魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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88話

 

 

自由行動日の夜、その日のうちに準備に必要な手順と手続き、役割分担、運営、機材の調達、メニューに出す料理の材料の調達やその衛生、ついでに衣装などもその日の間に決めた。はっきり言って、この人数で喫茶店は無謀な気もするが……そこは何とか管理局で培われた腕の見せ所と言うものだ。

 

初めての学院祭……必ず成功と上位入賞を狙って行くため、夜遅くまで意見を出し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後、9月22日ーー

 

予定通り実技テストが始まり、VII組のメンバーはドームに集まっていた。

 

「ーー学院祭の準備、順調みたいだな。この人数で喫茶店は大変だと思うが、具体的にどんな喫茶店にするのか決まったのか?」

 

「基本的にお菓子をメインにした喫茶店の予定です。昼にランチも出せる方向性ですかね」

 

テオ教官の質問になのはが決定した内容を話した。

 

「なるほど、悪くはないな。限られた人数をやり繰りするのは大変そうだが……俺も遠目から応援しているぞ」

 

「真面目に手伝ってください。教官が許可しないと進まない案件が多いんですよ」

 

「わーってるって、そういや衣装の方はどうなってんだ?確か、はやてとレンヤが担当してるんだよな、何とかなりそうか?」

 

「バッチリやで♪」

 

「まだデザインを検討しています」

 

2人の意見がまるで違う事に、他が……特に女子が心配になる。

 

「……大丈夫なんでしょうね?」

 

「ま、まあ、レンヤもいる事だし……」

 

「暴走は止められると思うよ」

 

「うーん、若いなぁ。俺も後5年……いや、10年若ければ参加出来たんだがなぁ」

 

一瞬、サバを読もうとしたが……すぐに訂正した。テオ教官の年齢は20代半ば、5年前でも無理であった。

 

「あはは、そうですね」

 

「今でもギリギリ行けそうと思うけど……」

 

「若く見られるのも、どうかと……」

 

「やかましい!男は歳を重ねる事にハードボイルドになる。その魅力に女が引き寄せられるんだよ!」

 

自棄っぱちと言うか、負け惜しみな気もするが……これ以上は先に進まないと思いテオ教官は咳払いをする。

 

「ーーコホン。まあ学院祭は楽しみだと思うが、気持ちを切り替えろ。来月は知っての通り特別実習も実技テストもない。だから今回は“区切り”として、ちょっと気合を出してもらおうか?」

 

そう言い、テオ教官は小さい剣のキーホルダー……待機状態のデバイスを取り出し、起動して大剣が地面に突き刺さった。

 

「まさか……」

 

「……試合のお相手は教官自らですか」

 

「ああ、5月の実技テストの再現になるのか?今回ばっかしは俺も本気で行くぞ……まずはレンヤーー2人選べ!」

 

「はい……!」

 

俺は小細工は通用しないと考え、同じ前衛としてアリサを、後衛にツァリを……と言う選択にした。

 

メンバーが決まり、テオ教官の前に立ちデバイスを起動しバリアジャケットを纏う。テオ教官は地面から大剣を抜き、青紫色の魔力光を出しながら構える。

 

「さすがに本気みたいね……」

 

「でも、僕達だって確実に強くなっている……!」

 

「とにかく、俺達の全力をぶつけるしかないな」

 

「ええ、やるわよ……フレイムアイズ!」

 

《イエス、マイロード》

 

テオ教官は俺達の会話を確認した後、大剣を両手で持った。

 

「ーー準備はいいな。入学して半年、お前らなら届く筈だ……このテリオス・ネストリウス・オーヴァを退けてみろ!」

 

「「「はいっ!」」」

 

返事と同時にアリサと飛び出し、テオ教官に斬りかかる。

 

「ふっ……!」

 

テオ教官は、それを苦もなく受け止める。無論、俺達も想定済みである。

 

「フレイムアイズ!」

 

《ロードカートリッジ》

 

「レゾナンスアーク!」

 

《オールギア、ドライブ》

 

鍔迫り合いをしている中、魔力を上げてテオ教官を力で押し始めた。

 

「うおっ……と!」

 

少し押されたと思い、踏ん張ろうとした瞬間……薄紫の花びらが鋭くテオ教官の背後から飛んできた。それを見向きもせず、避けられたが。

 

「そらっ!」

 

後ろに跳びながら大剣を目にも止まらぬ速さで振り抜き、魔力斬撃を高速で飛ばしてきた。

 

「ッ!」

 

《ソニックソー》

 

それを斬り裂いて防ぎ、アリサが地面を滑るように前に出る。

 

「せい!」

 

「とっ……!」

 

剣を振り抜き、すぐに引くアリサ。テオ教官は追撃をかけようとしたが……

 

《リバースブレード》

 

「行きな、さい!」

 

体を大きく捻り、フレイムアイズをブーメランのように回転させながら投げた。

 

「随分と大胆だな……!」

 

迫る剣を危なげなく避けようとする。

 

「させません……ウィープスロー!」

 

そこに、ツァリが上から端子の壁を下ろし逃げ道を塞いだ。テオ教官は足を止め、剣を受け止める。

 

「蒼刃斬雨!」

 

その隙に空いた懐に潜り込み、刀と魔力刃を重ねて幾つもの突きを放った。

 

ガガガガガガガキンッ‼︎

 

「なっ……⁉︎」

 

剣を弾いた後、大剣を最小限動かすて全ての剣を防がれた。

 

「どんな動体視力しているんですか……!」

 

「半分は感だぞ」

 

「どちらにせよ人間やめてるわよ!」

 

《キャノンフォルム、ブレイズキャノン》

 

フレイムアイズの刀身を一部スライドし、砲身が出てきて、炎を纏った魔力弾を撃った。テオ教官は刀を弾くと同時に後退して避ける。

 

「まだまだ!」

 

「えいっ!」

 

次々とアリサは魔力弾を撃ち、先回りしてツァリの花びらが左右を攻める。その間にレゾナンスアークをカルテットモードに切り替え、両手に剣を持つ。

 

「アリサ!」

 

「任せなさい!」

 

《ジェノサイドブレイザー》

 

空気中の魔力を砲身に集中させ、炎の砲撃を放ちながらテオ教官に向かって薙ぎ払った。

 

「なんちゅう砲撃だっつうの……!」

 

《シザークラッチ》

 

4つの魔力斬撃を砲撃の外側に飛ばし、もう一度大剣を振るうと。4つの魔力斬撃が直角に曲がり、3つが砲撃を斬り裂き、もう1つがアリサに向かって行った。

 

「きゃっ……!」

 

すぐさま障壁を張って防御するも、あまりの威力に飛ばされてしまう。

 

「行くぞ、ツァリ!」

 

「ッ……!」

 

テオ教官は近接戦が苦手なツァリに向かって行く。ツァリは振られて来る大剣を花びらで逸らしながら避ける。いつもなら、花びらで受け止める筈だが、1秒も受け止められない為逸らすのが手一杯のようだ。

 

「はあっ!」

 

「いいぞ、どんどん来い!」

 

背後から斬りかかってもあっさり受け止められる。何度も斬り合うが、こっちは小回りが効く片手剣……だが、あっちは大剣なのだが同じ剣速で剣の重さは教官の方が上の為、こっちが不利な状況だ。

 

「そらよ!」

 

「ぐあっ!」

 

上に弾かれた直後、胸に回し蹴りを入れられ吹き飛ばされる。そのまま追撃され、大剣が振り下ろされようとした。

 

「くうッ……!」

 

両手の剣を前に軽く放り、体を捻り地面に手を付け、バリアジャケットの靴を消して……

 

「ふっ!」

 

「…………⁉︎」

 

足で剣を掴み、蹴り上げと同時に大剣を受け止めた。

 

「飛燕連脚!」

 

大剣を逸らし、回転しながら足の剣でテオ教官を斬った。

 

「驚かせてくれる」

 

「それほどでも!」

 

ホルスターから双銃を抜き、剣と交えながら隙をみて魔力弾を撃った。足の剣と手の銃でようやく拮抗するまで行けた。

 

「せいっ!」

 

「ちっ……!」

 

剣を掴んだ回し蹴りを大剣にぶつけ、地面を引きずりながら後ろに下がらせた。

 

「ーーツァリ、やりなさい!」

 

「ソーンバインド!」

 

「なに⁉︎」

 

地面から生えた荊がテオ教官に巻きつき、動きを制限した。アリサはその隙に教官の背後に回り込んだ。

 

「行くわよ、レンヤ!」

 

「ああ!」

 

「はぁ!せい!やぁ!」「はっ!ふっ!とぉ!」

 

双剣を逆手で両手に持ち替え高速で何度も叩き込み。アリサも同様に剣で何度も叩き込み……

 

「「バーニングレイジ!」」

 

防御が崩れた瞬間を狙い、双剣と剣が交差する。

 

その攻撃に、ようやくテオ教官の膝を地につかせる事が出来た。

 

「はあっ……はあっ……」

 

「か、勝てた……?」

 

「3人がかりでもギリギリだなんて……」

 

俺達はテオ教官の激戦で息絶えだえになっていた。

 

「やれやれ……半年でここまで来たか。まさか、あれほど息の合った連携が出来るようになるとはね……まったく、いい意味で驚かせてくれる」

 

そう言うと、教官は何事も無かったかのように立ち上がる。

 

「残り3組、続けて行くぞ!同じく3人ずつ呼ぶから、準備しておけ!」

 

それからテオ教官は休まず残りのメンバーの相手を務める事になり……

 

「はあはあ……さすがに疲れた……」

 

全員の実技テストが終わり、テオ教官は地面に突き刺した大剣の面に寄りかかりながら座り、珍しく息を上げていた。

 

「な、なんて人だ……」

 

「まったく、サシで勝てる気がしないぜ……」

 

「……同感、もっと腕を磨かないとね」

 

「そうだな……」

 

「ふう……ここまで疲れたのは久しぶりだな。時々、鈍らない程度には鍛えていたんだがな……」

 

「そ、そうなんですか……⁉︎」

 

「しかも、サラッと私達、全員で戦ったのを疲れた程度で済ませないでください」

 

「まだ余力を残しているようですしね」

 

「うん、軽口を言えるくらいだし」

 

「いやいや……正直、ちょっと感心したぞ。これで心置きなく実習地を発表出来る……っと」

 

テオ教官は、まるで疲れを感じさせずに立ち上がるり、封筒を取り出した。

 

「じゃ、受けとりな」

 

テオ教官に今月の実習地が記された紙を渡される。

 

 

【9月特別実習】

 

A班:レンヤ、アリサ、アリシア、なのは、シェルティス、ツァリ

(実習地:工業都市イラ)

 

B班:すずか、はやて、フェイト、ユエ、リヴァン

(実習地:貿易都市アーネンベルク)

 

 

「これは……」

 

「イラに、アーネンベルク……耳にしたことはあります」

 

「まあ、それなりに有名なんだけど……」

 

「それに、アーネンベルクといえば……」

 

「人口30万を誇るミッドチルダ第2の巨大次元間貿易都市。過激派の中心にいるソイレント中将の本拠地だね」

 

あの、イレイザーズを率いている、ソイレント中将のいる都市に。まだ、波の治っていない状況にも関わらず、実習地に選ぶなんて……

 

「おいテオ!このタイミングで野獣の檻の中に飛び込めと⁉︎」

 

「いくら何でも危ないと思うんやけど……」

 

「まあまあ、そのあたりの事は色々考えているから安心しろ。ただ、テロリストの事といい、のんびりとは行かねえがな。もちろんイラもな」

 

「そうだねー。ミッド南西に位置する工業都市……そこの組織団体の頂点に立つディアドラグループ。イーグレットSSと並べる企業だけど……内部でかなり割れているからね〜」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「父さん達もこの時期にどうしてそんな実習先を……」

 

パンパンッ!

 

実習地に困惑する中、テオ教官が手を叩いた。

 

「さっきも言ったが、そのあたりはちゃんと考えている。来月は学院祭で、特別実習も無い。そんな意味で……今回の実習もこれまでの“総括”と言えるなら」

 

テオ教官の言葉を聞き、気が引き締まる。これまでの経験が目に見えて くるかもしれないという実感が出てくる。

 

「やりたいようにやってこい。お前達のVII組のためにもな」

 

「「「「「「「「「「「はいっ……!」」」」」」」」」」」

 

俺達はテオ教官の期待に応えるべく、大きく返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9月25日ーー

 

A班とB班は1階に集まっていた。

 

「ーーもう8時20分。来てないのはすずかとはやてか」

 

通常ならもうレールウェイに乗っている筈なのだが、ある事情でまだ寮内にいる。

 

「昨日は遅くまで喫茶店の企画を練っていたようですしね」

 

「ああ、内装とか、メニューはだいたい固まったんだが……衣装とイラストとかは2人とも拘っているみたいでさ」

 

「うんうん、面白くなりそうだねー」

 

「ふう、すずかはともかく、はやての方は気になるわね……」

 

「まあ、それについては2人に任せておこうよ」

 

「それにしても、昨日の事は結構驚いたね。テオ教官がいきなりあんな事を言うなんて……」

 

「ああ、そうだな……」

 

昨日、夕食を食べている時に……

 

【ーーそうそう、明日は出発前に魔導学院に寄ってもらうからな。朝9時にドーム内に集合。両班遅れるなよ】

 

前触れもなくそう言っており、レールウェイでの移動を開始していなかったのだ。

 

「あいつが唐突なのは毎度の事だけど」

 

「一体、何をするんだろうね……?東部にあるアーネンベルクはレールウェイで8時間はかかるのに」

 

「到着する事には日も暮れているね」

 

「そうね、イラだって5時間以上はかかるんだし。どっちも始発に乗ってもいいくらいだわ」

 

「そうだな……」

 

そこで後ろに振り向くと、ファリンさんが静かに立っていた。

 

「あの、ファリンさん?もしかして何か知っています?」

 

「い、いえ、何でもありませんよ。あくまで皆さんのお見送りをさせてもらっているだけです」

 

露骨に怪しんだけど……忍義姉さんと何か企んでいる顔に近いんだけど。

 

『怪しいね』

 

『教えてはくれなさそうみたいようだけどね』

 

『すずかも大変だな……』

 

「ごめん……!寝坊しちゃって……!」

 

「おはよう、皆」

 

ちょうどそこへ、すずかとはやてが降りてきた。

 

「おはよう、2人共」

 

「これで全員揃いましたね」

 

「本当にごめんね……それで9時にドームに行くんだよね?」

 

「何のつもりかわからへんけど、まだ余裕はあるなぁ」

 

「それじゃあ、行こっか。お互い、準備もあるしまた後で」

 

「そうだね」

 

「皆さん、お気をつけて行ってらっしゃいませ」

 

「頑張り〜」

 

見送るファリンさんを、すずかが怪しみながらも。寮を出て学院に向かった。

 

その途中、練武館の前にランディがいた。おそらく朝練に来ていたのだろう。

 

「む、どうして君達がこんな時間にいる?今日は特別実習の日たっだろう?」

 

ちなみに夏至祭以降、気軽に話しかけられるくらいの関係になっていた。

 

「ああ、なんだかドームに呼ばれてさ。そういうランディこそ、珍しく朝練に来てたのか?」

 

「いつもより早く起きたから来ただけだ。部長に完敗したのが悔しくてここにいるわけじゃないぞ」

 

聞いてないのに自分から理由を言った。

 

『あはは……思ったより素直なんだね』

 

『自分で墓穴を掘っているね』

 

「そういえば、君達はイラとアーネンベルクに向かうみたいだな。さすがに無謀だな」

 

「まあ……確かに難しい場所だけど……」

 

「ソイレント中将の本拠地であるアーネンベルクはもちろん……イラもあんまりいい噂は聞かないわね」

 

「もしかして……心配してくれてるのか?」

 

「フ、フン、そんなんじゃない。ただ、君達とは学院祭で決着をつもりだ。帰って来なくて勝ち越しなんか許さないぞ」

 

「……ああ、わかった。お互い来月の学院祭も頑張るとしよう」

 

やはり素直に言えないが、以前よりどこか柔らかくなっている感じがする。その後、予定通りドームに入った。そこにはテオ教官がすでにいた。

 

「テオ教官。もう来てたんですかーー」

 

そこで、テオ教官の後ろにファリンさんがいる事に気付く。

 

「ファ、ファリン⁉︎」

 

「さっきまで寮にいたよね……⁉︎」

 

「実はテオさんに呼ばれてまして。皆さんを見送った後、こっちに来たわけです」

 

結局、予感していた通りになってしまったわけだ。

 

「やっぱり何か企んでいたね」

 

「ファリンさんらしいというか……」

 

「さすがはファリンさんだね。後ですずかちゃんが驚くよ」

 

「相変わらず気苦労が絶えないみたいだな。彼女にはA班の案内役でここに来てもらっているんだ」

 

「そういう事です」

 

「……B班の案内役?」

 

「もしかして……」

 

「あ、もう来てたんだ」

 

そこへ、フェイト達B班が到着した。

 

「あれ?なんでファリンさんがおるんや?」

 

「や、やっぱり……」

 

「ふふ、相変わらずですね」

 

すずかが落ち込む中、定刻通りVII組全員、ドームに集まった。

 

「A班、B班揃ったな。お、9時ジャスト……予定通りだな」

 

「え……」

 

テオ教官は空間ディスプレイの時計を見てそんなことを言う。なんの予定通りと聞こうとしたら……

 

キイイィィィィ………

 

遠くから何かの音が聞こえてきた。

 

「この音は……」

 

「風を切る音……いえ」

 

「これは………飛行船……ううん、船艦の音だね」

 

「この付近に船艦だと?」

 

音の正体を確かめようと空を見上げる。

 

「あ!」

 

「あれって……?」

 

「な、なんなんや、あれは……⁉︎」

 

「ーー来たか」

 

空からゆっくりこちらに向かって、黒い大型船艦が降下していた。

 

さすがに驚愕して空いた口が塞がらなかった。

 

「あれは……!」

 

「次元艦か!」

 

「び、びっくりしたよ……」

 

「黒い艦船……いったいどこの……」

 

「普通に考えたら次元船行部隊だと思うけど……」

 

「でも……このシルエットはどこかで……」

 

フェイトが見覚えのあるように、頭を捻る。もう一度船艦をすみずみまで見て……

 

「あ、そうか、アースラだ。アースラに似てるんだ」

 

「そういえば……!」

 

「言われてみれば……確かに」

 

「アースラよりは大きく気もするけど」

 

そう話している間にも船艦は降下を続けていた。

 

「えっと、まさか……⁉︎」

 

「このまま着地する気か……?」

 

「ああ、もちろん」

 

「ドームも幸いにあの船艦より大きいですから、余裕で着陸できますよ」

 

そう言い、場所を空けるためかテオ教官とファリンさんは横に移動する。

 

「しっかし、いったい誰が乗っとるんやろな」

 

「そうだね……って、やっぱり知ってたの⁉︎」

 

すずかが突っ込む中、静かに船艦はドーム内に着陸した。よく見てみると、次元船行部隊のエンブレムがあった。

 

「改めて見ると凄いね」

 

「なかなか綺麗じゃない」

 

「本当にアースラに似ているね」

 

「次元船行部隊のエンブレム……管理局の船であることは間違いないね」

 

「ーー皆さん。10日ぶりですね」

 

聞き覚えの声がすると、甲板にミゼットさんとヴィータが現れた。

 

「ミゼットさん……!」

 

「それに、ヴィータもなんでそこにおるんや……」

 

「ばあちゃんに呼ばれてさ、護衛としているんだ」

 

「なんで2人がそこに?」

 

「ふふふ、反応はいいみたいね。これならお披露目でもいい効果は得られそうね」

 

「お披露目だと……?」

 

「あはは……もう何がなんだか……」

 

突然の出来事に、さすがに着いて行けない人もいるようだ。

 

「今回、あたし達はあんま関係ねえ。主役はあくまでこの艦とあいつになるな」

 

「え?」

 

「あいつ……?」

 

「ーー久しぶりだね。VIIの諸君。初めての人も多そうだけど」

 

また、聞き覚えのある声が甲板の反対側から聞こえてきた。

 

「あ……」

 

「その声は……」

 

現れたのは、前の会議で顔を見たけど会話はしてないが……間接的に助けてくれたクロノ・ハラオウンがいた。隣にはヴィロッサもいた。

 

「あなたは……」

 

「クロノ君⁉︎」

 

「確か、フェイトの上司に当たる人だよね?」

 

「う〜ん、一応……そうなのかな?」

 

「ヴィロッサも一緒なんやな」

 

「お互い、凄い状況で再開したね」

 

「それよりも……もしかして?」

 

フェイトは半信半疑ながらも聞いてみた。それにヴィロッサが答えた。

 

「紹介するよ。この艦を任せれたクロノ・ハラオウン艦長だよ」

 

「……!」

 

「なるほどね。アースラも若くないと聞いていたけど……」

 

「まあ、詳しい事は後で説明するよ」

 

「な、なんだこれは⁉︎」

 

そこへ、ランディとクー先輩、エテルナ先輩、グロリア先輩、フィアット会長がドームに入って来た。先輩達は事前に知っていたような感じで……

 

「………………(パクパク)」

 

ランディは驚きのあまり空いた口が塞がらなかった。

 

「わあっ、綺麗な船艦だね!」

 

「ひゅ〜、すげえなぁ」

 

「ええ、大したものです」

 

「凄いな……聞いていたスペック以上にとんでもない性能みたいだ」

 

さらにそこに続いて、ヴェント学院長も入って来た。

 

「学院長……」

 

「あの、これって……」

 

「ふふ、驚くのも無理ない。理事長の提案で今回は特別な計らいとなっての。その艦で、それぞれの実習地まで送ってくれるそうだ」

 

「ええっ⁉︎」

 

「ほんまですか⁉︎」

 

「あくまでお披露目の試験飛行のついでだがな。いったんクラナガンに向かってからイラに直行するってさ」

 

「はは……なんと申しましょうか」

 

「驚きすぎて、寝不足もあって頭がクラクラしてきたよ……」

 

今日だけで、すずかの疲労はこの中で一番だと思われる。

 

「ーーそれでは統幕議長。そろそろ参りましょう」

 

「ええ、よろしくお願いするわ」

 

そう言い、クロノは前に出て……

 

「ようこそ、VII組の諸君!」

 

両手を広げて、高々と声を上げた。

 

「XV級大型次元船行艦ーーークラウディアへ!」

 

 


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