげる隊長。

そこへーー

 

 

「お前ら何やってんだ!!」

 

 

作業員達の上司がやってきた。

 

「たむろしてる暇があるならさっさと仕事に戻れ!」

 

「『ガクマ』というのは何なんですか?」

 

「この島には、石を生む神獣ガクマが住んでるんです!」

 

「いい加減にしやがれ!誰があんたらを呼んだか知らねぇが、IS部隊の出る幕じゃない!こいつらは、居るわけがないガクマなんて怪物をでっち上げて・・!」

 

作業員の言葉に仲間の作業員達も頷く。

だが上司は真っ向からそれを否定する。

 

「ガクマは本当に居るんです!」

 

「そうだ!」

 

「なに馬鹿なことを言ってんだ!! お前らはただ仕事をさぼりたいだけだろうが!?」

 

「冗談じゃない!!」

 

それからはお互いの主張を巡り、口論に発展した。

 

「全く、バカ騒ぎも良いところね。」

 

「フッ、ほんと・・。居もしない怪物にビビるなんて、男って本当に情けないわね。」

 

「ほっときましょう。どうせハッタリだったってことですぐ静まるでしょうし。」

 

その様子を、女尊男卑に染まったIS部隊の隊員が小馬鹿にした様子で見つめていた。

 

 

 

ーIS学園・寮長室

 

 

少し時間を戻す。それは、ガクマが作業員を襲う20分前のこと。

 

 

「これまた凄いこと考えたね〜いっくん。」

 

「確かに、今の戦力で怪獣と戦うのは厳しい。だが問題はこれを国が許可するかどうか分からんぞ?」

 

「する筈さ。"第四世代のデータ提供"と、地球防衛のためと言えば必ずな。」

 

千冬の問い掛けに対し確信を持った表情で答える一夏。

 

「フム。やってみる価値はありそうだな。束、直ぐに各国に確認してくれ。私は他の者達に事情を話す。」

 

「OK。あ、国には考案したのは束さんだって話しとくね。いっくんが考えたって言ったら騒ぐだろうし。」

 

「お願いします。」

 

それから暫くして、GUTSのメンバーは作戦会議室に集められた。

 

 

 

ーGUTS作戦会議室

 

 

 

「すまないな、急に集まってもらって。」

 

「いえ。ところで一体何事ですか?緊急会議って。」

 

ラウラが代表して千冬に問う。

 

「これからのことを考え、織斑がこういう案を提案してくれた。」

 

モニターには『GUTS全専用機改修計画書』が表示され、一夏、千冬、束以外一同は驚愕に包まれた。

 

「これまでの戦いから、今の俺達の戦力では太刀打ちできないと判断して、この案を束さんや千冬姉に見せたんだ。」

 

「織斑隊長と呼べ・・まぁいい。今一夏が言った通り、今の我々では怪獣や宇宙人達と戦うのは厳しい。そこで全専用機を、第四世代として改修、もしくは新装備の追加を行うことになった。」

 

「第四世代に!?」

 

「あぁ。唯俺の場合、新装備追加を考えてたけど、白式に拒絶されてな・・説得には苦労したぜ・・。(しかも最近また様子がおかしいんだよな・・。)」

 

「ちなみに許可はもう貰ったよ〜。後は皆次第〜。」

 

それに暫く唖然とした一同ではあったが、直ぐに自身の専用機を預けた。全員地球を守りたいという一夏の思いに答えたいらしい。

 

「束、改修にはどれくらい時間がかかる?」

 

「この天才束さんにかかれば調整も含め2、3時間あればいけるよ〜!」

 

「では姉さん、お願いします。」

 

「OK箒ちゃん!任せといて〜!やるよクーちゃん!」

 

「はい、束さま。

束はそう言ってクロエと共に整備室に向かった。

 

 

 

ー現在、久良々島・洞窟内

 

 

ピピピピピピ・・

 

 

「おい・・。」

 

「どうした?」

 

反応が強まった方向を見る調査隊2名。

 

「キャアアアアアアァァァァァァァァッ!!」

 

突然仲間の悲鳴が聞こえた!

 

「なんだ!?」

 

「キャアアアアアアァァァァ・・ッ!!」

 

見ると、隊員の一人が巨大な手に捕まって岩壁に引きずり込まれていく。

隊員はマシンガンを展開して打ち続けたが、やがてその音も消えた。

 

「おいっ!?うわぁっ!?」

 

残った2人が近づくが 、謎の光を受けて石になってしまった。

 

「キャアアアアァァァァァァァァァァッ!!?」

 

恐ろしくなった隊員は、全速力で出口へ逃げ出した。

 

「グルルルルル・・・」

 

その様子を、怪獣ガクマが見つめていた。

 

 

「石を食べる怪獣・・ですか?」

 

一方隊長は作業員にガクマについて尋ねていた。

 

「石を掘りすぎて、エサになる動物が無くなったんです・・・。 おまけにガクマが蓄えた石を人間がどんどん奪っていく・・だからガクマは怒ってとうとう人間をーー」

 

「他人事みたいに言うんじゃねぇ!」

 

「俺達だって人間だろ。石を掘ってるおかげで食ってるんだろうが。」

 

上司の最もな言葉に押し黙る作業員。

 

「おい、どうした!?」 

 

「大丈夫!?」

 

するとそこへ、先ほどの生き残った調査隊員が両肩を支えられて戻ってきた 。

 

「しっかりして!」

「他の皆はどうしたの!?」

 

「怪獣に・・・、はあっ・・はぁっ・・皆・・怪獣に石に変えられましたっ!」

 

その言葉に顔を強張らせる一同。

 

「ガクマだ!」 

 

「やっぱり、ガクマは居たんだ・・!」

 

こうして、その場に居た全員が、ガクマの存在を確信するのであった。

 

 

ーIS学園

 

 

ビー!ビー!

 

 

警報が鳴り、モニターに回線が繋がる。

 

 

《皆さん、緊急連絡です。》

 

「学園長!?」

 

『えぇ!?』

 

《初めまして、学園長の轡木十蔵です。》

 

この壮年の男性は、IS学園の学園長、轡木十蔵。

表向きは妻となっているが、真の学園長は彼なのだ。

 

《西南諸島の久良ヶ島に、怪獣が出現しました。既に採石場の作業員と軍のIS部隊が被害にあったようです。》

 

「なんですって!?」

 

一同に緊張が走る。

 

《今のところ、大人しくしているようですが、これ以上犠牲者を出す訳にはいきません。織斑隊長、篠ノ之博士の改修はどうですか?》

 

「それが、まだ終わらないようd「お待たせー!」なに!?」

 

「お待たせ皆!完成だよ!」

 

そう言ってそれぞれの待機形態を渡す。

 

「ありがとうございます、姉さん・・ん?一夏のは?」

 

見ると、白式の待機形態であるガントレットが見当たらない。一夏の右腕を見てもない。

 

「それが白式なんだけどあの子が特に難しくてね・・予定より時間かかりそうなんだよ・・ごめんねいっくん。」

 

「いえ大丈夫ですよ、時間かかるならしょうがないですし。俺はここで待ってますから。」

 

「ありがとう♪最高の装備入れてあげるから!」

 

「お願いします。」

 

《博士、本当にありがとうございます。》

 

「いえいえ〜これくらいどうってことは。ただ、機体の説明ができてないからちょっと心配かな?」

 

《そこは彼女達の才能に賭けましょう。隊長、私も現地に向かいますので、出動準備を。》

 

「わかりました。いきなりの実戦投入だ。扱いにはくれぐれも気をつけろ。GUTS、出動!」

 

『了解!』

 

 

一夏を除いた一同は、久良々島に飛ぶべくカタパルトに向かった。

 




また強引な展開になってしまいました。
(−_−;)

次回予告

久良々島に駆けつけたGUTSではあったが、目撃された怪獣の角が一本や二本と食い違っており混乱する。一体どうなっているのだろうか?

次回、ウルトラマンティガ The Beginning of Legend

『石の神話 PART 2』

お楽しみに!

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