今回は兄と妹の戦いです。
では、どうぞ。
一夏side
マドカと和解して数日が過ぎた。
あれから彼女はIS学園に入学し、俺と同じ1年1組に所属している。いつの間にか俺のことは"兄さん"、千冬姉は"姉さん"と呼ぶようにもなっていた。
千冬姉と顔や喋り方がそっくりだからすっかり人気者になり、本人は少々戸惑いながらも、クラスメイトや箒達と仲良くしているようだ。
因みに黒騎士は結局第二形態に戻ることはなかった。俺はあの時放ったゼペリオン光線で内部の闇が浄化されたからではないかと考えている。
そんなある日マドカが模擬戦を申し込んできたので、俺達は第2アリーナにいた。
兄妹対決ということもあって客席には生徒達が大勢いる。
『それじゃあマドカ、全力で来いよ?』
『フッ、当たり前だ!』
反対側のピットにいるマドカにプライベートチャネルで通信を入れると、力強い返事が返ってきた。それに笑みを浮かべると、白式を展開してカタパルトに白式の脚を固定する。
『カタパルトシステム、オールグリーン。進路クリア。白式、発進どうぞ!』
山田先生の合図が来た。
よし、行くか!
「織斑一夏!白式、行きます!!」
某機動戦士風に叫ぶと、俺は勢いよくアリーナに飛び出した。
Side end
Noside
一夏がアリーナに現れると同時に、マドカもアリーナに出てきた。
【模擬戦、開始】
それぞれが定位置についたことを確認し、開始の合図が鳴り響いた。
「ウォォォォ!!」
「ハァァァァ!!」
両者は雪片弐型・真打とフェンリル・ブロウを展開し、互いの剣で斬りかかる。
「「グッ・・!」」
何度か激突して互いにシールドエネルギーを消耗した後鍔迫り合いとなり、一歩も譲らない。
だが・・・
「ハァァァァ!!」
「!」
マドカが押し勝ち突きを放つ。
その瞬間、一夏の姿が消えた。
「なにっ!?」
背後に気配を感じて振り向きざまに斬りかかるが、白式の装甲に刃が接触するその瞬間、白式の姿がぶれて3体に分身した後、三方向からの同時攻撃で黒騎士のシールドエネルギーは急激に消耗した。
「(撹乱加速《テンペストブースト》だと!?)」
千冬によれば撹乱加速は2年生が習うものだが、実際に使える者はそれほど多くない高等技術だと聞いていた。
それをまだ自分と同じ1年生でありながら使える一夏の強さに驚愕するマドカ。
一夏は荷電粒子砲を放ちながら距離をとる。
「(距離をとって様子見と云ったところか?だが!)」
「忘れたか兄さん!黒騎士には・・・」
そう言いながらマドカはフェンリル・ブロウを格納した後、ランサービットを2対展開した。
「これがあることを!!」
穂先からビームが放たれ、白式に向かっていく。
「誰が忘れたって?」
一夏は雪羅のエネルギーを加えたウルトラシールドでビームを防ぎきった後、ハンドスラッシュを発射し、更に個別連続瞬間加速《リボルバー・イグニッション・ブースト》を発動してマドカに斬りかかる。
それに対してマドカも再びフェンリル・ブロウを展開してハンドスラッシュを弾いた後、斬撃を受け止めて右薙でダメージを与える。
一歩も譲らず戦う2人に観客はヒートアップしていた・・。
ーモニター室
「織斑さん凄いですね・・。第一形態でありながら第三形態の織斑君とここまで戦えるなんて・・・。」
「ISの性能で必ずしも勝負が決まる訳ではない。織斑妹の場合、性能差を己の技量で補っているのだろう。」
モニター室では真耶がマドカの技量に驚愕し、千冬がその解説を行っていた。
「・・・やはり妙だな。」
「え、なにがですか?」
「一夏《あいつ》はここ数週間で急激に強くなり、しかも2年で習う筈の撹乱加速まで使っている。しかも白式の姿、似ていないか?ティガに・・。」
「あ、確かに額や胸に、機体の色がそっくりですね・・。」
真耶は咄嗟にティガの画像を映し出し、白式と見比べた後、一つの結論を浮かべる。
「まさか織斑君は・・・。」
「あぁ。当たって欲しくないがな・・。」
「えぇ・・。」
ー第2アリーナ
「「ハァ・・ハァ・・」」
ピコン・ピコン・ピコン・ピコン・・・
アリーナ内に響く警告音、それは白式のカラータイマーの点滅音であり、エネルギーが残り僅かであることを知らせていた。
『なに、胸のあの光・・?』
『もうエネルギーがないってことじゃない?』
『まるでウルトラマンみたい・・』
観客も口々に驚きを露わにしていた。
「お互いもう限界か・・次で決めるぞ。」
「あぁ・・。」
これが最後の一撃とするために、互いに武器を構え無言になって睨み合う。
その光景に騒いでいた観客達の声も止んだ。
次の瞬間、お互いに瞬間加速を発動して急接近。すれ違い様に斬撃を浴びせた。
「ウッ・・」
しばし静寂に包まれた後、マドカが大地に倒れた・・・。
【試合終了。勝者、織斑一夏】
合図の後、観客達は席を立ち、見事な戦いを見せた2人に盛大な拍手を送り続けた。
それを背に受け止めながら、一夏はマドカを起き上がらせてピットに連れて行く。
『一夏!』
ピットに戻ると、箒達(楯無以外)が出迎えた。
「凄いよ一夏!マドカに勝っちゃうなんて!」
「見事な勝負だったぞ。」
「流石一夏さんですわ!」
「・・カッコよかった。」
次々に褒められて頬を掻く一夏。
「ありがと。でもマドカも凄かったぞ?」
そう、今まで第三形態になってからエネルギー切れ寸前まで追い込んだのはマドカしかいないのだ。
「今回は兄さんの勝ちだったが、次は必ず勝つ。」
「フッ、望むところだ。」
不敵に笑いあう兄妹に箒達はため息をついていた・・・。
リミッターを掛けているとはいえ、マドカ強いな・・。