魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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テストで遅れました。

継続って大変ですね。


68話

 

 

しばらく雑談をして時間を潰してりしていた、すると昨日の疲れがあってか少し寝てしまう。

 

うつらうつらしていると、脳裏にある光景が浮かんでくる。

 

焼け野原で倒れている男性とどこかに行こうとする女性。

 

喋っている内容は聞こえず、女性は去ろうとして男性が止めようと手を伸ばそうとしている。

 

「……ンヤ……」

 

場面は変わり、2人の女性が戦うのを先ほどの2人が離れて見ている。片方の黒髪の女性は徒手空拳で、もう片方のボサボサした黒髪の女性は右手の仕込んでいる刺突刃と足技を駆使して戦っている。どちらも真剣になりながらもどこかに楽しそうで、見ている2人も楽しそうに見ている。

 

【ちょ、もっと手加減してよ!】

 

【うっさい、それならとっとと喰われなさい】

 

【ひどっ!】

 

【これぐらいでついてこれないならそれまでよ】

 

本気の刺突を放ち、それを受け流して止める。

 

【そうはいかないよっ!】

 

剣を弾き、拳を構える。

 

【僕の心にもあるんだ、消したくても消えない炎が!】

 

【なら示して見せなさい!】

 

「レンヤ!」

 

「はっ!」

 

肩を揺さぶられ、目を覚ますとアリサが顔を覗き込んでいた。

 

「そろそろエルセアに着くわよ、降りる準備をしなさい」

 

「あ、ああ……ありがとうアリサ」

 

「夢でも見てたの?」

 

「もしかして、いつもの?」

 

なのはが心配そうな目で見てくる。

 

「ああ、古代ベルカ。オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの記憶だ」

 

「そんなものが君は見れるのか⁉︎」

 

シェルティスが興味津々に聞いてくる。

 

「えっと、シェルティス?」

 

「ああごめん、僕は古代ベルカの歴史に興味があってね。知っているかい?聖王がシュトゥラに留学している時に覇王と交流があった黒のエレミアと鬼神について……」

 

「ハイハイ、話しは後で。降りるよ」

 

「あ、ごめん」

 

「……………………」

 

シェルティスの意外な一面を見た後、エルセアに到着して。そして指定された宿泊施設に向かった。

 

「ちなみに宿泊施設はどこだ?」

 

「んーと、これだよ」

 

アリシアが場所が示された紙を渡してきた。

 

「このご時世紙かよ……なになに……」

 

紙を受け取り読む、駅から宿泊施設の場所まで書いてあって名前などは書いていなかった。

 

「ここって確か……」

 

「分かるの?」

 

「いや、多分勘違いだろ」

 

「?」

 

方向は一緒だけどな。

 

10分ほど歩くと、管理局の施設が見えてきた。

 

「ここかな?」

 

「周りにもそれらしいのもないし、そうだろう」

 

「えっと、陸士108部隊……確か前にはやてちゃんが研修に行った場所だよ」

 

「って事は……」

 

「ええ、間違いないわ」

 

「どうかしたのか?」

 

リヴァンが不思議がる中、玄関から茶色い制服を着た少女が出てきた。

 

「お待ちしてました!レルム魔導学院・A班の皆様ですね。私はギンガ・ナカジマ三等陸士です。どうぞこちらへ、隊長がお持ちです」

 

ギンガがまだ真新しい制服を着て敬礼する。

 

「ご苦労様です。私達、今は学生だから敬礼しなくてはいいんだよ?」

 

「いえ……そう言うわけには」

 

「まあまあ、ギンガ。ゲンヤさんのいる所まで案内してくれるか?」

 

「は、はい!」

 

部隊舎に入り、ゲンヤさんのいる隊長室に案内された。

 

部屋の前まで来て、ギンガはドアをノックする。

 

コンコン

 

「失礼します。レルム魔導学院・A班の皆様をお連れしました」

 

『おお来たか、入っていいぞ』

 

部屋に入るとゲンヤが正面のデスクにはいなく、横のソファーで座っていた。

 

「三佐、応対の時はちゃんとデスクに居てくれないと困ります」

 

「硬いことはなしでいいだろう、知らない仲でもあるまいし」

 

「……………お母さんに言いつけますよ」

 

ギンガがボソッと何かを言うと、ゲンヤさんは素早くデスクに向かい座った。

 

「よく来てくれた。レルム魔導学院・A班の諸君」

 

いきなりの変化にリヴァンとシェルティスとなのはは驚き、俺とアリサとアリシアは呆れる。

 

「コホン、それでナカジマ三佐。宿泊施設と課題の提供をしてくれるんですか?」

 

「ああ、課題は一通り揃えておいた。ギンガ」

 

ゲンヤさんは近づいたギンガに封筒を渡し、ギンガが俺に渡した。

 

「よろしく頼むぞ」

 

「はい」

 

「了解〜!」

 

部屋をギンガと一緒に出て、ロービーで封筒を開けた。

 

「住宅街付近の異界のエルダーグリードの討伐と荒野の地質調査が必須で。後は陸士の同行研修……」

 

「結構楽そうだね」

 

「ええ、異界に全く関係のない依頼があるのが当たり前になってきているけど……」

 

「レンヤ達も苦労しているんだな」

 

「だけど最後の依頼は……」

 

それを読んだ後、陸士の同行研修を詳しく読んだ。

 

「ギンガ………」

 

「えっと、ダメですか?」

 

内容は陸士108部隊から陸士階級の管理局員を1人同行させる、とのことだった。

 

「明らかにギンガの為の依頼だな、ゲンヤさんも職権濫用してるな」

 

「それでレン君、どうするの?」

 

「………分かった。アリサ、ギンガの面倒を見てくれるか?」

 

「ええ、もちろんよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

ギンガは勢いよくお辞儀をする。

 

「それじゃあ討伐は後回しにして、荒野の方に行くのでいいか?」

 

「それでいいぞ」

 

「異論はない、それでいこう」

 

「それじゃあ、A班、実習活動を開始する。B班に負けないためにも………各自、全力を尽くそう」

 

「了解!」

 

「うん!」

 

「倒れない程度には、ね」

 

「ああ」

 

「分かっている」

 

「よろしくお願いします!」

 

まず俺達はバスを使い、荒野一歩手前まで行き。依頼がある研究施設に向かった。

 

受付の人によると依頼者は調査の為にすでに荒野に行っているとのことで……

 

「と言う訳で車を借りてきた」

 

「誰が運転するの?」

 

「車持ってきたレンヤじゃないか?」

 

「免許はちゃんと持っているからな。ほら行くぞ」

 

車に乗り込み、エンジンをかけて走り出した。

 

「レンヤうまいね〜」

 

「まあな、それなり運転しているし」

 

「地球じゃあ見られない光景ね。ま、9歳から働ける世界だから当たり前か」

 

「あはは、まあ、便利だし」

 

「地球の平均就職年齢はどれ位なんだ?」

 

リヴァンが気になるらしく聞いてくる。

 

「んー、1番早くて16で。大学とか入れると22、23が1番遅いかな?」

 

「でもだいたい高校卒業が多いから18からかなぁ」

 

「へー、そうなんだ。コッチだと嘱託とかは早い年齢で受けられるからよくわからないな」

 

「ギンガちゃんみたいな子がいれば、私達みたいなのもいる。考えてみたら結構自由だよね」

 

「私みたいのは稀ですよ。魔力量が一定量ないといけませんし」

 

しばらく車を走らせていると、道路脇に車とテントが張ってある場所があり、そこに車を止めた。

 

「ここかな?」

 

「話しによればここで間違いないはずよ」

 

「テントに入ってみようよ」

 

テントに入ってみると、数人の研究員がいた。俺達に気が付いて責任者らしき男性が近寄って来た

 

「君達はレルム魔導学院の者かな?」

 

「はい、依頼の件で来ました。地質調査ですね」

 

「ああ、ここら一帯の土を改めて回収したくてね。私達は今手が離せなくて、それで君達に君達にお願いしたいんだ」

 

「わかりました、それでどうすればいいんですか?」

 

なのはが聞くと、デバイスに地図データが送られて来た。

 

「そこに記されている地点の土を取ってきてくれ。土はこの容器に入れてくれ、くれぐれも場所と容器を確認してくれるかな?」

 

「了解しました」

 

容器を入れるキャリーバッグをもらい、テントを出て車の前で地図を確認する。

 

「かなり広範囲で取ってこなきゃいけないな」

 

「手分けするにも広過ぎるな、こんな何もない所でも飛行魔法は使えないし」

 

「地道に車まで回って行こうよ」

 

「そうだな、飛ばしていけば案外すぐに終わるかもな」

 

「レン君、安全運転でお願いね」

 

車で移動して採取地点を周り、土を取って回った。

 

「ここで最後かな?」

 

「私がやります!」

 

「それじゃあお願いね」

 

ギンガに採取を任せて俺は辺りを見渡す。360度地平線まで見えて何もない。

 

「ん?」

 

遥か向こうに何か変な物が見えて、視力を魔力で強化して見てみると……

 

「サボテン?」

 

別に荒野でサボテンなんて珍しくもないし来る途中に何度か見たが、今見ているのは形がかなり変なサボテンだ。

 

「レンヤ、どうかしたか?」

 

「リヴァンか、20キロ先に変なサボテンがあるんだ。ほら」

 

「見えるか!お前の視力はどうなってんだよ」

 

リヴァンは車から双眼鏡を持ってきて覗く。

 

「あんなの見た事ないぞ」

 

「確認してみるか」

 

その間に採取を終えたようで、事情を説明してサボテンの場所まで向かう。

 

「変なサボテン、ね」

 

「もしくて、グリード?」

 

「可能性はある、アリシア」

 

「今探っているよ」

 

アリシアは目を閉じて集中している。

 

「………確かに進行方向にグリードの気配がするよ。でもなんだろう、物凄い小さい反応が大きい奴の周りにいくつもある」

 

「それは小型グリードか?」

 

「眷属でしょうか?」

 

「行ってみればわかるさ」

 

車を走らせ、5キロ手前で止まる。

 

「なんじゃありゃ」

 

「でかっ!」

 

「あれがグリードですか?」

 

「また面倒なタイプのね」

 

目の前に見えるサボテンは全長10メートルぐらいで、カクカク曲がった茎に扇型のサボテンって感じだ。白桃扇って種類に似ている。

 

そして極めつけが扇部分に目玉が付いていて、周りを見ているように動いている。

 

「動かないね」

 

「サボテンだからな、これなら楽勝だ」

 

シェルティスはデバイスを起動して突っ込もうとする。

 

「おい待て!」

 

リヴァンも行こうとするが、肩を掴み止める。

 

「なんで止める!」

 

「暑いのはここだけで充分だ、よく見てろ」

 

リヴァンは落ち着き、シェルティスを見ると……

 

ギョロッ!

 

「気づかれたか!」

 

サボテンとの距離3キロ地点でサボテンの目が一斉にシェルティスを見る。

 

サボテンは棘を一斉に発射してシェルティスを襲う。

 

「こんな物当たらない!」

 

持ち前のスピードでミサイルを避けて、接近するが……

 

『シェルティス、ミサイルが戻って来てるぞ』

 

「何!」

 

念話で伝えて振り向くと、さっきよりスピードが上がったミサイルが追いかけてきた。

 

「くっ……はあ!」

 

迫るミサイルを避けるが、どんどん増えており、斬り落とそうとするも的が小さくて当たらない。

 

「あーあ、アリシア」

 

「はーい」

 

アリシアはデバイスを起動して、シェルティスをここに転移させる。

 

ターゲットが無くなり、ミサイルはサボテンに戻って行った。

 

「あんまり独断専行するな、死に急ぐだけだぞ」

 

「ぐっ………すまん」

 

さすがのシェルティスも反省したようだ。

 

「あのグリードはある一定距離に近付く者を襲っているようね、それとあのミサイルは種ね」

 

「種?なんでなの?」

 

「あれを見ろ」

 

指差す方向を見ると、小さいサボテングリードがいた。

 

「これは、グリードなのか?」

 

「それよりも根元を見なさい」

 

アリサに言われて見てみると、痩せ細った鳥の死体があった。

 

「きゃあっ!」

 

「酷い……」

 

「あのサボテンに………識別名付けた方がいいわね。サバクケンザンでいいでしょう。その種ミサイル撃ち込まれた生物から養分を吸い取ってサバクケンザンと同種のグリードを生み出す。それの繰り返しで数を増やしていくみたいね、さしずめ生きたミサイル基地ね」

 

「早めに発見できてよかったよ、成長し過ぎたらミッドチルダまで被害が及んだかもしれないからね」

 

「もし、これが人にでも当たったら……」

 

「ミイラになるな」

 

「ひぃ!」

 

「ギンガちゃん、落ち着いて。大丈夫だよ、そうならないために私達がいるんだから」

 

「そうだな。それにこれはどうやら光像追尾式のようだ」

 

リヴァンが小さいサバクケンザンに向かって手を振ると、小さいサバクケンザンはそれを目で追いかける。

 

「動く物に反応するんだね」

 

「どうやって倒すんだ?」

 

「気づかれないで接近して一撃必殺か、遠距離からの砲撃」

 

全員が一斉になのはを見る。

 

「え、私?」

 

「私はアギトがいないとあそこまで届かないわ」

 

「私は届くけでそこまで威力ないし」

 

「俺も届くには届くが、斬撃だから残っちまうんだ。大規模な奴もあるが遅いし魔力無駄に使うからな、頼めるかなのは?」

 

「うん!任せてよ!レン君達は周りに魔力を拡散してくれる?」

 

「わかりました!」

 

なのははレイジングハートを起動して、バリアジャケットを纏いレイジングハートを構える。

 

残りは魔力を周囲に拡散する。

 

「レイジングハート!」

 

《ロードカートリッジ》

 

ガシャン!ガシャン!

 

カートリッジを2発ロードして目の前に桜色のスフィアを作り出し周りの魔力を集めていく。

 

《ロックオン》

 

「行くよ。スターライト………ブレイカーーーー‼︎」

 

ドオオオンッッ‼︎

 

放たれた桜色の砲撃は地面を抉りながら真っ直ぐサバクケンザンに向かい、直撃した瞬間大きく空に打ち上がった。

 

プシュウーーーー!

 

「ふう……」

 

レイジングハートの柄から排気熱が勢いよく噴出して、なのはが一息つく。

 

「久しぶりに撃ててスッキリしたの」

 

「あれをストレス解消に使うんじゃない」

 

妙な達成感があるなのはを放っておいて、サバクケンザンがいた場所をみると。

 

そこが綺麗に何もなかった。

 

「「あわわわわわわ」」

 

横を見るとギンガとアリシアが抱き合って震えていた。

 

「あれが正面に来たらトラウマ物だな」

 

「ああ」

 

仲の悪いはずの2人も揃って同意する。

 

「コホン!とにかく元凶は去った事だけどまだ小型が残っているわ。ここら一帯を狩り尽くすわよ」

 

「お、おお〜」

 

「ほらしっかりしろ、お前がいないと全滅したか分からないんだから」

 

アリシアを元に戻して、サバクケンザンがいた地点から半径3キロ周囲にいたグリードを狩り、アリシアの確認した後最初のテントまで戻って土を渡し報告して依頼を完了した。

 

「最初からハードだよ〜〜」

 

「これでも楽な方よ」

 

「お疲れ様です、なのはさん!飲み物をどうぞ!」

 

「ありがとう、ギンガちゃん」

 

「皆さんもどうぞ!」

 

「お、ありがとな。置いておいてくれ」

 

「はい。レンヤさん達はいつもあんなグリードと戦っているんですか?私、聞いただけだとピンとこなくて、目の当たりしたら自分がまるで役に立たないって思い知られて……」

 

「そう自分を責めないで。あのグリードが特殊なのもあるけど、誰だって化物がいれば怖いよ」

 

「次は異界に入る、気を引き締めろよ」

 

「はい!」

 

「「…………………」」

 

ギンガが元気よく返事をする中、リヴァンとシェルティスは黙ったままだった。

 

街に戻り、車を隊舎前に止めて次の依頼場所の住宅街まで歩いて行った。

 

「どの辺りの住宅街だ?」

 

「結構近いぞ」

 

「あ、あれじゃない?」

 

なのはが指す方向に住宅街があった。

 

「行ってみましょう」

 

「ああ」

 

「そういえば、詳しい異界の場所が書いてないね」

 

「まずは聞き込みだ、公園に人がいそうだな」

 

「公園ならコッチです!」

 

ギンガの案内で大きめな公園に来た。子連れの親子やそろそろ学校が終わるころなのか学生が数人いた。

 

「平穏だね」

 

「この平穏を壊さない為に俺達がやるんだ」

 

「ああ、分かっている」

 

「まずは聞き込みね、周囲に住んでいる人達を重点的に話しかけましょう」

 

「はい!」

 

「了解だ」

 

聞き込みを開始して、公園外付近にも足を運び。30分位で合流した。

 

「どうやらこの公園から夜な夜な唸り声が聞こえるらしいな」

 

「場所は特定できたの?」

 

「あそこらしい」

 

シェルティスが公園の中心にある大きな木を指した。

 

木の前まで来て、アリシアがサーチデヴァイスを操作した。

 

ファン、ファン、ファン………スーー……

 

デヴァイスから出た波長に反応して赤いゲートが顕現した。

 

「これが、ゲートですか……」

 

「見るのは初めてか?」

 

「はい、異界には入った事はあるのですがよく覚えていなくて」

 

「あの事件の時ね、覚えていなくて仕方ないわ」

 

「さて、行くにしても7人は多いな。誰か残るべきなんだが……」

 

「なら私が残るよ、ブレイカーを撃ってからまだ魔力が回復してない状態では行けないからね」

 

「それなら私も残るわ、それでちょうどいいでしょう」

 

「分かった、じゃあ行って来るよ」

 

「行ってきます!」

 

俺達5人はゲートを潜り抜けて異界に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異界の中は巨大な木がアーチ状になっている異界だった。見た目は穏やかだが、奥から感じる気配は禍々しい。

 

「うわぁ!綺麗ですね!」

 

「異界は別の通り名は理想郷、桃源郷なんて呼ばれているんだよ。異界の唯一の楽しみだよ」

 

「確かに、普通じゃあ絶対に見られない光景だな」

 

「遊びに来たんじゃないぞ、早くグリードを倒しに行くぞ」

 

「ああ、油断せずに行くこうか」

 

デバイスを起動して、バリアジャケットを纏う。

 

「それがギンガのデバイスか?」

 

ギンガのデバイスは非人格型のアームドデバイスのようだ。

 

「はい!私のデバイスはスバルと似たようなデバイスで、お母さんのデバイスをモデルにしているんです」

 

「そうなんだ。ギンガは今年訓練校に入る予定?」

 

「はい、第四陸士訓練校に入る予定ですね」

 

偶然にもティアナとソーマが入る訓練校だった、もしかしたら知り合いとかになりそうだな。

 

「それじゃあ行こうか」

 

「了解」

 

「はい!」

 

ギンガをフォローしながら異界の奥に進んでいく。

 

特に苦もなくグリードを退けながら最奥まで到着する。

 

「レンヤ」

 

奥に向かおうとした時、リヴァンが話しかけてきた。

 

「この先にいるエルダーグリードは俺とシェルティスが前衛をやってもいいか?」

 

「……2人はそれでいいんだな?」

 

「もちろん、いつまでもこんな状況が続くのはさすがに好ましくないからな」

 

シェルティスが同意するようの頷く。ようやく2人の仲が進展しそうだな、自分から進んでいるのもいい傾向だ。

 

「分かった。グリードにもよるが前衛は任せる」

 

「了解だ」

 

「任せておいてくれ」

 

まだ不安が残るがとりあえず任せてみた。

 

最奥に入ると、目の前の空間が歪んで小型車サイズの二足歩行の蟹のSグリードが現れた。

 

「相変わらず不思議生物が出てくるねぇ」

 

「はい、ビックリです」

 

リヴァンとシェルティスが武器を構えて前に出る。

 

「2人共、油断するなよ」

 

「分かっている」

 

「行くぞ!」

 

シェルティスが飛び出し、グリードの横を通り抜けながら斬る。

 

「しっ!」

 

気がシェルティスに向いたグリードに鋼糸を腕に巻きつけてバランスを崩させる。

 

「剣晶・彗星剣!」

 

黄緑色の結晶を突きと同時に放つがグリードの固い甲殻がそれを防ぐ。

 

グリードは鋼糸を切ろうとするが、リヴァンが巧みに鋼糸を操ることで防ぐ。

 

「まずはあの固い甲殻をどうにかしないとな」

 

「レンヤが行かないの?」

 

アリシアが銃でグリードの動きを止めながら聞いてくる。

 

「あの2人に任せるさ。危なくなったら出るけど、ギンガはもうちょっと下がってろ」

 

「は、はいっ!」

 

さて、どうするかな?

 

シェルティスがグリードの上に跳び、結晶を集めて1本の氷柱を作る。

 

「結晶四十七・螺洸穿(らこうせん)!」

 

グリードの頭上に振り下ろし、結晶は砕け散るも甲殻に傷を付けた。

 

「リヴァン!」

 

「繰弦曲・跳ね虫!」

 

鋼糸で編んだ円錐をグリードに突き刺し、解きほぐすことで体内から切り裂く技だが………

 

「貫通してない⁉︎」

 

どうやらグリードは一点に魔力を集めて防いだようだ。

 

「なら……!」

 

「!…待て、シェルティス!」

 

リヴァンが次の手をやろうと鋼糸をバラけた所にシェルティスが突っ込んできた。

 

「シェルティス!」

 

「鋼糸の道筋は見えている!」

 

まるでリヴァンの考えを理解している様だが、グリードまでは理解できてない。

 

グリードは鋼糸を掴み振り回した。

 

「うわあああっ!」

 

「ぐっ………引っ張ら……れっ!」

 

舞う鋼糸に足を取られてシェルティスが吹っ飛び、鋼糸を引っ張られたことでリヴァンも吹っ飛んだ。

 

「ぐっ……」

 

「ごはっ!」

 

壁にぶつけられて、シェルティスの上にリヴァンが叩きつけられた。

 

「リヴァンさん!シェルティスさん!」

 

「ここでやっちまうか!」

 

抜刀して正眼に構え、一気にグリードに接近する。

 

グリードはこちらに気付き、硫酸かヘドロかよくわからない物を吐く。

 

「ふうう………しっ!」

 

地面を魔力を放出しながら蹴りヘドロを避けて、一瞬でグリードの前まで来て上段の構えを取り……

 

烈火十文字(れっかじゅうもんじ)!」

 

額の傷を狙い刀を振り下ろし、着地したら体をひねり横に斬り裂く。

 

鋼糸も巻き込んで斬り、グリードは倒れ伏した。

 

「2人共、大丈夫⁉︎」

 

振り返るとアリシアとギンガが2人の元に向かった。鋼糸は消したようで絡まっていなかった。

 

しかし2人はさっきの行動で怒ったようだ。

 

「いきなり飛び出して何のつもりだ!」

 

「あれはグリードが鋼糸を振り回したせいだ!それぐらい分かるだろ!」

 

「無闇やたらに前に出るお前が悪い!」

 

お互いに胸倉を掴み合い、怒りを露わにする。

 

「一度協力すると言っておきながら腹の底では馬鹿にする………結句それがお前達、持っている者の考え方だろう!」

 

「ふざけるな……!その決め付けと視野の狭さが全ての原因だとなぜ分からない!」

 

このままだと殴り合いになると思い、止めに入る。

 

「よせ、2人共……!」

 

「お、落ち着いて下さい!」

 

「喧嘩はダメだよ!」

 

「うるさい、お前達には関係ない!」

 

「この際、どちらが上か知らしめてやろう!」

 

聞く耳持たず、完全に頭に血が上っているようだ。

 

「くっ……」

 

その時に気付いた。グリードが完全に姿を消さなかった事に。

 

「……!」

 

「っ……」

 

俺とアリシアは気付きすぐに振り返るとグリードはいなく、気配を探すと頭上にいた。

 

ハサミを振りかざし、リヴァンとシェルティスに狙いを付けていた。

 

「危ない!」

 

2人を突き飛ばし、振り下ろされたハサミが肩を斬り裂く。

 

「……⁉︎」

 

「な……!」

 

「……ぐっ……」

 

「レ、レンヤさん⁉︎」

 

皆が心配する中、アリシアは銃を構えて銃口から魔力刃を展開する。

 

「やあっ……!」

 

グリードの背中に飛び乗り、甲殻の隙間に刃を突き刺し魔力弾を撃ち込む。

 

グリードは倒れ、消えていった。

 

「レンヤ、大丈夫⁉︎」

 

「っ……ああ、大丈夫だ」

 

「レンヤさん、傷が……!」

 

左肩を見ると少し出血しているが骨や肉まで届いていないようだ。

 

「お、おい……」

 

「……大丈夫なのか?」

 

「大した傷じゃない。俺も甘かったよ、消えていない事に気付かなかった」

 

「ごめん、私も迂闊だった」

 

「「……………………」」

 

「とにかく治療をします。レンヤさん、傷を見せて下さい」

 

バリアジャケットを解除して上着を脱ぎ、アリシアが治癒魔法をかけた後ギンガが包帯を巻いてくれた。

 

「うん、大丈夫そうだな。ありがとう、アリシア、ギンガ」

 

「どういたしまして」

 

「応急処置を訓練校で習っておいて良かったです」

 

顔を上げてリヴァンとシェルティスの方を見る。

 

「すまない、その……」

 

「完全に僕達のせいだね」

 

「いや、気にしないでくれ。気付かなかったのは俺のミスでもあるし………とにかく2人に怪我がなくて良かった」

 

「……すまない……」

 

「……………………」

 

「レンヤさん、肩はあまり動かさないで下さいね」

 

「依頼はもう全部終わったから、このまま安静にしてよね」

 

「そうさせてもらおうか」

 

立ち上がり、上着を着る。

 

「そろそろ出発しよう。なのは達と合流しないとな」

 

「あ、ああ……」

 

「行きましょうか」

 

奥にあるゲートを潜り、現実世界に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外はすっかり夕方で、公園が日に染まったいた。

 

「皆、お疲れ様!」

 

「遅かったわね」

 

ゲート前にいたなのはとアリサが近寄って来た。

 

「ただいま戻りました」

 

「お疲れ様、ギンガ…………あら?」

 

「アリサちゃん、どうかしたの?」

 

アリサは俺を見て、肩を触ってきた。

 

「っ……!」

 

「やっぱり怪我してるわね、何があったの?」

 

「えっと……」

 

「レン君!」

 

なのはに迫られて、怪我の経緯を話した。

 

「へえ、そうなんだ。そっかそっか」

 

「な、なのはさん……?」

 

なのはは俯きリヴァンとシェルティスの方を見る。

 

「その、すまないと思っている……!」

 

「非は……認めます」

 

「………喧嘩してさらにレン君に怪我させるなんて……」

 

なのはは無言でレイジングハートを取り出し、魔力を放出する。

 

「ちょっなのは⁉︎」

 

「2人共、ちょっと頭冷やそうか?」

 

珍しくなのはが怒っているよ。しかもお母さん並みだよ、ちょっと黒いオーラが滲み出てるよ。

 

「お、落ち着いて下さい!なのはさん!」

 

「大したことないから、そう怒らないでくれ。2人共、悪気があった訳じゃない」

 

「…………分かったの」

 

魔力を抑えてくれた、少なからず納得してくれたかな?

 

リヴァンとシェルティスは気を当てられたのか少し顔が青いが。

 

「コホン、依頼も終わったことだしゲンヤさんに報告しに行きましょう」

 

「それもそうだな」

 

「それじゃあ行ってみよう〜〜」

 

公園を出て108部隊隊舎に向かおうとすると……

 

「あれ、お姉ちゃん?」

 

「あら、スバル」

 

公園を出た所でスバルと出くわした、手にはこれでもかと積み上がったアイスがあった。

 

「スバル、久しぶりだな」

 

「こんにちは、スバルちゃん」

 

「すっかり大きくなったわね」

 

「え、ええ!なんでレンヤさんとなのはさんとアリシアさんとアリサさんがここにいぃ⁉︎」

 

スバルはいきなりのことで驚いているようだ。

 

慌ててアイスを食べようとしてアイスを一玉丸かじりして口をハフハフさせる。たこ焼きじゃないんだぞ。

 

「ふふ、大丈夫だよ。今の私達は学生だから余りかしこまらないで」

 

「ハフハフ……ゴックン、はい」

 

「スバル、勉強はちゃんとしたの?」

 

「大丈夫!復習もちゃんとしたし、今は息抜きが必要なの!」

 

「レンヤ、彼女は?」

 

「ああ、すまない。この子はスバル・ナカジマ。ギンガの妹でゲンヤさんの娘さんだ。スバル、この2人はレルムでの同級生で……」

 

「リヴァン・サーヴォレイドだ」

 

「初めまして、シェルティス・フィルスです」

 

「私はスバル・ナカジマです。よろしくお願いします!」

 

スバルは勢いよくお辞儀をする。

 

「そういえば勉強って言ってたけど、どこかに入る予定なの?」

 

「はい!6月に第四陸士訓練校で技能試験がありまして、上位を目指すために頑張っています!」

 

「へえ、凄いじゃないか」

 

「でも第四か……」

 

「確か、ソーマとティアナも第四だったわね。もしかしたら知り合いになるかもね」

 

「誰ですか、そのソーマとティアナって人は?」

 

ギンガが聞いてきたので、必要最低限の説明をした。よく知るためには直接会うのが一番いいからな。

 

「なるほど、スバルの同期になるかも知れないんですね」

 

「まあそうだな。確かスバルとは1つ歳上だった気もするが………」

 

「もし良かったら、会って見て。とても優しい2人だから」

 

「はい!」

 

スバルは元気よく返事をする。

 

「あの、なのはさん」

 

「うん?何かな?」

 

スバルはなのはに何か言いたそうだ。

 

「ほらスバル、ちゃんとお礼を言うんでしょう?」

 

「う、うん」

 

スバルは深呼吸して、なのはと向き合う。

 

「なのはさん!一年前の火災で助けていただきありがとうございます!なのはさんのおかげで私は魔導師として……人を助ける道を進めたんです!だから、ありがとうございます!」

 

スバルは勢いよくお辞儀をする。なのはは一瞬驚いた顔になり、優しく笑う。

 

「確かに私はスバルの事を助けた、けどそれからの事はスバル自身が決めた事だよ。私はただのきっかけ、でもありがとうね、そう思ってくれて」

 

「!、はい!」

 

スバルは元気よく返事をした。

 

その後別れて、陸士108部隊隊舎に向かった。

 

「やっと着いた〜」

 

「ふう、ふう、疲れましたぁ」

 

「だらしないわよ、2人共」

 

「あはは、色んなことがあったからね、仕方ないよ」

 

「ギンガがはともかく、なのははしっかりしろ。この後レポートを書くんだから」

 

「はぁい」

 

隊舎に入ろうとすると、中から2人の男女が出てきた。男性は三十あたりでシェルティスに似ていて、女性は二十歳前後の金髪の長いストレートだ。2人共本局の制服を着ている。

 

「………!」

 

「シェルティス?」

 

シェルティスは男性の顔を見て驚いている。

 

「シェルティスか、確か特別実習でここにいるのだったな」

 

「はい、父さんもお元気そうで。ここには、何をしに?」

 

「えっ……」

 

「何っ⁉︎」

 

シェルティスの父だということに驚く。

 

「ここには視察に来たのだ、それで……」

 

男性はシェルティスから視線を外し、俺達の方を向く。

 

「レルム魔導学院・VII組の諸君だね。私はシェルティスの父、グランダム・フィルスだ。一応少将に就かせてもらっているが、息子共々よろしく頼む」

 

「は、はい!こちらこそ、私は高町 なのはです!」

 

「初めまして、アリサ・バニングスです」

 

「アリシア・テスタロッサです。よろしくお願いします」

 

「リヴァン・サーヴォレイドです」

 

「神崎 蓮也です。もうお帰りになるのですか?」

 

「ああ、もう用事は済んだからな。それではお暇させてもらうよ、実習の成果を期待している」

 

グランダム少将が車の元に向かうが、女性が未だに動かず喋らずだった。

 

「えっと……」

 

「あの〜〜、グランダム少将、行ってしまいましたよ?」

 

なのはが声をかけるも無反応だ。

 

「大丈夫、寝ているだけだから」

 

「ええっ⁉︎」

 

「立ったまま寝れるか⁉︎」

 

驚く中。シェルティスは女性に近づく。

 

「あ、あそこにイーシャが……」

 

「えっ⁉︎どこにいるの、イーシャちゃん!どこにいるのーー!」

 

いきなり周りを見渡す女性。

 

「イシュタルさん、父さんが行ってしまいましたよ」

 

「あ、本当だ。もうせっかちなんだから」

 

「なんなのこの人?」

 

「イシュタル・フェリーヌ一等空尉。父さんの護衛なんだけどこんな性格でね、本来ならもっと上の階級クラスなんだけど、この人階級にも興味がないから」

 

「あ、少年。いたの?」

 

「最初からいましたよ、それよりも自己紹介くらいして下さい。皆引いてます」

 

「ありゃこりゃ失敬。私はイシュタル・フェリーヌだよ、よろしくね〜〜」

 

「は、はあ……」

 

困惑しながらも俺達は自己紹介する。

 

「それで少年は学院に入ったんだって?どれ位腕は上がったのかなぁ?」

 

「あなたに一太刀入れられる位には」

 

「あはは!言う様になったね〜」

 

イシュタルさんはグランダム少将の元に向おうとする。

 

「じゃあね〜皆、怪我には気をつけようね〜〜」

 

「イシュタルさん、今度模擬戦をして下さい!」

 

「いいよいいよ〜」

 

「できれば本気で」

 

シェルティスがそう言うと、イシュタルさんは雰囲気を別人に変えて、鋭い眼光がシェルティスを射抜く。

 

「なら出させるといい、少年」

 

「っ……………!」

 

「なんて威圧感……!」

 

「はあ、だからあなたは苦手なんだ。猫かぶっていると思ったらいきなり本性」

 

「何のことかな〜?じゃあね〜!」

 

イシュタルさんは雰囲気を元に戻して、グランダム少将の元に向かった。

 

「………変な所を見せたね」

 

「そんなことないよ」

 

「2人共、とても優しい人だったよ」

 

「……………………」

 

「まあ、それは置いといて。報告したら食事を取ろう、ここの食堂でもいいけど……ギンガ、いい場所を知っているか?」

 

「はい!私のオススメのお店があります!」

 

「それじゃあそこにしましょう」

 

「もうお腹ペコペコだよ」

 

その後、ゲンヤさんに報告した後一旦シャワーを浴び………一息ついてからギンガに案内されたレストランに繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食を食べ終わった頃には日も暮れていた。

 

「………ふう、いい風だな」

 

「ここの料理も美味しかったよ、ありがとうねギンガちゃん」

 

「いえ、喜んでもらえて何よりです!」

 

「満腹、満腹」

 

外にあるテーブルで空と風を感じながら一息つく。

 

「シェルティスはここを知っていた様だな。行き付けだったのか?」

 

「ここは昔から家族と良く来ていたレストランだ。両親ともに忙しい時には1人で来ていてね、良くしてもらっている。母さんに次いで第2の味みたいなものなんだ」

 

「さすがに贅沢だな。……まあ、ここの料理が美味かったのは認めるが」

 

「結構穴場なんだね」

 

「うちのシェフにも劣らない味ね」

 

「ありがとう、店長も喜ぶよ」

 

「ア、アリサさんってもしかしてお嬢様、ですか?」

 

「ああ、地球じゃあすずかの家と同じ位有名な家柄だ」

 

「す、すごいです……」

 

「…………………」

 

そこで会話が途切れてしまう。

 

「し、しかしB班の方は今頃どうしているんだろうな?」

 

「はは、ちょうど先月も同じようなことを話してたっけ。東部のカントル地方か……同じように頑張っていると思うけど」

 

「そういえば………レン君は先月、セニア地方に行ってたんだよね」

 

「ああ、ちょうど食事時にB班の話しをしてたんだ。そっちの方はどうだったんだ?」

 

聞いてみると、5人共顔を暗くする。

 

「そ、それは……」

 

「とてもこんな雰囲気じゃなかったよ〜」

 

「まあ、あの時に比べれば今回はかなりマシね」

 

「そ、そうなんですか。とてもそうには見えませんけど……」

 

「……まあ、そうだな」

 

「今回のレポートはちょっと気が楽になりそうだね」

 

「ーーだけど、良くもなかった」

 

今日のことを思い出すようにシェルティスは否定する。

 

「シェルティス……」

 

「おそらくB班はベストを尽くせる状況だろう。だけど、僕達A班は今日一日ベストを尽くせたかな?グリードの時もそうだし、それ以外の依頼についても」

 

「……むう」

 

「にゃははは……」

 

「…………………」

 

他の皆も自覚しているようだ。

 

「実習は残り1日………何とか立て直すしかないだろう」

 

「私も!明日は参加できないと思いますが協力します!」

 

「どちらにせよ実習期間も残り1日。私達も頑張りましょう」

 

「うん!」

 

「了解だよ」

 

「そうだね」

 

「まずはレポートをまとめておかないとな……」

 

その後隊舎に戻りギンガと別れてから部屋でレポートを書いて、その後明日に備えて早めに寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜も遅い時間、ふと目を覚まして横を見るとシェルティスが起きていた。

 

「……眠れないのか?」

 

「……君の方こそ。聖王様ではこのベットは固くて眠れないなんて言うんじゃないでしょう」

 

「はは、そんなことないさ。聖王と言っておきながら今まで庶民の生活をしてたからこれがちょうどいいくらいだ」

 

「確か……養子だったよな。いいご両親に育てられたみたいだな」

 

「ああ、切実に俺の事を考えくれている大切な両親だ、とても感謝している。シェルティスの方こそ両親もそうじゃないのか?」

 

「僕の所は、な」

 

シェルティスは天井を見つめる。

 

「何かあったのか?」

 

「そうじゃない、父さんにも母さんにもちゃんと育てられていて……管理局を抜けばごく普通の両親だ。だけど、無用に心配性なんだ」

 

「それは良いことじゃないのか?」

 

「それは……僕が通常の子どもとは違うからだよ」

 

「え」

 

俺は起き上がり、シェルティスの方を見る。

 

「僕はいわゆる強化人間……母さんのお腹にいる時の過程で遺伝子操作されたんだ」

 

「それって……」

 

「父さんは1つの人間の可能性を僕に託したんだ、母さんもそれに賛同した。でもやっぱり批判や妨害が多くてね、母さんと僕にもそれが及んだ。父さんは希望と後悔の両方を僕に向けているから………心配性にもなるんだ」

 

「そうだったのか……」

 

シェルティスの素性を聞いてしまい、少し後悔する。

 

「批判した人々は才能を金で買う、カンニング行為などと言って批判してきたが……父さんは諦めなかった。今は落ち着いているけどね。昔はそれでよくイジメにもあっていたから……同年代で話せるのは君達くらいだ」

 

「そうか……」

 

この状況をどうにかしようとかける言葉を考える。

 

「その………色々あるとは思うけど。イシュタルさんとか、他にも仲が良い人はいるだろう?」

 

「父さんの周りの人達にね。イシュタルからは戦い方と楽しみ方を教えてくれた、剣を教わったのはイシュタルの上司にあたる人に教わった。皆、強化人間のことなんて関係なく良くしてもらっている」

 

「そうか、やっぱり」

 

「!………どういうこと?」

 

「イシュタルさん、あんな楽しそうにしながらシェルティスのことを心配そうな目で見てたからな。親しい人にしか分からないことなんだなぁって思ったんだ」

 

「……………………」

 

「あれ、どうした?」

 

「何でもない、本当に普通だと思っただけだよ」

 

「はは……自覚している」

 

そこから少しの沈黙の後……

 

「………昼間の傷は大丈夫?」

 

「ん?ああ、もう痛みも感じないし傷も塞がっている。アリシアとギンガにお礼を言わないとな」

 

「そう………レンヤ、君はどうにも危なっかしい所があるみたいだね」

 

「え」

 

シェルティスは起き上がり、顔をこちらに向ける。

 

「入学式の時、はやてを庇った時もそうだけど………あの時、君は何の戸惑いもなくはやてを庇うために行動したよね?」

 

「あ……」

 

「あういう時、普通なら自分の身を守ろうとするはず。けど君はそうせずに他人を守ることを優先した。今日僕達を庇ったように、本来なら誉めらた行動だと思うけど………僕にはどうもおかしく見えてしまう」

 

「……………………」

 

内心焦りながらベットに倒れこむ。

 

「はは……参ったな。まさか見抜かれているとは思わなかった」

 

「君が僕のことを見透かしたようなことを言うからだよ。けどその在り方、自分でも傲慢だと、自分でも分かっているでしょう?」

 

「ああ、父さんと兄さんにも言われたし子どもの頃から理解している。それでも変えられないんだけどね」

 

「そうなんだ……」

 

「ははっ……」

 

「ふふ……」

 

そう言ってからなんだかおかしくなってきて、お互いに思わず笑ってしまう。

 

「未熟者同士なのはお互いさまというわけか」

 

「ああ……今日はもう寝よう。慣れているけど、寝不足で力を出せなかったら他の皆に悪いからな」

 

「そうだな、そうなったら本末転倒だ、早く寝ようか」

 

シェルティスはベットに倒れこむ。

 

「おやすみ、シェルティス」

 

「良い夢を、レンヤ」

 

目を閉じた瞬間、すぐに寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その会話をリヴァンが黙って聞いていた。

 

2人が寝たのを確認するとリヴァンも寝てしまった。

 

 


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