魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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95話

 

 

翌日、10月23日ーー

 

『ーー学院生の皆さん、そして来訪者の皆様方。大変長らくお待たせしました』

 

学院祭当日、空には雲ひとつない快晴のこの日。 生徒達は校内で、来訪者は閉じられた正門の前で学院祭が始まるのを今か今かと待っていた。

 

『これより第113回、レルム魔導学院・学院祭を開催します! どうぞ心行くまで楽しんで、盛り上がってください!』

 

フィアット会長が開催を宣言し、生徒会のメンバーが正門を開ける。 すると、来訪者の人達が拍手と共に次々と学院に入って行った。

 

早速俺達は自分達の教室で営業を始めた訳なんだが……

 

「はい!特製パフェ二つできたで!」

 

「私もオムライス出来上がったの!」

 

「ツァリはパフェを、アリシアはオムライスを頼む!」

 

「り、了解!」

 

「は~い!」

 

「シュークリーム2つお願いします!」

 

「キッシュもお願いするわ!」

 

「待ってて、すぐに用意するから!」

 

見ての通り……滅茶苦茶忙しい。思った以上に皆の衣装の効果があったのか……それともエースというネームバリューで来ているのかは定かではないが。

 

「食器をお願いします」

 

「くっ……シェルティス! そっちは頼んだぞ!」

 

「言われなくても!」

 

事前になのはに基本的な接客の仕方を教わり、実際に何度か練習していたが……さすがに本番になると勝手が違うのか、最初はぎこちなかった。今は中と外の連携も取れておりスムーズに事が運んでいる。

 

それから昼のピークが過ぎて行き、ようやく客足が落ち着いてきていた。

 

「ふい〜……」

 

「大丈夫、姉さん?」

 

「つ、疲れたぜ……」

 

「ふう、予想以上に接客というは疲れるのですね」

 

「にゃはは、これも慣れていけば面白いよ」

 

「売れたのは嬉しいんやけど……ちょう食材がギリギリになってもうたよ」

 

「少し、街で買い出しに行かないといけないわね」

 

「なら、冷蔵庫の中を確認してくるんよ」

 

「レンヤ君は、次1時間休憩だよ」

 

「了解」

 

ようやく学院祭に参加できる。だか一応作り置きをしておいた。時間もないことだし手早く外にある屋台で昼食を食べておかないと……

 

「レンヤ君、待ってえな!」

 

「ん? はやても休憩か?」

 

「そや、ここで休んでおかんと気がもたへんわ。 今のうちに目一杯遊ばんとな!」

 

「そうか」

 

はやてと一緒に学院祭を回ることになった。正門前に出て見ると個人で学生達が開いている屋台が結構並んでいた。

 

「へぇ、本格的やなぁ」

 

「あそこのケバブがいいんじゃないか? 歩きながら食べられるし、早く食べ終わる」

 

「それがええな、食べ歩きは祭の鉄則や」

 

2人でケバブを買い、はやてが早速かぶりつくと美味しそうに顔を綻ばせる。食べ歩きながら俺達は前に来た。

 

「ここにV組の出し物があるんやったな?」

 

「ああ、体を動かすアトラクションだから教室じゃあ狭くてここの練武場を借りたらしい」

 

「よし、行こうか!」

 

最後の一切れを口に放り込み、俺は手を引かれて練武館に入って行った。

 

練武場に入ると中に大掛かりな装置が置いてあり、子どもが飛んできた紫の物体をピコハンで撃ち落としていた。

 

「いらっしゃい。ここは1年V組のティポパニックですよ〜。空間シュミレーターで投影されたティポぬいぐるみたくさん叩いて高得点を狙うアトラクションです! ハイスコアをとれば豪華な景品を差し上げます!」

 

「へぇ、レンヤ君。 やってみよう!」

 

「そうだな、俺から行かせてもらうよ」

 

チケットを渡し、かなり大きいピコハンが手渡された。装置で投影されたフィールドの中に幾つもの穴が浮いてあり、そこからティポぬいぐるみが出てくるようだ。

 

「縦横無尽から出てくるティポぬいぐるみを叩いて落としたら得点。体に当たったら減点です! それでは……スタート!」

 

カンッ!

 

ゴングの鐘が鳴ってゲームが開始された。穴から軽いキャッチボールの速度でティポぬいぐるみが飛んできた。

 

「ほいっと」

 

それをピコハンで落として、次のターゲットを見つけて狙う。

 

「ふっ……!」

 

ピ………………コ!

 

ちょっと反則気味に虚空を使い。残りのティポぬいぐるみを移動しながら一気に叩いた。早く降りすぎてピコハンが凹んだままになってしまい、降りきった所で元に戻って音が鳴った。

 

「おめでとうございます! 基準以上の得点でしたのてティポぬいぐるみを差し上げます!」

 

アトラクションから出た所で学生からティポぬいぐるみをもらった。その後、はやても基準点に届かなかったが存分に楽しみ、アトラクションを終えるのだった。

 

「はやて、これを」

 

俺は手に入れたティポぬいぐるみをはやてに手渡した。

 

「ありがとうレンヤ君。大事にするんよ」

 

「はは、どういたしまして。 それにしても、これって角なのか? 微妙な可愛らしさがなくもないけど……」

 

「かまへんよ、ヴィータののろウサと似たようなもんやし。 これはこれで愛くるしさも感じるんやで」

 

「まあ、はやてがそう言うのならいいか」

 

「そやで。さ、早う次に行こか!」

 

それから休憩時間が終わるまでの間、はやてと一緒に学院祭を楽しんだ。

 

休憩時間が終わるとまた慌ただしくなり、夕方になるまで料理とお菓子を作り続けた。

 

『ーー学院祭・1日目はまもなく終了時間となります。来場者の皆様かた、どうぞ明日もふるってご参加ください。準備がある学院生の皆さんは、あんまり無理しすぎないようにしてくださいね』

 

フィアット会長が校内放送で学院祭の終了を告げ、学院祭の1日目が終了する。

 

「1日目はこれで終わりか……なんだかあっという間だったな」

 

「そうだな……喫茶店で働くにしても、学院祭を楽しむにしてもな」

 

「ほんま、2日と言わず毎日やって欲しいかもええのになぁ」

 

「騒がしそうだけど授業よりいいかもね」

 

「ま、確かに悪くないかもね。 他のクラスの出し物も凄く良かったし……私達も負けてはいられないわね」

 

「うん、2日目も頑張って行こう」

 

「だね、先ずは明日の準備をしようか」

 

「そうですね」

 

学院を楽しそうに去って行く来場者を見送り、俺達は店内の清掃と食材の補充と売り上げを生徒会に渡した後、寮に帰ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜ーー

 

夕食の後そのまま食堂で明日の為にミーティングをしていた。

 

「そうね、いいんじゃないかしら」

 

「最後に最高の出来の料理とお菓子を一品だけにする……確かにそれなら印象に残りそうだね」

 

「追い込みとしてはなかなかのもんだな」

 

「後はどれに絞るかだか……」

 

「今日使ったメニューじゃいかんし、今ある食材で別の料理を作らなあかんな」

 

「もしくは工夫するか、ですね」

 

「悩みどころだね……」

 

新しい案を出しても、急造の為になかなかまとまらない。

 

「そういえば、皆の家族って明日来るんだよね?」

 

「そうだったな。 理事の人達は予定は空いていると思いたいが」

 

「うーん、ウチの母さんならともかく兄さんはちょっとわからないな……」

 

「ソフィーさんはもしかしたら来ると言っていたぞ。 カリムとシャッハは来てくれるらしい」

 

「私の所は、知っての通りリンナが遊びに来ます」

 

「私の所の家族も来る言うてたんよ。フェイトちゃんとシェルティス君の所も来るんやろ?」

 

「うん、母さんもリニスもちゃんと来るよ。 リンディさんも一緒に誘うみたい」

 

「後、メガーヌさんとルーテシアちゃんも来るよ。 異界対策課も休みだし、ラーグとソエルとアギトも来るかもね」

 

「僕の父さんはちょっとわからないかな。イシュタルさんを代わりに寄越しそうだけど…… 」

 

「さっき連絡があったが全員、来るらしいぞ」

 

そこに、テオ教官がそう伝えながら食堂に入って来た。

 

「テオ教官……」

 

「それって、本当ですか?」

 

「ああ、今日のうちに改めて学院に連絡があった。 ミッドチルダはかなり動いているが、今はそこまで深刻じゃないし。 それより、各種行事に参加して関係者を安心させたいらしい」

 

「そうですか……」

 

「なるほど……少し安心しました」

 

「それよりも明日の喫茶店もせいぜい気合いを入れろよ。 I組のカフェ、負けず劣らずの盛況ぶりだったぞ」

 

そういえば喫茶店に集中していて、I組の方に気が回っていなかったな。

 

「ホンマですか⁉︎」

 

「ああ、ちょっと覗いたがなかなかの接客ぶりだったぞ。 甘ったれた1科生と思いきや、大した根性してるぜ。 よっぽどお前達に負けたくないらしいな」

 

思っていた以上にあちらも頑張っていたらしい。 このままだと負ける可能性もある。

 

「ど、どうしよう……」

 

「やっぱり何か料理か菓子の案でも……」

 

「ーーううん、私達の今のベストはこのメニューだよ。 あんまりこんを詰めると返って混乱しちゃうよ」

 

「それもそうだな」

 

「今日は明日に備えて早目に休もう」

 

それで解散となり、俺は部屋に入ってベットに寝転がり休んでいた。

 

「はあ〜……疲れたな……」

 

さすがにここまで大量にお菓子ーーとたまにキッシューーを作ったのは初めてだった。

 

「そういえばラーグとソエル、帰ってくるの遅いな」

 

時刻はすでに21時を過ぎようとしている。 いつもならもっと早く帰ってくる筈なのだが……

 

「たっだいまー!」

 

「帰ったぞ」

 

噂をすれば2モコナが帰ってきた。

 

「遅かったな、何かあったのか?」

 

「ちょっとトラブルがあってな。 なんとか解決してようやく帰れた所だ」

 

「アギトも一緒にヘトヘトだよ〜。 私達はもう休むね、明日の学院祭は行きたいし」

 

「そんじゃ、おやすみ」

 

「ああ、おやすみ」

 

ラーグとソエルを抱えて専用ベットに寝かせる。 あっという間に2モコナは眠ってしまった。

 

「トラブルって何だろう?」

 

少々気になってしまい、アギトに詳細を教えもらいにアリサの部屋に向かった。

 

コンコン

 

「アリサ、今大丈夫か?」

 

『レンヤ? ええ、入っていいわよ』

 

了承をもらいドアを開けて部屋に入った。 以前にも入ったことがあるが、部屋は赤で統一されていていかにもアリサらしい部屋だった。 それと一緒にすずかもいた。

 

「何かあったの?」

 

「いや、アギトに聞きたい事があったんだが……」

 

アギトを探して部屋を見渡すと、台の上に大き目のドールハウスが置いてあり。そこのベットでアギトは寝ていた。

 

「どうやら手強いグリードを相手したらしいのよ。 それで帰って早々寝ちゃたわ」

 

「なるほど、そういう事か」

 

「要件ってそれだけ?」

 

「ああ、ラーグとソエルも寝ちゃてな。 あんまり聞き出せなくて気になったんだ」

 

それにしても……グリードが月日が経つごとに強くなっているのを感じる。 性質が違い、色々な問題が蔓延っているミッドチルダだが、学院祭の期間中だけは何もなければいいんだが……

 

「レンヤ君。 この後暇でしょう? ちょっとお話しようよ」

 

「……そうだな。 お邪魔させてもらおう」

 

「そうね。 ここ最近忙しくてゆっくりお喋りする機会もなかったし、なのは達も呼びましょう」

 

それからなのは達も集まり、アギトを起こさない為にはやての部屋で楽しく会話を弾ませた。

 

「はやて、これ何?」

 

「姉さんダメだよ、勝手に見ちゃ」

 

「あああぁっ⁉︎ それは部長に無理やり渡されたもんで……とにかく見んいてえぇ⁉︎」

 

アリシアが面白半分ではやての部屋をガサ入れをして、皆で止めながらも夜は更けて行った。

 

 

 

 


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