魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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81話

 

 

ミッドチルダからほど近くにあるテーマパーク。そのアトラクションの一つの屋内プール。

 

屋内の天井に張られたガラスを通して時期相応の日光が降り注いでくる。周りには水着をきた来場者が楽しそうに遊んでいた。

 

だが……

 

「ッ〜〜〜〜〜!」

 

プールサイドで水着を着た中学生位の女の子は怒りに震えていた。

 

「なんで……なんで……」

 

こんな状況を作った張本人を睨みつける。

 

「な、ん、で!私はこんな所にいるんですか⁉︎」

 

女の子……ティアナは同じく水着を着た兄、ティーダを問いただした。

 

「いや〜、上司からいい加減休めって言われてな。それで久々にぐうたらしてるわけだ」

 

「そ、れ、で!な、ん、で!私まで一緒に来ないといけないの⁉︎」

 

「ティアナも夏季休暇の間は訓練もないだろう。折角の機会だしたまには兄妹水入らずにーー」

 

「ふん!」

 

「いったーー!」

 

そんなティーダの足を本気で踏んだ。ティアナはそっぽを向いて少し離れたビーチチェアに座った。

 

「はあ、こんな暇があったら自主練をした方が有意義よ」

 

だが来てしまったので、とりあえず休もうとする。目を閉じてしばらくしたら影が掛かった、目を開けると飛込み台に人がいた。

 

「とうっ!」

 

どこか見覚えのある人影は綺麗なフォームでプールに飛び込んだ。

 

「今のは……」

 

確認しようと身を起こすが……いつまで経っても上がって来なかった。

 

「ま、まあ、気のせいーー」

 

「ぷはー!」

 

縁から手が出て来て、勢いよくプールから上がってきた。

 

「あー死ぬかと思ったー」

 

「ス、スバル⁉︎」

 

「あ、ティア!偶然だね〜」

 

「な、何であんたがここに……」

 

「え、ティアもなのはさん達に誘われたんじゃないの?」

 

「ええぇぇ⁉︎」

 

驚愕する中、入り口からなのは達が出てきた。

 

「あ、ティアナ。偶然だね」

 

「あなた達も来ていたのね」

 

「久しぶり、元気にしていた?」

 

「夏至祭では会えんかったかたなぁ」

 

(う、なのはさん達女性陣の水着が可愛いしどこか派手で大胆。それでいて完璧に着こなしている大人の女性の雰囲気がするわ。それに……全員、大きい……)

 

「お待たせ皆」

 

「ティア、どうかしたの?」

 

「ソ、ソーマ⁉︎」

 

なのは達の後ろからレンヤとソーマが出て来た。その時、ソーマの名を呼んだティアナにティーダが反応した。

 

「皆さんはどうしてここに?」

 

「どこに遊びに行こうって話になって、それでここのプールに来たの」

 

「ルキュウからほど近いからね」

 

「そんで私達以外も誘ったんよ、ティアナちゃんにも連絡したんけど……偶然にもティーダさんと一緒に来てたんやな」

 

「ええ、まあ……」

 

「後、他にも来るんだよ!」

 

「守護騎士の皆さんとユーノさんとヴァイスさんも来るみたいだよ」

 

「よお、奇遇だな」

 

ティーダがレンヤ達に気づいて立ち上がってきた。

 

「ええ、本当に」

 

「それじゃあ遊ぼうか!」

 

「うん!」

 

「ほら、ティアも行こう」

 

「ちょっ、引っ張らないで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ!」

 

「ほいっと!」

 

「はやてちゃん!」

 

「いっくでー!」

 

今、私はなのはさんとボールで遊んでいる。こうして見てみるとやっぱり年相応の女の子なんだと思う。でも、それでも優秀だという事は変わらない。

 

「それにしても意外だったよ、スバルが泳げないなんて」

 

「それはその……浮けないっていうか……」

 

「じゃあなんでさっきプールに飛込んだの?」

 

「い、いやーー一度はやってみたいなぁって」

 

「相変わらずだね」

 

スバルはソーマに泳ぎを教えている。以外にもなのはさんも泳げず、レンヤさんに教わっている。それにしても……

 

「よおユーノ、久しぶりだな!」

 

「ヴィ、ヴィータ!水着、過激過ぎじゃないの⁉︎」

 

ヴィータさんはユーノさんと。

 

「ヴァイス、私と遠泳をするぞ」

 

「ヴァイスさん、ウォータースライダーなるものに行ってみたいです」

 

「お、お二方、落ち着いてください……くっ、男のロマンはこんなに険しい道なのか……」

 

シグナムさんとリンスさんはヴァイスさんと。

 

「はい、ティーダ君。どうぞ」

 

「あ、ありがとうございます……(よかった、ちゃんと市販のものだ……)」

 

シャマルさんは兄さんと一緒にいた。

 

他の人は知っていたけど、兄さんにもいたなんて……妹として、家族として安心したような。寂しいような複雑な気持ちになる。

 

ちなみに、レンヤさんの守護獣とザフィーラと融合機2人は来てないそうだ。ユニゾンデバイスとは一度会って見たかったのに。

 

「うわっ!」

 

「大丈夫?」

 

「う、うん。大丈夫」

 

ムカッ!

 

「ふんっ!」

 

「あいた!」

 

「ちょっ、手を離さなーーもがっ!」

 

ボールがソーマに頭を直撃して、2人はプールに沈んでいった。

 

「あらあら」

 

「ティアナちゃんも女の子だね」

 

「そ、そんなことないですよ!」

 

そんな私の行動を、鋭い目で見る兄さんの事には気付かないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンヤ達の都合があったこともあり、屋内プールに隣接する温泉旅館に二泊三日泊まることになった。こんな時じゃないとお金の使い道などあまりないレンヤ達あった。

 

「う〜〜ん!美味しい〜!」

 

「ホント、地球の料理ってこんなに美味しいんですね」

 

「そうだよ。まだまだあるからじゃんじゃん食べよう!」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「そういえばソーマ、スバルはどれくらい泳げるようになったの?」

 

「ああ、うん。浮く位には」

 

「ふーん」

 

面白くなさそうな顔をしながら向かい側にいるソーマの足を踏みつけた。

 

「い゛ったーー!」

 

「ふんっ!」

 

「ちょっ、ティア⁉︎」

 

「あらら」

 

「大丈夫かソーマ」

 

「だ、大丈夫、です……」

 

「激しい感情表現やな」

 

それをティーダは横目で見ており、手に持つコップが震えていた。

 

食事を済ませた後は温泉に入る事になった、それぞれデバイスや貴重品を預けてから温泉に入った。

 

男性陣は後で入る事になった。レンヤとユーノは端末でこの前ソエルが作ったゲーム……ポムっと!で対戦しながらヴァイスさんと雑談していた。

 

「それにしてもユーノ、よく休みを取ったな」

 

「え、休ませてもらったんじゃなくて休みを取ったって……」

 

「ユーノは誰かが止めない限り働き続けるからな」

 

「いや〜、途中でやめるのは嫌で……」

 

「途中どころか終わりがないよ。前に神器取りに行った時見たが一種の迷宮だぞあれ、いつか異界認定されるぞ」

 

「あはは、そうだね」

 

「そこは否定しないのかよ……」

 

そんなことを言いながらも2人の手はせわしなく動く。

 

「そういえばユーノ、最近ヴィータさんとはどうよ?」

 

「え、ヴィータと?前から無限書庫に足を運んでくれてよく僕を止めてくるよ。でも、抱きつかれると、ね……」

 

「ああそうか、いきなりスタイル抜群の大人の女性になったからなぁ〜」

 

「そういうヴァイスさんはどうなんですか?」

 

「俺は……シグナム姐さんとリンス姐さんに引っ張り回されているさ……」

 

「……御愁傷様です」

 

「言うな……お前はどうなんだよ?」

 

「俺ですか?俺はそんな浮ついた話は全く」

 

「そうなの?」

 

「ああ、皆いつも通りに接してくれるし。むしろ進展なしかな」

 

それはただ、なのは達のアプローチが日常と化しているからである。

 

「ならお前はどうなんだ、好きな相手はいるのか?」

 

「んーー、皆を好きって言われれば好きだけど……まだよくわからいなぁ。ま、今は学院生活と異界対策課を頑張りますよ」

 

「そ、そうか……」

 

「あ、そうでした」

 

さっきまで読書をしていたソーマが顔を上げた。

 

「レンヤさん、僕が訓練校を卒業したら異界対策課に入れてもらいませんか?」

 

「いきなりだなぁ。まあいいぞ、だが覚悟してろよ。ただ剣を振るうだけじゃあ異界対策課はやっていけないぞ」

 

「望むところです!」

 

「いい返事だ、推薦は出しておく。頑張れよ」

 

「はい!」

 

レンヤが画面に視線を戻すと、LOSEと写っていた。

 

「ってユーノせこっ!」

 

「レンヤが自爆したんだよ!」

 

それから再戦となり、ティーダが戻ってくるまで白熱した落ちゲーは続いた。

 

その頃温泉ではーー

 

「あああ〜気持ちいい〜♪」

 

「姉さん、だらしないよ」

 

「う……く……あ……」

 

「痺れてきます〜……」

 

「ここは薬草低周波風呂って言ってね、筋肉をほぐすのにいいみたいだよ」

 

「初めはそうなるわ」

 

「でも慣れると気持ちいいよ」

 

「はあ〜、極楽や〜〜……」

 

「ああ〜痺れる〜〜……」

 

「ふむ、悪くないです」

 

「変わった趣向ですね」

 

「ええ、治療にも有効そうね」

 

女性陣は温泉を堪能していた。

 

「そういえば、なのはさん」

 

「何、ティアナ?」

 

「本当に偶然なんですか?」

 

そう聞いた瞬間、なのはさん達6人は頭からお湯に入った。

 

「な、何の事かなぁ?」

 

「いくら偶然でもソーマ達以外にも呼べる人はいましたよね?」

 

「レンヤ以外の男子は用事があってね、それで呼べなかったんだよ!」

 

「そやそや、各部活の友人も予定があったんよ」

 

「管理局の友人も似たような感じよ」

 

「そうだよ!決してーーガボガボガボ!」

 

「あ、あははは……」

 

「……わかりました」

 

「ティア、そんなはずないよ。今はゆっくりしよう」

 

それからアリシアがのぼせたので温泉から上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日ーー

 

「さあ、今日も楽しく行こう!」

 

『おおっ!』

 

今日もプールで遊ぶことになった、今度はスライダーなどの遊具で遊んでいた。

 

「それじゃあスバル、泳ぎの練習をしようか」

 

「うん、よろしくね!」

 

「あ、ちょっと!」

 

「え、どうかしたのティア?」

 

「わ、私も教えるわ!説明下手のソーマだけじゃ心配だわ!」

 

「ええ?ソーマの説明はわかりーー」

 

「い、い、わ、ね!」

 

「「は、はい!」」

 

ソーマとスバルはティアナの迫力に直立不動で返事をした。それをレンヤ達が見ており、念話で会話をした。

 

『ふふ、上手くいきそうだね』

 

『ああ、そうだな』

 

『この調子で問題ないでしょう』

 

『そやな、でも……』

 

はやての視線の方向にティーダさんが飲み物片手にビーチチェアに座っていた。すごい目つきでソーマ達を睨みつけながら。

 

『『『『………………』』』』

 

『……行こう、皆』

 

『触らぬ神に祟りなし、と』

 

レンヤ達はそそくさと離れていき、ソーマとティアナでスバルの手を握って泳ぎを教えていた。

 

「ほら、もっと力を抜いて」

 

「う、うん」

 

「よし、その調子だよ」

 

スバルの手を引きながらティアナは横目でソーマを見た。思わずティアナの頬を赤く染めて口元は緩んでしまう。それを睨むように見ていたティーダは……

 

ピシ……バキンッ!

 

手に持っていたグラスを砕き、手に溢れた赤いジュースが血のように手から滴り落ちる。

 

「ティ、ティーダ君?」

 

「すいませんシャマルさん、ちょっと用事を思い出しました」

 

「え、でも……」

 

ティーダは何か言おうとしたシャマルの口に人差し指を当てた。

 

「それではまた後で」

 

「は、はい……///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ソーマは一旦旅館に戻るとの事でティアナ達と別れた。

 

ピリリリリ♪

 

ソーマの端末がメールを受信した、相手はティーダだ。

 

「えーと?“話があるからプール地下まで来てくれ”……なんだろう?」

 

ソーマは疑問に思いながらもプール地下に向かった。ここは震災時や緊急時のためのシェルターがある。

 

地下に到着し辺りを散策すると、シェルターの1つの扉が開いていた。

 

「ここかなぁ……いないか」

 

そう思った瞬間、突然シェルターの扉が閉まった。

 

「ええ⁉︎ちょ、何で⁉︎」

 

「ーーそこは開かないぞ、ソーマ」

 

するとスポットライトに明かりが付き、後ろに航空武装隊の制服を着たティーダが立っていた。

 

「ティ、ティーダさん?」

 

「お前に聞きたいことがあってな」

 

「僕に?一体何の用ですか?」

 

尋常じゃない雰囲気にソーマは息を呑む。

 

「お前は……」

 

「はい」

 

「お前はティアナと一体……どういう関係なんだ」

 

「………はぁ⁉︎」

 

「昔から散々見てきたが、お前の周りには女性の影が多く見てきたが……」

 

顔には変化がないが、ソーマからは見えない位置の右手がすごい動きをしていた。

 

「もし!もし、ティアナを傷付けるような事をしたら……俺はお前を……潰す」

 

「あのぉ……い、一体何の話ですか⁉︎」

 

ティーダはソーマに向かってまさに狂気の顔で近づける。

 

「ティアナが、ティアナが悲しませるような事があれば……ソーマ、俺は……お前を、お前をおおぉ!」

 

手を伸ばしながらゆっくりソーマに近付くティーダ。

 

「だから、何の話かサッパリーーぎゃああああぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が進んで夜、私とティアは温泉から上がって今日の夕飯の事を考えていた。

 

「今日の夕ご飯は何かなぁ?」

 

「相変わらず食い意地が張っているわね」

 

今なのはさん達はいない。何でも近くでゲートが開いたそうでその対応にあたっているらしい、気持ちをパッと切り替えられる所がやっぱりすごい。私だと「えぇー……」って愚痴を言うに違いない。そう思い更衣室を出ようとしたら……

 

ガシャアアンッ!

 

「キャアアアッ!」

 

「おらあぁ!静かにしろおぉ!」

 

突如、女性の悲鳴がしたと思ったら黒い覆面をかぶった男が入ってきた。その手には質量兵器。男は天井に発砲して乾いた音が響き、女性達は悲鳴を上げる。

 

私はティアと目線を合わせ、頷くと……静かに手を上げた。非魔導師の一般市民もいるし手元にはデバイスのない今、抵抗するのは無謀だ。

 

そのままカウンター前に集められた、男性は逃したようで女性しかいない。覆面をした男達が持っているのは全て質量兵器だった。とその時、外から拡声器でこちらに呼びかけようとしていた。

 

「君達は完全に包囲されている!君達の仲間も盗んだ盗品も全て我々の手にある!無駄な抵抗はやめ、速やかに降伏せよ!」

 

「こちらには人質がいる!我々が次元船で去るまでの安全の保障を要求する!」

 

バババババンッ!

 

男はそう言い切ると、威嚇のため銃を乱射し。また女性の悲鳴が上がる。

 

『まずいよ、デバイスを預けちゃったから何も出来ないよ』

 

『せめて位置さえ分かれば……そうだ!私がサーチャーで位置を特定する!』

 

『で、でもバレたら……』

 

『この距離なら魔力光を最低限まで抑えられるわ、大丈夫よ』

 

ティアはサーチャーを小さく、ゆっくり飛ばし。カウンター奥にある私達のデバイスを探し始めた。

 

『ティ、ティア〜……』

 

『うっさい!集中できないわよ!』

 

「ん?お前!何をしている!」

 

『う………あった!右、40度!』

 

『了解!』

 

瞬間、飛び上がり。ティアの指定した場所に魔力弾を放ち、デバイスが散らばる。

 

「あった!」

 

「よし!」

 

すぐに自分のデバイスをキャッチして起動する。だがその間に覆面の1人がこっちに銃を向けたが……

 

バンッ!

 

「おわっ⁉︎」

 

横から魔力弾が放たれて、覆面の手から銃を落とした。横を見るとヴァイスさんが銃型のデバイスを構えていた。

 

「バインド!」

 

その後ろからユーノさんが出て来て、覆面の1人を拘束する。

 

「やあああっ!」

 

「はあああっ!」

 

私とティアで残りの覆面を鎮圧した。女性達にも怪我はないし、上手くいってよかったよ。

 

「……………………」

 

「? ティア、どうかしたの?」

 

「え、あ、何でもないわ」

 

「そお?まあとにかく助かりました、ヴァイスさん」

 

「いいってことよ、これぐらい」

 

その後、覆面達は管理局に連行されて。私は簡単な説明を聞かされた後、解放された。ちょうどそこにレンヤさん達が戻ってきた。

 

「スバル、大丈夫だった?」

 

「はい!全然平気です!」

 

「それなりの活動だったらしいな、ヴァイス」

 

「いやいやそんな、俺には狙撃しか脳がないですから」

 

「ユーノ、怪我はねえか?」

 

「大丈夫だよ、後ろにいただけだし」

 

事情を説明する中、ティアだけが黙って手を見つめていた。

 

「ティア?」

 

「もしかして怪我をーー」

 

「知っていたんですね?」

 

「え⁉︎あ……な、何のことかなぁ〜?」

 

「う、うん……」

 

「そ、そうやで〜……」

 

いきなりなのはさん達が同様し始めた。

 

「ティーダさんからお願いされたんだ」

 

「ちょ、レンヤ⁉︎」

 

「もう隠せないだろう」

 

「ふふ、そうだね。ティアナは暇があればずっと自主練をしているでしょう?だから休ませるためにこうしてティーダさんに呼ばれたの」

 

「さっき、魔法を使ってどうだった?」

 

「……いつもよりスムーズに魔力コントロールができました。使った後の疲労も小さいです」

 

「つまりそう言う事よ」

 

「何もただ動いて練習するだけがトレーニングじゃないの、休むこともまたトレーニングの1つだよ」

 

「ただガムシャラに今のまま続けていれば……いつか必ずティアナは壊れる。それをティーダさんが止めてくれたんだ」

 

「そうでしたか……」

 

「これは教導官としての助言だよ。焦らずゆっくりと前に進んで行けば必ずゴールに届く!」

 

「そうでしたか……このことは全員が?」

 

「ううん、多分私とソーマだけだと思うよ。実際、私もビックリ」

 

「まあ単純に、2人は嘘がつけへんからなぁ」

 

「確かに」

 

「ま、これからも精進しろよ」

 

「ところで、そのソーマはどこだ?」

 

「そういやティーダもいねえな」

 

「こんな騒ぎがあったのに、一体どうしたんだろう?」

 

「心配ねぇ」

 

そういえばそうだ、あの2人はどこに行ったんだろう?ティアに聞いてみようと横を向いたら……

 

「…………………」

 

真っ黒いオーラ出しながら怒っているティアがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、白状しろ!もう俺の事をお兄さんと呼びたいのか⁉︎そうなのか、そうなんだな……!」

 

ティーダがソーマの肩に手を置いたまま、延々とその質問を繰り返していた。

 

「だから!さっきから話が全然見えーー」

 

ドカアアアアアアッ!

 

「どはあああっ⁉︎」

 

突如、シェルターの外壁が爆発した。

 

「な、何だ⁉︎一体、何が……」

 

ゆっくり爆煙が晴れてきて、そこには……

 

「………………」

 

オレンジの魔力光を全身から放ち、幾つもの魔力弾を浮かせながらティアナが立っていた。

 

「ティ、ティアナ⁉︎」

 

驚愕するティーダ。それはシェルターを壊したからなのか、ここにティアナがいるのかは定かではないが。崩れた外壁の外にはレンヤ達がティーダに向かって合掌していた。

 

ゆっくり、ティアナは兄に向かって歩みを進める。

 

「ままま待ってくれティアナ!おおお俺はお前のためを思って!」

 

必死の弁解も聞く耳持たず、歩き続けるティアナ。

 

「ティアナ……! ティ、ティアちゃん?」

 

ティーダの目の前に立ち、ゆっくりと手を振りかぶるティアナ。その拳には過去最高の魔力密度の魔力を纏っていた。

 

「あ、ああああぁぁ⁉︎」

 

ドガンッ!

 

「ぐふっ!」

 

ティアナの一撃がティーダの鳩尾に放たれ、ティーダは無言で崩れ落ちる。

 

「ほら行くわよ」

 

「え、え⁉︎」

 

ソーマの手を取り、ティーダを放置してティアナはシェルターを出て行った。

 

「…………………」

 

「何やろう、これ?」

 

「私に質問しないで」

 

「とりあえずティーダを緊急搬送しますかね」

 

何とも釈然としないが、これでレンヤ達の夏季休暇は終了したのであった。

 

 


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