魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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96話

 

 

学院祭2日目ーー

 

雲一つない快晴となっており、今日も絶好の学院祭日和だ。 開門と同時に来場者が学院に雪崩れ込み、早速お祭り騒ぎとなっていた。

 

VII組の家族と理事達、友人も次々と学院を訪れており。 今VII組はちょっと……いやかなり忙しい。

 

「フェイト〜〜!」

 

「きゃっ! もうアルフったら……母さん、リニス、リンディさん、クライドさん、ユノちゃん、いらっしゃい。 今日はゆっくりして行ってね」

 

「ええ、そうさせてもらわ」

 

「今日はよろしくお願いしますね」

 

「わぁーい!」

 

「なのはちゃん、桃子さん達のことはごめんね。 いくら身内とはいえ、緊急時以外だと管理外世界の人がミッドに来るにはかなり面倒な手続きもあって……」

 

「大丈夫です! ちゃんとお土産を持っていきますし!」

 

「ふふっ、ありがと。それじゃあ早速、お茶をもらえるかしら?」

 

「はい。ただ、当店は過剰の砂糖の投入は禁止していますので、ご了承を」

 

「そんな⁉︎」

 

「少しは自重しろ」

 

テスタロッサ家とハラオウン家が訪れてた。 どうやらエイミィさんは今回は来れなかったようだ。 残念がる光景が目に浮かぶ。

 

「はやてぇ! 来たぞぉ!」

 

「ヴィータ、もう少し声を抑えろ」

 

「ここがはやてちゃんの教室かぁ」

 

「結構広いですぅ」

 

「皆よう来たなぁ。 ささ、早う座ってぇな」

 

「それでは、お言葉に甘えて」

 

「その衣装、よくお似合いですよ。 我が主」

 

「えへへ、ありがとうなぁ!」

 

夜天の騎士達もとい、八神家も到着。 ただザフィーラ……仮にも飲食店なんだから狼形態で来るなよ。

 

「「………………」」

 

「ふおお! 美味しいよこれ!」

 

「なかなかそちらの息子さんは優秀ですね。 弟を見習わせたいくらいです」

 

「いえいえ、弟さんもここに入ってからかなり成長しているもよう。 息子もうかうかしていると抜かされますよ」

 

グランダムさんの護衛のはずのイシュタルさんは料理食べるのに集中している中。肩身の狭い思いをしているツァリとシェルティスの隣には2人の兄と父の理事が身内をネタに会話を弾ませていた。

 

「お兄ちゃん!」

 

「ユエさん、お久しぶりです」

 

「ソーマ、リンナに同行してもらってすみませんね」

 

「いえ、ティアとスバルもいますし。 僕1人じゃ心許なかったですし」

 

「確かにそうね」

 

「ティア! このシュークリーム頼んでいい⁉︎」

 

リンナちゃんはソーマ達に連れて来てもらったようで、初めて来るミッドに目を輝かせながら見回っていた。

 

「おーい、来たぜ〜!」

 

「皆、元気にしてた?」

 

「はい! 私とガリューもアギトも元気です!」

 

「そうね、元気じゃない姿なんてあんまり想像できないわね」

 

(コクン)

 

「うーん! いつと同じ味だけど、こんな風に皆で楽しめるとまた格別だぁ!」

 

「祭りもいいもんだな」

 

ルーテシアとガリューとアギトも入ってきて、ソエルとラーグはいつの間にか料理を食べていた。

 

「レンヤ、また強くなったようだな」

 

「はい、VII組の皆のおかげで」

 

「カリムさん、シャッハさんもいらっしゃい!」

 

「お、お邪魔させてもらいます……」

 

「シャッハ、もっと肩の力を抜きなさい」

 

ソフィーさん達、聖王教会組も忙しい中来てくれた。

 

「ファリンも別に手伝わなくてもいいんだよ」

 

「主人を差し置いてメイドが遊び呆けられますか。 私は大丈夫です」

 

「そうやで〜、気にせんといてや〜」

 

すすかはファリンさんが手伝ってくれるのが気後れしているようだ。

 

「……なんだ、これ?」

 

「すぐに戦争できるメンバーが集まったな……」

 

リヴァンとテオ教官は教室にいる人達を見て呆然としていた。 他の来場者も有名人を前にして食べる手を止めていた。

 

「皆さん、学院祭はVII組だけではないですよ。 他の出し物も見に行ってはどうですか?」

 

「うーん、そうだねぇ。 ここに長居をすると君達にも他の来場者にも迷惑もかかるし」

 

「い、いえ、そういう意味で言ったのでは……」

 

なのは言った言葉が迷惑だがら帰ってくれと言う解釈になってしまい、なのはは困惑する。

 

「構わんよ。だがその前にはこのキッシュをもうひとつ頂けるかな? これはすごく美味しかったんだ」

 

「私も頂こう。 ちなみにこのキッシュは誰が作ったのだ?」

 

「そのキッシュはレンヤ君が作りました。 翠屋ミッドチルダ出張店メインメニューです」

 

「確かにメガうまだぞ!」

 

「どこか、優しい味がするわね」

 

「そ、そんなことないよ。 上手く作れるのそれだけだし」

 

皆に褒められて悪い気はしないけど、どこか照れ臭くなる。

 

それから全員が他の出し物を見るためにVII組を後にして。 それからすぐに昨日の噂を聞いたのか、昨日とは比べ物にならないくらいの来場者がVII組に殺到した。

 

「お、追いつかないよ〜!」

 

「弱音を言わないの!」

 

「キッシュ2つ、特性パフェ2つ、オーダーです!」

 

「追加入ります!」

 

「レンヤ君、今手ぇ空いておるか?」

 

「どっちも手一杯だ!」

 

すでに俺は分身を1つ使っており、アリシアも合計4分身で頑張っている。

 

それから昼のピークが過ぎるまで昨日以上の来場者を捌ききった。

 

「の、乗りきったあぁ〜……」

 

「もうヘトヘトだよ……」

 

「ほら、みっともないからシャキッとしなさい」

 

「まあまあ、こんくらいは大目に見ておいてや」

 

「ちょっと待っていろ。 水か賄いでシュークリームを持ってくるから」

 

「ありがとう、レン君」

 

「私も手伝うよ」

 

おれは水を喉に流し、ようやく一息つけた。

 

「ふう……」

 

「ああ、そうだ。 はやて達や皆の家族がいるんだしもう休んでいいぞ。 せっかく来てくれているんだ、久しぶりに家族と一緒に楽しんでこい」

 

「え、でもまだやり残しが……」

 

「私達が全部やっておくから、気にしないで」

 

「でもレンヤ、ラーグやソエルは……」

 

「大丈夫だぞ、いつも一緒にいるし。 拗ねたらブレードでもやっていれば機嫌は取れる」

 

「うーん、ならお言葉に甘えて。 厳しくなったら遠慮なく連絡してよね」

 

「うん、もちろんだよ」

 

どこか気にしながらもはやて達は自分達の家族、友人の所に向かった。 この場に残ったのは俺となのは、すずか、アリサ、リヴァンが残った。

 

「アリサちゃんは行っても良かったんだよ? アギトちゃんやルーテシアちゃんもいるんだし」

 

「レンヤと同じ理由よ。 それにしても、人が少ないとこうも大変ね。 I組が羨ましいわ」

 

「今回は上手く行っているからいいが……来年はもっとよく考えないとな。 遊べる時間もそれなりに欲しいし」

 

「ならおばけ屋敷なんてどうかな? 大分を立体映像にして、たまに呪うぞ! て出て行ったり」

 

「それじゃああんま意味ないだろ。少ない人数で遊べる時間……1回だけやる出し物……劇やバンドあたりがいいかもしれないな」

 

「確かにいいわね、今度は余裕を持って行けば大丈夫でしょうし」

 

「あ、劇なら私のおすすめがあるよ。 題名は銀の意志、金の翼……この作品がとても大好きなんだぁ」

 

「え、すずかちゃん。 確かその作品にはーー」

 

「レンヤ君達、失礼するね?」

 

なのはが何か言いかけた時、フィアット会長とグロリア先輩がVII組に入ってきた。

 

「フィアット会長……グロリア先輩も」

 

「いらっしゃいませ、今の時間はお菓子だけなら用意できますよ」

 

「もしかして、食べに来たのか?」

 

「はは、似たようなもんかな」

 

「まあ、それもあるんだけど」

 

「ーー失礼します」

 

凛とした声が廊下から聞こえてくると、大きめの麦わら帽子をかぶり、群青色のワンピースを着たエテルナがいた。いつもの雰囲気と相まってものすごい美人だ。 後ろにはクー先輩もいた。

 

「もしかして……」

 

「エ、エテルナさん⁉︎」

 

「ふふ、約束通りなんとか来ましたよ。 後ほどランディさん達とも顔を見せます」

 

「先輩……来てくれたんですね」

 

「しかしなんつーか……改めてお前って美人だったんだなぁ」

 

「あなたが無関心なだけなのでは……コホン、学院に行くために少しばかり無理を言ってしまいまして、父の言いつけでクーが護衛とすることでなんとか。 この服装も、目立つことで返って安心できるわけです」

 

「俺としてはいささか役不足だと思んだがな」

 

「そんなことないですよ。 今、他の皆も呼びますね」

 

「いえ、皆さんの折角の時間に水を差すわけにはいきません。 それよりも……レンヤさん、あなたの腕を振るってくれますか?」

 

「あ……」

 

俺はエテルナ先輩の要望を理解し、右手を胸に当てて礼をする。

 

「かしこまりました。 少々お待ちください」

 

「期待していますよ」

 

「あ、なら私も〜」

 

「僕も頂こうかな。 甘い物には目がないんだ」

 

「くく、せいぜい俺の舌を唸らせろよ」

 

クー先輩がまるで美食家を自称しているようにプレッシャーをかけてくるが、特に気にせずキッシュとシュークリームを作り、先輩達に配膳した。

 

「あーん……ん! すごく美味しいよ!」

 

「へえ、なかなか美味えじゃねえか」

 

「確かにそうですが……なぜあなたは上から目線なのですか?」

 

「う〜ん、心地いい甘さだねぇ。 結構好みだ」

 

「あはは、喜んでもらえて何よりです」

 

「本当に美味しいよ。 レンヤ君は趣味でお菓子作りをしているの?」

 

「レン君は子どもの頃からウチの喫茶店の手伝いをしていたんです。お菓子作りの腕は私のお母さん仕込みです」

 

「なるほど……長年積み重ねてきた味というわけか」

 

それからしばらく雑談をしていたのだが……来場客のほとんどがここで早めの夕食を済ませようとしたのか、また一気に押し寄せてきた。 俺はすぐさま他のメンバーを呼び戻し。 学院祭が終わるまで客足が途絶えことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方ーー

 

学院祭最終日には後夜祭が行うため、第1ドームではキャンプファイアの準備がされつつあった。 来場客のほとんどはアンケートを書いた後、楽しそうにしながら学院を後にするのだった。

 

VII組のメンバーはつい先ほど最後の来場者を見送ると喫茶店をしまうと、全員イスに深く座りこんだ。

 

「……はあ……」

 

「……疲れたよ……」

 

「……おなかすいた……」

 

「……にゃああ〜、さすがにガス欠だよ……」

 

疲労困憊を正しく表しており、春とは比べ物にならないくらい項垂れていた。

 

「一応……成功したのよね?」

 

「客足を見るからにそうですが……」

 

「来場客を気にしている余裕なんてないよ……」

 

「あはは……それがプロの人との違いなんだろうね……」

 

「まあ、ちゃんとやり切れたと思うよ?」

 

「そやな、最後まで頑張った甲斐があったんよ」

 

「そうだなぁ……」

 

「なんだ、だらしないぞ」

 

学院祭が終わった感想を口にしながら話ていると……そこに、ランディが教室に入ってきた。

 

「ランディ……」

 

「……なんだ、お前か……」

 

「まったく、これだからVII組の連中は……いくら疲れたとはいえ、あまりダラけすぎるな」

 

「人数少ないんだがら大目に見てよ……」

 

「ごめんなさい、もう少し待ってもらえるかな?」

 

「それよりも……I組も凄かったぞ。 昨日ちょっとしか見ていないけど、かなり様になっていたし」

 

「そうだね。 正しく、貴族の茶会って感じの雰囲気だったよ」

 

「ふふっ、エステートも案外形から入るタイプみたいだったし」

 

「ええ、とても楽しませてもらいました」

 

「そ、そうか……まあ僕達の実力をもってすれば当然といえば当然なんだが……」

 

褒められて悪い気はしないのか、得意げな表情になるが。 すぐにハッとする。

 

「ーーって、嫌味か! と、とにかく! 君達がそんな調子でいたらこちらの立場もないだろう! とにかくシャキッとしたまえ!」

 

「……?」

 

「何のことだ……?」

 

「あ、ひょっとして貰ったんか?」

 

アリシアとリヴァンがなんの話か理解しかねているが、はやてがランディの言っていることを理解したようだ。

 

「グッ……そ、それはともかく。 売り上げは僅差だったんだ、今回は勝ちを認めてやる。 それじゃあな!」

 

ランディは言いたいことを言って、早足で教室を出て行った。

 

「なんだったんだろ……?」

 

「嫌味というより……負け惜しみって感じだったな」

 

「お前ら、やったな!」

 

今度はテオ教官の声とともに教室のドアが開かれ、教官とフィアット会長達4人が入って来た。

 

「教官、先輩達も……」

 

「どうしたのですか……?」

 

「お前達なぁ……すっかり忘れてんじゃねえか?」

 

「来場者のアンケートによる学院祭の各出し物への投票……事前に聞いてるはずだろう?」

 

テオ教官が呆れるなか、グロリア先輩の説明でようやく思い出せた。

 

「あ……」

 

「……それがあったね」

 

「すっかり忘れてたよ……」

 

「でも、ひょっとして……?」

 

「在学生、一般来場者からの投票を集計し終わりました。 どこも健闘していましたが祭最的にI組とVII組に絞れまして」

 

「投票数2548票! VII組の喫茶店・翠屋出張店が見事学年一位に輝いたよ!」

 

「ま、なかなかの結果じゃねえか」

 

フィアット会長の発表で、皆の顔に笑みが浮かぶ。

 

「あ……」

 

「……そうか……」

 

「ははっ……」

 

「なんやなんや、なんか反応薄いなぁ。もっと喜んでもバチが当たらへんで」

 

「終わってみればどのクラスも凄くレベルが高かったしな」

 

「リンナ達も随分と楽しんで回ったようですし」

 

「ティポパニックも結構楽しかったよ」

 

「その意味で、あんまし誇れねぇかな」

 

「あえて言うなら学院生全員の勝利ってことかな」

 

「ふふっ……まさしくそんな感じね」

 

確かに、フェイトの言う通りかもしれない。 目標の学年一位はとれたが、他のクラスがなかったら得られなかった一位だ。

 

「さて、ちょっとは復活しろよ。これから後夜祭があるのまで忘れてんじゃないだろうな?」

 

「そ、そうだった」

 

「素で忘れてました〜」

 

「魔導学院祭を締めくくる学院生と関係者の打ち上げ……」

 

「たしか篝火をたいて……ダンスもあるんでしたっけ?」

 

「皆の家族や知り合いも待っているよ」

 

「キャンプファイアの準備も終わっているからボチボチ向かうといい」

 

「よし……これで今日は終わりだ、 なんとか気力を振り絞って第一ドームに向かおう……!」

 

「ええ」

 

「楽しみだなぁ……!」

 

鈍くなっている体を動かし、後夜祭が行われる第一ドームに向かった。ドームに到着する頃には日は沈んだ。 ドーム内に入ると、ちょうど火がつけられ……木で組まれた台から勢いよく火が燃え上がり、学院生達が歓声を上げる。

 

炎が燃え上がるの見ていると、反対側にシグナム達がいた。

 

「あ、ソファーさん達……」

 

「兄さんも残ってたんだ……」

 

「父さんも……忙しいのに」

 

俺達は家族や知り合いの元に向かった。

 

「ああそうだ、レンヤ」

 

「はい?」

 

クー先輩に呼び止められ、皆に先に行ってくれと言ってからクー先輩と向き合う。

 

「それで、何か俺に用でも?」

 

「ああ、いい機会だからこいつを返しておくぜ」

 

クー先輩はポケットからコインを出すと俺に向かって上に弾いた。

 

「これは……」

 

キャッチして手を開くと、50コインが……学院が始まったばかりに盗られた金額と同じだった。

 

「……すっかり忘れてましたよ。 あれから色々手伝ったり助けてもらいましたけど。 むしろこれじゃあ足りないくらいの物を貰ったと思うんですが……」

 

「そりゃ、お互い様ってやつだ。 こう言っちゃなんだが、俺が借りた金を返すのは相当珍しいんだからな? ま、素直に受け取っておきな」

 

「あ……」

 

クー先輩はそう言うと皆の所に歩き出した。 と、そこで俺はあることを思い出した。

 

「ーーそういえば。 貸して半年は経ちますけど、利子の方はどうなったんですか?」

 

クー先輩は足を止め、頭をかいた。

 

「……やれやれ。 守銭奴になったじゃねーか」

 

「悪い先輩がいましたから。 すっきり清算されてもなんか寂しいですし……どうですか?」

 

「ったく、甘ったれめ。 わーった、そのうちにな。 時間はまだたらふく残っているんだし」

 

それで話がまとまり、改めて俺はソフィーさんの元に向かった。

 

「すみませんソフィーさん、誘ったのに一緒に回れなくて」

 

「お前は自分の仕事をしただけだ、それに……私もそれなりに楽しめたしな」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

「ーーレンヤ様」

 

声をかけられ、振り返るとカリムとシャッハがいた。

 

「久しぶりカリム。いい加減様付けはやめてくれると嬉しいんだけど」

 

「教会騎士団の騎士として、陛下を敬うのは当然です。これでも抑えている方なのですよ?」

 

「妥協しろってことね。はやてとはもう会ったのか?」

 

「はい、はやてが進めている部隊設立のことを少々」

 

「そうか……確かカリムのレアスキルも関わっていたっけ」

 

預言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)……レンヤ様の神衣と違って実用性のない占い程度の能力ですが……ただ、前の結果ではーー」

 

そこで言い過ぎたのか、ハッとなって口に手を当てた。

 

「コホン……一応、はやての上司として彼女とレンヤ様達の魔力制限の権限をクロノと一緒に任されました。 レジアス中将の計らいで保有できる魔導師ランクの総計規模が通常より大きくなりましたが、それでもレンヤ様は-4ランクは確実に下がってしまうでしょう」

 

「オーバーSランクが何人もいるんだ、もちろん了承している」

 

「感謝します、レンヤ様」

 

「騎士カリム、そろそろ」

 

「そうでした! あまりソフィー隊長の邪魔をするわけにはいけません」

 

「私は別に構わないぞ。 それに、お前達がやりたいようにすればいい。私もそれなりに協力はしよう」

 

「ありがとうございます、ソフィーさん」

 

しばらく雑談していると、後夜祭の定番であるダンスが始まった。 初めは遠慮がちで踊る人数は少なかったが……

 

「ここは理事らしく率先していこうか」

 

「はい」

 

ラースさんと秘書の女性が踊り始まると……

 

「少将、踊りましょうよ〜」

 

「私としては、お前が踊れるのかが知りたいのだが」

 

「ふむ、これは教官としても出なくてはな。 モコ、お前もいいか?」

 

「も、問題ありません。 教師として、生徒の模倣となるダンスを披露しましょう」

 

「ふふ、学校に行ったことないから羨ましいわね」

 

「ならリンディ、せっかくの機会。私達も行こう」

 

「ユノは私が責任持って見ているから、安心して行ってこい」

 

「パパ、ママ、頑張って〜!」

 

「お兄ちゃん、行こうよ!」

 

「そう急がなくても、逃げたりしませんよ」

 

「ソ、ソーマ。 せっかくだから踊ってあげても……」

 

「ソーマ! 一緒に踊ろうよ!」

 

「わっ⁉︎ 引っ張らないでよスバル!」

 

「ふむ、それではシェルティス。 お前に私の相手をしてもらおうか」

 

「シ、シグナムさん……剣舞なりそうだ……」

 

「なら私はツァリ君にお願いしようかしら♪」

 

「ええっ⁉︎」

 

「ママ、一緒に踊ろうよ!」

 

「ふふ、いいわよルーテシアちゃん」

 

「お姉ちゃん、行くですぅ!」

 

「リ、リイン……引っ張らないでくれ」

 

「アギト、相手してくれるか?」

 

「そうだな、たまにはいいだろう」

 

「ザフィーラさん、よろしいですか?」

 

「リニスか……私でよければ」

 

「「らーららら〜♪」」

 

「ふふ、ラーグ達、楽しそうね」

 

「ほら、行きますよ!」

 

「ビエ〜〜ン⁉︎」

 

「たーまや〜」

 

「グロリア君、行こうよ!」

 

「そうだね、行ってみようかな」

 

「ふふ、それではあなたにお相手をお願いしましょうか」

 

「おいおい、足踏んでも怒んなよ」

 

次々と相手を決めて、踊り始めた。

 

「す、素早い……」

 

「シグナム達も参加するとはなぁ」

 

「ふふ、皆楽しそうだね」

 

「はは……盛り上がっているな」

 

「レン君、一緒に踊ろうよ!」

 

「私もレンヤと踊りたいなぁ」

 

「折角やし、踊らんか?」

 

「そうね、見てるだけじゃつまんないわ」

 

「いや、そんな一辺に踊れるのか?」

 

ダンスというのは基本二人一組だよな? そりゃ、身分が身分だからウイントさんに進めで、アリサから一通りのステップは踏めるが……

 

「大丈夫!上手く代わりながら踊るから!」

 

「私もレンヤと踊りたい!」

 

「折角だから行って来たらどうだ? 私はそうだな……ちょうどいい、リヴァンに相手をしてもらおうか」

 

「ならシャッハ、私達も行きましょうか」

 

「わ、私はあまりダンスの経験はなくって……」

 

「うーん……まあ、皆がいいんならいいか」

 

『やったぁ!』

 

俺の言葉に喜ぶなのは達……そんなにダンスしたかったのか?俺達は連れ立ってキャンプファイアに向かい、まずは俺となのはが輪の中に入る。

 

「よ、よろしくお願いします///」

 

「ああ」

 

俺となのはは手を取り合いダンスを踊る。

 

「あのね、レン君?」

 

「ん? なんだ?」

 

少しして、なのはが話しかけて来た。

 

「その……いつも色々ありがとうなの!///」

 

そう言うと、なのはが離れ間髪入れずフェイトが俺の元に。

 

「よ、よろしくね///」

 

「あ、ああ、よろしく」

 

どうやら不慣れなようで、俺はフェイトをリードしながら踊る。

 

「その……レンヤ?」

 

「なんだフェイト?」

 

「私……レンヤに会えて本当に良かったよ///」

 

そう言うとフェイトが離れ、代わりにはやてが俺の手を取る。

 

「よろしゅうな~?」

 

「任せておけ」

 

俺とはやては楽しく踊る。

 

「あんな、レンヤ君」

 

「どうかしたか?」

 

「私……レンヤ君のお陰で生きて、皆と歩いて行けるんや。 ほんまありがとう///」

 

はやてが離れ今度はアリサと踊る。

 

「……前より上手くなったわね?」

 

「そうか? まあ、アリサのおかげだろう?」

 

「そうよね……レンヤには色々感謝してるわ……あ、ありがとう///」

 

アリサが離れ、代わりにすずかがパートナーになる。

 

「よろしくお願いします、レンヤ君?」

 

「ああ、よろしくな」

 

「レンヤ君……あの時私を受け入れてくれてありがとう」

 

「どうしたんだ、いきなり?」

 

「改めて伝えたかったの! 本当にありがとうね///」

 

すずかが離れ、今度はアリシアが滑り込んで来た。

 

「〜〜〜〜〜〜♪」

 

「楽しそうだな」

 

「うん! 楽しいよ! 学院祭もダンスも……それにいつもの学院生活も」

 

「そうか……俺も皆との学院生活はいつも楽しいからな」

 

「うん、だから私はレンヤに感謝したいの……こんな当たり前の毎日をくれたレンヤに……///」

 

このあともダンスは続き、皆は満足した……そして音楽が止まると、後夜祭が終わりを迎えた。

 

「来場者の皆様、それに学院生諸君。 本日はご来場いただき、誠にありがとうございました。 この後夜祭をもって、第113回レルム魔導学院祭を終了します」

 

ヴァント学院長が後夜祭と学院祭の終了を告げて、来場者と学生達が拍手でそれに答えた。

 

「これで学院祭も終わりか……」

 

「ちょっと寂しいね」

 

「また来年もあるわよ」

 

「それまでのお楽しみやな」

 

「レンヤさん」

 

「エテルナ先輩?」

 

そこに、エテルナ先輩が近づいて来て。 1つの封筒を渡された。

 

「これは?」

 

「開けてみてください」

 

封を切って中身を確認すると……VII組のメンバーとテオ教官、フィアット会長達が写った写真が数枚あった。

 

「これって……」

 

「エテルナさんが休学になる前に撮った私達の集合写真ね」

 

「人数分現像しておきました。 もちろん皆さん写真データは持っていますが……私は手元に残る方が好きなのです。 失礼ながら、ご勝手に皆さんの分を作ってしまいましたが……ご迷惑でしたか?」

 

「いえ! すごく嬉しいです!」

 

「悪くはないな」

 

「ありがとうございます、大切にしますね!」

 

「へえ、皆いい顔しているね」

 

「いい贈り物ありがとうございます」

 

こうして、俺達のレルム魔導学院祭は幕を下ろしたのだった。

 

 

 


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