魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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83話

 

 

3日後ーー

 

いつも通りに目を覚ますし時間を見たらまだ余裕があった。しかし二度寝する気は無かったのでベットから出て身支度を済ませた。

 

1階に降りるとすずか、はやて、フェイト、ユエ、リヴァンが既にいた。同じくB班も一緒だった。

 

「皆おはよう。今日は早いんだな」

 

「おはようレン君」

 

「まあそうね。あなた達の移動方法が気になってね」

 

実はエルセアから先にはレールウェイが通っておらず、マインツに行くにはバスで行きのだが、その始発が昼頃なのだ。それをテオ教官に言った所……当日、寮前で待つように言われたのだ。

 

「結局まだ分からないんだけど」

 

「テオ教官は既に寮から出たしね」

 

「まだ待ちそうだよ」

 

「なら皆さん、軽い朝食はいかがでしょう?」

 

「それはええな」

 

「ありがとうございます、ファリンさん」

 

「いえいえ、それでは直ぐに持ってきますね」

 

ファリンさんは食堂に入ると、直ぐに戻ってきた。お盆の上にはおにぎりが幾つもあった。

 

「おにぎりだぁ!」

 

「ていうか最初から作っていたのかよ」

 

「ええ、テオさんに言われて」

 

「全くあの人は……」

 

「まあまあ、せっかくだしいただこう」

 

「よう噛んでお食べ〜」

 

「何もないのが塩、海苔が昆布、白胡麻が鮭、最後にわかめごはんやよ〜」

 

それからしばらくおにぎりを食べていると……

 

パパーーン!

 

外から車のクラクションが聞こえてきた。

 

「なんやろう?」

 

「行ってみようよ」

 

外に出てみると、そこには前に運転した白い車があった。

 

「これって……」

 

「うわぁ、かっこいいねぇ」

 

「この車は一体……」

 

「よお、お前ら」

 

車からテオ教官とグロリア先輩が降りてきた。

 

「教官、これは……」

 

「ああ、この車がA班がマインツに行くための足だ」

 

「ええぇ⁉︎」

 

「あのグロリア先輩……」

 

「すまないねすずか君、昨日のうちに整備は済ませておいたんだ。それでテオ教官の提案でこうして別の形で渡すことになったんだ」

 

「そうだったんですか」

 

「レンヤとすずかはこの車の事を知っているの?」

 

「ああ」

 

皆にこの車について説明した。

 

「異界対策課の専用車、ですか」

 

「へえ、聞いてはいたけどついに完成したのね」

 

「いいないいなぁ。私も乗りたかったのに〜」

 

「今度乗せてやるよ」

 

「すずかちゃんもすごいよ!こんな物を作るなんて!」

 

「あはは、ちょっと凝っちゃって時間がかかったんだけどね」

 

「は〜、こういう車は個人的にも欲しいなぁ。すずかちゃん、おいくらなんや?」

 

「ええっと……これくらいかな?」

 

空間ディスプレイの電卓を使って、出た数字をはやてに見せた。

 

「ほあああっ⁉︎す、数字が眩しくて直視でけへん!」

 

「うわ〜……」

 

「レンヤ達異界対策課っていくらぐらい持っているの?」

 

「聞いてみる?」

 

「いや、いい」

 

「ま、それはさて置き。コイツなら昼前に到着するだろうよ。俺は先にミッドチルダにいるから実習を頑張れよ、そんじゃあ2日後またな」

 

「はい」

 

テオ教官はキーを渡すと駅の方に向かって行った。

 

「さて、俺達はこれで行くとして」

 

「私達はいつも通りレールウェイで行くわ」

 

「うん、それじゃあ2日後。クラナガンで」

 

「じゃあね」

 

「気をつけてね」

 

「皆、またなぁ」

 

「うん、頑張ってね」

 

「怪我をするなよ」

 

「誰に言っているんだ?」

 

「お互い無事に再会しましょう」

 

B班も駅に向かい、実習地行きのレールウェイに乗って行った。その後俺達も車に乗り込んだ。

 

「う〜ん、新車のええ香りがするんよ」

 

「座り心地もいいな」

 

「本当いい車だね、あの値段でも欲しくなっちゃうよ」

 

「確かフェイトちゃんも免許持ってたんだっけ。もしよかったら格安のオーダーメードにするけど」

 

「か、考えておくよ」

 

さすがの給料のいいフェイトでもあの値段は躊躇するみたいだ。

 

「それじゃあ行くぞ」

 

「目的地はマインツや!」

 

車を走りはじめ、エルセアを経由して荒野に出た。

 

「乗り心地もなかなか」

 

「これなら酔いも少ないでしょうね」

 

「結局バンパーは取り付けたんだな」

 

「うん、やっぱりその方が安定するしね」

 

「へえ、確かに揺れが全くないなぁ」

 

荒野をこの車だけが道路を走る中、今から行くマインツについて説明した。

 

「さて、ここいらで今回の実習地の話をしておくぞ。ミッドチルダ西部に位置する鉱山町マインツ、主に採掘で生計を立てている小さな町だ」

 

「鉄鉱石が主な資源だけど、3回に1回は宝石が紛れ込みこともあって宝石を研磨する店もあるよ」

 

「それはさぞかし潤っているんだろうな」

 

「そうでもない、その元手からできた資金は町の開拓や採掘機器にあてがわれている。町を大きくすると同時に採掘以外での収入方法を探しているらしい」

 

「なるほど、いつかは廃れるのを見越しての考えだね」

 

「何だかおもろくなってきたなぁ」

 

「ええ、楽しみです」

 

それから少しスピードを上げて走り、頑丈な作りをしたトンネルを抜けて、昼前にマインツに到着した。マインツは切り立った険しい山中にある町だ、そこらかしこに崖の間に鉄製の橋が架かっており、崖の周りには落下防止用の柵と網で張り巡らせれていた。車は入り口付近の駐車場に駐めて、町の中に入った。

 

「うーん、居心地よくてあんま疲れなかったなぁ」

 

「確かにそうですね」

 

「本当に買うか迷っちゃうよ」

 

「フェイトちゃんなら分割払いでもいいよ?」

 

「基本一括でしかも結局金取るのかよ」

 

「あ、あはは……」

 

指定された宿に向かい、荷物を置いて宿主から依頼の入った封筒を受け取り、実習を開始した。まずは町外にある街灯の交換作業を始めた。

 

「まえまえから思ってたんだが……これ、異界に関係あるのか?」

 

リヴァンが鋼糸で街灯そばに足場を作り、電灯を交換している時にそう言ってきた。

 

「異界に関わるには単純な力任せじゃダメなんだよ。こういった市民との流行をよくしていけば、異界の対処も断然良くなるんだよ」

 

「今の管理局にはない考え方ですね」

 

「警察にせよ管理局にせよ、そこまで親身に接するのは俺達ぐらいだからな」

 

「そうやなぁ、そのおかげで評判もええやもんな」

 

「ふふ、そうだね………あれ?」

 

街灯を交換し終えて降りてきたフェイトが何かを見つけた。

 

「レンヤ、あれは何かな?」

 

フェイトが指さす方を見ると、道にそれた場所に頑丈な扉に塞がれた坑道があった。

 

「ああ、そこは旧鉱山だ。以前はそこで鉱石を採掘してたみたいだが、崩落があったらしくてな。それ以降封鎖されている」

 

「そうなんだ」

 

「今は関係あらへんやろ。交換はさっき通ったトンネルもあるんやからはよう行こうか」

 

「そうですね、現鉱山の方にも依頼がありましたし」

 

「こんな時くらい飛行魔法を使ってもいいだろう」

 

「いくら交通量が少なくても、管理局員が規則を破ることなんてできないよ」

 

「そういうことだ、皆でやれば早く終わるんだ。無駄な気を使うよりはいいだろう」

 

それからトンネル内の電灯も交換した。その時、一台の黒い運搬車がトンネルに入ってきて、俺達の横を通りすぎてマインツ方面に向かった。

 

「鉱石の運搬車かな?」

 

「……多分違うやろ、あんな小さいわけあらへん」

 

「となると、生活品などの物資かもしれませんね」

 

「そうだな……と、これで最後っと」

 

「それじゃあ、マインツに戻ろう。古い電灯を工房に渡さないと」

 

来た道を引き返して戻ると、先ほどの車が駐めてあった。気にせず工房に向かい、古い電灯を渡した。

 

「さて、次は鉱山に発生した異界の対処だな。町長から許可をもらわないと」

 

「ん?町長のとこに行くのか?だったらし後にした方がいい」

 

工房長が何か知っているようだ。

 

「どうしてですか?」

 

「さっき来た人達と真面目な話しをしているそうだ。まだ他が残っているだろう?後で訪ねた方がいいとおもうぞ」

 

「はい、教えいただきありがとうございます」

 

「なら、研磨店にいかへん?」

 

「そうだな、それがいい」

 

それで研磨店に向かい、落下防止用の柵と網の点検と整備をするという依頼を受けた。とても重要なことなので慎重に、すみずみまで破損や腐食がないか確認した。その後、報告した後に時間を見計らって町長宅に向かた。町長宅前に来ると、ドアが開いて……

 

「それじゃあ町長、よろしくご検討くださいよ」

 

「また明日、お伺いに参りますからねぇ」

 

なにやら野蛮そうな声が聞こえてきた。年に為に視線で皆に宿に方向を向いて、頷いたのを確認して宿に急いで入った。

 

「クク……後は仕込みだけだな」

 

「用意はできている、今からでも楽しみで仕方がねえぜ」

 

出てきたのはいかにもマフィアな格好をした2人組、不穏な会話をした後町の出口に向かい、あの黒い運搬車で去って行った。

 

「あれは何の団体でしょう?」

 

「あれはミッドチルダ西部を縄張りとしているマフィア、グリズリーファング……」

 

「彼らは管理局でも問題視している組織だよ、質量兵器の密輸や非合法の商品なんかをとりあ使っているんだ」

 

「それだけわかっているのに起訴や告発ができないんだよ、管理局の上層部が適当な言い訳を作って釈放したり押収品を持ち出すたりするし」

 

「前にアリサちゃんから聞いたんやけど、レイブンクローとも仲悪うようやしな」

 

「東のヤクザ、西のマフィア、か」

 

「しかし、そのマフィアがここに一体何の用事が?」

 

「どうもキナ臭くなってきたな」

 

「……とりあえず町長から話を聞かせてもらおう。マフィアが何をしに来たのかついでに判るかもしれない」

 

町長宅に向かい、ドアをノックしたら直ぐに人が出た。

 

「また来たのかね。直ぐには決められないとーー」

 

「すみません、レルム魔導学院、VII組の者です」

 

「お、おお……これは失礼」

 

「マインツの町長、ビクセンさんですね?お取込みの所にお邪魔して申し訳ありません」

 

「構わんよ、時間を取らせたのはこちらだ。どうぞ中に」

 

「失礼します」

 

席に案内されて、実習を含めた先ほどの事について話し始めた。

 

「すまないね、時間を取らせて。お詫びに鉱山内の異界の対処は明日に回そう」

 

「いえ、大丈夫です。今からでもーー」

 

「ここは素直に受け取っておくべきだぞ。今から行くとどうしても鉱山の閉鎖時間を越えてしまう」

 

「それで、不躾いながらお聞きしたいのですが……」

 

「先ほどの連中の事か、実はここ数日にグリードの被害に遭っていてね」

 

俺達はそれを聞いて驚いた。

 

「それは本当ですか?」

 

「ええ、今までに2回ほど被害にあっているの。どれも怪我人が出ませんでしたが……」

 

「それは心配ですね」

 

「異界対策課には?」

 

「もちろんお願いした。ただ、基本的に彼らはとても忙しいみたいでね。人的被害がでない以上、後回しにされたんだ」

 

「……誠に申し訳ございません。何分今は学生の身ですし……」

 

「いやいや、君達の事情はよくわかっている。こうしてこのマインツを実習地に選んでくれてむしろありがたいくらいだよ」

 

「そう言ってもらえれば」

 

「それで管理局にせめて警備をお願いしたのだが……断られてしまってね」

 

「それは、一体どうして?」

 

「さあ、それでどうしようかと迷っていたところに、あの連中が訪ねてきたんだ」

 

「グリズリーファングの者ですね」

 

「彼らは一体、どんな話をしにこちらへ?」

 

「それがね……自分達が用心棒になると申し出てきたんだ。いつグリードが来ていいようにとね」

 

それはあまりにもマフィアとかけ離れた事だった。

 

「用心棒だって……?」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。それは勿論グリードに対してですよね?法律で異界対策課と例外のVII組以外は緊急時以外のグリードの接触は禁止されています」

 

「それは勿論言ったんだが……どうやら議長の許可を得たらしくてね。証明書もちゃんと見せてもらった」

 

「なっ⁉︎」

 

それはおかしい。異界やグリードに関しての全権は異界対策課が持っているはずだ。こちらに話も通さないでそんな事……いったい誰が?

 

「ま、まあそれはともかく……勿論、タダじゃないんやろ?」

 

「いや……お金を取るつもりはないらしい。代わりに、鉄鉱石の取引をその期間だけ独占させて欲しいそうだ」

 

「鉄鉱石の取引権を……確か鉱山そのものの採掘権はミッドチルダが持っているはずですよね?」

 

「ああ、あまり採掘しすぎないよう、政府の決めた量を守る必要がある。鉄鉱石や宝石には決められた相場もあるから無茶な取引はそもそも出来ないしね」

 

「だけど、採掘した鉱石をどこに買い取ってもらうかはこの町の裁量に任せられているの。私も何度か取引をお願いしたし」

 

「すると、彼らにとっては用心棒の手間に見合うだけのビジネスになりという訳ですね」

 

「そうは言っても、付き合いのある商人さん達もいることですしねぇ……どうしたものかと困り果てていた所なんですよ」

 

「なるほど……」

 

どうにも他に裏がないか考え込んでしまうが、被害が出ていない以上、無闇に探ればマインツにも迷惑がかかってしまう。

 

「まあ、こんな話はいいだろう。もう休みなさい、明日の依頼は朝に宿主に渡しておくよ」

 

「お話ししていただき、ありがとうございます」

 

「それでは失礼します」

 

「気をつけてね」

 

町長の家を出て、宿に向かい。先にレポートを纏めておいてから夕食を食べた。

 

「ねえ皆、あの事についてどう思う?」

 

食後、ゆっくりしている時、唐突にフェイトがそう質問してきた。

 

「あの事っていうと……」

 

「例のグリズリーファングですね」

 

「確かに何か企んでいる会話をしていたが、奴らに手を出すにしても慎重に事をなさないといけない」

 

「今までの事件後の処理を考えると、上層部の議員の誰かが裏にいるのは間違いない」

 

「仮に事件を起こして逮捕しても大した罪にはならへんし直ぐに釈放もされるやろ」

 

「……わかっているよ。確かに根本的な解決にはならないけど、でもーー」

 

「わかっている、放ってはおけないな」

 

「まあでも、今考えてもどうにもならへん。今日ははよう寝よか」

 

「そうだな。まだ次元会議の件も残っているし」

 

俺は次元会議の資料作成があるので直ぐに寝ず、皆は先に部屋に入って行った。

 

それから休まずに空間ディスプレイのキーボードを打ち込む。一通りまとめて体をほぐすて時間を見ると、すでに深夜を回っていた。

 

「もうこんな時間か。レゾナンスアーク、チェックをしてくれ」

 

《はい》

 

誤字脱字などの確認を任せて、気分転換に外の空気を吸いに出た。

 

「ん〜〜………はあ。さすがに肩が凝る」

 

《大丈夫ですか?》

 

「ああ、いつもの事だしな。さてと、明日もあるし早くーー」

 

グルルルルッ……

 

「う、うわあああっ⁉︎」

 

「なっ!」

 

いきなり獣の唸り声と男性の悲鳴が聞こえてきた。すぐに聞こえてきた方向に向かうと、足を怪我した男性が倒れていた。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

 

「あ、ああ……大丈夫だ。足を少しひっかかれただけだ」

 

「そうですか……一体誰にやられたのですか?」

 

応急処置を施し、事情を聴いてみた。

 

「ついさっき首都から帰ってきたんだ。それで家に向かおうとした時に犬みたいなのに襲われて……少しひっかかれたら逃げて行ったんだ」

 

「ちなみに1匹だけでしたか?」

 

「ああ、いた。襲って来たのは1匹だけだったが、町の出口あたりに何匹かいた」

 

「レゾナンスアーク」

 

《周囲500メートル円内にグリード、及び生命反応なし》

 

「もう逃げられたか……だが」

 

どうにも腑に落ちない部分がある、だが現状の最優先事項は男性の身の安全の確保だ。男性を自宅まで運び、皆を起こすのもしのびないので後日説明することにした。

 

 


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