魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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84話

 

 

翌日ーー

 

皆が集まったの確認して昨日のグリード襲撃について話した。

 

「ーーつまり、昨日の深夜に犬型のグリードが襲ってきたってこと?」

 

「大雑把に言えばそうだ」

 

「色々とおかしな点がありますね」

 

「うん、グリードがただ人を襲うならまだしも……複数いたのに1体だけで襲うなんて」

 

「しかも少し怪我をさせて直ぐに撤退……妙だな」

 

「ん?ちょう待ち。それってつまりは……」

 

「誰かがグリードを操っている可能性があるってわけだ。前例がないわけじゃないし」

 

「問題は誰が何のために、ですね」

 

「まずは情報収集、町長の家に行ってみよう」

 

フェイトの提案で町長宅に向かった。すると町長宅から昨日いた黒服の2人が出てきた、

 

「おお、レンヤ君。昨日は助かったよ」

 

「いえ、偶然居合わせただけです」

 

「それで町長、この事件にどう対処していく所存で?」

 

「ついに負傷者を出してしまったわけだ……乗らざるを得ないかもしれん」

 

「グリズリーファングの要求をのむのですか?」

 

「長い目で見れば、それもやむなしじゃが……」

 

町長もまだ迷っているらしい。

 

「先ほどグリズリーファングからはなんと?」

 

「お早めの決断を、被害が拡大する前に、とだけ」

 

「そうですか……」

 

「気にする事はない、君達は実習に専念しなさい」

 

関わらせるまいと依頼の入った封筒を渡す。

 

「ですが……」

 

「……町長、できればこの件、俺達に任せてもらえませんか?」

 

「レンヤ?」

 

「これは異界対策課……いえ、俺個人としても見過ごせません。それに、俺の予想が正しければ今夜に事件が解決できます」

 

「え⁉︎」

 

「……今夜中に解決できるのかね?」

 

「はい」

 

「ま、これも特別実習のうちか」

 

「……わかった。だが無茶はしないように」

 

「ありがとうございます」

 

俺は立ち上がって礼をして、玄関に向かった。

 

「え⁉︎あ、レンヤ君!」

 

「失礼します」

 

「えっと、任せてください!」

 

町長宅から出て、すぐに呼び止められた。

 

「レンヤ君、ほんま大丈夫なん?」

 

「根拠はある、まずは事件現場に行こう」

 

「わかった。お前に賭けてみよう」

 

事件現場である町の出口に向かった。

 

「特に何もないね」

 

「あんまり場所は関係あらへんかもしれんなぁ」

 

「いや、そうとも限らないぞ」

 

リヴァンが近くの岩壁に飛び乗った。

 

「あった、グリードの足跡だ。数は……3、大型犬にしては少し大きいな」

 

「確か、1匹が襲って後は何もしていないんだよね?」

 

「そうすると最低4匹はいますね」

 

「それでレンヤ君、どうなんや?」

 

「ああ、十分な情報は得られた。一旦宿に戻ろう、情報を整理したい」

 

「そうだね、ミーティングはした方がいいね」

 

宿に向かい、俺達男子が使用している部屋に集まった。

 

「さて、状況の整理を始めよう。この事件で1番不明なのはグリードの目的だ」

 

「グリードの目的?」

 

「確かに、どんなグリードでも必ずしも目的があるね」

 

「でも不可解なのは、グリードの行動……まるで誰かに操られているような」

 

「それはあの笛か、それに通ずるものだろう」

 

「やけど、グリードの背後にいる犯人は誰なんや?目星はつくんやけど、確証までにはならないで。それにそうなると、グリードを連れて行動する手段がが……」

 

そこではやては何かに気がついた。

 

「……もしかして」

 

「ああ、はやての想像通りだ。それを裏付けることもできるかもしれない。すずか、マインツのサーバーにアクセスして、昨日の出口付近の監視カメラの映像を入手できるか?」

 

「え、うん。出来るよ」

 

早速空間ディスプレイを展開して、必要な映像を入手した。すずかは早送りで映像を見流していくと……すぐに驚愕した顔になった。

 

「レンヤ君の読み通りだよ、昨日の夜、グリズリーファングの運搬車が出口付近の駐車場に止まっている」

 

「これではっきりしましたね。犯人はグリズリーファング……そして目的は鉄鉱石の取引の独占……」

 

「ちゃうな、それはあくまでオマケや」

 

「おそらくな。グリズリーファングはレイヴンクロウといった勢力に対抗するための戦力としてグリードを使うつもりなら……」

 

「いくら笛の力でコントロールできようが、試運転は必要……それが今回の事件の真相か」

 

「ああ。そして警備を断った管理局の方も怪しいと思っている。おそらく、警備隊司令は有力議員と繋がっている……その議員を通じて根回しをされたんじゃないか?」

 

「多分……そうだね。何度かそういうのはあったから」

 

「それで……彼らはこれ以上、続けると思いますか?」

 

「グリードの実戦テストという意味ではもう十分だろうな。ただ……連中はさらに欲をだしている」

 

「鉄鉱石の独占取引だね……すると、最後の脅しでもう1度だけ動きそうだね」

 

「襲撃があるとすれば、おそらく今夜や。それ以上は町長がどこかに相談する可能性がある」

 

「よし、いっちょやるか」

 

「グリードの撃退とマフィアの拘束ですね?」

 

「うん、それまでに準備を整えよう」

 

「奴らが来るとしたら深夜だ。それまで休んでくれ」

 

「いいけど……レンヤはどうするの?」

 

「俺は依頼を片付けておくよ。必須の依頼はないしな、町長に気を使わせたかもしれないな」

 

「でも、鉱山内の異界もあるんでしょう?」

 

「それにレンヤ君、昨日から寝てへんやろ。とてもやないけど行かせられへんなぁ」

 

「そういうことだ、お前が寝とけ。俺らが片付けてくる」

 

「レンヤが倒れては元の子もないですからね」

 

「え、ちょっと……!」

 

「ほらほら、好意は素直に受け取ってね」

 

すずかに押されてベットに座らせられた。その間に他の皆はそそくさと部屋を出て行った。

 

「帰った時に寝てなかったら簀巻きにしても寝かせるからね」

 

最後にそう言い残してすずかも部屋を出て、俺は1人呆然としていた。

 

「……気を使わせたかな」

 

ベットに倒れこむと疲労と眠気が襲ってきた。

 

「…………………」

 

しばらく思考の海に漂い。起き上がってある人物に連絡を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ん」

 

どれくらい眠っていたのだろうか。少しずつ意識が目覚めていく。

 

「ん?」

 

「……………///」

 

ふと正面を見ると、顔を真っ赤にして目をギュッと閉じて近付いてくるフェイトがいた。

 

「何やってんだフェイト?」

 

「え……きゃあっ⁉︎」

 

フェイトの目が開いて俺の顔を見た後飛び退いた。はっきり言って近かかった、息もかかる距離だ。

 

「何かあったのか?」

 

「え、えーっと……そ、そう!夕食の準備ができたから呼びにきたの!」

 

時間を見るともう午後の7時だ。結構寝てたみたいだ。

 

「わかった、先に行っててくれ」

 

「う、うん///」

 

顔を洗ってから食堂に行くと、何やらフェイトとはやてとすずかが何やらコソコソしていた。

 

「起きたか」

 

「体調はどうですか?」

 

「すこぶる問題ないが……フェイト達は何をやっているんだ?」

 

「さあな、フェイトが戻ってきたらすぐにああなった」

 

「はぁ……?」

 

と、そこで3人はこっちに気付いたのか。中心にあったディスプレイを消して顔を上げた。

 

「あ、レンヤ君、来てたんか?」

 

「よく眠れた?」

 

「あはは……」

 

何事もなかったかのように振る舞う3人。

 

「………?」

 

「まあ、ともかく飯にしようぜ」

 

「決行は近いです、食べなくては力が出ませんよ」

 

「そ、そうやな」

 

「真夜中まで待機だけど、グリードが現れた時の段取りと配置を決めないとね」

 

「ただグリードを撃退するだけでは駄目ということですね……?」

 

「うん、グリードを操っているマフィア達の方も押さえないと」

 

「よし、気合い入れていくで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜ーー

 

宿の酒場から2人の鉱員が出てきた。

 

「ヒック……ちょっと飲み過ぎちまったか」

 

「しかし遅くなったな。町長に早めに帰るよう言われたばかりなのに……」

 

「あ?例のグリードの話かよ?こちとら毎日穴掘りしてんだぜ?せめて酒くらい好きに呑ませろってんだ!」

 

相当酔っているようで、呂律があんまり回っていない。

 

「相変わらずだな、お前は」

 

「うるせい、いつかデカイ物を掘り当ててやるぜ!」

 

グルルルルル……

 

「んー……」

 

「あれ、今の……」

 

2人は聞きなれない音に気付くと……行きなり現れた犬型のグリードに囲まれた。

 

「な、なんだぁ⁉︎」

 

「ま、まさか……例のグリード⁉︎」

 

少しずつ迫って来て、隅に追いやられる。

 

「よ、よ、寄るなぁ!」

 

「た、助けて……!」

 

「ーーアンタら。さっさと目を塞いでおけよ」

 

ドスッ!

 

頭上から声がした後、2人の足元に魔力の矢が刺さった。声に従い目を固く塞いだ瞬間……

 

バンッ!

 

矢が破裂して強烈な閃光と爆音が発生した。グリードは光を直視して怯んだ。

 

「うおっ……なんだ⁉︎」

 

「い、今のは……」

 

グリードが怯んだのを確認して、家や壁の陰からレンヤ達がバリアジャケット姿で出てきた。

 

「閃光魔法……思ったより効いて助かったぜ」

 

「お、おまえたちは……」

 

「確か、実習に来た魔導学院の?」

 

「話は後で!宿に避難してください!」

 

「あ、ああ!」

 

「うう、何だってんだ⁉︎」

 

2人の鉱員は戸惑いながらも宿に駆け込んで行った。それからすぐに回復したグリードが唸り声をあげながら起き上がった。

 

「意表はつけたが……」

 

「思ってたより手強いそうだね」

 

「よし……このまま撃退するぞ!」

 

「犬型グリード5体、識別名をアーミーハウンドと暫定します!」

 

一体のアーミーハウンドがレンヤに飛びかかってきた。レンヤは体を捻って避け、鞘で顔面にぶつけた。

 

「奏でろ、フェイルノート!」

 

《ヤー》

 

弦を引いて、無数の鋼糸を飛ばして3体と2体に分断した。

 

「はやてちゃん!」

 

「了解や!シクザールクーブス!」

 

2体のアーミーハウンドの足元から半透明の箱が出現して閉じ込めた。

 

「バルディッシュ!」

 

《サンダーフォール》

 

上空から落雷が落ちてきて、2体のアーミーハウンドに直撃する。

 

「外力系衝剄・点破!」

 

反対側にいた1体に収束した衝剄を高速で打ち出した、壁まで勢いよく吹き飛ばされてそのまま倒れた。

 

「レンヤ!」

 

「ああ!」

 

レンヤが抜刀と同時に斬り飛ばし、リヴァンが鋼糸を飛ばして四肢を撃ち抜く。

 

「今や!」

 

そしてはやてが2体のアーミーハウンドを勢いよく他のアーミーハウンドにぶつけた。

 

「ふう……こんなもんか」

 

「でも、本気で戦ってたのになんで消えへんのや?」

 

「おそらく物質化(マテリアライズ)しているんだろう。魔力の放出に流れにムラがない」

 

「どこに生息しているグリードだろ?」

 

「今まで見たことない種類だね」

 

倒れ伏したアーミーハウンド達はは傷ついた体で起き上がり、ふらふらしながらも街道方面に逃げて行った。

 

「しまった……!」

 

「まだ余力があんのかよ!」

 

「問題ない、このまま追いかけるぞ!おそらく、逃げた先にマフィア達がいるはずだ!」

 

「了解!」

 

レンヤ達は アーミーハウンドを追いかけ、町の外に出た。その時レンヤは誰かに連絡を取っていた。

 

外に運搬車の前で待機していた2名のマフィアのは、アーミーハウンドが予定より早く戻って来たことに驚いた。アーミーハウンドはマフィア達の前に走ってくると、限界とばかりに倒れ伏した。

 

「な、なんだ……?おい、なんでこんな早く戻ってくるんだ?」

 

「町の人間を襲うように指示を出していたんだが……どうしたお前ら、早すぎるんじゃないのか?」

 

「ーーそこまでだ!」

 

マフィア達は行きなり現れたレンヤ達に驚愕する。

 

「な、なんだ⁉︎」

 

「お前達は……⁉︎」

 

「レルム魔導学院、3科生VII組の者だ」

 

「グリズリーファングの方々ですね。器物損壊、及び怪異の不正使用と傷害の容疑であなた方を拘束させてもらいます」

 

「フェイトちゃん、今は学生であって執務官やあらへんよ」

 

「レルム魔導学院VII組……何故ここに⁉︎」

 

「異界対策課のメンバーがいるってクラスか!」

 

「やれやれ、有名人なのも困りもんだぜ」

 

「ここは光栄に思っておけばいいのでしょうか?」

 

「チッ……まあいい。ガキ共なんざ躾ければどうとでもなる」

 

2名のマフィアはデバイスを取り出した。

 

「ウチの犬共を可愛がってくれたようだなぁ?」

 

「ここで礼をさせてもらうぜ」

 

「……抵抗するのか?」

 

「クッハハ!それはこっちの台詞だ!」

 

「ーー攻撃準備(ゲット・レディー)!」

 

マフィアの1人が5体のアーミーハウンド達に向かって何かの液体を浴びせると……先程のダメージが消えて、レンヤ達の方を向いて威嚇する。

 

「なっ……」

 

「回復しやがった⁉︎」

 

「あれは異界の材料で作られた回復薬……⁉︎」

 

「なんて即効性や!」

 

「ククク……これでもプロなんでねぇ」

 

「ーー行け、仕留めろ(ゴー・アンド・アタック)!こいつらの喉を喰い千切るつもりで行け!」

 

グルルルルル……

 

「来るよ!」

 

「こっちも手加減無用だ!」

 

「行きます!」

 

瞬間、レンヤが飛び出し。デバイスを斬ろうとする。

 

「させるかよ!」

 

マフィアの1人が短く口笛を吹くと、アーミーハウンドが背後から襲ってきた。

 

「くっ!」

 

攻撃を切り替えて、開かれた顎に刀で抑える。

 

「死ねぇ!」

 

「やらせません!」

 

レンヤに銃を向けられ、魔力弾が撃てれた所をユエが拳で弾く。

 

「多勢に無勢かよ!」

 

《バルトガルン》

 

地面に向かって矢を放ち、アーミーハウンドの足元から鋼糸は飛び出した。しかし、それを読んでいたように避け、4体のアーミーハウンドがすずかに迫る。

 

「すずか!」

 

「任せて!」

 

《ファーストギア……ドライブ》

 

キイイィィンッ!

 

「はあっ!」

 

前面は大きく薙ぎ払って吹雪を起こし、アーミーハウンドの足を止める。

 

《プラズマバレット》

 

「やあっ!」

 

「ちっ!」

 

動きが止まった所をフェイトが魔力で攻撃しようとした時、マフィアの魔力弾が1体のアーミーハウンドに直撃してフェイトの攻撃から逃れた。

 

「レンヤ君!」

 

「とっ……助かった、はやて」

 

レンヤを抑えていたアーミーハウンドをはやてが他のアーミーハウンドの方向に飛ばした。

 

「おらよっ!」

 

「……!」

 

はやてがナイフ型のデバイスで斬りかかられ、杖で防御する。レンヤも援護に向かうが、2体のアーミーハウンドに塞がれる。変わりにフェイトがフォローに回った。

 

「ッ……」

 

「面倒なだな」

 

「レンヤ、私に考えがーー」

 

「すぐに頼む」

 

「了解!」

 

すぐにユエが中心に飛び込み、レンヤとすずかに念話で指示を出した。2人は指示に従い、アーミーハウンドをユエに誘導する。

 

「……今です!」

 

ユエの合図で飛び上がり、敵を失ったアーミーハウンドはすぐさま標的を視界に入ったユエに切り替えた。

 

「……ふっ、せいっ!」

 

アーミーハウンドの爪がユエに触れた瞬間、爪がユエを通り抜け、次に現れたユエが5体のアーミーハウンドの顔面に強烈な一撃を食らわせて、後方の壁にぶつけた。

 

内力系活剄・疾影

 

強力な気配を発散後、即座に気配を消して移動することで相手の知覚に残像現象を起こさせたのだ。

 

「よし!あとは彼等だけだよ!」

 

「ガキが!調子にのんな!」

 

マフィアの1人が懐からリモコンを取り出して、スイッチを入れると……車からAMFが発生した。

 

「なっ⁉︎」

 

「これは、AMF!」

 

「こんな物まで……!」

 

「しかし、それならーー」

 

ユエがそう言いかけた時、マフィア達はニヤリと笑うと……先ほどと同じ大きさの魔力弾を撃ってきた。

 

「なっ……ぐあ!」

 

「きゃああ!」

 

「アホか、そんな間抜け失敗をするかよ」

 

「ちょっとした細工がしてるんだ、ほらお前らとっとと起きろ!」

 

また回復薬をアーミーハウンドに与えられ、挟み討ちにされた。

 

「こうなったら……フェイト、合わせろ!」

 

「え、まさか……ぶっつけ本番で⁉︎まだ完成してないのに!」

 

「俺とフェイトならいけるさ」

 

「やっちまえ!」

 

それを合図にマフィアの魔力弾とアーミーハウンドが襲いかかってきた。

 

「行くぜ」

 

《オールギア……ドライブ》

 

ガッキイイィィンッ!

 

「うん……」

 

《ロードカートリッジ》

 

ガシャン!ガシャン!

 

「L&F、近距離殲滅コンビネーション……」

 

「……エクストリーム」

 

「「ブレード!」」

 

2人の姿が一瞬で消え、次の瞬間……蒼と金色の軌跡が縦横無尽に走り、敵を空中に一瞬だけ止めて……

 

「「はああああっ!」」

 

同じ場所に現れ、手に持つ刀と剣で全体を薙ぎ払った。

 

「ぐはっ!」

 

「かっ……」

 

2人のマフィアは大きなダメージで膝をつき、同じくアーミーハウンドも倒れ伏した。

 

「ふう……疲れた」

 

「さすがに危なかったね……」

 

「まさかあんな風にグリードを操れるなんて……」

 

「なかなかの練度じゃねえか」

 

「ただの管理局員じゃ相手にならへんレベルやで」

 

「はあはあ、上手く連携ができたね……」

 

「ああ」

 

レンヤとフェイトは拳を合わせる。

 

だが、マフィア達は膝をついてもなお足掻こうとしていた。

 

「ば、馬鹿な……」

 

「くっ……こんなガキ共に……!」

 

「ーーこれ以上の抵抗は無駄です。あなた達の身柄は明日の朝、警備隊に引き渡す」

 

「今夜は倉庫が空いている、そこで休んでもらうぞ」

 

「私達が責任を持って見張ります」

 

「ククク……」

 

「ハハハ……!」

 

いきなりマフィア達が笑い出すと、一瞬で立ち上がり運搬車まで飛び退いた。

 

「待て……!」

 

「逃がさへんで!」

 

「クク、勘違いするな……」

 

「こうなったら手段は選ばねぇだけだ!」

 

運搬車の扉を開けると……次々と運搬車からアーミーハウンドが出てきて、すぐに囲まれてしまった。

 

「これは……⁉︎」

 

「ま、まだいたの⁉︎」

 

「チッ……!」

 

「皆、一旦……」

 

すずかが下がろうと後ろを向くと、制圧したアーミーハウンドが立ち上がって道を塞いだ。

 

「あぁ……!」

 

「しまった……!」

 

「ひい、ふう、みい……20匹かよ。さすがに多いな」

 

「形勢逆転だなぁ……?」

 

「俺達をコケにしてくれた礼だ……飛んで逃げるならさっさと逃げな」

 

「くっ……」

 

運搬車から発生しているAMFで飛ぶことはできないかった。この包囲網を突破するのはさすがに厳しい。

 

「……このままじゃ……」

 

「厳しい、ですね……」

 

「捌き切れるか……」

 

「……ピンチやな」

 

「クク、懺悔は終わったか?」

 

「それじゃあ楽しい処刑タイムと行こうじゃーー」

 

ウオオオオオン!

 

突如、獣の雄叫びが轟いてきた。

 

「な、何⁉︎」

 

「来たか……!」

 

レンヤが丁度いいタイミングとばかりに喜ぶ。

 

レンヤ達がいる場所から少し離れた岩の上に、巨大な青い狼がいた。狼の背には後付と思われる同色の2機のブースターが付いており、静かに白い光を放っていた。

 

「な、なんだ⁉︎」

 

「狼だと⁉︎」

 

「ーールーテシア!」

 

「うぷっ……レ、レンヤさん!受け取ってください!」

 

狼の背中から顔色の悪いルーテシアがひょっこりと出てきて、レンヤに青いガントレットを投げ渡した。流れるように装着してカードを入れる。

 

「行くぞ!アクア・スピネル・クンツァイト!アビリティー発動、アイアンハウリング!」

 

ワオオオオオオオンッ‼︎

 

狼から発せられた大地を揺るがす雄叫びが全体に轟く。するとアーミーハウンドは怯えたかのように倒れ伏した。

 

「あ、あれって……」

 

「レンヤ君、まさか呼んでたの?」

 

「ああ、保険として一応ね」

 

「それくらい教えてくれてもええんかったちゃうん?」

 

「いや〜、急いでたからさ」

 

「お、お前ら……!何を怯えてやがる⁉︎」

 

「数はこっちの方が上だ!」

 

マフィア達がアーミーハウンドを叱咤するが、意味をなさなかった。

 

「ま、グリードにも一応は本能はあるからな」

 

「本能では勝てないと判断したのですね」

 

「確かに、格が全然違うよ」

 

「て言うか、あれもしかしてラーグなん?」

 

「はわわ〜〜、頭がぐわんぐわんするよ〜……」

 

ラーグから降りてきたルーテシアは、耳を塞いでたとはいえ至近距離で咆哮を聞いたのでダウンしていた。ラーグの全身が青く光ってから一瞬で小さくなり、俺に向かって飛んできた。手で受け止め、開いてみると青い球とバトルギアがあった。

 

そして、レンヤ達は呆然としているマフィア達を追い詰める。

 

「くっ……」

 

「今度こそ終わりだ。敢えて管理局風に言えば……器物損壊と傷害容疑、怪異の不正使用、及び公務執行妨害であなた達を逮捕します」

 

2名のマフィアを拘束、20体のアーミーハウンドを運搬車に入れて、レンヤ達はマインツに戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝ーー

 

マフィア達を護送に来た警備隊に引き渡し、俺達は今朝到着したゲンヤさんとギンガに事情を説明していた。

 

「ーー皆さん、すごいです!まさか事件の真相を見抜いてそのまま解決するなんて!」

 

「まあ、そうだが……お前ら、一応学生というのを忘れてねえか?」

 

「それは……その、すみません」

 

「警備隊の司令からマフィアに情報が流れる可能性を懸念してまして……」

 

「まあ、そう言われると辛いな。今回はそれも入れて俺達が来たわけだ、まあともかくよくやってくれた」

 

「そういえば、ルーテシアちゃんはどうしたの?」

 

「最初は車を見て興奮していたけど、今は車の中でグッスリ寝ているよ。ラーグが見ているはずだよ」

 

「初めての徹夜だったからね、さすがに無理をさせすぎました」

 

「そうか、それにしてもまさかグリードの実用テストをするためにこんな騒ぎを起こすとはな……いくら後ろ盾があるからって舐めた真似をしてくれたもんだ」

 

「……はい」

 

「でも、これだけの騒ぎを起こしたわけですし……さすがに言い逃れはできないですよね?」

 

そう質問してみると、2人は黙ってしまった。つまりそれが答えだった。

 

「え……」

 

「やっぱり……保釈されてしまう可能性が?」

 

「ああ、高いだろうな」

 

「今までにも、マフィアの密輸を摘発したことがあったのですが……その都度、圧力がかけられて保釈されてしまっているんです。それどころか適当な名目で密輸品も返還する事になって……」

 

「マジかよ」

 

「グダグダすぎですね」

 

「予想通りすぎて頭が痛くなってくるよ」

 

「ま、わかった上でやったんやけどな」

 

「わかっているならいい……これからもVII組の働きに期待しているぞ。さて、俺達はこいつらを連れて行くが、お前達は……」

 

「私達はまだ実習が残っていますので」

 

「地上本部に向かわれるのですよね?次元会議の警備を任されるなんてすごいです!」

 

「どちらかと言うと、遅れながらの仮配属だと思うがな」

 

「むしろ会議中に高ランク魔導師を側に置かせたいんだろう」

 

「否定できんな、上層部の何人かはお前達の学院入りに反対してた連中もいるからな。そいつらの圧力がかけられたんだろう」

 

「テオ教官はそれを知ってなお、利用するのでしょうけど」

 

「ありえるな、あいつなら」

 

「そうか、俺達はもう行く。またクラナガンでな。ギンガ、出発の準備を」

 

「了解しました!」

 

ゲンヤさんとギンガは車に乗り込み、マインツを去って行った。

 

「さて、俺達も行くか」

 

「うん!」

 

車に乗り込み、俺達は次の目的地……クラナガンにある地上本部に向かって出発した。

 

「しっかし、アレがラーグなんて今でも信じられへんなぁ」

 

後部座席でルーテシアを膝枕して頭を撫でながらはやてがそう言う。

 

「ソエルちゃんと一緒で仮の姿を与えたんだよ」

 

「カッコよかっただろう?」

 

「ええ、夜の雰囲気と相まって勇ましい姿でしたよ」

 

「いい所を持って行かれたけどね」

 

「そうだな」

 

「そういえば、何でレンヤ君に呼ばれたんや?」

 

「今回の事件は不確定要素が多かったからな。念のため付近に待機してもらってたんだ」

 

「あ、だから町を出る時に連絡してたんだ」

 

「それにしてはすぐに来なかったな……どこで待機してたんだ?」

 

「20キロ先だ」

 

「遠いし、そこから数分で来たのかよ!」

 

「最終便で向かってたんだよ。連絡をもらってすぐさま俺が爆丸になってバトルギア・ウェーブブースターで飛ばして来たんだ。ルーテシアが叫んでたがな」

 

「あー、確かにあれは速いからね」

 

「ジェットコースターなんて目じゃないね」

 

「う、う〜〜ん……た、助けて〜……」

 

ルーテシアが寝言で助けを求めてた事に、全員が苦笑した。

 

 


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