魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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86話

 

 

レンヤ達はテロリストの襲撃に会議出席者を守るため、階段を降りて会議室前の廊下を走っていた。

 

テロリストはエレベーターを使い、会議室のある35階にまっすぐ向かっており、このフロアに待機していた警備隊は横長のテーブルをバリケードにしてテロリストの持つ質量兵器の銃に対抗していた。

 

ドガアアアンッ!

 

「「「ぐああああっ!」」」

 

しかし、爆弾でバリケードごと警備隊は倒されてしまった。

 

「今だ!」

 

「奴らの首を取れ!」

 

バリケードを乗り越え、テロリストが会議室に向かおうとした時……

 

「はあっ!」

 

テオが大剣を振り下ろし、向かって来たテロリストを後退させた。

 

「すまんな、ここは通行止めだ」

 

「ぐっ、青嵐(オラージュ)か!」

 

「怯むな!波状攻撃を仕掛けるぞ!」

 

テロリストが武器をテオに向けると、後方からシグナム達が来た。

 

「ーー助太刀する!」

 

「あなた達は下がってにゃ〜」

 

「す、すまない……」

 

「大丈夫ですか?」

 

シグナムが剣を、イシュタルが槍を構え前に出て。ギンガが負傷者に肩を貸し、後ろに下がる。

 

「イシュタル・フェリーヌ!地上部隊筆頭か!」

 

「あれは夜天の守護騎士、烈火の将……⁉︎」

 

「構わん、やってしまえ!」

 

それを皮切りに銃を撃ち始めた。それと共にグリードも出して来た。テオが高速で迫る銃弾を斬り、シグナムとイシュタルが左右の敵と戦い始めた。

 

「! この人達……」

 

「なんだ、この力は?」

 

「おそらく、オーバーロードかそれに似たようなものだろう!」

 

たとえ力が上がったテロリストでも、テオ達は全く引けを取らず。むしろ優勢になっていた。

 

そこに会議室前に到着したレンヤ達が、その光景を見ていた。

 

「凄いな……!」

 

「テオもそうだが……シグナムも前より腕が上がってるし。あのイシュタルって人も飄々としいる割にはかなり強え」

 

「でも、あれなら何とか……」

 

フェイトが安堵した時、会議室の扉が開き、ヴィロッサが出て来た。

 

「あ、来たね」

 

「ヴェロッサさん……!」

 

「出席者の皆さんは無事ですか⁉︎」

 

「うん、今のところはね」

 

そこで次はヴィータが出て来た。バリアジャケットは以前のいわゆるゴスロリではなく……赤い髪を背中に流し、必要最低限の装飾と動きやすさを重視した赤いドレスだった。のろウサのぬいぐるみは左胸に1体付いていた。おそらくはやてが作ったんだろう。

 

「どうやらノンビリ話は出来ねぇみたいだな。後ろからも来たぞ」

 

「え……」

 

はやてが驚く中、はやてとフェイト以外が異変に気付き、後ろに振り返った。

 

「この感じは……!」

 

「何か来たようだな」

 

さきほど来た通路から、土偶型のグリードが数体出て来た。

 

「こ、これって……!」

 

「初めて見るタイプだな」

 

「撃退するぞ!」

 

「あたしはあっちに行く、後は頼んだぞ!」

 

「任せておいてや!」

 

ヴィータがテオ達に加勢し、レンヤ達は目の前の敵に向かって行った。

 

「はっ!」

 

ユエが剄を纏った拳で殴るが、吹っ飛ばしただけでヒビもつかなかった。

 

「こいつは硬いな」

 

「こういうのが1番面倒だな!」

 

リヴァンが弦を引いて、鋼糸を飛ばすも。グリードの硬い装甲に弾かれてしまう。

 

グリードの閉じらていた目が開かれると、熱線が放たれた。

 

「パンツァーシルト!」

 

それをはやてが魔法陣を展開して防いだ。

 

「スノーホワイト!」

 

《スナイパーフォーム、フリージングバレット》

 

スノーホワイトを長銃に変え、凍結魔力弾を撃つ。次々と命中して動きを止めがグリードは構わず熱線を放ち続ける。そこにはやての防御の左右を通り、レンヤとフェイトが飛び出した。

 

《ファーストギア、ドライブ》

 

「無心、想斬!」

 

《ロードカートリッジ、ライオットザンバー》

 

「はあっ!」

 

レンヤは素早く流れるようにグリードの間を通り抜け、凍っていない部分に切れ込みをいれ。フェイトはバルディッシュを双剣に変え、同じように切れ込みを入れる。

 

「リヴァン、ユエ!」

 

「ああ」

 

「了解!」

 

レンヤの呼び声に答え、全部のグリードに鋼糸を巻きつけ、ユエが鋼糸の束を掴み……

 

「おおおおおおっ‼︎」

 

全力で引っ張った。グリードは引っ張られ、その先にすずかが構えていた。

 

《オールギア、ドライブ》

 

「ッ……!」

 

グリードが目の前に届いた瞬間……目にも止まらぬ速さで連続の突きを繰り出した。突きが当たるたびにグリードに刺さり、破片となって足元に落ちる。

 

「吹雪征伐!」

 

最後の全力の一突きで、土偶型のグリードはバラバラになった。

 

「やったな、すずか」

 

「うん、お疲れ様。レンヤ君」

 

「他はいないみたいだね」

 

周囲にグリードが残っていないか確認した後、テオ達に方を見た。梃子摺ってはいないようだが、まだかかりそうだ。

 

(あれ? あのグリード、確か消滅しないで破片に……!)

 

急いで振り返ると、全土偶型グリードが集まって。1体の巨大なグリードとなっていた。

 

「しまった! はやて!」

 

「え……」

 

はやてにグリードの腕が振り下ろされる。

 

「くっ、間に合わーー」

 

「ーー仇なす者に、秩序をもたらせ! バインド・オーダー!」

 

次の瞬間、グリードの周りに符が囲み、バインドがかけられ……そこに小規模の砲撃が放たれ、グリードを吹き飛ばし、土偶型のグリードを撃破した。

 

「はやてちゃん、大丈夫?」

 

「へ、平気や……」

 

「危ないところだったね」

 

そこに、符を持ったユーノが歩いてきた。

 

「ユーノ、助かったけど……オブサーバーなのに、ここに出てきていいのか?」

 

「うん、このくらいなら大丈夫だよ」

 

「ちなみにユーノ、それって……」

 

「ああ、これ? 前にリーゼ姉妹が使っていたカードの改良型だよ。簡易型のカートリッジシステムで、使い捨てだけど僕にあっていてね」

 

「なるほど、興味深いですね」

 

「ユーノ君、助けてくれてあんがとなぁ」

 

「ううん、はやてが無事でよかったよ」

 

「しかし、こんな物まで出して来るなんて……」

 

「おそらく、屋上から放ったんだと思うよ」

 

「こんなのが、うじゃうじゃいるのかよ」

 

「ええ、相当数いるでしょうね」

 

「お取り込み中失礼。あちらも終わりそうだよ」

 

ヴェロッサに言われ背後を見ると……テロリスト達は膝をつき、テオ達はほぼ無傷で立っていた。

 

「くっ……化物共め……!」

 

「仕方ない。プランを切り替えるぞ!」

 

そう言うと、何かを投げてきた。

 

「む……?」

 

「何これ?」

 

「スタングレネードだ、下がれ!」

 

テオが叫んだらすぐに下がりった。続いてスタングレネードが炸裂し、すぐに収まるとテロリストはいなく、エレベーターホールに続くシャッターが降ろされた。

 

「逃げられちゃった」

 

「不覚……」

 

「力づくでも面倒だな」

 

「皆さん!」

 

レンヤ達はテオ達に近寄った。

 

「そっちも終わったみてえだな」

 

「ああ、そっちも撃退したようだな?」

 

「だが、このままだと逃げられるだろう」

 

「すずか、やれるか?」

 

「やれるだけやってみるよ……!」

 

さきほどと同じように端末をコネクタに接続して、キーボードを打ち始めた。

 

「! やっぱり、セキリュティレベルが最大まで上げられているよ。突破できなくもないけど……その間に逃げられちゃう!」

 

「そうか……」

 

ーーーーーー♪

 

テオの端末が鳴り出した。おそらくテロリストの動向についてだろう。

 

「俺だ。こっちは今しがた凌いだところだ」

 

しばらくテオは黙って報告を聞いていると……

 

「……なに?連中がエレベーターで地下に降下しているだと……?」

 

その行動に、全員が疑問に思った。普通、撤退するのなら飛行艇がある屋上に向かうはずなのだから。

 

「ど、どうして……?」

 

「屋上にある飛行艇で逃げないんか……?」

 

「考えられるとしたら、飛行艇に搭載した爆弾で自爆するつもりなのかもしれない」

 

ヴェロッサがそう推理した。あながち否定できない推理だ。

 

「なっ……⁉︎」

 

「なるほど、ありえるな」

 

「つもり、地上本部ごと私達を消すつもりかな〜?」

 

「確かに、テロリストならやりかねないよ」

 

「くっ、愚かな……」

 

「さすがにマズイですよ」

 

「こうなったら、力づくでシャッターを!」

 

ヴィータがグラーフアイゼンを掲げ、振り下ろそうとした時……

 

「…………………え」

 

「すずか?」

 

すずかの惚けた声で止められた。

 

「な、なにこれ……別の誰かがハッキングで地上本部の制御を解放しようとしている……!」

 

「なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上本部、サーバー内。

 

『あらあら、これは』

 

現在、地上本部のシステムを掌握している犯人に……誰かが強固になったファイアーウォールをくぐり抜け、近づいていた。

 

『………………』

 

『ふふ、いい腕をお持ちのようで。あなたとなら楽しめそうですわ……!』

 

『ーーそこまでだよ』

 

未確認のハッカーの反対側にすずかが攻め込んできて、挟み撃ちにした。

 

『大人しく地上本部の制御を解放してもらうよ』

 

『あらあら、仕方ありませんね。そこのあなたと遊びたかったのですが……またの機会にしましょう。それでは、せいぜい死なないように頑張って下さいね』

 

本部を掌握していたハッカーは痕跡も残さず消えて行った。そして、すずかは未確認のハッカーと向かい合った。

 

『えっと、助けてくれてありがとう』

 

『…………………』

 

未確認のハッカーは無言でメールを送ると、消えて行った。

 

『あ……って、違う違う。早く制御を……って終わってるし⁉︎』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、とにかく、地上本部の制御を解放……!」

 

すずかが慌てながらキーボードを打ち込むと、シャッターが上がって行った。

 

「開いたか……!」

 

「エレベーターは使えるか⁉︎」

 

「はい。ロックは解除しました。テロリストの使用中の1基は使えませんけど」

 

「なら僕が屋上に行くよ。飛行艇に搭載された爆弾を解除する」

 

「ユーノ、出来るのか?」

 

「遺跡調査をするには、罠を知る必要があるからね」

 

「なら僕も行こう。フェレットもどきが失敗したらまとめて凍結処理をする」

 

「……クロノ。ヴィータが怒りそうだからやめておいて」

 

ヴィータが怒髪天を衝いたが如き形相をクロノに向ける。

 

「……すまん。冗談が過ぎた」

 

「あはは!いいよいいよ、場を和ませるジョークでしょう?」

 

「それはともかく、私も行こう。グリードを爆弾の防衛に使っているかもしれん」

 

「君達はテロリストの追撃を。今ならまだ間に合います」

 

「了解した」

 

「あたしも追撃に出るぞ」

 

「ん? 意外だな、てっきりユーノの護衛に回ると思ったが」

 

「ばーか、おめえらがいるから平気だろ。それに、中途半端は好きじゃねえ」

 

「時間が惜しい、行くぞ」

 

「ああ!」

 

二手に分かれ、レンヤ達はエレベーターで地下に降りて行った。

 

降りている間、レンヤはソエルからきた通信で連絡を取っていた。

 

「ああ……ああ。分かった、それだけ判れば十分だ。ありがとう、ソエル。気を付けてな」

 

通信を切り、フェイト達の方を向く。

 

「ソエルはなんて?」

 

「テロリストの逃走ルートを割り出したそうだ。地上本部基部……そこからジオフロント方面に逃げるようだ」

 

「基部という事は……本部の地下部分になるなぁ。確かに、ジオフロントの各区画と接続されているはずやけど……」

 

「おっし!ぜってえ捕まえんぞ!」

 

「ああ、ここで逃しちまったら……後々面倒だしな」

 

「はい、絶対に捕まえましょう!屋上の爆弾もちょっと心配だけど……」

 

「ユーノなら大丈夫だろ、ああ見えてそれなりに修羅場は潜っているしシグナムとイシュタルさんも付いて行っているし」

 

「あのメンツで遅れを取るような事態にはならないだろう……しっかし、随分と長いこと降り続けているな?」

 

「せやな、地上35階から地下8階に降りてるんやし」

 

「ミッドチルダの最深部という訳ですね」

 

「そういやすずか。助けてくれたハッカーにメールが送られただろう」

 

「あ、うん」

 

端末に送られたメールの内容を見る。

 

「えーっと……“私は月蝕(エクリプス)。テロリストが許せないから助けただけです”……だって」

 

「エクリプス?何かの通り名か?」

 

「聞いたことがあるよ。ミッドチルダで噂されている正体不明の天才ハッカー……基本的にホワイトハッカーなんだけど、要求する金額がもの凄く高いんだって。でも、必ず要求の情報を精確に手に入れる情報屋だよ」

 

「その彼がいったいどうして協力を?」

 

「文中通りなら、それに越した事はないんだが……」

 

「今、考えても仕方がねえな。その話は後だ、そろそろ着くぞ」

 

ヴィータの言う通りその後すぐに地下8階に到着した。

 

「お前ら、急ぐぞ」

 

「おう!」

 

テオとヴィータが先行して、レンヤ達も後に続いた。そして、地上本部のメインシャフトがある場所に着いた。

 

「ここが……地上本部のメインシャフトか」

 

「話しには聞いとったけど、こないな場所にあったんやな」

 

「ここは、電力を作るのに並行して本部の重量を分散する為の場所だよ」

 

「ま、とにかく行こうぜ」

 

「どうやら南のようですね」

 

奥に進むと、先の十字路の真ん中ににテオとヴィータがいた。

 

「これは……間違いないな」

 

「ああ、そのようだな」

 

「テオ教官、ヴィータ」

 

「どないしたんや?」

 

「……面倒なことになった。テロリスト共はここで2手に分かれたらしい」

 

「それって……」

 

「何かの作戦か?」

 

「さあな……片方はジオフロントC区画、もう片方はD区画に逃げたようだな」

 

「確かに、そのようですね」

 

フェイトが地面に残された足跡を見て納得した。偽装している時間はないので間違いない。

 

「ここは2手に分かれましょう。急がないと逃げられてしまいます」

 

「ああ、それが最善だろう。C区画は俺とヴィータ三等空尉の2人で追う。お前らはD区画に逃げた連中を追え」

 

テオの人数わけに、フェイト達は驚く。

 

「人数を分けないのですか?」

 

「さすがに2人だけというのは危険では?」

 

「いや、それが正しい。C区画は熱処理プラント等があって追いつくためには大人数での移動は困難だ」

 

「逆にD区画は広くて探索に時間がかかる可能性があるの。この分け方が妥当だよ」

 

「確かに、納得する判断だ」

 

「それではこれで、テオ教官、ヴィータ三等空尉、どうかお気をつけて」

 

「そっちもな」

 

「ヴィータ、気い付けてな」

 

「ああ、はやても気を付けてな」

 

お互い、激励の言葉を言った後。テオとヴィータはC区画に入って行った。

 

「よし、俺達も行くぞ。ジオフロントを脱出される前にテロリストを捕まえる!」

 

「うん!」

 

「きっちり、落とし前を付けさせねえとな!」

 

ジオフロントD区画に入り、しばらくして地下駐車場のある場所に出た。

 

「ここは……地下駐車場のようですね」

 

「にしてはかなりデカイんちゃうん?」

 

「ミッドチルダの人口1割の数が止められるがフレーズだからな。今日はさすがに少なくようだな」

 

「テロリストの襲撃もあって、封鎖されているようだね」

 

「でも、これだけ広いと追跡するのも大変だよ」

 

「そこは俺に任せろ」

 

ラーグが風水盤を取り出した。

 

「レンヤ」

 

「ああ」

 

それをレンヤが受け取り。目を閉じて手をかざし……足下に蒼いミッドチルダの魔法陣が展開された。

 

「…………見つけた。数名の人間とグリードが移動している。近いぞ」

 

「本当……⁉︎」

 

「以外と早く追いつけそうだな」

 

「急ごう!」

 

急いで正面の金網の鉄橋を渡ろうとした時……

 

「! 『皆、あそこ!』」

 

フェイトの念話で下を向くと、真下の鉄橋の先からテロリストが見えた。

 

『あ……』

 

『まずい……!』

 

「……! なに……なんだ、あいつらは⁉︎」

 

鉄橋の上で隠れる場所もなく、気付かれてしまった。

 

「追っ手か⁉︎」

 

「どうして嗅ぎつけた⁉︎」

 

ダダダダダダダッ!

 

容赦無く質量兵器の銃を撃ってきた。姿勢を低くし、プロテクションを展開する。

 

「きゃっ!」

 

「ッ……!」

 

魔力弾はともかく、本物の銃で撃たれた事がないはやては防御で精一杯だった。

 

「レゾナンスアーク!」

 

《カルテットモード》

 

冷静に刀から双剣、双銃に変え、魔力弾を撃って対抗する。

 

「うおっ……!」

 

「気を付けろ!おそらく、全員魔導師だ!」

 

「レンヤ、横に逸れろ!」

 

レンヤの横にリヴァンが立ち。弓を構え、精確にテロリストに矢を射る。しかし、小規模ながらAMFを展開しており、大したダメージは与えられなかった。

 

「ちいっ!」

 

「動け!その場に留まるな!」

 

威嚇射撃をしながら、テロリストは奥の通路に走って行く。

 

「ふうっ………それ!」

 

フェイトが逃亡するテロリストに雷を落とすも外してしまう。

 

「なんだ、あのガキ共は⁉︎」

 

「構うな!このまま離脱するぞ!」

 

テロリストは奥の通路に入ってしまった。

 

「ごめん……外しちゃった」

 

「気にしないでください」

 

「はやてちゃん、大丈夫?」

 

「う、うん……ホンマモンの銃に撃たれるのがあない怖いなんて思わんかったんよ」

 

「気にしないで、私も初めはそうだったから」

 

「レンヤ、全員無事だぞ」

 

「ありがとう、ラーグ。よし、追いかけるぞ!あそこに降りるルートを探すんだ!」

 

「え、このまま飛行魔法で降りないのですか?」

 

「奴らが仮に非魔導師だとしても、ここからロープで降りられたらはずだ。それをしないって事は、おそらくここの警備レベルが最大になっているはずだ」

 

「その状態で指定空間に入ったり飛行魔法を使用するとシステムが作動して、AMFの起動と拘束用のゴム弾発射される仕組みになっているの。ここはレンヤの言う通り、徒歩で向かおう」

 

「わかりました、行きましょう!」

 

巨大な駐車場を走り抜け。途中、道が壊されていたが迂回路を探し出し、しばらく進むとひときわ開けた場所に出た。その中心にテロリストがいた。

 

(あれは……!)

 

(どうやら追いついたようだね)

 

テロリスト達は中心に集まり、どこかに通信していた。

 

「……くっ、そうか。結局、本部の爆破は阻止されてしまったか……」

 

「ちっ、後もう少しで……」

 

「仕方ない、ここは一時撤退して態勢を整えるぞ……!」

 

「ああ、まだ機会はある。彼らも協力してくれている、今はここをーー」

 

「そこまでだ……!」

 

そこでレンヤ達が突入し、テロリストの前に出る。

 

「な……⁉︎」

 

「先ほどのガキ共⁉︎」

 

「馬鹿な……!追跡ルートは潰した筈だぞ⁉︎」

 

「残念ながら、別のルートを通ってきたんだ」

 

「どうやら入手した図面も完璧やあらへんかったようやな?」

 

「くっ……」

 

「大体、何なんだ⁉︎このガキ共は……」

 

「レルム魔導学院、VII組の者だ。ペルソナあたりから聞いているんじゃないか?」

 

レンヤが名乗ると、テロリストは思い出したようにハッとする。

 

「VII組……貴様らが……!」

 

「たかが学生ごときが我らの大義を邪魔するか!」

 

「なにが大義ですか!そんなことのために、人を殺めるなんて間違っています!」

 

「グリードに心を自ら差し出して者とはいえ、せめてその心の酔いを覚ましてあげましょう」

 

「だ、黙れ!」

 

「己が傲慢で神の使徒を殺す異端者共め!」

 

「はあ……」

 

「反省する気、ゼロやな」

 

武器を構え、臨戦態勢になるレンヤ達。

 

「ーーーちょうど、殺し損ねた諸悪の根源を潰せる。貴様らの屍をこの地の底に埋めてやる!」

 

「聞き耳持たずか……」

 

「そのようだ、とにかくブチのめすぞ!」

 

テロリスト達は犬型のグリード……アーミーハウンドと同時に襲いかかってきた。

 

「せいっ!」

 

《シャープウィンド》

 

銃弾を斬りながら斬撃を放ち、攻撃と防御を同時に行う。

 

「いい加減、しつこいぞ!」

 

鋼糸を無数に飛ばし、アーミーハウンドの足を射抜いた。

 

「内力系活剄・旋剄!」

 

ユエは脚力を大幅に強化し、動きが止まったアーミーハウンドを打ち上げ……

 

《ハーケンスラッシュ》

 

「はあっ!」

 

フェイトが鎌で全方向に一閃し、アーミーハウンドを斬り裂いた。

 

「なっ……⁉︎」

 

「怯むな! 攻撃を続けろ!」

 

「させないよ!」

 

ギアを回転させながらすずかがテロリストの中心に突っ込み。剣型のデバイスを持っている相手を狙って攻撃を仕掛けた。

 

「この……!」

 

「待て、同士討ちになる!」

 

「ーー遅いよ!」

 

銃の援護がこない間に、すずかがが近接戦で敵を減らしていく。

 

「そいつから離れろ!」

 

「させないぜ!」

 

《サークルロンド》

 

コマのように回転と移動をしながら、後方で銃を構えていたテロリストの銃を斬り裂いた。

 

「なに⁉︎」

 

「銃が……!」

 

「ユエ!」

 

「うおおおおおっ!」

 

怯んだ隙にレンヤとすずかはすぐさまテロリストから離れ、ユエが拳を振り抜き衝剄を放ち、テロリストを吹き飛ばした。

 

「くっ……馬鹿な⁉︎」

 

「4人のエースランクがいるとはいえ、学生風情がここまでやるとは……!」

 

「ーー確かに俺達はグリードを完全悪と決めつけているかもしれない」

 

テロリストが膝をつく中、いきなりレンヤがそう言った。

 

「だが、それでも異界が、怪異が人々を襲うのなら……たとえ理解されなくても、小さな幸せを守るために……俺は、剣を取る!」

 

「レンヤ……」

 

「……どうやら、我々は相容れない関係のようだな」

 

まだ気力があるのか、テロリスト達は立ち上がる。

 

「そうらしいな」

 

「! 何か来ます!」

 

「新手か……⁉︎」

 

横にあった通路からレーザーが飛んで来た。レンヤ達はテロリストから離れ、後退して避けた。

 

「レーザーか……!」

 

「ううん、あれはただのレーザーじゃない。着弾地点の床が変化していない」

 

フェイトがそう答えた瞬間……

 

グルルルルルルル……

 

唸り声をあげて、ゆっくりと暗がりから出て来たのは……

 

「げっ! ニビノカミ⁉︎」

 

大きなたてがみと2本のシッポ、そして身体中にある目玉模様が特徴の狼型のグリムグリード……ニビノカミだった。

 

「嘘でしょう⁉︎」

 

「何でこんなグリードを出してくるんだよ!」

 

「ははは、以前お前達がこいつに梃子摺っていたのは確認済みだ!」

 

「せいぜい原型を留められればいいな!」

 

「こいつは我々でも手を焼く奴だ……行くぞ!」

 

テロリストは反対方向に逃げて行った。

 

「くっ……弱音を吐いてはいられないか。皆、行くぞ!」

 

「うん、わかったよ!」

 

「こっちも行けるで!」

 

「問題ありません!」

 

「ニビノカミのメーザーには注意して!」

 

「やるしかねえか……!」

 

グアアアッ‼︎

 

咆哮をあげてニビノカミの口が開き、赤い光が漏れている。

 

「全員、あれには当たるな!」

 

レンヤの叫びで全員がニビノカミの前から逃げ、その後レーザーが照射された。着弾した床は変化しなかったが。

 

「おい、レンヤ。 あれのどこが危険なんだ?」

 

「ニビノカミの出すマイクロ波は水分子を振動させる事で一瞬で高温にして爆発させるんだ! 水分の無い鉄には効かないけど、俺達に当たれば一瞬でお陀仏だぞ!」

 

「えっと、つまりどうなるの?」

 

「メーザーのコヒーレントなマイクロ波はーー」

 

「つまり電子レンジの数百倍の力でチンされるんだよ!」

 

「お、恐ろしい奴や……」

 

「そのようだ、な!」

 

「それにねーー」

 

すずかが言おうとした時、ニビノカミはリヴァンが放った矢を避けて、すずかの前にいきなり現れ爪を振り下ろしたが、すずかは何とか避ける。

 

「ッ……体内にある膨大な熱エネルギーを運動エネルギーに変化して、最大200キロで走るんだよ」

 

「オンソクより遅いんだが、瞬間の速さならーー」

 

ニビノカミが踏ん張ったと思ったら、一瞬で背後に回り込まれた。レンヤはそれを読んでおり、振り返り際に顔面に蹴りを入れた。

 

「ニビノカミが上だ」

 

「……確かに、嫌いにもなりますね……」

 

「問題はこの場所だよ。ニビノカミの力を最大限に生かす広さと、メーザーの影響を受けない地面だから転ぶこともない」

 

「そもそも速いから攻撃も当たらない……!」

 

フェイトがスフィアから魔力弾を加速させて撃つが、まるで当たらなかった。

 

「広域魔法使うにも、あれじゃ当たらへん……!」

 

「前はどう倒したんだよ⁉︎」

 

「メーザーの届かない超遠距離から4方向からの砲撃を撃って、ようやく倒せたんだ!」

 

「今は離れる時間も距離もないんだけどね……!」

 

「どうしたら……」

 

「ーーすずか! 俺にやらせてくれ!」

 

ラーグがレンヤのポケットから出てきて自分が戦うと名乗り出た。

 

「確かに、ラーグ君の爆丸なら行けるんちゃうんか?」

 

「策があるなら頼んだぜ!」

 

「うん、ラーグ君!」

 

「おう!」

 

レンヤ達がニビノカミを抑えている間に、ラーグが口からガントレットとカードケースを取り出しすずかに渡し、左腕に装着し。手の甲部分にあったボタンを押した。

 

《Gauntlet Activate》

 

「ガントレット、チャージオン!」

 

「ポーン」

 

カードを入れ、ガントレットから放射された青い光がラーグに当てられ、全身が青く光って凝縮され球となり、すずかに飛んできてキャッチする。

 

「やるよ、ラーグ!」

 

「おう!」

 

青い球が開くと、狼のような姿になっていた。すずかはゲートカードを投げ、地面に乗ると青い波動を流し込んだ。

 

「行くよ、ラーグ!爆丸、シュート!」

 

思いっきりラーグを投げ、ニビノカミの前で止まり……

 

「ポップアウト!」

 

展開して立ち上がり、青い光を放ちながら巨大な青い狼が現れた。

 

「アクア・スピネル・クンツァイト!」

 

アオオオオオンッ!

 

すずかが名前を叫ぶと、呼応するようにラーグが雄叫びを上げる。

 

ニビノカミと対峙し、二頭の狼が睨み合う。

 

「レンヤ君!ラーグに乗って!」

 

「ええ⁉︎あの組み合わせに入れと⁉︎」

 

「いいから!」

 

有無言わされず、レンヤはラーグに飛び乗った。

 

「行くよ、しっかり掴まってて!」

 

《Ability Card、Set》

 

「アビリティー発動!シャドウ・クロー!」

 

「うわっ!」

 

走り出したラーグにしがみ付くレンヤ。ラーグの両前脚の爪が青く光り、ニビノカミに向かって飛び上がり爪を振り下ろした。

 

ニビノカミはギリギリで避け、爪が地面に振り下ろされ、地面が先まで斬り裂かれた。ニビノカミはそのまま走り出すとラーグもそれを追った。

 

「逃さない、アビリティー発動!ハイドロ・タイフーン!」

 

口から渦巻く水弾を放ち、ニビノカミを牽制する。そして、追いついて横に来ると……

 

「ぐっ……うわっ⁉︎」

 

タックルを仕掛けてきた。レンヤはなんとかしがみ付き振り落とされないようにするが、ラーグからもタックルをして何度も落ちそうになる。

 

ふと、ぶつかり合いが止み。ふと顔を上げてみると……ニビノカミがレンヤに向けて口を開けていた。

 

「ちょっーー」

 

「させないよ、アビリティー発動!ループ・シールド!」

 

ラーグの周りに水の球体が形成されて、次の瞬間……

 

バアアアアアアンッ!

 

メーザーが発射され、炸裂音がしたと同時に水蒸気が大量に発生する。

 

「な、なに……今の?」

 

「おそらく水蒸気爆発やな。球体の水が一瞬で熱せられて水蒸気爆発が起きたんや」

 

「こっちが不利じゃねえか!ダメ元で援護くらい……!」

 

「ーーニビノカミの皮膚はとても硬いの。生半可な攻撃をするとメーザーがこっちを向く、だから……一瞬の隙も見逃さない……!」

 

「すずか……」

 

「ここは信じましょう、レンヤとすずか、ラーグを」

 

ラーグは背後から放たれるメーザーを避け続け、ニビノカミから逃げていた。

 

「ッ……ゲートカードの範囲から出ちゃう……!」

 

すずかはすぐさまガントレットの側面にあるボタンを操作した。

 

《Ready、Wave Booster》

 

ガントレットの画面から青い光が放射され、青色の小さなパーツが出現し、パーツが組み合わさると立方体のパーツがが作られた。

 

「バトルギア、セットアップ!」

 

すずかがパーツを掴み、ラーグに向かって投げた。するとバトルギアが巨大化してラーグの背に二門のウイングブースターが取り付けられた。

 

「ラーグ、駆け抜けて!バトルギア・アビリティー発動!ウェーブブースター・ミラージュファング!」

 

ブースターとウイングが開き、白い光が放たれ。ラーグはニビノカミを引き離す。そして爪を地面に立てて一瞬で方向転換して、ニビノカミと正面を走る。

 

次の瞬間、ラーグの全身からブレード伸びてきた。ウェーブブースターから放射される光が勢いを増し……

 

ガキイイィンッ!

 

一瞬の交差の後、地面を削りながらラーグは止まった。それからラーグの右脚に傷がついた。

 

「ラーグ!」

 

ニビノカミはラーグの方を向くとメーザーを放とうとした。

 

「レンヤ君!」

 

「任せろ!」

 

レンヤはラーグの背を駆け……

 

《モーメントステップ》

 

一瞬でニビノカミの頭上を取った。

 

《オールギア、ドライブ。ソニックソー》

 

「うおおおおおっ!」

 

刀をニビノカミの額に突き立て、激しい火花が迸る。

 

「くっ……おおおおおお!」

 

刃が通らないが、それでも諦めず魔力を流し込み……

 

ピシッ!

 

ニビノカミの額にヒビが走った。それに連動してラーグの受けたダメージが全身に出始めた。

 

「レンヤ君、上手く避けて!」

 

「へ……?」

 

《Ability Card、Set》

 

「バトルギア・アビリティー発動!ウェーブブースター・オメガ!」

 

ブースターが回転して排出口がレンヤの方に向かれ、6つの青色の魔力レーザーが放たれた。

 

「ちょっ……!」

 

反論も言う暇もなく、すぐさまニビノカミから飛び退き……

 

ドガアアアアアアンッ!

 

6つのレーザーがニビノカミに直撃し、大きな爆発が起きた。

 

「うわああああっ⁉︎」

 

レンヤは爆風で吹き飛ばされるが、ラーグの頭に受け止められた。爆発地点を確認すると……ニビノカミはいなかった。

 

「はあ、何とか勝てたぁ〜……」

 

「はあはあ、危険なドライブだった……」

 

レンヤが降りた後、ラーグの全身が青く光り、小さくなってすずかの手元に飛んできた。

 

「お疲れ様、ラーグ」

 

「いいってことよ。久しぶりに暴れられてスッキリしたぜ」

 

「ふふ、そうだね」

 

「しっかし……任せたとはいえ、かなり厄介な相手だったな」

 

「レンヤ達が嫌うのも分かります」

 

「ふう、時間が惜しいからすずかに文句を言うには後にする。とにかく今は逃げた連中をーー」

 

バババババババッ!

 

そう言いかけた時、遮るように奥の通路から銃声が聞こえてきた。質量兵器ではなく魔力弾が発射される音だったが。そして……大きな爆発の後に銃声と共に悲鳴が聞こえてきた。

 

「な……⁉︎」

 

「ッ……」

 

「戦闘の音⁉︎」

 

「いや、かなり一方的だな」

 

「いったい何が……」

 

「とにかく行ってみよう!」

 

すぐさまテロリストが進んだ通路を進み。奥を確認すると……

 

「……!」

 

「……ぁ………」

 

「これは!」

 

そこには先ほどのテロリストが……血塗れで倒れていた。その前にはデバイスを構えた、どこかの制服を着た管理局員がいた。

 

「……ガハッ……ゴホゴホ………貴様らは……いったい……」

 

「彼の方を危険に晒した報いです。 レーダーを破壊した連中は先に逝きましたよ。 早くお会いになられては?」

 

「……ぐっ……く、くそ……」

 

テロリストのリーダーは無念を残したまま倒れてしまった。

 

「さて、残りも片付けますか」

 

隊長らしき人物が手を上げると、隊員がすぐ側にある柱の影に向かい……隠れていたテロリストにデバイスを向けた。

 

「ひいっ!」

 

「………………」

 

怯えるテロリストに表情1つ動かさず、トリガーに指をかけられ……

 

「やめろっ‼︎」

 

レンヤの怒号が響き、引かれ掛けた指が止まった。レンヤ達はすぐさま正体不明の管理局員の前に出て、フェイトとユエが血塗れのテロリストに近く。

 

「おや、あなた方は……」

 

「ーー随分と遅い到着さ〜」

 

特徴的な口調が聞こえて、隊長の後ろから……カリブラ・ヘインダール・アストラが出てきた。

 

「カリブラ……お前……!」

 

「おおっと、勘違いしちゃあ困るさ〜。 俺っちはただの見物に来ただけで、手を出していないさ〜。 まあ、ヘインダールが動いていないと言ったら嘘だけど……」

 

「ッ……!」

 

「だ……駄目……」

 

「どう見ても殺傷設定だな」

 

「…………………」

 

フェイトが青い顔でそう言い、すずかの肩乗っていたラーグもそう判断し、ユエもテロリストから手を離し静かに首を横に振るう。

 

「………っ………………」

 

「はやてちゃん……」

 

フェイトよりさらに顔色が悪いはやては口に手を当て目を背け、すずかがはやての背をさする。

 

「……何なんだあなた達は……なぜこんな非道な事を!」

 

「………………」

 

隊長が手を上げると隊員がすぐ様後ろに整列し、隊長が空間ディスプレイを展開した。

 

「我々は管理局本部所属、ソイレント中将の直轄部隊……怪異殲滅部隊、イレイザーズです。此度は三提督、および議長と中将を狙った不届きなテロリストを始末する。 それが今回、議長が下した任務です」

 

「……⁉︎」

 

ディスプレイに映っていたのは、正式な管理局IDだった。

 

「何を勝手な……異界および怪異に関わる案件は俺達の管轄だ!」

 

「異界に関する問題に対し、最上級の権限を異界対策課が持ち合わせる……忘れたとは言わせませんよ」

 

「それは誤解です。 我々は異界または怪異に関わった人間の対処するのが仕事です。 その過程でグリードが出て来たので倒しただけ……何の問題はありません」

 

「屁理屈を……!」

 

「ちゃんと議長と上層部、最高評議会の隊成立と今回の行動に対する書状と委任状もあります」

 

次に映し出されたのは2枚の書状と委任状だった。どちらも本物で、どこもおかしい部分はなかった。

 

「な、なんやて……」

 

「こんなことって……」

 

「つまり隊として成立しており、あなた達に変わって処理したまでの事です」

 

「くっ……!」

 

「用意周到な……!」

 

「カリブラ!お前達は……ヘインダールは何をする気だ!」

 

「どうもこうも仕事って前にも言ったさ〜。ただ、もう片方のテロリストはこっちが処理する、てね」

 

「ッ……!」

 

「そうそう、当分ミッド(ここ)を拠点にして活動する事になったんだよ。 暇なら遊びに来てさ〜」

 

カリブラは懐から名刺を出すとリヴァンの足元の地面に投げた。

 

「この後も仕事があります。生き残りは見逃しましょう」

 

隊員が生き残りのテロリストをレンヤ達の方向に突き飛ばした。

 

「ひ、ひいいっ!」

 

「くっ……」

 

テロリストは倒れた状態で頭を抱え、すずかがその前に立つ。

 

「それではこれで失礼します」

 

「じゃあな〜」

 

イレイザーズとカリブラは悠々と去って行った。レンヤは背が見えなくなるまで彼らを睨み続け、消えたらため息をついてはやてに近寄った。

 

「はやて、大丈夫か?」

 

「う、うん。 これぐらい平気や」

 

「はやてちゃん、慣れなくていいからね」

 

「あんがとな、レンヤ君、すずかちゃん」

 

向かい合ってはやてがお礼を言うと、何かに気がついた。

 

「あ、アレって……」

 

はやてが指差す方向には……サーチャーがあった。

 

「何でサーチャーが⁉︎」

 

「……まさか、議長が提案しようとした事って……!」

 

レンヤは襲撃が起こる前、議長が提案しようとしていた物を理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジオフロントC区画ーー

 

もう片方のテロリストを追いかけていたテオとヴィータは、ようやく追いついたと思ったら……すでにヘインダール教導傭兵団に制圧、拘束されていた。テオが問いただそうとしたら、最高評議会の委任状を出され手をこまねいていた。

 

「くっ……ヘインダールがなぜ……」

 

「なぜコイツらが……!」

 

「ーー待ちやがれ!そいつらには容疑がかけられている。委任状があっても連れて行けねえはずだ!」

 

「す、すみません。団長の……上からの命令なんです……!でも、納得が出来ないのなら……」

 

副団長らしきメガネをかけた女性が弓を構えると、団員が続いてデバイスを構えた。

 

「くっ……」

 

「手練れの武芸者が30人前後……練度も管理局とは比べ物にならないほど高い。部が悪いな」

 

「申し訳ありません。ですが、彼らの身の安全は保障します……それでは、失礼します」

 

女性が礼をして、その後堂々と団員がテロリストを連れて行った。テオとヴィータは手を出せず……

 

「くそっ!」

 

ガアアアンッ……

 

ヴィータがアイゼンを地面に振り下ろし、凹みを作られた音が無情にも響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日ーー

 

すでに日は沈み始め、夕焼けが辺りを照らしていた頃。厳重な警備がされている会議室内で、レジアス中将が通信で報告を受けていた。

 

「……そうか……分かった。こちらはもう安全だ、ご苦労だったな」

 

通信を切ると、軽くため息をついた。ミゼットが話を切り出した。

 

「テロリスト達の方は?」

 

「テロリストは2手に分かれたそうです。片方はヘインダール教導傭兵団に囚われたそうで、何でも最高評議会の逮捕委任状を持っている事でした」

 

「なに……⁉︎」

 

「最高評議会……いったい何を考えている……!」

 

「そしてもう片方は……同じく最高評議会の委任状と、ギャラン議長とソイレント中将の部隊にほぼ全員が処刑されました」

 

会議室にいる者は、レジアス中将の言った事を理解するのに時間がかかってしまった。

 

「何て愚かな……」

 

「議長! ソイレント中将!これはいったいどういうつもりだ!」

 

グランダム少将がギャラン議長に向かって抗議した。

 

「いかにテロリストとはいえど、人を殺めるなど……あまりにも信義にもとるやり方ではありませんか⁉︎」

 

「それは誤解です。その答えを襲撃前に提案しようとした案件と関係があります」

 

ギャラン議長がソイレント中将に目線を向けると、ソイレント中将は端末を操作し、背後に空間ディスプレイを展開した。

 

そこに映し出されたのは……テロリストがソイレント中将の部隊と思われる集団に処刑されている場面だった。テロリストはグリードで対抗しようとしたが、すぐに倒され……その後、悲鳴が会議室に響き渡った。

 

「きゃあっ⁉︎」

 

「ッ……!」

 

「これは……⁉︎」

 

ギャラン議長が手を上げるとディスプレイは消えた。

 

「彼らは怪異殲滅部隊、イレイザーズです。ご覧の通りグリードを寄せ付けず、安全かつ確実に倒す事が可能です」

 

「くっ……だが、なぜテロリストを殺害した⁉︎ 魔法も殺傷設定だろ!」

 

「イレイザーズは殲滅とは他にグリードまたは異界の運用を行った者の対処も任されています。これはその結果です」

 

「そんな言い逃れがーー」

 

「最高評議会の隊成立の書状あります。これは正当な処刑です」

 

「た、確かに書状、委任状にもおかしな点はありません。認めざる得ませんが……」

 

ユーノは何度も読み返し、苦しい顔で認めた。ギャラン議長は会議室を見渡した後……

 

「ーーそれでは……これより管理局本部所属、怪異殲滅部隊、イレイザーズの設立を決定します。もっとも、すでに活動して成果を上げていますがね」

 

その発言はまるで……管理局の闇そのものだった。

 


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