自由行動日の夜、その日のうちに準備に必要な手順と手続き、役割分担、運営、機材の調達、メニューに出す料理の材料の調達やその衛生、ついでに衣装などもその日の間に決めた。はっきり言って、この人数で喫茶店は無謀な気もするが……そこは何とか管理局で培われた腕の見せ所と言うものだ。
初めての学院祭……必ず成功と上位入賞を狙って行くため、夜遅くまで意見を出し合った。
3日後、9月22日ーー
予定通り実技テストが始まり、VII組のメンバーはドームに集まっていた。
「ーー学院祭の準備、順調みたいだな。この人数で喫茶店は大変だと思うが、具体的にどんな喫茶店にするのか決まったのか?」
「基本的にお菓子をメインにした喫茶店の予定です。昼にランチも出せる方向性ですかね」
テオ教官の質問になのはが決定した内容を話した。
「なるほど、悪くはないな。限られた人数をやり繰りするのは大変そうだが……俺も遠目から応援しているぞ」
「真面目に手伝ってください。教官が許可しないと進まない案件が多いんですよ」
「わーってるって、そういや衣装の方はどうなってんだ?確か、はやてとレンヤが担当してるんだよな、何とかなりそうか?」
「バッチリやで♪」
「まだデザインを検討しています」
2人の意見がまるで違う事に、他が……特に女子が心配になる。
「……大丈夫なんでしょうね?」
「ま、まあ、レンヤもいる事だし……」
「暴走は止められると思うよ」
「うーん、若いなぁ。俺も後5年……いや、10年若ければ参加出来たんだがなぁ」
一瞬、サバを読もうとしたが……すぐに訂正した。テオ教官の年齢は20代半ば、5年前でも無理であった。
「あはは、そうですね」
「今でもギリギリ行けそうと思うけど……」
「若く見られるのも、どうかと……」
「やかましい!男は歳を重ねる事にハードボイルドになる。その魅力に女が引き寄せられるんだよ!」
自棄っぱちと言うか、負け惜しみな気もするが……これ以上は先に進まないと思いテオ教官は咳払いをする。
「ーーコホン。まあ学院祭は楽しみだと思うが、気持ちを切り替えろ。来月は知っての通り特別実習も実技テストもない。だから今回は“区切り”として、ちょっと気合を出してもらおうか?」
そう言い、テオ教官は小さい剣のキーホルダー……待機状態のデバイスを取り出し、起動して大剣が地面に突き刺さった。
「まさか……」
「……試合のお相手は教官自らですか」
「ああ、5月の実技テストの再現になるのか?今回ばっかしは俺も本気で行くぞ……まずはレンヤーー2人選べ!」
「はい……!」
俺は小細工は通用しないと考え、同じ前衛としてアリサを、後衛にツァリを……と言う選択にした。
メンバーが決まり、テオ教官の前に立ちデバイスを起動しバリアジャケットを纏う。テオ教官は地面から大剣を抜き、青紫色の魔力光を出しながら構える。
「さすがに本気みたいね……」
「でも、僕達だって確実に強くなっている……!」
「とにかく、俺達の全力をぶつけるしかないな」
「ええ、やるわよ……フレイムアイズ!」
《イエス、マイロード》
テオ教官は俺達の会話を確認した後、大剣を両手で持った。
「ーー準備はいいな。入学して半年、お前らなら届く筈だ……このテリオス・ネストリウス・オーヴァを退けてみろ!」
「「「はいっ!」」」
返事と同時にアリサと飛び出し、テオ教官に斬りかかる。
「ふっ……!」
テオ教官は、それを苦もなく受け止める。無論、俺達も想定済みである。
「フレイムアイズ!」
《ロードカートリッジ》
「レゾナンスアーク!」
《オールギア、ドライブ》
鍔迫り合いをしている中、魔力を上げてテオ教官を力で押し始めた。
「うおっ……と!」
少し押されたと思い、踏ん張ろうとした瞬間……薄紫の花びらが鋭くテオ教官の背後から飛んできた。それを見向きもせず、避けられたが。
「そらっ!」
後ろに跳びながら大剣を目にも止まらぬ速さで振り抜き、魔力斬撃を高速で飛ばしてきた。
「ッ!」
《ソニックソー》
それを斬り裂いて防ぎ、アリサが地面を滑るように前に出る。
「せい!」
「とっ……!」
剣を振り抜き、すぐに引くアリサ。テオ教官は追撃をかけようとしたが……
《リバースブレード》
「行きな、さい!」
体を大きく捻り、フレイムアイズをブーメランのように回転させながら投げた。
「随分と大胆だな……!」
迫る剣を危なげなく避けようとする。
「させません……ウィープスロー!」
そこに、ツァリが上から端子の壁を下ろし逃げ道を塞いだ。テオ教官は足を止め、剣を受け止める。
「蒼刃斬雨!」
その隙に空いた懐に潜り込み、刀と魔力刃を重ねて幾つもの突きを放った。
ガガガガガガガキンッ‼︎
「なっ……⁉︎」
剣を弾いた後、大剣を最小限動かすて全ての剣を防がれた。
「どんな動体視力しているんですか……!」
「半分は感だぞ」
「どちらにせよ人間やめてるわよ!」
《キャノンフォルム、ブレイズキャノン》
フレイムアイズの刀身を一部スライドし、砲身が出てきて、炎を纏った魔力弾を撃った。テオ教官は刀を弾くと同時に後退して避ける。
「まだまだ!」
「えいっ!」
次々とアリサは魔力弾を撃ち、先回りしてツァリの花びらが左右を攻める。その間にレゾナンスアークをカルテットモードに切り替え、両手に剣を持つ。
「アリサ!」
「任せなさい!」
《ジェノサイドブレイザー》
空気中の魔力を砲身に集中させ、炎の砲撃を放ちながらテオ教官に向かって薙ぎ払った。
「なんちゅう砲撃だっつうの……!」
《シザークラッチ》
4つの魔力斬撃を砲撃の外側に飛ばし、もう一度大剣を振るうと。4つの魔力斬撃が直角に曲がり、3つが砲撃を斬り裂き、もう1つがアリサに向かって行った。
「きゃっ……!」
すぐさま障壁を張って防御するも、あまりの威力に飛ばされてしまう。
「行くぞ、ツァリ!」
「ッ……!」
テオ教官は近接戦が苦手なツァリに向かって行く。ツァリは振られて来る大剣を花びらで逸らしながら避ける。いつもなら、花びらで受け止める筈だが、1秒も受け止められない為逸らすのが手一杯のようだ。
「はあっ!」
「いいぞ、どんどん来い!」
背後から斬りかかってもあっさり受け止められる。何度も斬り合うが、こっちは小回りが効く片手剣……だが、あっちは大剣なのだが同じ剣速で剣の重さは教官の方が上の為、こっちが不利な状況だ。
「そらよ!」
「ぐあっ!」
上に弾かれた直後、胸に回し蹴りを入れられ吹き飛ばされる。そのまま追撃され、大剣が振り下ろされようとした。
「くうッ……!」
両手の剣を前に軽く放り、体を捻り地面に手を付け、バリアジャケットの靴を消して……
「ふっ!」
「…………⁉︎」
足で剣を掴み、蹴り上げと同時に大剣を受け止めた。
「飛燕連脚!」
大剣を逸らし、回転しながら足の剣でテオ教官を斬った。
「驚かせてくれる」
「それほどでも!」
ホルスターから双銃を抜き、剣と交えながら隙をみて魔力弾を撃った。足の剣と手の銃でようやく拮抗するまで行けた。
「せいっ!」
「ちっ……!」
剣を掴んだ回し蹴りを大剣にぶつけ、地面を引きずりながら後ろに下がらせた。
「ーーツァリ、やりなさい!」
「ソーンバインド!」
「なに⁉︎」
地面から生えた荊がテオ教官に巻きつき、動きを制限した。アリサはその隙に教官の背後に回り込んだ。
「行くわよ、レンヤ!」
「ああ!」
「はぁ!せい!やぁ!」「はっ!ふっ!とぉ!」
双剣を逆手で両手に持ち替え高速で何度も叩き込み。アリサも同様に剣で何度も叩き込み……
「「バーニングレイジ!」」
防御が崩れた瞬間を狙い、双剣と剣が交差する。
その攻撃に、ようやくテオ教官の膝を地につかせる事が出来た。
「はあっ……はあっ……」
「か、勝てた……?」
「3人がかりでもギリギリだなんて……」
俺達はテオ教官の激戦で息絶えだえになっていた。
「やれやれ……半年でここまで来たか。まさか、あれほど息の合った連携が出来るようになるとはね……まったく、いい意味で驚かせてくれる」
そう言うと、教官は何事も無かったかのように立ち上がる。
「残り3組、続けて行くぞ!同じく3人ずつ呼ぶから、準備しておけ!」
それからテオ教官は休まず残りのメンバーの相手を務める事になり……
「はあはあ……さすがに疲れた……」
全員の実技テストが終わり、テオ教官は地面に突き刺した大剣の面に寄りかかりながら座り、珍しく息を上げていた。
「な、なんて人だ……」
「まったく、サシで勝てる気がしないぜ……」
「……同感、もっと腕を磨かないとね」
「そうだな……」
「ふう……ここまで疲れたのは久しぶりだな。時々、鈍らない程度には鍛えていたんだがな……」
「そ、そうなんですか……⁉︎」
「しかも、サラッと私達、全員で戦ったのを疲れた程度で済ませないでください」
「まだ余力を残しているようですしね」
「うん、軽口を言えるくらいだし」
「いやいや……正直、ちょっと感心したぞ。これで心置きなく実習地を発表出来る……っと」
テオ教官は、まるで疲れを感じさせずに立ち上がるり、封筒を取り出した。
「じゃ、受けとりな」
テオ教官に今月の実習地が記された紙を渡される。
【9月特別実習】
A班:レンヤ、アリサ、アリシア、なのは、シェルティス、ツァリ
(実習地:工業都市イラ)
B班:すずか、はやて、フェイト、ユエ、リヴァン
(実習地:貿易都市アーネンベルク)
「これは……」
「イラに、アーネンベルク……耳にしたことはあります」
「まあ、それなりに有名なんだけど……」
「それに、アーネンベルクといえば……」
「人口30万を誇るミッドチルダ第2の巨大次元間貿易都市。過激派の中心にいるソイレント中将の本拠地だね」
あの、イレイザーズを率いている、ソイレント中将のいる都市に。まだ、波の治っていない状況にも関わらず、実習地に選ぶなんて……
「おいテオ!このタイミングで野獣の檻の中に飛び込めと⁉︎」
「いくら何でも危ないと思うんやけど……」
「まあまあ、そのあたりの事は色々考えているから安心しろ。ただ、テロリストの事といい、のんびりとは行かねえがな。もちろんイラもな」
「そうだねー。ミッド南西に位置する工業都市……そこの組織団体の頂点に立つディアドラグループ。イーグレットSSと並べる企業だけど……内部でかなり割れているからね〜」
「そ、そうなんだ……」
「父さん達もこの時期にどうしてそんな実習先を……」
パンパンッ!
実習地に困惑する中、テオ教官が手を叩いた。
「さっきも言ったが、そのあたりはちゃんと考えている。来月は学院祭で、特別実習も無い。そんな意味で……今回の実習もこれまでの“総括”と言えるなら」
テオ教官の言葉を聞き、気が引き締まる。これまでの経験が目に見えて くるかもしれないという実感が出てくる。
「やりたいようにやってこい。お前達のVII組のためにもな」
「「「「「「「「「「「はいっ……!」」」」」」」」」」」
俺達はテオ教官の期待に応えるべく、大きく返事をした。
9月25日ーー
A班とB班は1階に集まっていた。
「ーーもう8時20分。来てないのはすずかとはやてか」
通常ならもうレールウェイに乗っている筈なのだが、ある事情でまだ寮内にいる。
「昨日は遅くまで喫茶店の企画を練っていたようですしね」
「ああ、内装とか、メニューはだいたい固まったんだが……衣装とイラストとかは2人とも拘っているみたいでさ」
「うんうん、面白くなりそうだねー」
「ふう、すずかはともかく、はやての方は気になるわね……」
「まあ、それについては2人に任せておこうよ」
「それにしても、昨日の事は結構驚いたね。テオ教官がいきなりあんな事を言うなんて……」
「ああ、そうだな……」
昨日、夕食を食べている時に……
【ーーそうそう、明日は出発前に魔導学院に寄ってもらうからな。朝9時にドーム内に集合。両班遅れるなよ】
前触れもなくそう言っており、レールウェイでの移動を開始していなかったのだ。
「あいつが唐突なのは毎度の事だけど」
「一体、何をするんだろうね……?東部にあるアーネンベルクはレールウェイで8時間はかかるのに」
「到着する事には日も暮れているね」
「そうね、イラだって5時間以上はかかるんだし。どっちも始発に乗ってもいいくらいだわ」
「そうだな……」
そこで後ろに振り向くと、ファリンさんが静かに立っていた。
「あの、ファリンさん?もしかして何か知っています?」
「い、いえ、何でもありませんよ。あくまで皆さんのお見送りをさせてもらっているだけです」
露骨に怪しんだけど……忍義姉さんと何か企んでいる顔に近いんだけど。
『怪しいね』
『教えてはくれなさそうみたいようだけどね』
『すずかも大変だな……』
「ごめん……!寝坊しちゃって……!」
「おはよう、皆」
ちょうどそこへ、すずかとはやてが降りてきた。
「おはよう、2人共」
「これで全員揃いましたね」
「本当にごめんね……それで9時にドームに行くんだよね?」
「何のつもりかわからへんけど、まだ余裕はあるなぁ」
「それじゃあ、行こっか。お互い、準備もあるしまた後で」
「そうだね」
「皆さん、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「頑張り〜」
見送るファリンさんを、すずかが怪しみながらも。寮を出て学院に向かった。
その途中、練武館の前にランディがいた。おそらく朝練に来ていたのだろう。
「む、どうして君達がこんな時間にいる?今日は特別実習の日たっだろう?」
ちなみに夏至祭以降、気軽に話しかけられるくらいの関係になっていた。
「ああ、なんだかドームに呼ばれてさ。そういうランディこそ、珍しく朝練に来てたのか?」
「いつもより早く起きたから来ただけだ。部長に完敗したのが悔しくてここにいるわけじゃないぞ」
聞いてないのに自分から理由を言った。
『あはは……思ったより素直なんだね』
『自分で墓穴を掘っているね』
「そういえば、君達はイラとアーネンベルクに向かうみたいだな。さすがに無謀だな」
「まあ……確かに難しい場所だけど……」
「ソイレント中将の本拠地であるアーネンベルクはもちろん……イラもあんまりいい噂は聞かないわね」
「もしかして……心配してくれてるのか?」
「フ、フン、そんなんじゃない。ただ、君達とは学院祭で決着をつもりだ。帰って来なくて勝ち越しなんか許さないぞ」
「……ああ、わかった。お互い来月の学院祭も頑張るとしよう」
やはり素直に言えないが、以前よりどこか柔らかくなっている感じがする。その後、予定通りドームに入った。そこにはテオ教官がすでにいた。
「テオ教官。もう来てたんですかーー」
そこで、テオ教官の後ろにファリンさんがいる事に気付く。
「ファ、ファリン⁉︎」
「さっきまで寮にいたよね……⁉︎」
「実はテオさんに呼ばれてまして。皆さんを見送った後、こっちに来たわけです」
結局、予感していた通りになってしまったわけだ。
「やっぱり何か企んでいたね」
「ファリンさんらしいというか……」
「さすがはファリンさんだね。後ですずかちゃんが驚くよ」
「相変わらず気苦労が絶えないみたいだな。彼女にはA班の案内役でここに来てもらっているんだ」
「そういう事です」
「……B班の案内役?」
「もしかして……」
「あ、もう来てたんだ」
そこへ、フェイト達B班が到着した。
「あれ?なんでファリンさんがおるんや?」
「や、やっぱり……」
「ふふ、相変わらずですね」
すずかが落ち込む中、定刻通りVII組全員、ドームに集まった。
「A班、B班揃ったな。お、9時ジャスト……予定通りだな」
「え……」
テオ教官は空間ディスプレイの時計を見てそんなことを言う。なんの予定通りと聞こうとしたら……
キイイィィィィ………
遠くから何かの音が聞こえてきた。
「この音は……」
「風を切る音……いえ」
「これは………飛行船……ううん、船艦の音だね」
「この付近に船艦だと?」
音の正体を確かめようと空を見上げる。
「あ!」
「あれって……?」
「な、なんなんや、あれは……⁉︎」
「ーー来たか」
空からゆっくりこちらに向かって、黒い大型船艦が降下していた。
さすがに驚愕して空いた口が塞がらなかった。
「あれは……!」
「次元艦か!」
「び、びっくりしたよ……」
「黒い艦船……いったいどこの……」
「普通に考えたら次元船行部隊だと思うけど……」
「でも……このシルエットはどこかで……」
フェイトが見覚えのあるように、頭を捻る。もう一度船艦をすみずみまで見て……
「あ、そうか、アースラだ。アースラに似てるんだ」
「そういえば……!」
「言われてみれば……確かに」
「アースラよりは大きく気もするけど」
そう話している間にも船艦は降下を続けていた。
「えっと、まさか……⁉︎」
「このまま着地する気か……?」
「ああ、もちろん」
「ドームも幸いにあの船艦より大きいですから、余裕で着陸できますよ」
そう言い、場所を空けるためかテオ教官とファリンさんは横に移動する。
「しっかし、いったい誰が乗っとるんやろな」
「そうだね……って、やっぱり知ってたの⁉︎」
すずかが突っ込む中、静かに船艦はドーム内に着陸した。よく見てみると、次元船行部隊のエンブレムがあった。
「改めて見ると凄いね」
「なかなか綺麗じゃない」
「本当にアースラに似ているね」
「次元船行部隊のエンブレム……管理局の船であることは間違いないね」
「ーー皆さん。10日ぶりですね」
聞き覚えの声がすると、甲板にミゼットさんとヴィータが現れた。
「ミゼットさん……!」
「それに、ヴィータもなんでそこにおるんや……」
「ばあちゃんに呼ばれてさ、護衛としているんだ」
「なんで2人がそこに?」
「ふふふ、反応はいいみたいね。これならお披露目でもいい効果は得られそうね」
「お披露目だと……?」
「あはは……もう何がなんだか……」
突然の出来事に、さすがに着いて行けない人もいるようだ。
「今回、あたし達はあんま関係ねえ。主役はあくまでこの艦とあいつになるな」
「え?」
「あいつ……?」
「ーー久しぶりだね。VIIの諸君。初めての人も多そうだけど」
また、聞き覚えのある声が甲板の反対側から聞こえてきた。
「あ……」
「その声は……」
現れたのは、前の会議で顔を見たけど会話はしてないが……間接的に助けてくれたクロノ・ハラオウンがいた。隣にはヴィロッサもいた。
「あなたは……」
「クロノ君⁉︎」
「確か、フェイトの上司に当たる人だよね?」
「う〜ん、一応……そうなのかな?」
「ヴィロッサも一緒なんやな」
「お互い、凄い状況で再開したね」
「それよりも……もしかして?」
フェイトは半信半疑ながらも聞いてみた。それにヴィロッサが答えた。
「紹介するよ。この艦を任せれたクロノ・ハラオウン艦長だよ」
「……!」
「なるほどね。アースラも若くないと聞いていたけど……」
「まあ、詳しい事は後で説明するよ」
「な、なんだこれは⁉︎」
そこへ、ランディとクー先輩、エテルナ先輩、グロリア先輩、フィアット会長がドームに入って来た。先輩達は事前に知っていたような感じで……
「………………(パクパク)」
ランディは驚きのあまり空いた口が塞がらなかった。
「わあっ、綺麗な船艦だね!」
「ひゅ〜、すげえなぁ」
「ええ、大したものです」
「凄いな……聞いていたスペック以上にとんでもない性能みたいだ」
さらにそこに続いて、ヴェント学院長も入って来た。
「学院長……」
「あの、これって……」
「ふふ、驚くのも無理ない。理事長の提案で今回は特別な計らいとなっての。その艦で、それぞれの実習地まで送ってくれるそうだ」
「ええっ⁉︎」
「ほんまですか⁉︎」
「あくまでお披露目の試験飛行のついでだがな。いったんクラナガンに向かってからイラに直行するってさ」
「はは……なんと申しましょうか」
「驚きすぎて、寝不足もあって頭がクラクラしてきたよ……」
今日だけで、すずかの疲労はこの中で一番だと思われる。
「ーーそれでは統幕議長。そろそろ参りましょう」
「ええ、よろしくお願いするわ」
そう言い、クロノは前に出て……
「ようこそ、VII組の諸君!」
両手を広げて、高々と声を上げた。
「XV級大型次元船行艦ーーークラウディアへ!」