今回はちょっと急展開かもしれません。
ではどうぞ。
千冬side
1週間後、第一アリーナに突如巨大なニンジンが落下した。
しかも
『ヤッホォォォォォォーーー!!!』
という、とても甲高い声を上げながら。ハァ、さっそく頭が痛くなってきたぞ・・。
「やぁやぁ久しぶりだね〜ちーちゃん!さぁハグハグしy「するか!」痛い痛い痛い!!?割れる!頭割れる!!」
ニンジンから飛び出した女は、私の友人の篠ノ之束。騒ぎを聞きつけて来た私に一目散に抱き付こうとするが、私は強烈なアイアンクローで抑えつける。
「真昼間に騒ぎを起こすとは何を考えているんだお前は?それにどうやってここまで来た?学園のレーダーにキャッチされずに・・。」
「まぁそれくらいこの天才束さんには問題ナッシングだよ〜。騒がせたのは悪かったけど。」
「お前は"天才"というよりも"天災"だろうが。」
「えへへーそれ程でも〜。」
「褒めてない。それより、自己紹介しろ。初対面もいるかるな。」
「オッケ〜。ハローハロー。初めましての人は初めまして、久しぶりの人は久しぶり。天才束さんだよー!」
束の自己紹介に、アリーナに来ていた生徒達が騒ぎ立てる。
私の場合、臨海学校の時は渋々していた自己紹介を進んでやっていることだが。
「いっくんに箒ちゃん、マドっちも久しぶりだね〜。」
そう言って3人に手を振る束。マドカとも知り合いだったのか?後で聞くとしよう。
「ところで束、そこにいる銀髪の少女だが。」
「あぁ、ちーちゃんは前にも会ったんだっけ。紹介するよ、この子はクロエ・クロニクル。私の娘兼助手だよ〜。」
「娘だと・・!?」
その割には全く似ていないが・・。むしろボーデヴィッヒに似ている。
「お久しぶりです、織斑千冬さん。」
クロエはゆっくりとお辞儀した。
「あぁ・・。」
一応軽く会釈しておくか。
「ちなみに養子です♪」
・・私はもう驚かないぞ。
「ほぅ・・しかし何故養子を?」
「まぁそこは後でゆっくり話すよ〜あっ!」
すると束は、大空と山瀬に気づき駆け寄る。
「君達だね〜ちーちゃんが言ってた子って。」
「初めまして、大空大地です。」
「山瀬アスナです。」
「うんうん、よろしくね〜気軽に束さんって呼んでいいよ〜箒ちゃんと被るし。それにしてもダイくん〜結構イケメンだね〜!」
「そうですか?」
「うんうん!アスちゃんも中々だと思うな〜。」
「そんなよして下さいよ・・。」
時間がかかりそうだな・・早めに声を掛けるか。
「おい束、移動するんじゃないのか?」
「おっとそうだね。じゃ、さっそく行こう。」
束はスキップしながら出口へ向かっていく。全く呑気な奴め。
「全員ここでのことは他言無用だ、いいな?」
『はい!』
こう言っておかなければこいつらは確実に騒ぐからな。口止めしとかなければ。
Side End
ラウラside
ーGUTS作戦会議室
あの後、私達はGUTSの会議室に移動し、詳しいことを篠ノ之博士に聞くことになった。
「さて、何から話そうか?」
「では束、まずはクロニクルのことを聞かせてくれないか?」
「オッケーちーちゃん。えーと、この子はクーちゃんことクロエ・クロニクル。実はそこにいる銀髪と同じみたいなんだよ。」
「わ、私?」
確かに銀髪や雰囲気が確かに私と似ているところはあるが、同じとは?
「私は、貴女と同じドイツで創られた試験管ベビーなんです。」
『!?』
その言葉に全員が驚いた。
「私がドイツの研究所を潰していた時、弱っていたクーちゃんを発見して保護したんだ。」
「よく保護しようと思ったな。」
「この子はあの科学者のクズ共の被害者でもあるからね。ほっとけなかったんだよ。ちなみに、ラウちゃん。」
『ラウちゃん!?』
篠ノ之博士が私をラウちゃんとっ!?
「クーちゃんはラウちゃんのお姉さんでもあるんだよ〜。」
「なん・・ですと・・?」
私はあまりに衝撃的な事実に固まってしまった・・姉がいるなど思ってもみなかったのだから。
「私はそうは思えません。何故なら貴女は、
"自分の成れなかった完成形"
ですから・・。」
「もう〜またそんなこと言って・・。」
『・・・。』
クロニクル・・いや、姉さんと呼ぶべきか。彼女の言葉で全員が静まり帰った。
Side End
一夏side
「(完成形・・か。)」
クロニクルの言葉で全員が静まる中で、俺は彼女の言葉を思い返していた。
「(何故だ?彼女からはどこか悲しみが感じ取れる・・無理をしているのか?一体何故なんだ?)」
いや待てよ?
もしかしたら、過去の出来事や自分の生まれ方が原因で、そう思いたくても思えないのか?
そんなこと関係ないと思うけどな。
どんなに生まれ方が特殊でも、遺伝子という絆があれば、姉妹になれるんじゃないか?
俺や千冬姉とマドカがそうだったように。
それに気のせいだろうか?あの言葉を言った後、一瞬だったが悲しそうな表情が見えた。しかも、無意識なんだろうけど今は拳を握っている・・。間違いないな。
「完成形なんて・・そんな悲しいこと言うなよ。」
『!』
俺の言葉に全員の視線が此方に向く。
大地さんも、何か言いたそうだったけど、此処は任せてほしいとアイコンタクトをすると、快くokしてくれた。
【BGM《人の光》】
「君の生まれ方は確かに特殊なものだっただろう・・。だが、どんなに生まれ方が特殊でも、そこに絆があれば姉妹になれる。完成だとか未完成なんて関係ないんだ!」
「兄さん・・。」
マドカが意味深な目で此方を見つめる。
嘗てマドカは俺と千冬姉のクローンとして創られた。だが、それでもこうして家族になれた。形はどうあれ、確かな絆があったからだ。
「・・ですが、私には絆などありません。」
「あるじゃないか、その目や髪、何より血という絆が。それに、ないと思うなら何故そんな悲しそうな表情をしてるんだ?」
「!」
「君はラウラを自分がなれなかった存在だと言ったね?でも、俺はそれは違うと思う。この世界に生きる命は、何にだって一つなんだから。だからその命は君自身だ、ラウラじゃないよ。」
「でも・・私は・・」
俺の言葉に思うことがあったのか、涙を流しながらスカートを握りしめるクロニクル。
「君だって本当は嬉しいんじゃないか?この世に自分の血を持つ人がいることが。だが過去故にそれを認められなかった・・。
もう一度言うけど、生まれ方なんて関係ない。ほんの一歩踏み出せばいいんだから。」
俺はそう言いながら彼女にハンカチを差し出す。
すいませんと言いながら受け取るクロニクル。
少しして、ラウラがクロニクルを優しく抱き締めた。
「一夏の言う通りだ。生まれ方なんて関係ない。もし踏み出すのが怖いなら、私や私の仲間達も手伝うぞ。」
「いいのですか?」
「当たり前でしょう?私達は、姉妹だぞ?」
その言葉で我慢が限界に達したのか、クロニクルはラウラを抱きしめて暫く大泣きした。
それを見ていた箒達ももらい泣きをしながらも、暖かく見守っていた。
彼女から流れた大粒の涙は、日の光が当たって太陽のように光輝いていた・・。
Side End
Noside
「ウゥ〜ちーちゃん・・。」
「ん?」
「いっくん、すっかり大きくなったね
(;_;)」
「あぁ、そうだな。」
一方、同じく号泣している束に若干引きながら、千冬は静かに、弟の成長を喜ぶのだった。
次回予告
ラウラとクロエが和解したのもつかの間、束は一同に驚愕の事実を告げる。
果たしてそれは一体?
次回、ウルトラマンティガ The Beginning of Legend
【あの日の真実】