インフィニット・ストラトス〜古の英雄〜   作:ボイスターズ

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皆様、明けましておめでとうございます。
これからも、ボイスターズムーンブレイクをよろしくお願い致します。

新年最初の投稿です。
それでは、どうぞ。


第22話 目覚めのM《マドカ》

一夏side

 

この日、俺達は緊急招集を受けた。

理由はただ一つ。織斑マドカが目を覚ましたからだ。

 

「で、今彼女は?」

 

「現在医務室に拘束しています。特に抵抗する様子はありませんが、織斑君と話をさせろと言っています・・。」

 

『え!?』

 

驚く俺達は医務室へと向かう。そこには

ベッドの上で腕を組み目を瞑っているマドカの姿があった。

 

「・・俺行くよ。」

 

「一夏!?」

 

「あんたなに言ってんのよ!?」

 

「危険だ!なにをするかわからないぞ!?」

 

マドカの元へ行くことを告げると皆は当然ながら制止した。

だけど・・・。

 

「あいつは俺と話すことを望んでるんだ。だったらお望み通り行ってやる。」

 

「一夏・・」

 

心配そうに見つめるシャル。

 

「大丈夫だって皆。俺を信じろ。千冬姉、いいよな?」

 

「・・ハァ。わかった、行ってこい。」

 

「織斑先生!?」

 

ため息をつきながらも許可してくれた千冬姉に驚く山田先生。

けどすみません、これはどうしても行かなきゃならないんです。

 

「万が一に備えてIS展開も許可しておいてやる。だが、油断するなよ?」

 

「わかってるさ。」

 

千冬姉の忠告を肝に銘じながら、俺は医務室の扉を開けた。

 

Side end

 

Noside

 

ー医務室

 

一夏の足音に反応してマドカはその目をゆっくり開けた。

だがそこには何時もの様な殺気はない。

 

「よっ、目覚めたんだな。」

 

「フン、誰かのお陰で随分と時間が掛かったがな。」

 

「仕方ねぇだろ・・あの時はリミッター無しで撃ったんだから。」

 

「やはりか。どうりで気を失う訳だ。」

 

「・・攻撃しないんだな。お前自身は手錠を掛けられていないから自由に動けるのに。」

 

「そんな気にもなれないさ。仮にしても、"奴"の力を手にした今のお前はあの時よりも強い。結果は目に見えている。」

 

「そうか。」

 

因縁の相手だと言うのに妙に仲良く話す2人。"奴"というのは間違いなくティガのことだろう。

 

「で、話ってなんだ?わざわざ俺1人だけここに入れたのは理由があるんだろ?」

 

「当然だろう、他のIS乗りに知られては困る。」

 

そう言った後、マドカは真剣な顔で話始めた。

 

「以前お前に、私は創られた命だと言ったな?」

 

「あぁ・・。確かにそう言っていたな。」

 

「言葉通り、私はお前と織斑千冬のクローンだ。」

 

「・・・」

 

一夏はそれを黙って聞いている。

 

「第2回モンドグロッソでお前を誘拐した際に得たお前のDNA、そしてその後ドイツ軍の教官をさせることで得た織斑千冬のデータとDNAを基に私は創られた。」

 

「俺は兎も角、何故亡国企業は千冬姉のDNAやデータを持ってるんだ?」

 

「簡単なことだ。ドイツ政府からの提供さ。」

 

「!?」

 

マドカの言葉に一夏は衝撃を受けた。それは、亡国企業とドイツ政府が裏で繋がっていたことを意味するからだ。

 

そして今マドカが言った通り、一夏は中学生の頃に何者かに誘拐されたことがある。

この事件は世間には公表されていないが、その主犯が亡国機業《ファントム・タスク》だったのだ。

 

たった一人の弟を危険に晒したことは千冬にとって負い目となり、"ブリュンヒルデ"と呼ばれることを嫌う切っ掛けになった。

 

「大方、織斑千冬の様な最強の人間でも作りたかったのだろうな・・。あの人は生身でも圧倒的な強さを持つ。ドイツ政府や亡国企業はそれに目をつけてお前を誘拐し、あの人にドイツ軍教官を勤めさせてデータを入手したというところだろう。」

 

「そんな・・・それだけのために俺達は・・。」

 

「あぁ。いい様に利用されたということだ。」

 

「・・・今まで千冬姉を狙っていた理由は?」

 

「あるとすれば、私自身を証明するためといったところか・・。これでも組織の方では"織斑千冬の紛い物"と言われていた身だからな・・!」

 

怒りからかベッドを握りしめるマドカ。

 

「(自分は紛い物なんかじゃないことを証明したかったってことか。俺も似たようなこと思ったこともあったっけ・・。)」

 

中学の頃、一夏は女尊男卑の生徒達に"千冬様の弟ならできて当然"や、"千冬様の弟の癖にこんなこともできないの?"と言われたことが何度かあった。

 

その際自分は"織斑千冬"ではなく"織斑一夏"という1人の人間として見て欲しいために一生懸命努力したことを今でも覚えている。

 

「黒騎士が第二形態移行していたが、あれは自然にああなった訳じゃないな?」

 

「気づいていたか。そう、あれは組織にいる大物から与えられたものだ。その名も"Z"。」

 

「Z・・如何にも大物らしい名前だな。にしても何でこんなに話してくれるんだよ?」

 

「私の身体には監視用のナノマシンが注入されていて、本来この様に話せば命はないのだが、お前の光線のエネルギーで全て破壊されてしまってな。結果生き延びたから暇つぶしに教えてやっただけさ。」

 

「成る程・・。ところで、これからお前はどうすんだよ?」

 

「恐らく組織から迎えが来るだろう。向こうにとって私は貴重な戦力だからな。最も、戻る気はないがな。」

 

「なんでだよ?」

 

組織に戻る気はないというマドカに疑問を抱く一夏。

 

「このまま戻った所で、"所詮紛い物は紛い物"と言われるのがオチだからさ。それに、1つ興味が湧いた。」

 

「興味?」

 

「お前の強さの秘密さ。例え敗れてもそれでも立ち上がって来たお前の強さの秘密を知りたい。そこで、暫く力を貸してやってもいいぞ?」

 

「!?」

 

今まで何度も戦った相手が力を貸すことは戦力としては有難いが、果たして信用してよいのだろうか?

 

「安心しろ。秘密を知るまではなにもしないさ。その後どうするかはわからんがな。」

 

「フッ・・いいぜ、教えてやるよ。俺の強さの秘密。但し一つ条件がある。お前は今日から俺達の妹になれ!」

 

「な・・妹だと!?」

 

「折角千冬姉に似てるんだ。それに行くとこないだろ?」

 

「・・お前は私を"紛い物"と言わないのか?」

 

「言う訳ないだろ。前にいった筈だぜ?お前はお前、"織斑マドカ"という1人の人間だと。だから俺は・・いや、俺達はお前を紛い物だなんて言わない」

 

その言葉を聞いた瞬間、マドカは大粒の涙を流し始めた。そこにはもう戦士ではなく1人の女の子となった少女の姿があった。

 

「もう大丈夫だ、今は思いっきり泣けよ。」

 

「ウ、ウゥ・・!」

 

こうして、マドカは千冬と一夏の妹として、そしてGUTSの新メンバーとして、織斑家で暮らすことになった。

 

余談だが、黒騎士について聞かれたので千冬の同行付きで地下に案内したが、第二形態移行した筈が何故か第一形態に戻っていたので"誰か弄ったんじゃないだろうな!?"と少々荒れたとか。

 




マドカの秘密を僕なりに考えてみました。

これからマドカの生活はどうなるのか、そっと見守って頂ければと思います。

そしてマドカが言った"Z"という大物・・一体何者なのか。

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